無題:8スレ目54

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54 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2011/03/03(木) 23:22:26.71 ID:RA85mHvdo [10/11] あの夏の日、私は先輩に告白した。 そのこと自体は後悔はしていないわ。だって、私が選んだ道だもの。 もちろん、先輩のことだから、色々とやきもきさせられることも覚悟をしていたわ。 ただ、その覚悟はまだまだ足りなかったみたい。こうして、あの人から離れた今だからわかることだけれど……。 告白してから数日後、先輩は了承の意を示してくれた。 今だから言えるけれど、その時の私はすごく舞い上がっていた。 それを悟られないよう必死で誤魔化そうとしたけれど、無理だったわ。だって、あの人の顔が赤かったもの。私の反応を見た結果ね。 それからしばらくは、幸せだったと思う。 恋仲になったことをあの子や沙織に伝えた時、沙織は自分のことのように喜んでくれたし、あの子も何だかんだで祝ってくれたわ。 心の奥底では納得していないだろうけれど、理解してくれようと努めてくれた。 大好きなお兄さんを取られるかも知れないなんて思いながらね。本当、私には過ぎた友人だわ。 それから、先輩は私に時間を割いてくれるようになった。どんなに短い時間でも、一緒にいてくれるようになった。 それが嬉しくて、舞い上がっていたけれど……でも、わかるのよ。 あの人が優しい言葉を掛けてくれても、心のどこかであの子のことを気にかけているのが。 2人きりで出かけても、唇を重ねても、先輩の中からあの子の影は消えなかった。 最初の内は、「それも仕方が無い」と割り切っていたけれど、次第にそれが我慢できなくなってきたわ。 初めて肌を重ねたときは、痛さと幸福感、肌から伝わってくる熱で誤魔化せたけれど、回数が増していくごとに、温もりを感じられなくなった。 どんなに求めても、浅ましいくらいに貪り合っても、どんどん冷たさが増していった。 それは先輩が悪いわけじゃない。私の……私の中の醜い嫉妬心のせい。 楔を打ち込めば、枠組みに当て嵌めれば、先輩の心の中に私が棲めると思った。それは、とても浅はかだったと言わざるを得ないわ。 先輩とあの子は、とてもとても深いところで繋がっている。互いに、なくてはならない存在だった。 そんなこと、わかっているつもりだった。そう、"つもり"だっただけ。 自分の中の醜いものに気付いた私は、それを隠そうと必死だった。嫌われたくなかったもの。先輩にも。あの子にも。 それで無理がたたったのでしょうね。ある日、学校の中で倒れてしまったのよ。 目が覚めると、保健室のベッドの上だった。その隣には先輩がいて、私の手を握ってくれていた。 それは嬉しいことなのだけれど、私はそれ以上に恐怖を感じた。先輩の手から……ちっとも温もりを感じなかったから。 冷たい、冷た過ぎるくらいの手。常識で考えればありえないことだけれど、まるで死人に手を握られているようだった。 その時に気付いたわ。ああ、私はもう、"先輩のことを諦めてしまっている"って。 だから、私は言ったわ。「別れましょう」って。 はっきりと言えたことに、私は驚いた。こんなにあっさりと、つらい言葉を吐けるなんて。 きっと、どこかで割り切っていたのね。今ならそう思える。 先輩は食い下がってきたわ。何故?どうして?俺が悪いのか?……それはそうよね。突然、別れを切り出されたら取り乱すものだわ。 こんな時でも、先輩は優しかった。自分に非があると思って、治す努力をすると言ってくれた。 違う。違うのよ、先輩。私が悪いの。私の浅はかさと、醜い心が悪いの。 でも、そんなこと言えない。言えるわけがない。私はただ、首を振ることしか出来なかった。 そんな自分が情けなくて、惨めで、涙が溢れてきた。顔をぐしゃぐしゃにしながら、私は首を振り続けた。 そんな私を、先輩は慰めようとしてくれたわ。でも、その優しさも、私が泣いたことで誘導したような気がして、惨めに思えて、差し出してくれた手を払い除けてしまった。 私はただ俯いて、泣き続けた。その内、先輩は席を立ってしまった。 呆れたのかしら?付き合ってられなくなったのかしら?きっと、どちらでもないわね。だって、あの人は超が付くくらいのお人好しでお節介焼きだから。 それから日を空けて、私は再度別れを切り出した。 理由も言わず、私の我侭で別れを選んだ。いくら罵倒されても仕方ないと思っていた。 でも、先輩は何も言わなかった。それが有り難くて、私はまた泣いた。 今でこそこうして冷静に振り返れているのは、私の中で一応の決着が着いたからだと思う。 あの子や沙織も、何も聞いてこなかった。だから、今でも笑って傍に居られる。 それが、とても嬉しい。 でも、今でも思うのよ。 奪う気などなかったけれど、願ってはいた。 "どうせ愛せるのなら、完璧に"、と……。 おわり

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