第一話の翌日 大西洋上空
~輸送機 操縦席~
「頭イテェ……」
出発の準備を時間までに終えてブリタニアから飛び立ち、
現在は大西洋上空を順調に飛行中だった。
なぜ大西洋に出るかといえば簡単だ。
504が設立される予定のロマーニャにいくまでの最短距離を飛ぼうと思ったならば、
ガリアを通過するのが一番だが、とうのガリア上空にはネウロイの巣が存在するため
それが出来ないのである。
なので航路は自然と遠回りになり、大西洋に一旦出て、ぐるっと迂回しながらアゾレス諸島を目指し、そこからアフリカのアレクサンドリアまで飛んで、ロマーニャ首都ローマを目指す。
「なんだ俺、飲みすぎで操縦なんてぞっとしないぞ?」
副操縦席に座る友がちょっかいをかけてくる。
心配しつつ操縦幹にいっさい触れようとしないあたりわざとやってるのが丸分かりだ。
「うるせぇ、誰のせいだ誰の。ホントはほどほどで済ませるつもりだったんだ。
それなのにドミニカ大尉が悪乗りしてどんどん酒をついで来るし、
途中でナンパしてきたおっさんぶっ飛ばして机壊すから
マスターに必死こいてあやまる羽目になったし、
そういうときに頼りのジェーン大尉はジェーン大尉で
いつの間にかこっそり酒飲んでやがったみたいでさ、
酔っ払って俺にしなだれかかってきたし、散々だったんだぞ。」
「はいはい、ご苦労様。というか最後のなんだそれ、無茶苦茶うらやましいぞ?」
「受け止めたら体中噛み付かれても同じことが言えるか?まだ噛み痕残ってんだぞ?」
なんで彼女、普段チワワなくせなんで酔うとああなんだろ。
「それはそれでうらやましい。」
変態め、そういえばこいつをぶん殴るのを忘れていたな、
次の寄港地でかならずぶん殴ってやる。
「ふぁ~、なぁ俺腹へらねぇ?」
「そうだな、出発前にちょっとごたついたから昼飯も食ってないし。」
そう誰かさんが荷物を積み忘れたおかげでな。
「うっ……悪かったよ。
俺のレコードコレクションを置いてくるわけにはいかなかったんだからさ、
多めに見てくれよ、な?お前の料理美味いんだからさ、頼むよ。」
何度目の多めに見てくれだそれは。
「答えは一言、NOだ。それに俺はいま操縦中、諦めろ。」
「え~~けち。」
「けちで結構。」
「ちぇ……そうだいいこと思いついた!」
そういうと友は後方のカーゴ室に入っていきしばらくするとゴムひもとレンチをもって
帰ってきた。
「……それでどうするんだ?」
「まぁ見てなって!」
そういって操縦幹にレンチを結びつけると、操縦幹が今の高度で保たれる位置でゴムで固定し、
「よっしゃ完成~!名づけて、自動操縦装置~」
妙な抑揚をつけてそれを名づけた。
「おいおい。そんなんで上手く行くわけないだろう……」
「まぁまぁ、ほらためしに操縦幹をこっちに切り替えてみろよ!」
正直嫌な予感しかしない。
がやらないとこいつはいつまでもわめきたてるだろうし、仕方ない。
「……ユーハブコントロール。」
しぶしぶ操作を副操縦者に切り替える。
すると意外なことに輸送機はなんの異常も見せずに直線飛行を続けた。
「よっしゃーー!俺ってば天才!!」
「うそだぁ……」
「嘘なもんか!ほらほらキッチンにいってなんか飯作ろうぜ!」
友が俺を引っ張り、俺たちは操縦席からでていった。
~輸送機 食堂~
操縦席をでた俺たちは食堂に向かった。
食堂といっても簡易的なキッチンと机、椅子が置いてある程度のこじんまりとしたものだ。
通常、輸送機にそんなものはついてない。
だがこの輸送機は普通ではないのだ、
こいつはもともと俺と友が、いつか航空会社を開こうとして学生時代から
金と資材を溜め込んで作ったものなのだ。
が、状況が変わり、俺たちが軍に入隊した際に、
友がどうやったのか(想像は着くけどあまり気持ちのいいものじゃない)、
俺たちの専用機として軍に認めさせていま現在にいたるというわけだ。
あとこの輸送機を設計したのは友だ。
話がそれたが、そのおかげで材料さえあればちょっとした料理ならここでできるのだ。
ちなみに友は料理はできない。
「う~ご飯ご飯、いまご飯をもとめて食堂にやってきた俺はごく一般的な整備兵。
しいて違うところをあげるとすればたいていのものは何でも作れちゃうってとこかな?
名前は友。そんなわけで俺はこの『ケティ』の食堂にやってきたのだ。」
『ケティ』とは輸送機の名前で、当然ながら友が命名した。
なぜケティなのかと俺が尋ねたところ、
「カタリナの改造機なんだからケティに決まってんだろJK」
とわけのわからないことを言われたのでシメたのはいい思い出である。
「なにいってるです?友さん。」
「あれ、ジェーン大尉、なんでここに?」
食堂のキッチンには客室で寝ているはずのドミニカ大尉を世話していたジェーン大尉がいた。
「あ、俺さん。えっと、おふたりともお昼ご飯まだですよね?
せっかくだから何か作ろうと思って。……ところで操縦はどうしたです?」
「あ~まぁ自動操縦に切り替えましたんでしばらくは大丈夫なんですよ。」
友め、調子のいいこといって、あんないんちき操縦がばれたらきっと腰抜かすぞこのひと。
「そうなんです?あ、じゃぁこれ、どうぞ。」
そう言って彼女は皿に盛られたホットドックを差し出してくれる。
「ウホッ、いいホットドック!」
ベシッ!!
なんかムカついたので友の頭に空手チョップを落とす。
「いい加減にしろ、わざわざすみませんね大尉、ありがたくいただきます。」
「召し上がれ、なのですよ♪」
ホットドックを手に取り齧り付く俺と友、ゆっくりと良く噛んでその味を確かめる。
全体的にほのかに甘くその後ピリリとした辛さがやってくる、
後味は清涼感があり次の一口がよく進むそんな味だ。
「味のほうはどうですか?」
感想を求めるジェーン大尉。
「……ウマイ!!(テ~レッテレ~!)」
目をこれでもかと見開きそう叫ぶ友、変な効果音が聞こえ、その後ろの魔女の幻影が見えた。
ベシッ!!!
「ノォォォオオ~~~!!」
俺はさっきより強くチョップを落した、
友はホットドックを床に落とさないようにしながら転げまわる。器用なやつだな。
「だからいい加減にしろ、まったく。
ああ、すみません、とってもおいしいですよジェーン大尉。」
「よかったです~。
実家の近所で売ってたホットドックの味を再現してみようと思ったんですよ!」
「なるほど、だからソースの味が普通のケチャップとは違うんですね。
いや、これはなかなか……」
ほんとおいしい、こんなのが近所にあったら毎日通いたくなるかも。
「なんか良いにおいがするな。」
「あ、大将。起きたですか?」
「まぁね。それ、私にもひとつくれ。……うん、うまい。」
「ありがとうございます、大将。」
昼食をとって少しした頃、ドミニカ大尉がどれくらいのところまで来たのかを聞いてきた。
その質問に俺はジェーン大尉に入れてもらったコーヒーを片手に答える。
ちなみに友はいまだに床に転がっていて、彼が持っていたホットドックはドミニカ大尉の腹の中に消えていった。
「だいたい1/3ってとこですかね。ガリアのネウロイの巣からは十分離れたから、
あとはまっすぐ最初の目的地のアゾレス諸島のラジェス航空基地に向かうだけです。
あ、ジェーン大尉、コーヒーありがとうございます。」
「どういたしまして、ですよ。」
花の咲くようなジェーン大尉の笑顔に見惚れつつ、
照れを隠そうとして俺はコーヒーを飲もうと口に当てた。
その時だった。
ガゴン!!
突然機体がバランスを崩して中の人間をシェイクしだす。
「のわっ!あちっ!!」
「きゃぁ!」
突然のことに何かにつかまることができなかったジェーン大尉が俺にぶつかり
そのまま俺ごと壁に叩きつけられる。
「あちゃちゃちゃちゃあああぁぁああ!!」
俺と彼女がもっていたコーヒーの中身は全部、床で寝転んでた友に降りかかり、彼は
あまりの熱さに叫び転がる、が、だれも彼の心配をできる状態じゃない。
しばらくすると揺れが少しだけ収まりだした。
「う、つぅ~~~、乱気流にでも巻き込まれたかな?」
俺は壁に叩きつけられた痛みを堪えながらあたりを見回すと、唯一揺れに耐えきったドミニカ大尉がこちらに手を伸ばしていた。
「俺、大丈夫か?」
「ドミニカ大尉、ええ何とか無事です。にしても大尉さすがですね、あの揺れでも無事だ
ったなんて。」
差し出された手を取り、俺は床から立ちあがる。
「なに、鍛えてるからな。ところで……ふたりともいつまで抱き合ってるつもりだ?」
「へ?」
ドミニカに指を指されて俺は視線を下に向ける。
「あ、あの俺さん、その///////」
するとそこに真っ赤になってかちこちに固まってしまったジェーン大尉の姿を確認した。
心なしか湯気が立ち上っているようにも見える。
「おいそこのふたり!
この非常時になにやってんの!?ってか俺、お前いますぐそこ代われ!!」
復活した友がそう叫んだことでようやく正気にもどった俺とジェーン大尉が、
ガバッっと音をたてて離れる。
「あ、あああの、私その……ごめんなさい、です///」
「あ、いや///
その俺こそ、ほんと、申し訳ないです!!」
「いえ、俺さんは悪くありません、巻き込んだ私が悪いんです!」
「いや俺が」
「いいえ私が」
お互いに自分が悪いと主張して謝りあい、かえって収拾が着かなくなってしまった。
その光景に呆れたドミニカ大尉が仲裁に入る。
「どっちが悪くてもでもいいが俺、操縦席に戻らなくてもいいのか?」
「!そ、そうですねすぐ戻ります!!ジェーン大尉、本当にすみませんでした!」
「あっ……」
そう言い切って俺は操縦席に向かってその場を逃げだした。
Side ドミニカ
「くっそ~!いい思いしやがって、なんであいつばっかり!!」
「日頃の行いのせいじゃないか?少なくともあいつは常日頃、お前みたいに女子更衣室やシャワールームを覗いたりしてないからな。」
地団太を踏む友を見ながら私はこいつの日頃の行いを指摘してやる。
「うぐぅ!で、でもやっぱりあいつだけなんてうらやましすぎるし、
こうなったら……姐御!!」
「なんだ?」
「傷ついた俺の心を慰めて!」
いうやいなや友は素早い動きで私に抱きつこうとするが、
「……ふんっ」
スパァアアアン
「ぐぼろふぁあ!!」
それより速く私が強烈な右ストレートが友の顔に叩ききこんで、彼をゴム鞠のように吹き飛ばす、彼は壁にぶつかってその場に崩れ落ち、そして動かなくなった。
「調子に乗るな馬鹿。さてと、ジェーン、さっさとこの場を片付け……おいジェーン?」
「ぽー///」
友を粗大ゴミに変えたあと、私派はジェーンに声をかけたのだが、
彼女は先ほど俺が消えていった操縦席の方を見ながら、ぼーっとしていた。
おおかた俺に抱きとめられたときの感触を思い出してるのだろう。なんかむかつく。
「ったく、おい、ジェーン・ゴットフリー大尉!しっかりしろ!!」
「はっ!あ、あれ、大将?呼びました?」
「いや惚けてないでさっさと立ち直れ。それとこの惨状をどうにかするぞ。」
「ふぇ?うわぁすごいことになってるです……それに友さん大丈夫ですか?」
「ほっとけ、そのうち復活するさ。」
そういって私たちふたりで食器とコーヒーが散乱してしまった食堂を掃除した。
それにしても旅の最初からこんな出だしとは、先が思いやられるな。
最終更新:2011年02月16日 21:13