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魔女と鋼鉄の巨人5

8・俺「ストライクウィッチーズだ」>>104-117,267-309



第五話『マーチを歌おう』


~501戦隊基地 格納庫~

「脚部接続完了、魔道エンジン点火スタンバイ!」

「魔法力伝導率が変化しているので、加速のときは注意を……」

501では定期的にウィッチ同士による模擬戦闘を行っている。

今日はその模擬戦のため、ここ格納庫では整備班とウィッチが、
おのおのの機体の発進準備のために忙しく動き回っている。

「こちら坂本、紫電改、出るぞ!」

整備の行き届いたストライカーは快音を立てて彼女達を空へと舞い上がらせる。
着々と発進して行くウィッチたち。

残るは芳佳とリーネそしてペリーヌの3人だった。

芳佳は整備兵から注意事項を聞きエンジンをスタートさせようとする。



「脚部接続問題なし、魔道エンジンエンジン点火、軍曹どうぞ!」

「はい!……って、あれ?」

魔法力を流し込んでいるはずなのにエンジンがかからない。

「芳佳ちゃん?」

「どうしたんですの、宮藤さん?」

ペリーヌとリーネが心配して声をかける。

「う、動かない?……だ、大丈夫!も、もう一回やれば!」

そういって芳佳はもう一度は魔法力を流し込む。

しかしストライカーはうんともすんともいわない

「発進作業中止!トラブルだ!」

担当の整備兵の叫び声が響いた。




~夜 501戦隊基地 サロン~

「芳佳が飛べなくなった?」

業務を終え、消灯時間までサロンでくつろいでいた俺は、
美緒からことの顛末を聞かされ驚く。

その手には先ほどまで読んでいた『撃墜王戦闘録―5章―』が握られていた。

「ああ、無理をすれば飛べるが……あれは飛ぶとはいえん。
 ここ数日間、宮藤の調子がおかしかったんだが、今日になってより酷くなったよ。」

そういって美緒はここ最近の思い出を掘り起こす。

いままで天性の才能もあってストライカーを手足のように使えていた芳佳は、
最近になって急に自分の思い通りにストライカーが動かせなくなった。

日を追うごとにその機動に精彩を欠くようになり、
そうして今日になってとうとうストライカーの起動すらおぼつかなくなってしまった。

当然、今日の模擬戦は訓練にすらならなかった。




「魔法力が枯渇したわけでもないんでしょう?」

俺が確認する。

「ああ、体は健康体そのもの、使い魔とのリンクは切れていないし、
 固有魔法の治癒は使えている。
 だがなぜか、ストライカーだけが動かない。」

「加えてストライカー自体には問題は見当たらないと。」

手を口元にあて考え込む俺。だが解決方法は出てこなかった。

「正直に言って、私にはお手上げだ。
 魔法に詳しい専門家でもいれば何か分かるかもしれんが、
 生憎とそういった知己はいない。当面、宮藤には飛行禁止命令をだしたよ。」

そういって美緒はため息をついた。


「そうなんですか……ところで芳佳はいまどこに?」

俺は芳佳の行方を尋ねた。

「わからん。夕食のあと、消えるようにどこかへいってしまったからな。
 ……すまんが俺、宮藤を探してきてくれんか?

 あいつはお前によく懐いているし、できれば、慰めてやって欲しい。」

すまなさそうな顔で俺に頼む美緒、

そう頼まれては断れないな、と俺は内心で苦笑し、その提案を受けた。





~501戦隊基地 浜辺~

「ふんっ!ううっ・・・・・・はぁっ、はぁっ」

静かに波が打ち寄せるこの浜辺で芳佳はひとり、
箒に魔力を込めて飛ぼうとしていた。

数ヶ月前、自分を特訓してくれたフェラーラの言葉を思い出して、
一所懸命に箒と一体化しようと集中する。だが……

「くぅっ、ううう……ふんっ、わっ、きゃああっ!」

込められた魔力が暴発して箒がバラバラになってしまった。

途方に暮れる芳佳。何度挑戦しても箒は彼女の期待に応えてくれなかった。

「どうして……なんで飛べないの?わたし、どうしちゃったの?」

あんなに気持ちよく空を飛べていたのに、いまの芳佳はその感覚すら忘れかけている。

「わたし、もう飛べないのかなぁ、ぐすっ、もうだれも、守れないのかなぁ。」

目に溜まった涙を堪えようとするが上手くいかない。

その時、茂みを掻き分けて俺が姿を現した。



「こんなところにいたのか、探したぞ、芳佳。」

「お、俺さん……なんで、ここに……?」

突然の俺の出現に驚く芳佳、その目は充血して真っ赤になっている。

俺はそれを見て取ると、無言で芳佳のところまで歩み寄り、
彼女を自分の腕の中に引き込んだ。

「お、俺さん//…あの、」

「泣きたいなら、泣くといい、そうすれば気持ちも楽になるさ。」

芳佳の言葉をさえぎってそう言うと、
俺は子供をあやすように彼女の背中をなでてやる。

俺の言葉と自身を包んでくれる暖かさに芳佳はついにこらえきれなり、

「……うう、ひっく、う、うわぁああああんん!あぁああああ!!」

俺の胸のなかで声を張り上げて、泣いた。


「落ち着いた?」

俺の胸のなかで、ひとしきり泣いた芳佳は落ち着きを取り戻していた。

「はい、あの、ありがとうございました。」

まだ目は赤いままだが、
先ほどより表情が明るくなったのを確認してから、俺は芳佳を腕の中から解放した。

「あ、服、汚しちゃいましたね。洗わないと……」

自分の涙でぬれた俺の服をみて芳佳がそういった。

「いいよ、気にしなくても、それより飛べなくなったんだって?」

俺は手をふりながら尋ねる。芳佳の顔がまたすこし曇る。

「そうなんです。他の魔法はつかえるのに、飛ぶことだけができなくて……」

そういって芳佳はだまってしまった。


「……そうだ、芳佳、歌を歌おう!」

俺のいきなりの発言に面をくらう芳佳。

「歌……ですか?」

「そう、悲しいときにはあの歌を歌うんだ。

 『幾千万の私とあなたで あの運命に打ち勝とう』

ってね。そうやって歌っていれば気持ちも晴れてきて、
 いまがどんな状態でも、明日には笑っていられるさ。」

俺が自信たっぷりに言う。

「そう、そうですね、私、歌ってみます!」

「よし、じゃあいっしょに歌おうか、せーのぉ……!」

夜の浜辺でふたり、お腹の底から声をだして歌った。

最初は気が沈んで戸惑っていた芳佳も、最後のほうには笑顔をとりもどしていた。


「今日はどうも、ありがとうございます。
おかげでわたし、なんか元気が沸いてきました。
今日はだめだったけど、明日もあきらめないで挑戦してみようと思います!」

俺はどういたしましてといいながら腕時計を見る。

「役にたったなら幸いだ。さ、もう戻ろうか、消灯時間もとっくに過ぎてるし。」

「あ、そうですね。……あの、俺さん……」

「ん?」

芳佳がちょっと俯きながら、上目づかいに俺に声をかけた。
その顔にはうっすらと朱が入っている。

「俺さん、ってなんだかお父さん、ううん、お兄さんみたいですね。
一緒にいるとあったかくて……わたし、そんな俺さんのこと、大好きです//」

そういって彼女ははにかんだ。その表情に俺は見とれてしまう。

「じゃ、じゃあ、わたし、もう行きますね。おやすみなさい!!」

そういって芳佳は全力で走り去ってしまった。

「あ、ああ、おやすみ……」

取り残された俺はしばらく硬直したままだった。


~501戦隊基地 会議室~

「救援要請、ですか?」

朝食のあと俺は芳佳と彼女を心配してやってきたリーネと共に、
格納庫にて、ストライカーで再び飛ぼうと挑戦した。

結果は昨日となんら変わらなかったが、芳佳は落ち込まず、
また後で挑戦してみるといった。

そんなとき3人は美緒に呼び出され今に到るというわけだ。

「ああ、スエズを通過し、この地中海までやってきた扶桑艦隊で事故があったらしい。
 至急、治療魔法が使えるウィッチの応援が必要になったので、
 ウチにお呼びがかかった訳だ。」

ミーナが説明を引き継ぐ。


「時間の問題から、輸送機では間に合わないの。 
 ストライカーでいければいいのだけどとうの宮藤さんがこんな状況ですし、
 俺少尉には彼女を艦隊旗艦・大和までつれていってあげて欲しいのよ。
 お願いできるかしら?」

「なるほど、士翼号で芳佳を抱えていけばいいんですね?
 了解しました、引き受けましょう。」

俺は事態を把握すると要請を承諾した。

「あ、あの、私も一緒に言っていいですか?包帯ぐらいなら私も巻けますし……」

芳佳が心配なリーネが同行の許可を求める。

「わかった。いいだろう。万が一ということもあるしな。
 俺、ふたりを頼んだぞ。」


~地中海 扶桑艦隊まで10km~

「見えてきたな、あれが扶桑艦隊だ。」

士翼号の視覚センサーが扶桑艦隊を捉える。

「大きい……あんなに大きな戦艦があるんですね。」

リーネが感心した声を上げる。

「あれは艦隊旗艦・大和だ。
 艦隊陣容は…戦艦3、空母2、巡洋艦2、駆逐艦12か。
 なんにしても、よくこんなに動かしたものだな。」

いくら前線国家ではなく国力には余裕があるとはいえ、
これだけの部隊を派遣するのは相当な金額がかかっているはずだ。

「あ、あれ見てください!」

士翼号の腕に抱き抱えられた芳佳が指をさす。

その指の先では空母・天城の甲板に立つ黒く彩られた3機の士翼号の姿があった。

「あれは、先行量産型だな。
 研究所の連中、出来上がったやつでさっそく部隊行動の実地試験を
 させに来たというわけか。」

そういって、3人は戦艦・大和の後部デッキに着艦した。




~大和艦内 特設医務室~

「くそぉ、痛ぇ、いてぇよぉ。」

「モルヒネを、モルヒネをくれ……」

「しっかりしろ、すぐに助けてやるから頑張るんだ!」

もとは物置だったと思われる部屋には、先の事故で負傷した兵士達が
壁に、床にと寝かされていた。衛生兵と軍医が必死に彼らを治療する。

「こちらです、宮藤さん。」

芳佳たちが案内の軍曹に連れられて、部屋に踏み込む。

「ひどい……」

リーネが手で口を押さえながら声を漏らす。
俺たちに気づいた軍医が駆け寄ってきた。

「ああ、君が連絡のあったウィッチだね。
……こっちに一番の重症者がいる。来てくれ。」

芳佳が軍医について行く。俺とリーネは衛生兵の指示を受けて、
それぞれにできることをはじめた。


それから十数分後、芳佳はその強力な治癒魔法を使って、次々に兵士達を治した。

その腕前は艦隊所属の医療ウィッチも舌を巻くほどだった。

「(やはり、魔法力になんら問題は見られない。
  むしろ増大しているのではないか?
  もしかして、芳佳が飛べなくなった理由は……)」

衛生兵を手伝いつつ、俺は芳佳を観察していた。
そして、彼女の身に起こっている何かが掴めそうなそのときだった。

「ご協力ありがとうございます少尉どの、曹長どの。それに宮藤さん。
 つきましては艦橋で司令がお待ちです。こちらへどうぞ。」

ここまで案内してくれた軍曹がそういってきたため、
俺は先ほどまでの思考を後回しにすることにした。




~大和艦内 艦橋~

大和の艦橋で、他の士官達とは気迫のことなる人物が俺たちを迎えてくれた。

「はじめまして、私は山本 五十六 海軍大将だ。この遣欧艦隊の司令をやっとる。
 今日は私の部下達を治療してもらってすまなかった。彼らに代わり礼を言おう。
 おお、それと彼女を連れてきてくれた少尉たちにも礼を言わないとな。」

『はい!ありがとうございます!!』

ビシリと敬礼をする俺とリーネ、芳佳があわててそれにならった。

「ふっ、楽にしてくれてかまわんよ。
 それにしても艦長が外部に救援を求めると言ったときは驚いたが、
 賭けてみてよかった。おかげで誰も死なずにすんだよ。」

「まことに恐縮であります閣下。」

杉田艦長が頭をさげる。

「なぁに、わたしは賭け事が大好きなんでね。
 ところで、このあと君たち3人には昼食をご馳走したい。
 わが大和が誇る最高の調理人の飯だ。どうかね。」

山本がそういって俺たちを昼食にさそったその時だった。


「電探に感あり!何者かが我が艦隊に向けて接近しつつあります!!」

「何者かとは何だ、報告は明確に行え。」

「本艦隊前方、2時の方向上空より、高速で接近する反応1つ!」

「先行する駆逐艦・冬月より入電。我、敵を発見せり!」

「まったくこんなところまでやつらが出るとはな、
 全艦艇に通達、第一種戦闘態勢、対空迎撃戦用意!」

敵襲の報を聞いた山本はいいところで邪魔をしおってっと、
内心の不機嫌を押し殺して全艦に合戦準備を発令した。

俺は彼に自分達の出撃を申し出る。

「閣下、我々にも出撃の許可をください。」

「ああ、許可する。戦力は多いにこしたことこはない。」

山本は頷くと即座に出撃を許可した。

「ありがとうございます。よし、いくぞリーネ。芳佳はここに残れ、よろしいですか?」

山本は再度頷いた。

それを確認すると俺とリーネは自分の機体のある後部デッキまで走っていった。




~地中海 海上~

それは大きな、大きな飛行船だった。いや、当然ながら飛行船などではない。
色は黒を基本とし、所々を赤のラインが入っている。

そしてなによりも、その体は飛行船の薄い外板ではなく、
六角形をいくつも敷き詰めた頑丈そうな外殻を持っていた。

それを確認した大和の見張り員は歯をギシリと鳴らす、

「ネウロイ……!」

艦隊の2つの空母から多数の艦載戦闘機と少数の戦闘脚が発艦を開始する。
彼らは艦隊の防空に当たるため、上空で集合し編隊を組んだ。

戦闘官制<<主砲発射警報、繰り返す、主砲発射警報、全機衝撃に備えよ。>>

時をおかず、大和の主砲、45口径46センチ3連装砲が火を噴く。
発射された主砲弾は、初弾から、寸分たがわずネウロイの鼻面に突き刺さる。
巻き起こる爆炎とネウロイの叫び声が響く。


『やったか?』

その凄まじい威力に艦隊の誰もが思った。

しかし、爆炎と煙が晴れると、受けたダメージを即座に修復したネウロイが
そこにいた。

 ネウロイは自身の形を変形させると、無数の小型、中型入り乱れた子機を
射出し、自身もビームを艦隊に叩き込む。

「巡洋艦・高雄被弾、駆逐艦・浜風撃沈!」

「くそ、あれを耐え抜くか。
あの超大型ネウロイに砲火を集中させろ。
 なんとしてでも、ヤツに撃たせるな!」




~艦隊上空~

俺<<あれでも落ちないとは、
   空飛んでるくせに、いったいどんな構造をしてるんだ。>>

???<<俺少尉でありますか?>>

俺<<誰だ?>>

敵のあまりのしぶとさに舌を巻く俺に通信が入る。俺は発信者を探した。
すると後方よりこの艦隊にくるときに見た黒い士翼号が3機そろって接近してくる。

雷電1<<自分は加藤曹長、士翼号部隊「雷電」の長を務めております。
    そして彼らは私の部下の佐藤軍曹と鈴木軍曹です>>

雷電2・3<<『よろしくお願いします。少尉どの』>>

雷電1<<艦隊司令よりあなたとともに行動するように命令をうけました。>>

俺<<そうか、助かる。自分は501航空団出向の俺だ。
   君達の手前を拝見させてもらうよ。>>

リーネ<<俺さん、敵がきます!>>

自己紹介を終えた俺たちにリーネから通信が入る。
見ると艦隊の輪形陣の対空砲火を潜り抜けたネウロイの子機が迫っていた。


俺<<全機兵装自由、雷電、敵中央に切り込むぞ。
   味方の対空砲火に巻き込まれるな、交戦開始!>>

全員<<『了解!』>>

俺とリーネ、それに雷電隊は迫り来る敵に、真っ向から勝負を仕掛ける。

雷電1<<佐藤、鈴木、日頃の訓練の成果を見せ付けるぞ!>>

雷電たち3機が一列に並ぶ、
二刀流の加藤機を先頭に、両手に突撃砲を持った佐藤機、ライフルの鈴木機とつづく。

雷電隊<<『噴射気流闘殺法!!』>>

雷電1が敵の攻撃をシールドで弾きながら剣で敵を切り落とす。
雷電2は撃ち漏らしの敵に40mmの雨を食らわせ、
雷電3が自分達を遠距離から狙う敵をライフルで撃ち落とす。

エーテルジェットの噴射の勢いそのままに敵を駆逐していくその姿は、
まさに技名にふさわしい光景だ。


俺<<俺たちも負けてられないな。リーネ、援護をたのむ。>>

リーネ<<了解です!>>

リーネの援護のもと、俺は空を駆け抜け、射程に収まった敵集団に右手の突撃砲を浴びせる。

1連射、2連射と撃ち込み乱れた敵編隊に士翼号を飛び込ませる、
そして、左手の剣を突き込み、返す刃で薙ぎ払う。

反撃を回避して、再び突きと薙ぎ払いで次々と敵を狩りとり、
敵集団を壊滅させると、リーネと共に雷電隊の後を追って次の敵集団へと向かっていった。




~大和艦内 艦橋~

「敵第1波、壊滅。つづいて第2波きます!」

「味方航空勢力損耗率3%、こちらが優勢です。」

「敵母艦型、再度ビームを射出!駆逐艦・霞、初霜に至近弾!」

「霞の機関部が故障、行き足が落ちます!」

続々と戦闘状況が艦橋に飛び込む。なんとか艦隊を維持して、現状は有利に敵の攻勢に耐えているが、
敵超大型ネウロイに致命傷をあたえられないまま、消耗戦に入ってしまった。

「なんとか敵の母艦を落とせないものか。」

山本が意見を求める。参謀長が発言した。

「我が軍のウィッチの報告によれば、敵母艦のコアはその巨体のほぼ中心に位置しており、
 現状では我らが大和の火力をもってしてもコアまで届きません。」

「上空の航空戦は、陸軍から貸与されている士翼号部隊と501の同機の活躍により、
 優位に展開していますが、消耗戦となるとこちらが不利です。」

そのほかの幕僚たちも意見をかわす。


「杉田艦長、『例のシステム』は稼動できるか?」

山本が尋ねる。

「まことに残念ながら、まだ調整が済んでいません。
 いまのまま使っても、求められる戦果をあげることはできないでしょう。
 それどころか暴走の危険があります。」

「そうか……せめて、あのビームさえ何とかできれば……」

結局首脳部には現状の打開策が打ち出せない。

「あ、あの!!」

「?どうしたんだね、宮藤さん。」

突然声を張り上げた芳佳に驚く艦長。だがその続きをきいてさらに驚かされる。

「わたしにも、わたしにも出撃させてください!
 わたしのシールドなら、皆さんを守れるだけの大きさで張ることができます!」

「だが、君はいま、うまく飛べないのだろう?それにストライカーもない……」

ふたりの会話に山本が割ってはいる。


「いや、たしか後部第三格納庫に、試作機のストライカーがあったはずだ。
 宮藤博士の新理論によるものと聞いているが?」

「お父さんの?それを使わせてください!」

意気込む芳佳を艦長がとめる。

「無茶だ。たしかにあれは強力だが、だれもまともに扱えなかった代物だ。
 そんなものを使わせるわけには……」

「お願いします!きっと上手くやってみせます。
 私にできることがあるなら、諦めたくないんです!」

「わかった。許可しよう。」

「閣下!?」

艦長以下幕僚たちが騒ぎ出す。それを手で押さえると山本はいった。


「君はたしか、博士の娘さんだったね。その君ならもしかしたらやれるかもしれん。
 わたしはその可能性に賭けてみたい。」

そういわれてしまえばもう幕僚達はなにもいえない。司令官の命令は絶対だ。

「頼めるかな?宮藤君。」

「はい、かならずやってみせます!それと、ありがとうございます。」

山本は再度芳佳の意志を確認をすると、従卒の軍曹に彼女を案内するように命令した。




~艦隊上空~

俺<<おぉおおおおお!!>>

もう何体目になるか分からないが、再び俺の士翼号がネウロイを切り墜とす。

突撃砲はとうの予備の弾層を含めて射耗し尽くされ、投棄されて海の藻屑と消えていた。
また雷電たちも似たような状況であり、リーネの疲労もかなりのものになっていた。

俺<<リーネ、大丈夫か?>>

リーネ<<はぁ、はぁ、だ、大丈夫です。まだやれます!>>

俺<<そうか、あまり無茶をするな>>

そういって俺はあたりを見回す。味方の戦闘機たちは撃墜されたり、
補給や整備で帰還したりと数をへらしているのに敵はいっこうに減らない。


俺<<前後左右上下、どちらを向いても敵だらけ、なんかこう、楽しくなってくるな、えぇ?>>

雷電1<<分かりますよその気持ち、どうです少尉。こんなときこそあの歌を歌いませんか?>>

彼もまた折れた剣を棄て、のこった一本でまた1機、また1機と切り伏せる。

俺<<そうだな、歌うか、突撃行軍歌(ガンパレード・マーチ)を!>>





~大和 後部第三格納庫~

軍曹に案内されて芳佳が見たものは、
いままでに見たことのない形のストライカーだった。

「これが、新型のストライカー……お父さんの新しい技術。」

軍曹が応える。

「はい、J7W1『震電』です。整備自体は終わっているので、あとは履くだけです。」

芳佳は軍曹に礼をいうと震電を履く。
するとはじめて履いたはずなのにどこか懐かしく、これ以上ないくらいの一体感を感じるた。

誰もまともに動かせなかった震電の魔導エンジンに火がはいる。

そんな時、彼女の耳に歌が聞こえてくる。



俺 <<♪ その心は闇を払う銀の剣

      絶望と悲しみの海から生まれでて

      戦友達の作った血の池で

      涙で編んだ鎖を引き 悲しみで鍛えられた軍刀を振るう

      どこかのだれかの未来のために

      地に希望を  天に夢を取り戻そう

      われらは  そう  戦うために生まれてきた ♪>>

それは俺たちが歌う。俺が彼女に教えた歌。ガンパレード・マーチだった。


震電を発進させながら芳佳も歌う。

「♪ それは子供のころに聞いた話  

   誰もが笑う おとぎ話

   でも私は笑わない 私は信じられる

   あなたの横顔を見ているから

   はるかなる未来への階段を駆け上がる

   あなたの瞳を知っている  ♪」

芳佳は震電とともに勢いよく空を駆け上る。

俺たちを見つけるとさらに加速して合流し、
俺たちを狙って発射されたビームを強化されたシールドで弾き返す。



リーネ<<芳佳ちゃん!どうして!?>>

突然現れた芳佳の姿に喜びと驚きで満たされるリーネ

俺<<飛べるようになったのか?それにシールドの出力が段違いだ!>>

芳佳<<はい!お父さんがくれた私の新しい翼です。
    これでわたしも、みんなと一緒に戦います!!>>


予想外の援軍を受けて俺たちは再び歌いながら反撃にうつる。

俺・芳佳<<♪ 今なら私は信じられる

        あなたの作る未来が見える

        あなたの差し出す手を取って

        私も一緒に駆けあがろう ♪>>


俺たちの歌は大和の艦橋にも流れ、通信兵が艦隊中にそれを流す。
歌に勇気付けられたかれらも、また歌う。


艦隊全員<<♪ 幾千万の私とあなたで あの運命に打ち勝とう

        どこかのだれかの未来のために マーチを歌おう

        そうよ未来はいつだって このマーチとともにある

        ガンパレード・マーチ ガンパレード・マーチ…  ♪>>


山本<<『オール!ハンデッドガンパレード!
     オール!ハンデッドガンパレード!
     全軍突撃!
     たとえ我らが全滅しようとも
     この戦争、最後の最後に男と女が一人づつ
     生き残れば我々の勝利だ!
     全軍突撃!どこかの誰かの未来のために!』>>


全員<<♪ そうよ未来はいつだって このマーチとともにある

      私は今一人じゃない

      いつどこにあろうと ともに歌う仲間がいる

      死すらも超えるマーチを歌おう

      時をも超えるマーチを歌おう

      ガンパレード・マーチ ガンパレード・マーチ  ♪>>

誰も彼もが腹の底から声をだして歌う。
いまや艦隊の士気は最高潮に達しようとしていた。

芳佳<<俺さん、あのおっきいののコアは、ネウロイの体の中心です!>>

芳佳が艦橋で聞いてきた情報をおれに伝える。

俺<<そうなのか?
   よし、なら俺がコアまでの道をつくる。

   芳佳はそれに飛び込んであのデカブツを始末しろ!

   雷電、リーネ、しばらくおれの護衛を頼む!>>

雷電・リーネ<<了解!!>>



返事をきいた俺は剣を肩にしまい、左手を突き出すと、
インストールされていたプログラムを起動し、
魔法の砲身を作り出してネウロイに狙いを定める。

俺<<『精霊手システム』起動

    砲身形成問題なし。

    魔法力圧縮術式正常

    魔法力充填開始

    70、80、100パーセント

    精霊手、発射可能状態へ……いっけぇえええええ!!>>

青白く輝くビームが母艦型ネウロイに突き刺さる。

高圧縮された魔法力はネウロイの強固な外殻を打ち破りコアまでの道を作り出した。



芳佳<<やぁあああああああああ!!!>>

震電の最大加速によって音の壁を越えた芳佳が俺の作った道に飛び込み、
ネウロイのコアに銃弾を叩き込んで破壊した。




~大和艦内 艦橋~

「ネウロイのコアが破壊されました!反応完全に消失、勝ったぞぉ!!」

艦橋が歓声で包まれる。

艦隊中で喜びの声があがり、互いを抱きしめあって勝利を喜んだ。

あるお調子者はそばにいたウィッチと抱き合った勢いでキスしてしまい、
それを見つけたみんなにボコボコにされた。

「やってくれたな。本当に勝利させてしまうとは、これだから賭け事はやめられん。」

山本大将のその言葉は後世、歴史の教科書に載ることになる。





~連合国軍司令部 講義堂~

先日の扶桑艦隊救援の戦功を称えて、俺、芳佳、リーネの3人に、
扶桑皇国から『銀剣突撃勲章』が授与されることになった。

この勲章は苛烈な戦闘を生き延びた英雄に送られるものである。

その式に出席した美緒はともに出席したミーナに尋ねる。

「つまり、宮藤の不調はその膨大な魔法力のせいだったというわけか?」

「ええ、つよすぎる魔力を受けたストライカーがリミッターを作動させてたのね。
 ふつうはそんなことないから整備のみんなもきづかなかったそうよ。」

「そして、その魔法力に耐えられるストライカーがあの震電……ということか。」

「そういうこと、ほら式が始まるわよ。」


ミーナが注意を促す。壇上では正装した俺たちが勲章を胸につけられている。

その姿は式に参加していた記者によって写真に収められ、新聞のトップを飾った。
その見出しには、

『新たな英雄誕生!~地中海に響く歌声~』

と書かれていた。


♪ ひとりじゃ泣きそうな 広い空でも
  逃げないよ まっすぐ立ち向かう
  仲間と一緒に Over Sky      ♪

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最終更新:2010年10月24日 00:48
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