ディラス「そこに扉があるんだな?」
コハク「うん。そうなの。」
ディラス「で、それを開く方法は?」
コハク「……わからないの。」
ディラス「そうか……。」
コハク「ただ、 しかくがないって言われたよ?」
ディラス「資格?」
コハク「扉を開く覚悟。 世界を作りかえる証。」
コハク「それがなければ 扉を開くことはできないって。」
ディラス「……見当もつかないぜ……。」
コハク「うーん……。」
ディラス「……らちがあかねえな。」
ディラス「とりあえず、 アーサーにでも相談してみるか……。」
コハク「うん。 お願いするの。」
コハク「まるとさんかくは必要ないみたいなの。」
ディラス「……ちっ。何の力にもなれねえとはな。」
----
ドルチェ「仮に、 扉を開くのがうまくいったとして……。」
ドルチェ「あとは、 どうやってアイツを連れ戻るかよね。」
ピコ「『……ですわね。……どう実体化するか……』」
ドルチェ「実体がなくても、 あんたみたいになるだけじゃないの?」
ピコ「『どうでしょうか……』」
ピコ「『それなら最初の段階で この世界に残ってそうなものですけど』」
ドルチェ「あんたと違って、 未練なんてなかったってこと?」
ピコ「『…………』」
ドルチェ「『この世界にもう思い残すコトなんてないって、 そういうことになるのよね?」
ピコ「『……あるいは、そうかもしれませんわ』」
ドルチェ「…………。」
ピコ「『でも、 実際のところはどうか分かりませんの』」
ピコ「『私たち人間とは、 やっぱり立場からして違いますもの』」
ピコ「『それを確かめるためにも、 話をしたいのでしょう?』」
ドルチェ「……そうね。」
ピコ「『そちらに関しては、まずはレオンさんに 心当たりをあたってもらってます』」
ピコ「『私たちは、他にも方法がないか探してみましょう』」
ドルチェ「…………。」
ピコ「『未練、ですか……』」
ドルチェ「『なかなか難しいわね……。」
----
バレット「帰還の指環を?」
レオン「ああ。 なんとか作れないか?」
バレット「……難しいな。」
レオン「金ならいくらでも払う。」
バレット「そんなものいるか。」
レオン「材料も俺がそろえる。 言われれば何でもだ。」
バレット「いや、そうじゃなくてだな……。」
レオン「どういうことだ?」
バレット「その……なんだ。」
バレット「……実は、あの指環ができたのは偶然なんだよ。」
レオン「偶然?」
バレット「ああ。」
バレット「だから、材料どころか、どうやって作ればいいのかも分からん。」
レオン「…………。」
バレット「そ、そんな目で見るなよ! あの時はオレも必死でだな……!」
バレット「……まあ、そういうことなんで、力にはなれそうにない。」
バレット「悪いな。」
レオン「いや、無理を言ったな。 こちらこそ悪かった。」
バレット「それにしても、 どうしてあんなものが必要なんだ?」
バレット「指環に代わる呪文なら、 主人公が使えるはずだが……。」
バレット「アースマイトなんだろう?」
レオン「ゲートリジェクトのことか?」
バレット「ああ。」
レオン「そっちだと、 たぶん魔法が制御しきれないと思ってな。」
バレット「なに?」
レオン「連れ戻したい相手のルーンが、ちょっとばかり大きすぎるんだ。」
バレット「……?」
バレット「あんた、まさか……!?」
レオン「…………。」
バレット「……なるほどな。」
バレット「まったく。 どこの町にも無茶なヤツはいるもんだな。」
レオン「そうなのか?」
バレット「……そうなんだよ。」
バレット「だが、ゲートリジェクトを使うのは 確かに止めた方がよさそうだ。」
バレット「前に主人公が 似たようなことを試して失敗してたが、」
バレット「言ってみれば、あれはルーンが暴発したってことだ。」
バレット「あの時は大事に至らなかったものの、次に同じ事が起きたらどうなるか分からん。」
バレット「危険すぎる。」
レオン「……ああ。分かってる。」
バレット「だが、他の方法となるとな……。」
レオン「…………。」
バレット「そういえば」
バレット「あの時ゲートリジェクトで 連れ戻そうとしたのはレオンだったな。」
バレット「因果なもんだ……。」
レオン「……指環はいい線だと思ったんだがな。」
----
主人公「セルザ……。」
主人公「……聞こえてるかな?」
主人公「やっぱり、セルザが居ないとみんな寂しそうだよ。」
主人公「…………。」
主人公「でも……。」
主人公「約束したもんね。」
主人公「セルザがいなくなっても大丈夫だって。」
主人公「僕(私)がこの町を守るって。」
主人公「だから……。」
主人公「……これがセルザの選んだ道だから……。」
主人公「それでも、やっぱりさ……。」
>さみしいよ ・ 会いたいよ ・ …………
----
ドルチェ「じゃあ、これがお代ね。」
トゥーナ「……いつもありがとうございます。」
トゥーナ「……あの。」
ドルチェ「なに?」
トゥーナ「少し多い……。」
ドルチェ「ああ。 いい品物だったから、ちょっとだけね。」
ドルチェ「それに……。」
トゥーナ「……?」
ドルチェ「……話を聞いてもらったら、 ちょっと吹っ切れたし。」
トゥーナ「そう……。」
ドルチェ「その代わり、 次もちゃんとしたもの仕入れてよね。」
トゥーナ「……ありがとうございました。」
ドルチェ「おはよ、主人公。」
主人公「おはよう。」
ドルチェ「それじゃ。」
主人公「あの……。」
トゥーナ「……なに?」
>ドルチェと仲がいいんですね ・ 何を話してたんですか? なんでもないです
▼なんでもないです
トゥーナ「そう。」
▼ドルチェと仲がいいんですね
トゥーナ「……お得意さま。」
主人公「え?」
トゥーナ「アクセサリーの素材を、よく買いに来てくれる。」
主人公「ああ、なるほど……。」
トゥーナ「…………。」
主人公「…………。」
トゥーナ「それだけ……?」
主人公「あ、いえ。 ええと……。」
トゥーナ「……?」
▼何を話してたんですか?
トゥーナ「……家族の話。」
主人公「え……?」
トゥーナ「…………。」
トゥーナ「わたしには 血の繋がってない家族がいる。」
トゥーナ「鍛治以外はあんまり興味がない人で、 わたしも口ベタだから……。」
トゥーナ「あんまり話はしないし、 お互いのことに踏み込んだりもしない。」
トゥーナ「でも……。」
トゥーナ「相手が困ってる時は、 助けてあげたいと思う。」
トゥーナ「お節介かもしれないけど、何かしてあげたいと思うから……。」
主人公「…………。」
トゥーナ「……あなたは?」
主人公「え?」
トゥーナ「助けたい人。 いるのかと思って。」
>……はい ・ …………
主人公「……でも、相手は助けてほしいなんて、 思ってないかもしれません。」7
トゥーナ「……そう。」
トゥーナ「でも、相手が何を望んでるかなんて、 分からない。」
主人公「……どういうことですか?」
トゥーナ「いつもそばにいたって、相手の全てが分かるわけじゃない。」
トゥーナ「それで傷ついたり、 ケンカになったりするかもしれない。」
トゥーナ「でも……。」
トゥーナ「なにがあっても一緒にいるって。」
トゥーナ「そう信じあえるから、 家族なんだと思う。」
主人公「…………。」
トゥーナ「相手を大切に思えば思うほど、」
トゥーナ「傷つけたり傷ついたりしないと いけない時はある。」
トゥーナ「でも……。」
トゥーナ「それでも、 相手を信じたいって思った時。」
トゥーナ「その気持ちは間違いじゃない。」
トゥーナ「自分勝手かもしれないけど、」
トゥーナ「その気持ちは……信じていい。」
主人公「そのせいで、 大切なものを失うかもしれなくても?」
トゥーナ「何かを変えたいなら、 何かを失う覚悟をするのは当たり前。」
トゥーナ「変わるっていうのは、今を失うことだから。」
トゥーナ「それでも……。」
トゥーナ「踏み出さないと、 変えられないものもあるって……。」
トゥーナ「……そう、わたしにも教えてくれた人が居た。」
主人公「踏み出さないと、変えられないもの……。」
トゥーナ「うん。」
主人公「…………。」
トゥーナ「さっきのお客さんも、 似たようなことで悩んでた。」
主人公「え?」
トゥーナ「わたしが話せるのはそれだけ。」
トゥーナ「……がんばって。」
主人公「…………。」
トゥーナ「……がんばって。」
トゥーナ「私も、応援する。」
----
ドルチェ「確かめておきたいんだけど、いい?」
レオン「なんだ?」
ドルチェ「わたしたちは今、自分たちの意志でセルザウィードをよみがえらせようとしてる。」
ドルチェ「たとえ、もし…」
ドルチェ「セルザウィードが、 それを望んでなかったとしても」
ピコ「『ルーちゃん……』」
ドルチェ「それでいいのよね?」
コハク「うん。 そうだねぇ」
ドルチェ「え……?」
ディラス「まぁ、当然だな」
レオン「なにを深刻な顔をしてるかと思えば、 そんなことか。」
ドルチェ「ふ、ふざけないでよ!わたしは真剣に……。」
レオン「……覚悟は出来てるよ」
ドルチェ、エクスクラメーションマークを出す。
レオン「仮にアイツが、この世界に帰ることを 望んでなかったとしても。」
レオン「それでも……。」
レオン「俺はアイツに言ってやりたいことが、 山ほどある。」
レオン「だから、 帰ってきてもらわないと困る。」
コハク「あたしは、セルちゃんのことだから、きっと喜んでくれると思うなぁ。」
コハク「でも、もしかしたら、そうじゃないかもしれないの。」
コハク「だとしてもね。」
コハク「セルちゃんは、ここに帰ってくるべきだと思うから。」
ディラス「オレは……。」
ディラス「……納得できないだけだ。」
ディラス「あー……。 こんなのに理屈もなにもねぇだろ」
ディラス「納得できないから、納得出来るようにやる」
ディラス「……そんだけだよ」
ドルチェ「あんたたち……」
「『それで、ルーちゃんはどうしますの?』」
ドルチェ「わたしは……。」
ドルチェ「…………。」
ドルチェ「……決まってるじゃない。」
ピコ「『ですわよね」」
レオン「よし。それじゃあ話に戻るぞ。」
レオン「で、どうやって セルザウィードを連れ戻すかだが――――」
>待ってください ・ みんな勝手だな ・ 私も混ぜてくれませんか?
レオン「主人公……。」
ドルチェ「どうしてあんたがここに?」
主人公「私も、セルザには言いたいことがあるんです。」
主人公「たとえ、それが自分勝手な願いでも……。」
主人公「セルザに戻ってきてほしい。」
主人公「この町に。」
主人公「私たちのところに。」
ディラス「主人公……。」
主人公「セルザはそんなことを望んでいなかったかもしれないけど……。」
主人公「でも、信じたいんです。」
主人公「セルザだって、私たちと一緒にいたかったんだって。」
主人公「信じたいから……。」
レオン「……だったら意地でも確かめないとな」
ディラス「アイツに聞いたところで、 素直に教えてくれるとは思えねぇが。」
コハク「でも、分かりやすいの。」
ドルチェ「確かに。すぐに顔に出るしね。」
主人公「みんな……。」
ピコ「『何してますの?主人公さん。』」
ピコ「『あなたも手伝ってくれるんでしょう?』」
>うん! ・ もちろん!
レオン「……さてと。」
レオン「じゃあ、まずは情報を整理するか。」
レオン「ディラス。 はじまりの森への扉はどうだった?」
ディラス「場所は前にコハクに聞いたとおり、 レオン・カルナク付近にあるらしい。」」
ディラス「ただ、開ける方法がどうにもな……。」
レオン「何が必要なんだ?」
コハク「扉を開く覚悟なの。」
レオン「……なに?」
コハク「世界を作り替える証?みたいなものだって。」
コハク「守り人になる前に扉を見つけた人から聞いたの。」
コハク「そういうのがないと、扉を開くことは出来ないって」
レオン「……そうか。」
ディラス「今、アーサーにも話して知恵を借りてるところだ。」
ディラス「で、アンタの方はどうだったんだ?」
レオン「帰還の指環は作り方さえ分からないって話だった。」
レオン「手当たり次第試してみる以外、今のところ方法はない。」
ディラス「そうか……。」
ドルチェ「こっちも他の方法を探してみたけど、手がかりはないわね。」
ドルチェ「ただ、始まりの森に行けるなら、アースマイトの魔法でどうにかなるかも」
主人公「え?」
ディラス「どういうことだ?」
ピコ「『依り代にルーンを融合することで、 肉体を再生する秘術があるみたいですの』」
ドルチェ「ウワサに聞いたくらいで、確証はないけどね。」
レオン「なるほど。」
ピコ「ただ、どちらにしても、はじまりの森に行ってみないことには……」
レオン「……今のところは、打つ手無しか。」
>いいえ ・ まだ試してないことがあります ・ ゲートリジェクトを試そう ・ …………
▼…………
レオン「とりあえず、各自でまた情報を集めよう。」
レオン「どんな些細な事でもいい。」
レオン「今はできるだけのことを試してみるんだ。」
ピコ「『そうですわね』」
主人公「…………。」
コハク「どうしたの?主人公くん(ちゃん)。」
-選択肢に戻る
▼まだ試してないことがあります
ドルチェ「え?」
レオン「試してないって、何をだ?」
主人公「それは……。」
主人公「…………。」
コハク「主人公くん(ちゃん)?」
主人公「……ゲートリジェクトです。」
▼いいえ
ディラス「なに?」
主人公「……ゲートリジェクトです。」
▼ゲートリジェクトを試そう
主人公「ゲートリジェクトを試しましょう。」
コハク「ダメだよ! 主人公くん(ちゃん)!」
ドルチェ「そうよ! あんた、塔に入る前も 同じ事をして失敗したんでしょ!?」
主人公「うん……。」
主人公「でも、もしかしたら、 今度はうまくいくかもしれない。」
ピコ「『主人公さん……』」
レオン「アンタ、自分で何を言ってるのか、分かってるのか?」
主人公「……はい。」
ディラス「-----いや、分かってねえだろ!」
主人公、エクスクラメーションマーク
ディラス「前に失敗した時は、たまたま何も起こらなかっただけだ。」
主人公「それは……。」
レオン「そうだな。」
レオン「これでもし、 アンタの身に何かあったら、」
レオン「セルザにも、 町の人間にも申し訳が立たない。」
ピコ「『……ですわね。』」
ピコ「『どうか、あきらめて下さいまし』」
主人公「…………。」
>あきらめない
主人公「あきらめないよ。」
主人公「たとえ、どんなに無茶だって言われても……。」
主人公「自分勝手だって言われてもいい。」
主人公「試してみたいんだ!」
主人公「だって……。」
主人公「セルザにまた、この町に戻ってきてほしいから。」
主人公「もう一度、セルザに会いたいから!」
主人公「私は、何もしないまま、あきらめたくなんかない!!」
ドルチェ「あんたって、止めても無駄なのよね」
主人公「え…?」
レオン「まあ、見てない所で試されるよりは、ここでやらせた方が安全か」
コハク「心配だけど……。もう決めたことなら仕方ないの。」
ピコ「『まったく。 仕方のない人ですこと』」
主人公「みんな……。」
ディラス「…………。」
ディラス「……もし何かあったら、すぐに止めるからな。」
主人公「……うん。」
ディラス「それとだ。」
ディラス「どうしてもやるって言うなら、 ちゃんと準備してからにしろ。」
主人公「わかってる。」
レオン「……よし。」
レオン「それじゃあ、 準備ができたら声をかけてくれ。」
レオン「俺たちはここで待ってるからな。」
コハク「セルちゃん、 戻ってくるといいねえ。」
ピコ「『そうですわね』」
コハク「もしかしたら、 セルちゃんもこんな感じだったのかなあ。」
ドルチェ「どういうこと?」
コハク「あたしたちが守り人になったあと。」
コハク「ずっと、あたしたちのこと、助けようとしてたって……。」
コハク「それって、今のあたしたちと一緒だなって。」
ディラス「…………。」
レオン「……そうかもしれないな。」
ドルチェ「……うん。」
-ピコに話しかける
ピコ「まったく、困った人たちばかりですわね。』」
-コハクに話しかける
コハク「準備はできたの?」
>うん ・ まだ……
▼うん
コハク「じゃあ、はじめるの!」
▼まだ
コハク「準備ができたらおしえてほしいの。」
-ディラスに話しかける
ディラス「準備できたか?」
>うん ・ まだ……
▼うん
ディラス「それじゃ、はじめるぞ。」
▼まだ
ディラス「ちゃんと準備してこいよ」
-レオンに話しかける
レオン「準備はできたのか?」
>はい ・ まだ……
▼はい
レオン「よし……。」
▼まだ
レオン「そうか。」
レオン「じゃあ、 準備ができたら声をかけてくれ。」
-ドルチェに話しかける
ドルチェ「準備はできたの?」
>うん ・ まだ……
▼うん
ドルチェ「そう。 じゃあ、はじめましょうか。」
▼まだ
ドルチェ「そう。」
ピコ「『準備ができたら教えて下さいまし』」
レオン「じゃあ、始めるか。」
コハク「…………。」
ドルチェ「どうしたの?コハク。」
コハク「あ、うん……。」
コハク「セルちゃん、どんな気持ちだったのかなって。」
ドルチェ「え……?」
コハク「あたしたちの記憶を消したとき。」
コハク「ずっと、あたしたちに言いたいことがあったはずなのに。」
コハク「何も言わずに、記憶を消しちゃうしかなかったとしたら……。」
ディラス「……それが、オレたちのためだったからか?」
コハク「うん……」
ドルチェ「…………。」
レオン「謝ったらいいさ。」
レオン「アイツが帰ってきたら。いくらでも」
ピコ「『ですわね。』」
ピコ「『じゃあ、主人公さん。お願いしますわよ!』」
主人公「うん!」
主(ゴメンね、セルザ。 またワガママ言って。)
主(でも……。)
主(文句は帰ってきてから、たっぷり聞くよ。)
主(だから――――)
主人公「ゲートリジェクト!!」
ディラス「主人公!?」
…………。
……のう。聞こえておるか?
…………。
……なんじゃ、眠っておるのか。
…………いや、この方が都合が良いか……。
セルザ「コハク……。」
セルザ「……ああ、間違いなくコハクじゃ……!」
セルザ「生きておった! 生きておったぞ!!」
セルザ「ああ、コハク……。 どれくらいぶりじゃ……。」
セルザ「なつかしいのう……。」
セルザ「ほれ、いつものように笑ってみよ。 ほれほれ。」
セルザ「……のう、コハク。」
セルザ「そちの笑顔がまた見たいんじゃ。」
セルザ「じゃが……。」
セルザ「わらわのことを知ったら、 そちはまた悲しむじゃろう……。」
セルザ「そしてまた、くだらぬことを考える。」
セルザ「じゃからな……。」
セルザ「そちの記憶、封じさせてもらうぞ。」
セルザ「……わらわとの記憶だけ、きれいサッパリとな。」
セルザ「……じゃから、笑ってくれ。 コハク。」
セルザ「昔のように、ただ素直に。」
セルザ「それだけで、わらわは十分じゃ。」
セルザ「……さらばじゃ。コハク。」
セルザ「わらわは忘れぬぞ。」
セルザ「そちと一緒に あの空を飛んだこと。」
……忘れぬからな。
セルザ「まったく。 気持ちよさそうに眠りおってからに。」
セルザ「しかも、寝顔はこんなにカワイイのに、起きてるときの無愛想さときたら……。」
セルザ「のう、そち。もうちょっとどうにかならんのか?」
セルザ「……なんて言っても、聞くようなたまではないか。」
セルザ「守り人もアースマイトも、 自分勝手なヤツばかりじゃ。」
セルザ「わらわにだまって世話を焼きおって……。」
セルザ「そちは知らぬのじゃろう?」
セルザ「残されたものが、どんな思いをするのか。」
セルザ「その思いが、どれだけ重たいものか……。」
セルザ「……わらわも知らなんだぞ。」
セルザ「何も告げられぬ別れが、こんなにもツライものとはの……。」
セルザ「……さよならじゃ。 ディラス。」
セルザ「そちがわらわを呼ぶ、あのぶっきらぼうな声。」
セルザ「覚えておるぞ。」
セルザ「忘れたくとも忘れられん……。」
…………忘れてたまるものか。
ピコ「『ルーちゃんは大丈夫ですの!?』」
セルザ「無論じゃ。」
セルザ「じゃが、その前にやらねばならんことがある。」
セルザ(ドルチェ……。)
セルザ(そちには 色々と伝えてやりたいが……。)
セルザ(ただ見守ってくれと頼まれたからの。)
セルザ(それに……。)
セルザ(……わらわも、ちと限界じゃ……。)
セルザ(……じゃからの…………。)
セルザ「……さようなら。 ドルチェ。」
セルザ「……幸せになれ。」
セルザ「そちの両親も、 ただそれだけを望んでおった。」
セルザ「他の誰が忘れてしまっても、 わらわは覚えておる。」
セルザ「じゃから、」
セルザ「……たのむぞ。」
セルザ「…………幸せになってくれ。」
……わらわのことは、忘れて…………。
レオン「アイツは、どうやら自分の命をかけて、俺を助け出してくれたらしい。:
セルザ「……事情は理解した。」
セルザ「そちには色々と言いたいこともあるが、 話は後じゃ。」
レオン「助けに行くんだな?」
セルザ「決まっておる。」
レオン「ふん。 相変わらず面白い神様だな。」
セルザ「黙るがよい。」
セルザ「わらわはもう、イヤなだけじゃ。」
レオン「なに?」
セルザ「もう、誰も……。」
セルザ「……わらわを置いて、自分勝手は許さぬ。」
レオン「…………。」
レオン「なら、行く前に聞いていけ。」
セルザ「なんじゃ?」
レオン「俺を助けたアースマイトからの伝言だ。」
レオン「『ありがとう。僕(私)の友達でいてくれて』」
レオン「『……楽しかった』」
セルザ「……!」
レオン「あのアースマイト、なかなか面白そうなヤツだな。」
レオン「ネイティブドラゴンが一柱、神竜セルザウィードが友人とはな。」
セルザ「……あの、馬鹿者が…………。」
レオン「アイツが、お前の新しい神官なのか?」
セルザ「ふん。 そんな面倒な職業は廃止にしてやったわ。」
レオン「ははは。」
セルザ「仮に残っておったとしても、 誰があんな自分勝手を神官などにするものか。」
レオン「なら、アイツは何者なんだ?」
セルザ「あやつは……。」
セルザ「…………そちと同じじゃ。」
レオン「なに?」
セルザ「そちら、守り人と同じ、」
セルザ「わらわの、ただの友人じゃ。」
レオン「セルザ……。」
セルザ「ありがとう、レオン。」
セルザ「そちのおかげで、 わらわはここに生きておる。」
セルザ「そして――」
わらわはもう、独りではない!
主人公「ねえ、セルザ……。」
主人公「行かないでよ……。」
セルザ「…………。」
主人公「セルザ……どこにも行かないでよ……。」
セルザ「………………。」
…………イヤじゃ……。
セルザ「……別れの時間じゃ。」
主人公「セルザっ!」
主人公「待って、行かないでよ!」
セルザ「……さようなら、主人公。」
わらわとて、 どこにも行きとうはない……。
主人公「セルザっっっ!!」
セルザ「……そちと出会えて、わらわは、本当に幸せじゃった。」
主人公「ねえ……!」
セルザ「……また、人を好きになれた……。」
主人公「セルザ……!」
セルザ「……もし、いつか、 ……どこかで出会えるとしたら……。」
セルザ「……そのときは……。」
……イヤじゃ……いきとうはない……。
セルザ「……ただ、くだらない話をして、 ……毎日を一緒に過ごしたいの……。」
主人公「セルザっ!!!」
セルザ「……ありがとう。主人公。」
セルザ「わらわの最後の友人よ――――」
もう……独りはイヤなんじゃ……。
独りきりになるのは…………。
…………もう、イヤじゃ…………。
コハク「主人公ちゃん……!」
レオン「大丈夫か!? 主人公!!」
主人公「う……っ。」
ピコ「『ふう……。 気が付いたようですわね。』」
ドルチェ「……あんまり心配させるんじゃないわよ。」
主人公「…………。」
ディラス「おい、どうしたんだ?」
主人公「夢を……見たんだ……。」
ディラス「夢?」
主人公「セルザの……。」
主人公「みんなの記憶を消していくときの……。」
主人公「セルザが消えていくときの、夢だった。」
ドルチェ「……!」
コハク「セルちゃんの……夢?」
主人公「……うん。」
ディラス「……それで、アイツはなんて言ってた……?」
主人公「え……」
ディラス「何かわかったのか!?あいつのこと……!」
レオン「落ち着け、ディラス」
ディラス「くそ、分かってるよ!」
ディラス「けど……」
ドルチェ「…………。」
主人公「……たくないって。」
ピコ「『え……?』」
主人公「消えたくないって……。」
主人公「もう……。」
主人公「……独りになるのは、イヤだって……。」
コハク「主人公くん(ちゃん)……。」
「…………なんで、あんたが泣いてるのよ……。」
主人公「え……?」
主人公「……あ……れ……?」
主人公「だって……。」
主人公「セルザは僕(私)に、この街のことを頼んだから……。」
主人公「笑ってくれって……。」
主人公「笑って見送ってくれって、最期に言ったから……。」
コハク「うん……。」
主人公「……良かったって…。」
主人公「セルザが……消えたくないって思ってくれて……。」
主人公「この町で……みんなと……一緒に暮らしたいって思ってくれてて……。」
主人公「……僕(私)にだけじゃなかったから……。」
主人公「僕(私)にだけじゃ……なかったんだ……っ。」
コハク「……うん…………!」
ドルチェ「……バカね。」
ドルチェ「あんただけのハズ、ないじゃない。」
ドルチェ「……わたしだって……。」
ドルチェ「……っ…………。」
ピコ「『ルーちゃん……』」
ディラス「……だってよ。」
レオン「ああ。」
ディラス「これでますます、諦められなくなったな。」
ディラス「ふん、上等だ。」
ディラス「意地でもアイツを この町に連れ戻してやる。」
レオン「……そうだな」
アーサー「ああ、ディラスさん! ここにいらっしゃいましたか!」
ディラス「アーサー?」
アーサー「あの、これは……?」
レオン「まあ、ちょっと色々あってな。そっとしておいてやってくれ。」
ディラス「それで、どうしたんだ?」
アーサー「ディラスさん。風邪ですか?」
ディラス「は?」
アーサー「いえ、声が少し鼻声のようでしたので…」
ディラス「……!」
ディラス「な、なんでもねーよ!風邪だよ!!」
アーサー「風邪ならなんでもなくはないと思いますが……。」
レオン「はは。」
アーサー「ん?レオンさんも、少し目が赤いような……。」
レオン「…………… ……気のせいだ。」
ディラス「……くく」
アーサー「ああ、それで、ディラスさんに話があったんですが。」
ディラス「ああ。」
アーサー「見つかりましたよ。例の扉を開けられそうなものが!」
ディラス「本当か!?」
アーサー「はい」
レオン「なんなんだ、それは!?」
アーサー「その反応は、 やはりレオンさんも一枚かんでましたか。」
レオン「いいから、早く教えてくれ!」
アーサー「ええ、分かってます。 ちゃんとここに持ってきていますから。」
アーサー「ほら、コレです。」
ディラス「これは……。」
レオン「ルーンスフィア……?」
アーサー「この世界のものは、全てルーンの加護を受けています。」
アーサー「はじまりの森はそのルーンがいつか還るところ。」
アーサー「ネイティブドラゴンとて、その理には逆らえない……。」
ディラス「…………。」
アーサー「ですが、セルザウィード様は、今までずっとその理を破ってきた。」
アーサー「他でもない、ここに居るあなたたちの力によって。」
レオン「……!」
アーサー「それこそが、世界の理を破る力。」
アーサー「世界の法則をも作りかえる力です。」
アーサー「そして、その守り人の力に等しく、形を持ったものがあるとすれば――-」
キール「――――そんなの、ルーンスフィアしかないよね!」
ディラス「キール?」
キール「もー。アーサーさん、1人で先に行っちゃうんだもんなー。」
アーサー「すみません。あまりに嬉しかったので、つい……。」
レオン「どうしてお前がここに?」
キール「もちろん、アーサーさんのお手伝いだよ!」
キール「……っていうのは建前かな。」
レオン「なに?」
キール「ボクたちだって、諦めたくないんだ。セルザウィード様のこと」
レオン「お前……。」
アーサー「ともかく、これで扉は開けるはずです。」
アーサー「――――どうしますか?」
>行きます! ・ 私を置いていかないでください!
ディラス「主人公……。」
レオン「なんだ、もう復活したのか?」
>もちろんです ・ 鼻声ですけどね ・ 目は赤いですけどね
▼鼻声ですけどね
ディラス「てめえ……! ちゃっかり聞いてやがったのか!!」
▼目は赤いですけどね
レオン「ぐ……。聞こえていたのか。」
▼もちろんです
アーサー「ふふ……。」
アーサー「では、このルーンスフィアは、主人公くん(さん)に預けておきましょう。」
主人公「いいんですか?」
アーサー「はい。」
アーサー「というか、むしろお願いします」
主人公「え?」
レオン「どういうことだ?」
キール「えっと、たぶんなんだけど。」
キール「世界を作り替える証って、アースマイトも含んでるんじゃないかな。」
キール「ほら、守り人を作り出したのはアースマイトの魔法だし、」
キール「ルーンスフィアには アースマイトの魔法を使えるようにする力がある。」
キール「だから、確実に扉を開くためにはアースマイトの力も必要だと思うんだ。」
アーサー「……ということですので。」
アーサー「お願いできますか?」
>はい ・ 任せて下さい! ・ どうしようかな
▼どうしようかな
キール「え!?ダメなの……?」
主人公「あの、ジョウダンだから……。」
ディラス「……お前な。」
レオン「まあ、それだけ余裕があるのはいいことだな。」
アーサー「……かもしれませんね。」
▼はい ・ 任せて下さい!
アーサー「それでは、よろしくお願いします。」
主人公「…はい」
コハク「扉はレオン・カルナクにあるの。」
コハク「セルちゃんも、きっとみんなのこと待ってるの♪」
ディラス「……もう行くのか?」
> うん ・ まだ
▼うん・まだ
ディラス「その、なんだ……。」
ディラス「……行く時には、俺にも声かけろよ。」
ドルチェ「……もう、一人で抱え込むんじゃないわよ。」
ピコ「『ルーちゃんも、同じくらいふあんだったんですものね』」
ドルチェ「…………。」
ピコ「『がんばってくださいまし』」
ピコ「『私もまだアイツには文句を言いたりてませんの。」
レオン「俺もアイツには、言いたいことが山ほどあるんでな。」
レオン「そういうわけだ。レスト(フレイ)。」
レオン「一人で勝手に行くなよ?」
アーサー「ルーンスフィア、確かにお預けいたしました。」
アーサー「セルザウィード様のこと、よろしくお願いしますね。」
キール「ボクたちだって、あきらめたくないんだ。」
キール「レストくん(フレイさん)も一緒だよね?」
> うん ・ もちろん ・ どうかなあ……
▼うん
キール「そうだよね!」
▼もちろん
キール「へへ♪」
▼どうかなあ……
キール「え……。」
主人公「じょ、ジョウダンだから……。」