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第三話:顕微鏡級の反乱 前編

~アゾレス諸島 ラジェス・リベリオン航空軍基地~

ケティの中でのすったもんだの騒ぎの後、なんとか無事に俺たちはこのラジェス航空基地にたどり着いた。

この諸島の持ち主は本来ポルトガルだったのだがヨーロッパがネウロイに占領される際、
国が消滅してしまったために、暫定的だがリベリオン合衆国がこの地のオーナーとなっている。

「やっと着いたな。あぁクソ、頭イテェ……」

ケティから降りるなり頭を抱える友。
その彼にドミニカ大尉がなにかを探るように声をかける。

「大丈夫か友?」

「わかんねぇ、気がついたらカーゴで寝てたんすよ。それに頭が割れるように痛くて……
 ねぇ姐御、俺どうしたんでしょ?」

「……覚えてないのか?あと姐御はやめろ。」

「ええ、まったく、確か操縦室でて食堂に向かったはずだったんですけどねぇ。
あと姐御は姐御です。これは譲りません。」

「まぁ覚えてないなら、それならいいさ。そのほうが都合がいいし。」

「?」

都合がいいってドミニカ大尉、あなた何をしたんですか。


「それで俺、ここにはどれくらいいるんだ?」

「そうですね。給油と点検。それに休息を含めて明日の朝にはいけるかと。
 ああ、それとここの基地司令が挨拶をしたいと言ってきましたので、
それの応対が最初ですね。補給許可のサインももらわなくちゃいけないですし。」

「そっか……なぁ、かったるいから私はパスしてもいいか?」

「はぁ、向こうは大尉たちをご指名なんですが……まぁいいですよ。
基地司令にはうまく誤魔化しときますから。
 ああ、友、お前はここの整備班と一緒に機体の整備な。」

「了~解。」

「ん、じゃぁふたりとも頼んだ。ジェーン行くぞ。」

「ふぇ?大将、いくってどこにですか?」

「街。さっき空から見た限りじゃけっこう大きなとこだったからな。
 パブの一軒ぐらいあるだろ。」

「はぁ、でもそうなると基地司令に挨拶に行くの、俺さんだけになっちゃいますよ?」

「なんだジェーン、俺とふたりっきりになって機内での続きでもするのか?」

「な、なにをいうですか///そんなことしません!
 まったく大将はすぐそうやって私をからかうんですから。」

ハムスターのように膨らませた彼女の頬をドミニカ大尉は指でつついてしぼませる。

「ふふっ、ほらほら、むくれるな。じゃぁふたりとも、後でな。」

そういって彼女達は基地の外へと去っていった。

「はぁ、誤魔化しきれるかな?」

先方を怒らせなければいいけど、やれるだけやってみることにしよう。

~基地 司令官執務室~

「おお、良く来てくれたな私がここの基地司令ベック大佐だ、
遠路はるばるこの田舎基地にようこそ。
む?ウィッチの娘たちはどうしたんだね?一緒じゃないのか?」

「はじめまして大佐、申し訳ありません、彼女達は輸送機になれてませんで、
体調がよろしくなかったようなので休んでもらってます。
ああ、それとこちらが、今回我々が要望する補給品の目録になります。
サインをお願いできますか?」

「ふむぅ、残念だな。まあいい、とりあえずかけてくれたまえ、
 少々話しときたいことがあるのでな。」

「はぁ……では失礼します。」

そういって俺は執務室の高価そうなソファーに腰掛ける。

大佐は棚からコーヒーセットを取り出すと慣れた手つきでコーヒーを入れて行く。

「あ、どうもありがとうございます。」

「なにかまわんよ、私の趣味だからね。
 さて、君は統合戦闘航空団という奴についてどれくらい知っているかね?」

「えっと、各国のエリートウィッチを一所に集めて、
ネウロイに対抗する戦力の要とする。という程度ですが……」

俺はとりあえず出発前に調べたことを話す。

「ふむ、まあそんなところだ。
 もともとはスオムスでおこった対ネウロイ戦争、
通称「冬戦争」のさなか、各国のつまはじきなウィッチたちが集まった部隊が
多大な戦果をあげ、戦況に多大な影響をもたらしたのがきっかけだ。」

そういって大佐が俺に説明してくれる。
スオムスの義勇兵の話は俺も知っている。たしか「いらん子中隊」だったか。

「そんなわけで連合国軍上層部はこいつの戦略価値を認め、各地に同様の部隊を
 設立することに踏み切ったわけだ。順調に行けば、この戦争はもうすぐ終結する
 とまでいわれている。」

「はぁ……」

そこで大佐は言葉を区切り、コーヒーを煽る。
それにしてもなぜそんなことをわざわざ一介の整備兵にすぎない自分に話す?

「大佐、質問してもよろしいでしょうか?」

「うん?どうした?」

「そのことが自分になにか関係があるのでしょうか?
 このとおり自分はただの整備兵に過ぎないものなので……」

「ああ、そういうことか、なに、関係があるといえばある。」

「と、いいますと?」

「邪魔だとは思わないかね?」

「……なにがでありますか?」

きな臭いにおいを感じ取って俺は身を固める。

「戦争を終結させてしまうほどの力、それが邪魔だと君は思わんかね?」

「戦争が早く終わるのは普通よろしいものではないでしょうか?」

「普通はな、だが我々にとっては違う。」

「……」

俺は腰の拳銃を確認しようとこっそりと手を伸ばすが、
さきほど入り口の衛兵に預けたのを思い出した。

「やめておきたまえ、妙なことを考えないほうがいい。
来るときに見ただろう?
 部屋の入り口にはトンプソンをもった衛兵がふたりいる。
 無駄なことだよ。」

「……あなたはネウロイ共生派ですか、大佐?」

『共生派』

元々はどこにでもいるような環境保護を訴えている連中だったのだが、
ヨーロッパが陥落しそうになったころから、
ネウロイのことを自然を破壊し好き勝手し放題にしてきた人間を罰するために遣わされた神の使いもしくは星の意志と崇め、ネウロイとの共存、もしくは殉死をとなえるカルト集団だ。
人類の裏切り者である彼らは見つかれば即刻処刑されることになっているが、
こいつらの根は深く、政界はもちろん経済界や軍部にまでその
影響力をもっている始末に終えない連中だ。

「共生派?ふんっ、あんなカルトどもと一緒にしないでくれたまえ。
 人類全てがネウロイに屈するべきという思想など反吐がでる。」

「……ではあなたは何者なんですか?」

俺はなんとか状況をひっくり返せないか考えながら尋ねる。

「そうだな、いま戦争が終わってしまっては困る者……だよ。」

そういって彼は俺に拳銃を突きつけた。

「っ……なぜ、困るのです?」

「わからんかね?
この戦争、他国はどうあれ我がリベリオンには多大な利益をもたらしている。
武器弾薬に食料の優位な取引、各国の領土、植民地の合法的割譲など様々だ。
そしてこの利益はまだまだ成長しつづけている。
もし、いますぐに戦争が終結することがあっては我が国にとって大きな損失だ。
私はそれを防ぎたい。
そのためには統合戦闘航空団などというものは邪魔でしかないのだよ。
それに君は別に一介の整備兵というだけではないだろう?」

「!……なんのことでしょうか大佐。」

なぜを俺の秘密を辺境の基地司令が知っている?
あのことを抹消するようにできる限りの手を打ったはずだ、それなのに。
内心の焦りを必死で隠し無表情を保ちながらごまかそうとする。

「しらばっくれる必要はないだろう?君はあの「大佐。」…ん?」

「ここにいるのはただの整備兵兼輸送機パイロットの俺軍曹です。
それ以外の何者でもありません。」

「……そうか、まぁいい、それで君は私の考えに賛同してくれるかな?」

「お断りします。
一人の人間として、また彼女達の友人として、私はあなたに賛同できません。」

「残念だな、
すまないがここまで聞いてしまった以上死んでもらう。
 当然ながら君と一緒に来た者もだ。
 君たちはここまで来れず、途中で事故を起こし墜落した。
 そう上層部には報告しておくさ。
 ウィッチについては……まぁ、別の使い道があるから生かしておこう。
美少女というものは資産家どもにはいい値で売れるのでね。
特にウィッチは世間的には保護されているから希少で需要も高い。」

「下衆が……」

「なんとでも、弱者の罵りほど愉快なものはない、おい!」

大佐がいやらしい笑みを浮かべたあと呼ばれた入り口の衛兵が中に入ってくる。

「はっ!」

「お客様をスイートルームに案内しろ。」

「はっ!」

「では軍曹、リゾートを楽しんでくれたまえ。
 すぐに君の友人もそっちに向かわせよう。」

「彼女たちはもうこの基地にはいないぞ、それに俺の友を舐めないほうがいい。」

「なにどこに行こうと逃げられん、この島は完全に私の支配下だ。
あとでかならず君に合わせてやる、
獣人(ウィッチの蔑称)らしく首輪をつけてやってな。連れて行け。」





――俺がベック大佐に捕らえられたのと同じ頃――


~街~

「パブ、見つからないですねぇ」

基地司令への挨拶を俺さんに押し付けた私たちは街に酒場を探しに来ています。
だけどこの街で見つけたパブのほとんどが未成年お断りの店でばっかりで、
さっきのでもう五件目、さすがにもう無理かもしれないです。

「大将~。もう、あきらめて基地に戻りますです?」

「却下、一軒ぐらいあるはずだ、こうなったら絶対見つけてやる。」

普段だるそうにしている大将ですが、
こうみえて一度スイッチが入ると絶対にあきらめません。
それが戦闘では頼もしいのですが……日常では斜め上に向かっていくことが珠にキズなのです。というかマジで自重してください。毎度毎度巻き込まれるのは勘弁なのです。

「はぁ……こうなった大将は止められないですからねぇ……」

「褒められたと受け取っておくぞ……っ!」

「どうしたです。大将?」

「シッ、静かに……3人か。」

「ふぇ?」

「こっちだ、行くぞ。」

「え、大将!そっちは裏路地ですよ?」

突然の大将の変化に戸惑った私が尋ねると、大将は私の手をとって早足でこの場から
立ち去ろうとします。

「おおっと、おふたりさん、ちょっとつきあってもらえねぇか?」

振り向くとそこには悪そうな顔をした3人組の男の人たちがいました。

~裏路地~

状況が読み込めてないジェーンを引っ張って路地裏を通って尾行者を撒こうとしたが
向こうの速度が速く追いつかれてしまった。

「悪いが間に合ってるよ。他をあたるんだな。」

「それは困ったなぁ、無理矢理にでも付き合ってもらわにゃぁならねぇな。」

「なぁ、アニキ、こいつらヤッちゃってもいいのか?」

「お、だったら俺そっちの金髪な。」

「おいおい、おまえロリコンか?
男なら当然そのとなりのナイスバディなネェちゃんに決まってんだろうが!」

ギャハハと下卑た笑いをあげるチンピラたちに、私の嫌悪感は一気に全開へと振り切られる。

「アニキはわかってねぇんですよ、
なぁお嬢ちゃんいっしょに気持ちいいことしようぜ、
おじさんがしっかりとやさしくしてやるからよ。」

チンピラのひとりがジェーンに歩み寄ってくる。

「ほらほら、俺様がきゅーとなその胸、もっと大きくしてやるぜ?」

そういって手をワキワキと開閉しながらジェーンに手を伸ばしてきた、
それを阻止するために奴の顔に拳を叩き込もうと体勢を整えた、が

ブチィッ!!

それよりもさきに突然何かがキレる音があたりに響いた。

「…れが」

「んん?」

「誰が!ひんそーでひんにゅーでちんちくりんですかぁーーー!!」

自らのコンプレックスを刺激されぶちキレたジェーンが
素早く腰のポーチから小さな機械とりだすと手に持ったソレをチンピラに押し付ける。

「あばばばばばばっ!!」

押し付けられたチンピラは機械から流れ込んだ電流によって感電し、その場に崩れ落ちる。

彼女が使った機械はいぜん男に酒場で絡まれた際に対抗措置として私が俺に作らせたものだった。
詳しくはよく分からないが魔法力を流し込むと中に封入されている霊石が共振して、
強力な電圧を作り出して相手を感電させる仕組みらしい。

「な、こいつなにをしやがった!!」

「シッ!」

思わぬ反撃に動揺した奴らの隙をついて私はリーダー格の男の懐に飛び込み右の拳を振りぬき、即座にジャブの連発に繋げて男の体勢を崩すとアッパーで顎を打ち抜いて男に宙を回させる。

「な、なんなんだよ!こいつ!!なんで女がこんな強えんだよ!!」

「なにってウィッチさ、まぁこんな田舎じゃ知らないのも無理はないか?
 まぁなんにせよ」ゴキリ、ゴキリ

「ヒッ!?」

リーダーを瞬殺され、すっかり怯えきってしまう最後の一人、いい気味だ。

「小便は済ませたか?神様にお祈りは?ガタガタ震えて命乞いする心の準備はできたか?」

「ヒィイイ!だ、誰か助けてくれぇえええ!!」

「死ね。」

とどめの一撃の為に拳を振り上げた。その時、

ピィーーーーー!!

「そこまでだ、私は基地憲兵隊隊長、リンチ大尉だ。
これ以上の狼藉はやめてもらおうか。」

そういってぞろぞろと仲間を引き連れた男が制止をかける。
彼の左腕には「MP」の二文字が入ったバンドが留められていた。

「……憲兵が動くにしては随分早いんじゃないか?」

「民間人に暴行を働いている軍人がいるとの通報があったのでね。
 そういうわけで大尉、現行犯で逮捕させてもらおう。」

「そんな!さきに手を出してきたのはこのひとたちですよ!!」

「私らはそれに抗ったに過ぎない。正当防衛だとおもうんだが?」

「ふむ、それを証明できる人間はいるかな?」

「えっと……それは……」

「いないのか?そこのおまえ、どうなんだ、お前たちから彼女達に
 暴行を加えたのか?」

リンチがチンピラに尋ねる。

「めめ、滅相もない!
こっちはなにもしてねぇのに突然アニキたちがノサれちまったんでさ!」

こともあろうにチンピラが嘘の証言をする。

「ふむ、たしかにその言葉は現状に一致するな?つまり悪いのは大尉、君たちだ。」

「そんなっ、そのひと嘘をついてるです!それにそれだけで悪者扱いなんて横暴です!!」

「なんにせよ詳しくは基地で聞こう。連れて行け。」

彼の命令によって部下達がドミニカたちの腕に手錠を嵌め、連行していく。
その姿を見送ったあと、リンチがチンピラに金を掴ませていった。

「今回の報酬だ。今見たことは全部忘れろ。それと次はもっと上手くやれ。
 あまり失態が過ぎると司令の機嫌しだいでは君たちなどどうにでもできるのだからな。」

「へ、へい。」

「ではな……」

そういってリンチはその場を後にし、ドミニカたちが乗せられた車の助手席に
座ると部下に基地まで戻るように指示をだしたのだった。。

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最終更新:2011年02月16日 21:19
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