【ヤモっちのお姉ちゃん登場】 - ダンゲロス・ウラギール

【ヤモっちのお姉ちゃん登場】

「はぁーーーーっ」とりわけ大きくて長い溜め息をひとつ。もー、やんなることこの上ない。何故あたしが番長グループの一員として戦わなきゃなんないのー？ ハルマゲドンだよ？ 最悪死ぬよ？ うううーっ、理佐がうっかりあたしの能力を洩らしたからこんなことになったんだぞ。恨むよ理佐ぁー。

ひやり。ほっぺたに冷たい金属の感触。「ヤモっちってば、また何か思い詰めてるな。やっぱり、あいつの事？」理佐から貰ったコーラの缶をぷしゅっと開けて一口飲む。「うん、まあね」理佐本人に恨みごととか言う気はないし、目下最大の悩みはハルマゲドンよりもそっちなので嘘ではない。

「やっぱり、私が探り入れてあげよっか？」「駄目ーっ。それだけは、あたしが自分で立ち向かうんだってば」「ふーん、そう言いながらもう何週間？ ホワイトデーは来週だよ？」「うるさーい！ 分かった、今、すぐに、返事を聞いてくる！」「お、頑張れ」「……コイントスで表がでたら！」「えー？」

腰のポーチの中の財布から銀色のコインを取り出し、親指で高く弾く。お願い、表が出ますように！ お願い、表が出ませんように！ 二つの相反する願いをこめられて、運命のコインが宙を舞う。だけど、どちらを上にすべきか決めかねたのか、コインは落ちてこなかった。ぱしり。頂点付近でキャッチされるコイン。

あたしのコインを空中でインタラプトしたのは、小学生ぐらいの可愛らしい女の子。「どうして……貴女はシスコインを持ってるのですか？」背中に奇妙な機械をランドセルのように背負った女の子は、そう問いかけてきた。「シス……コイン？ このコインは去年の夏に山口で拾ったモノだよ？」

「なるほど、貴女は善行を積み、シスコインに選ばれし『妹』の資格を得たわけですね」ええー？ まさか、あたしが妹として選ばれたというの！？「さあ、この『お姉ちゃんガチャ』にシスコインを入れて貴女の姉を手に入れるのです！」女の子は背負ったガチャマシィーンを下ろし、あたしに促す。

あたしは、コインを投入口に入れる。独りっ子のあたしに、お姉ちゃんができる……！ それは、とても甘美な提案だった。お姉ちゃんができたら、まずは恋の悩みの相談をしよう！「キーキー！」ヤモリのキーちゃんも『やったねヤモっち家族が増えるよ！』と喜んでくれている。

レバーを回す……！ ガチャガチャ、ポン！

時々雨宮守のお姉ちゃん：【C】ギョリー　属性／半漁。特に人魚という訳ではない。水泳部のエース。お姉ちゃんの……水着！[エラ呼吸]5 #姉ガチャ shindanmaker.com/518827

「あなたが……あたしのお姉ちゃん！？」ガチャから飛び出して、あたしの前に現れたのは全身が鱗に覆われた魚類めいた女性だった。競泳用水着を身に付けてるが、似合ってないような……。「……ソウダ。ワタシハ、アナタノ姉。母ナル海ヨリノ使者ナリ」「お姉ちゃん！ 相談があるんだけど……」

「ソンナコトヨリ、水泳シマショウ！」お姉ちゃんの提案で、あたしたちは寒中水泳をすることになった。やったね水着サービス回だ！ って寒いよ！ お姉ちゃんのバカーっ！ そして、あたしとお姉ちゃんと理佐と姉尾ノゾミちゃんは、三月の緑色のプールでひとしきり泳ぎ、風邪を引いた。

【ヤモっちのお姉ちゃん登場】おわり。