剛×葵

2008/10/16(木) 16:28:32 ID:2p95RVVO

スチールの粗末なベッドだけが置かれた、留置場と見紛う殺風景な部屋。
その一角を、若い男女の淫靡な息遣いが支配していた。
「あっ…あっ、剛はん…よろしおす、もっと…」
女の蕩けきった京言葉に、剛は口の端を歪めた。
背後から執拗に乳房を弄っていた手の片方を、下へ下へと降ろしていく。
そこは既にはしたなく熱を帯びて濡れそぼり、
節くれ立った剛の指をあっさり飲み込んで吸いついてくる。

「もうこんなにしてやがるのか、梅小路葵」
指の間で粘つく愛液を見せつけつつ、剛は首筋にまた一つ征服の証を刻んだ。
しっとりと吸いつくような肌のどこを愛でても期待以上の反応を見せ、
時折り質の良い楽器めいた高い喘ぎ声を漏らす。
どう啼けば男が興奮するのか、よく心得ているようだった。

淑やかな大和撫子。それが、闘技場で出会った彼女の第一印象であった。
だが剛の目を奪ったその面影も、いざ試合となれば大の男とも渡り合える
合気柔術の達人という真の姿すら今はどこにも無い。
「いい様だな。お前も所詮、ただのいやらしい牝って事か」
「もう、いけずやわあ…言わんといておくれやす…」
言うほどその言葉に気を悪くした様子もなく、
葵と呼ばれた女は自ら愛撫される猫のように剛の手に身を委ねた。


改めて、ようやく手にした腕の中の彼女を見遣る。
透き通るような肌の白さと癖一つない黒髪、
剛の与える快楽にしどけなく緩んだ赤い唇の対比がこの上なく艶めかしい。
「剛はん…」
長い睫毛に飾られた、髪と同じ色の双眸が振り仰いで瞬く。
今はただ一人剛しか映さぬその吸い込まれそうな美しい深淵に、
気がつけばらしくもなく見惚れていた。

「…どないしはったん?」
赤く痕の浮いた肩が翻り、訝しげに葵がこちらに向き直る。
「うち、もっと…」
普段の凛とした彼女からは想像もつかない、やけに甘えた声音が今は少し煩わしい。
「うるせえよ」
だから、半ば強引にその唇を塞いでやった。
しかし葵は、抗うどころかむしろ自分から舌を割り込ませてきた。
「んっ、ん…」
「く…」
濃密な水音を立て、はしたなく互いに互いの口腔を貪る。
飽き足らず後頭部をしっかりと押さえつけ、深く舌を絡め合う。
練り上げられた唾液が顎を伝わり、筋を描いて密着した胸元へと零れ落ちていった。

軋んだ音を立て、どちらからともなくベッドに倒れ込む。
「ねえ、剛はん…」
覆い被さって横たわる格好になった剛の首筋に、葵が下から腕を投げ出してきた。
見下ろせば、妖艶な光を湛えた漆黒の瞳が媚びるように剛を射抜く。
「うち、もう辛抱堪らんよって…早う?」
半開きの唇が、耳元でそっと囁いた。
清楚な顔に似ず、その哀願はまるでさんざん遊び慣れた女のそれである。

力に頼らぬ武道の達人らしいほっそりとした脚を割ると、
形ばかり恥じらった小さな悲鳴が上がった。
現に内腿を広げる剛の手に少しも抵抗を示さず、
葵はあっさりと目の前にその桜色の中心をさらけ出す。

「何の冗談だ」
「…さあ、何でっしゃろね?」
べたべたと臆面もなく剛を求めてくるはしたなさと、
ただ剛だけのために咲き誇り蜜を滴らせる花の清らかな淡さ。
その奇妙なアンバランスさに、分かっていつつも戸惑いを禁じ得ない。
それでも若い体は、獣じみた衝動の命じるままに思いを遂げるべく動く。
逆らうはずもない手を捕えて強く押さえつけると、
剛はさんざん昂ぶらされた己の凶器を一息に突き立てた。

「ぐ…」
予想以上の素晴らしい締め付けに、思わず声を上げてしまう。
紛れもない、男も穢れも知らぬ感触。
だが葵は痛がる様子一つ見せず、
生娘の初々しいきつさと淫婦の柔軟さを以て剛を最奥まで受け入れた。
閉ざされた無数の細かい内襞は一切の侵入を拒むようでいて、
さりとて少しでも退こうとすればぴったりと剛に絡みつき、食いついてくる。
気を抜けばほんの数往復で、限界を迎えてしまいそうだった。

押し破り、また振り切るように抽送を開始する。
「くっ…あっ…!」
たちまちもたらされる強烈な快感に矢も楯もたまらず、夢中になって突き上げた。
汗ばんだ肌と肌とが打ちつけられる湿った音が、断続的に響く。
整えられた爪が、剛の背中にしがみつこうとしては幾つもの血の筋を描いた。

「あっ、ぁん! 剛はん…ぁっ、あ…!」
なりふり構わず腕の中で乱れる姿、縋りつく甘ったるい声。
そして彼女をこうさせたのは、誰でもない剛自身。
「やぁ…っ、あかん、堪忍してえ…うち…!」
口先では許しを請いつつも、
か細い両脚は更なる責めを求めて剛の腰を引き寄せる。
その貪欲さに、蹂躙する動きは我知らずいっそう力強さと振れ幅を増した。

五感で感じる彼女の全てに、これまで抱いていた欲望が鮮明に蘇る。
出会ってからずっと、この取り澄ました京女を思うさま犯してやりたかった。
美しく雅なこの面差しが、己の与える悦びに浅ましく歪むのを見たかった。
細いがよく響く声がひたすら自分の名を呼ぶのを、何度も夢想した。
全ては、今叶ったかのように思えた。

否、違う。
「こないにされたら、うちっ…あん!」
「ふん…止めてほしいのか?」
「いや、いややわ!」
あの女が、こんなにだらしなく言いなりになる訳がない。
ましてや組織の人間である自分になど、決して屈しはしないだろう。
「いけずやわあ、剛はん…」
そう、これはまやかしだ。
そんな事は、最初から割り切っていたつもりだった。

出入りを繰り返しつつ、仰け反った白い喉に手を掛ける。
「剛はん…? く、あぁ…!」
「うざってえんだよ、紛い物が」
吐き捨てて、無造作に力を込めた。
一瞬で落とす技とはまるで間逆の、残酷で無慈悲な締めであった。

「あ、ぁ…」
綺麗な顔が、みるみる鬱血していく。
組み敷いた肢体が苦し紛れに跳ねる度、締め付けは一段ときつくなった。
「ああ、ご…う…はん…っ!」
だが葵は、この期に及んで手一つ上げもしない。
「落ちな」
「かは…っ!」
まるで絶頂を迎えたかのように、
二、三度びくびくと痙攣した葵の体がやがてぐったりと弛緩する。

真の意味で果てて尚もまだ未練がましく収縮を続ける胎内に、
程なく上り詰めた剛は勢い良く精を迸らせた。
飽き足らずまだ勢いを失わない己の物を引き抜いて扱き、
その美しい肌や髪まで何度も何度も汚していく。

ひとしきり欲望の限りを尽くし、白濁にまみれた物言わぬ体を見下ろした。
乱れて広がった艶やかな黒髪の隙間から、形の良い耳朶がのぞいている。
そこには組織が開発した強化クローン人間の証である、
ごく小さなシリアルナンバーの刺青が彫り込まれていた。

その現実に、覚めた夢の虚しさを思い知る。
こんな偽物をいくらよがらせた所で、あの女がこちらを向く事などあり得ない。
そしてある要人暗殺の報酬代わりにこの紛い物を作らせ、
己を満たそうとした自分のどうしようもない愚かさに呆れ果てる。
かくも簡単に思い通りになってしまう葵など、葵ではないのに。
「畜生…!」
いつしか強く握っていた拳を壁に思い切り叩き付けると、
剛はのろのろと冷たい床に足を下ろした。

 終
最終更新:2009年04月11日 22:41
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