第9話 俺はただ君のために----
13 自分:
毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:10:06.75 ID:8SN/nK870 [9/28]
第9話 俺はただ君のために
「……………ッ…!!」
少年の小さなうめき声とともに、灰色の曇天には不揃いの真っ赤な鮮血が宙を舞った。
「俺さんっ!!!」
「ルマール少尉っ!! 早く……早く治癒魔法を!!」
「は、はいっ!」
少年を囲む少女達は皆顔を蒼白にして少年を助けようと尽力している。
「………ナオちゃん」
しかし、彼の顔から血色が失われ、その決して大きくはない体躯から力強さが感じられなくなっていくのを止めることは出来ない。
「俺……」
少女達の中でも一際背の低い少女が少年に近寄り、彼の名を呟いた。
少年と目を合わせず俯く彼女からは、その表情を窺い知ることは出来ない。
「俺はナオちゃんのために死ねたら本望だよ」
息絶え絶えながらはっきりとそう呟いた少年の表情は……
14 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:12:05.64 ID:8SN/nK870 [10/28]
俺「!?」ガバッ
時計を見る。時刻は午前5時。3月のオラーシャではまだまだ日が昇っていない時間だ。
俺「ハァハァ…夢……か」
心臓ははち切れそうなほど激しく鼓動し、寝巻は汗でびっしょりになっている。
この季節のオラーシャの朝はまだ凍えそうになるほど寒い。早く着替えないと風邪を引いてしまう。
俺「………」ヌギヌギ
さっき見た夢………
俺「…………………自分自身が望んだ通りだろうがよ、バカ」
パチンッ
俺「うっし! 今日も一日頑張るぞ!」
そうだ。これは俺が望んだことなんだ。
俺はただ君のために、
16 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:18:08.99 ID:8SN/nK870 [11/28]
管野「そんな所で何やってんだよ」
俺「うおわっ!?」ビクッ
管野「うおっ!? だから、声かけたこっちがびっくりするからそうやって大げさに驚くの止めろっつったろ……」
俺「しょうがないだろ……ナオちゃんが気配もなく近づいてくるんだから……」
管野「べ、別に気配消したりしてねぇよ。お前がボーッとしてたからじゃないのか?」
確かに、俺は今物思いに耽ってたけど……
管野「で、どうしたんだよこんな所でそんな物を眺めて」
俺「いや、ちょっとね……」
ここはハンガーの片隅にある古ぼけた倉庫だ。この倉庫はもうほとんど使われておらず、訪れる人間などほとんどいない。
つまり、『ソレ』を隠すのにうってつけの場所なのだ。
管野「………………そいつを使う気だったのか?」
ナオちゃんは俺の背後にある『ソレ』を見つめながらそう言った。
17 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:24:11.02 ID:8SN/nK870 [12/28]
俺「いや、これは最後の切り札なんだ。使いどころはちゃんと見極めないと」
そうだ。こいつは最後の切り札だ。
俺がずっと思い描いてきた最高の最期のために必要なものなんだ。
そうホイホイと使えるものじゃない。
管野「ああ、そうだな……」プイッ
気まずげに目をそらすナオちゃん。
俺「ナオちゃ――」
伯爵「あれー? 二人ともこんな所で何して――」
俺「うおおおおおおおおおおナオちゃんうおおおおおおおおおおおおお!!!」ダキッ
管野「うわあっ何すんだバカっ///」
伯爵「あちゃーボク、お邪魔だったかな?」ニヤニヤ
管野「は・な・せ!」デュクシッデュクシッ
俺「ナオちゃんっやめっそこはだめっそんなところに膝を入れられたらっあうっ」
伯爵「俺くん、何故こんな所に?」
俺「前々からこの倉庫が気になってて、入ってみたんですけど、もう使われてなかったみたいです」
18 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:30:40.79 ID:8SN/nK870 [13/28]
伯爵「ふ~ん……」チラッ
何とか誤魔化せた……………かな?
なんか一瞬クルピンスキー中尉が『アレ』を見たような気がするが気のせいだよな、うん。
俺「それでナオちゃんといっしょにこの薄暗い密室にいたらこうムラムラーとして……って痛い痛い」
管野「///」デュクシッデュクシッ
伯爵「あははっ気持ちは分かるけど、抜け駆けは感心しないなー」
俺「ふへへすいません」
管野「おらっそろそろ昼飯の時間だろ? とっとと用意しろっ」ゲシッ
おっともうそんな時間か。
俺「それじゃあ隊舎に戻ろっか。突然抱きついたりしてゴメンね」
管野「お、おう。べ、別にそんなに嫌だったわけじゃねぇけど……」ゴニョゴニョ
伯爵「俺くん、今日の昼食は何だい?」
俺「今日は昨日から煮込んでおいたカレーライスにしようと思っています」
管野「マジか!? よっしゃ!」
19 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:36:12.00 ID:8SN/nK870 [14/28]
伯爵「へぇ、ナオちゃんのこの反応からすると期待出来そうだね」
俺「扶桑海軍伝統の海軍カレーですよ」
これなら何百回も作った料理だから、味には多少の自信はある。インドから取り寄せた各種スパイスもあるしね。
管野「朝だ~夜明けだ~潮の息吹~♪」
ナオちゃんがご機嫌になったようで良かった。昨日夜遅くまで苦労して作ったかいがあるってもんだよ。
しかし、ちょっと浮つきすぎじゃないか? 安全管理はしっかりなされているとはいえ、ここは軍事基地のハンガーだ。大小のモノが雑然とそこら中に散りばめられている。
管野「海~の女の艦隊勤務~♪」
その中には危険なものも多々あるわけで、あんまり呆けて歩いているとどんな危険に会うか――
管野「月月火水木金金~♪」
「あぶねぇ!!」
ガラララララララララララララ
管野「!?」
伯爵「ナオちゃん危な――」
俺「」ダッ
ガラガラガラガラガラ ザシャアアアアアアアアァァァァァァ
20 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:42:37.69 ID:8SN/nK870 [15/28]
「本当にいいのか? それを使えば、もう後戻りは出来なくなるぞ?」
「はい」
男の呆れ混じりのその言葉に、少年はにこやかに答えた。
「確かに我々としても試作機のデータ収集が出来る願ってもない機会だが……う~む」
「安心してください。たとえどうなってもそちらの責任を追及することはありませんから」
どう対処したらいいか分からず、しかめっ面で言葉尻を濁す海軍服を着た中年の男とは対照的に、まだ中学校も卒業していないであろう少年はそのにこやかな表情を一向に崩さない。
「君がそう言うならいいが……」
「本当にありがとうございます。これで俺も彼女の力になれます」
少年は心底うれしそうに快活にそう言った。
若者らしく、希望に満ち、未来への期待に胸を躍らせているのが目に見えて分かる。
「ナオちゃん、君のことは俺が守るからね」
22 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:48:13.41 ID:8SN/nK870 [16/28]
俺「………う…む……?」パチリ
伯爵「あっ目覚めたかい、俺クン?」
目を開けると、そこには見慣れた天井が広がっていた。
ケガが多いナオちゃんに連れだってよく来るここは、502JFW基地の医務室だ。
俺「あれ? 俺なんでこんな所にいるんだ?」
ナオちゃんとハンガー隅の倉庫にいた所までは覚えてるけど、何故俺は医務室のベッドに寝ているんだろう。
伯爵「倒れ込む鉄骨に巻き込まれて今まで気絶していたんだよ。覚えてないのかい?」
あー……ちょっとずつ思い出してきた。たしか、隊舎に戻る途中にハンガーに立てかけてあった鉄骨がナオちゃんの方に倒れ込んでき……て…
ガバッ
俺「ってナオちゃん!? ナオちゃんは無事ですか!?」
伯爵「ハハハッ安心しなよ。ナオちゃんは無傷だから」
俺「………良かった…」ホッ
伯爵「君があの時いち早く駆け寄ってかばってあげたおかげだよ」
本当に良かった……よくやったあの時の俺。
23 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:54:05.99 ID:8SN/nK870 [17/28]
俺「それで、ナオちゃんは?」
伯爵「隊長と事情聴取と現場検証中。君のそばからなかなか離れたがらなくてさ、連れていくのに苦労してたよ」
あちゃーナオちゃんには心配かけちゃったな。後で謝っとこ。
伯爵「それにしても、見直したよ俺クン」
俺「?」
伯爵「失礼かもしれないけどさ、ボクは君のことを大人しい子だなーって思ってたんだ」
それは間違ってないと思うけど……
伯爵「でも、さっき見た君の姿はボクが今まで感じていた印象とは違っていた。身を挺してナオちゃんを助けた君は男らしくてカッコよかった。お世辞抜きでね」ニコッ
俺「そ、そんな……クルピンスキー中尉ほどじゃないですよ///」テレテレ
うぅ……今までそんなこと言われたことないから何だかむず痒いな。
伯爵「いやいや、あの時の君は本当に格好良かったよ。ナオちゃんに危機が及ぶや否や真っ先に駆け出していったよね。まるで、」
中尉は真っすぐ俺の目を見つめて言った。
伯爵「ナオちゃんのために自分の命を投げだすように」ニコッ
俺「」ビクッ
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 18:54:56.84 ID:2kGaI59j0 [3/5]
伯爵鋭いな
25 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:00:09.27 ID:8SN/nK870 [18/28]
その目を見た時、背筋に冷たいものが走った。
まるで、心の奥底を覗きこまれているようで、どうしても隠しておきたい秘密を見透かされるようで、正直怖い。
伯爵「恋人を命がけで守ろうとする物語の主人公のようだったよ」クスクス
でも、怖かった半面、優しいその目で見つめられるのは、それほど嫌じゃなかった。
こうやってしっかり見ると、やっぱりクルピンスキー中尉はすごい美人だよなー………………
ってイカンイカン! 俺にはナオちゃんがいる! 煩悩退散……ロリッ子最高……幼児体型こそ至高…………
俺「ハハッそう言っていただけるととてもうれしいです」
伯爵「やっぱり君も物語の主人公に憧れたりするの?」
俺「はい。ナヨナヨしているけど、俺だって男なんです。自分の命を捧げて主君や恋人を守る英雄には憧れますよ」ニッ
ナオちゃんほどではないけど、俺も小さい頃からたくさんの物語を読んできた。
そして、その主人公達に思いを馳せ、そうなりたいと願ってきた。
しかし、ナオちゃんがウィッチになってからはその思いは形を変えた。
26 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:04:25.29 ID:8SN/nK870 [19/28]
俺「それに、物語の主人公くらいには強くないとナオちゃんの隣にいる男には相応しくありませんから」ニッ
あの強くてカッコイイナオちゃんのそばにいるには、彼女にとっての一番になるには、その彼女を守れるくらい強くなければいけない。
主人公みたいに強くなりたいじゃダメなんだ。
強くならなければいけない。ずっとナオちゃんといっしょにいるためには。
伯爵「……………そっか。やっぱりボクは君を見誤っていたようだね。君は思ったよりも手強い相手のようだ」
俺「絶対にナオちゃんは渡しませんよ」
伯爵「フフッライバルが強ければ強いほど燃えるというもの。さて、そろそろボクは行こうかな。君はもう一眠りするといい。傷はそれほど深くはなかったとはいえ、それなりの血は流したんだから」
俺「はい、ありがとうございます」トサッ
たしかに、妙に体が気だるい。
寝る前にナオちゃんの顔を見ておきたかったけど……まあまた起きた後でいっか。
伯爵「それじゃあおやすみ、俺クン」
俺「はい、おやすみなさい」ニコッ
27 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:06:52.88 ID:8SN/nK870 [20/28]
伯爵「あっそういえば言い忘れてたことがあった」
俺「?」
伯爵「たしかに今日の男らしい君は格好良かったけど、」
その時の中尉の顔は、年近い弟を慈しむ姉のように優しく、
伯爵「普段の君もナオちゃんに相応しいくらいには素敵だと思うよ」ニコッ
不覚にも見惚れてしまった。
伯爵「それじゃあ改めておやすみ、俺クン」
俺「………」
あー……不意を突かれたというか…思わぬ所を攻撃されたというか……
むず痒いやらうれしいやら自分の理屈が否定されて困るやら様々な感情が頭の中を回り続ける。
俺「………………寝よう」
俺の気持ちが変わらない内に寝てしまおう。
寝ればきっと、最近よく見る夢で決意が再び固まるだろう。
さっきの中尉の言葉で揺らぎかけた覚悟を、まどろみの中でハリボテでもいいから固めてしまおう。
覚悟を……
28 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:08:27.93 ID:8SN/nK870 [21/28]
今日のナオちゃん
ガチャッ
管野「俺ー起きてるかー?」
俺「」スースー
管野「伯爵の言った通り寝てやがるか……」
俺「」グーグー
管野「………」
キョロキョロ
管野「誰もいないよな……」
俺「」グースカ
29 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:10:41.55 ID:8SN/nK870 [22/28]
管野「………」モジモジ
俺「」スピー
管野「その……俺……? き、今日は助けてくれてありがとな」
ソーッ
チュッ
管野「~~~~!!////」バンバンバンバン
俺「んあー……い、痛いよナオちゃん…ムニャムニャ…」スースー
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:11:34.14 ID:2kGaI59j0 [4/5]
ナオちゃんきゃわわ
31 自分:毎日ナオちゃん[sage] 投稿日:2012/07/02(月) 19:12:52.14 ID:8SN/nK870 [23/28]
次回予告
ラル「お、おいこれは本当に服なのか?」
伯爵「フフッよく似合ってるよ、隊長」
ラル「こんなに布地が少ないものを服と呼ぶとは……扶桑はつくづく変わった国だな」ボインッ
俺「おおぅ……セクシーダイナマイツ……」タラー
管野「ケッデレデレしやがってよぉ……」ムスッ
下原「管野さん、実はもう一着用意しているんです。それで俺さんを見返してあげましょうよ」ヒソヒソ
管野「………」チラッ
俺「は、はみ出てる……!///」デレデレ
管野「…………………おう。あのスケベ野郎に目に物を見せてやる。持って来い」
下原「はい、分かりました」(計画通り……!)ニタリ
次回「毎日ナオちゃん」第10話 扶桑のトラディショナルなカーニバル衣装
最終更新:2013年02月06日 16:40