9・俺「ストライクウィッチーズだよ」>>386-416
最終話『未来のために』
~連合軍司令部 会議室~
いまこの場に、ふたりの男がいる。
ひとりは俺、もう一人は傲慢と尊大さを溢れさせた恰幅のいい男。
彼の名前を、俺は知らない。
俺の所属する第9陸軍研究所に出資している
芝村財閥系の将軍であることだけを知っている。
芝村は無駄に自分の名前を隠すことを美徳としているのだと聞いたことがあった。
「今度このイタリア半島を完全に奪回する作戦。オペレーション『マルス』が発動される。
今日来てもらったのはその為だ。貴様に潜入任務を頼みたい。」
「潜入任務……でありますか。」
「そうだ。貴様と大和と共に来た士翼号部隊『雷電』で、ヴェネチア上空のネウロイの巣に潜入。
内部にあると考えられるコアの位置を特定してもらう。」
「内部にコアがあるのですか?」
「そうだ。研究の結果、あの巣自体が巨大なネウロイであることは既に判明している。
なればそのコアを破壊することで、巣を取り除くことができる。」
なるほど、と俺は納得した。次の疑問に移る。
「潜入してコアの位置を特定するだけでありますか?破壊はしなくてよろしいので?」
その問いに芝村が答える。
「コアの破壊自体は戦艦・大和が行う。海軍にもいい顔させねばならんからな。」
そうだった。もともと大和はこのロマーニャに派遣されたのは、巣を攻略する戦力としてだ。
「了解しました。その任務お受けいたします。」
俺はそういうと敬礼をした。
「ああ、作戦が始まるまでに遺書を書いておけ。悔いのないように。」
~501戦隊基地 エントランス~
「あ、俺さん、お帰りなさい!」
「おはようございます。どこに行ってたんですか?」
司令部から帰ってきた俺を出迎えたのは、ちょうど朝の訓練を終えた芳佳とリーネだった。
「ああ、司令部に呼び出されてね。ふたりは訓練か?」
「はい、なんでも作戦が近いから気合を入れて走れ!って坂本さんが。」
「ああ、作戦ね。そうだな、気合を入れなければ。」
「俺さん?どうかしたんですか?」
リーネは様子のおかしい俺を心配する。
「いや、なんでもないよ。さて、腹が減ったな。朝飯に行くとしよう。」
~501戦隊基地 会議室~
「本日司令部より、このイタリア半島奪回作戦『マルス』の発動が下されました。
明朝、我々501航空団は、戦艦・大和を中心とした決戦部隊に合流。これを護衛し、
ネウロイの巣の撃滅をはかります。」
ミーナが501の面々に作戦の発動を伝える。ゲルトが質問した。
「だが、いくら大和や他の戦艦が強力でも通常戦力だろう?」
その問いには俺が答える。
「いえ、他の戦艦はそうですが大和は違います。
大和には、この決戦のために搭載された新兵器、
通称「コア機関」が搭載されています。
これは士翼号に使われているものを巨大化したようなもので、
ここから発生した魔法力を艦全体にいきわたらせることで、
ちょうどウィッチが武器に魔力を流すのと同じ状態に持って行きます。
この状態であれば大和にはシールドの展開や自動修復が行われ、
また、士翼号の『精霊手』にあたる特装砲『波動砲』が発射可能になります。」
「我々501はネウロイの巣の中にあると思われるコアの発見と、『波動砲』による
コアの破壊が行われるまで、大和を援護する。」
「ちょっと待って、コアの発見はだれがやるの?」
エーリカが質問する。俺が答えた。
「私です。私と扶桑からきた『雷電』が巣に飛び込み、内部のコアに誘導装置を取り付けます。」
「そんな、危険です!」
俺の言葉に芳佳が叫んだ。
「危険は承知の上だ。しかしネウロイのコアに『波動砲』があたらなければ、この作戦の意味がない。」
「だったら、私も行きます!」
「わたしも一緒に!」
芳佳とリーネが言うが、
「ダメだ。司令部から突入は俺たちだけだと厳命されている。
大和が撃破されてしまったら元も子もないからな501は全員大和の護衛をする。」
「そんな……」
沈む空気のなか、俺が発言する。
「まぁ、作戦が上手くいけば無事に帰ってきます。ようは勝てばいいんですよ。」
「そうダナ、勝てばいいんダ。」
501のみんなは口々に『絶対に勝とう』と奮起する。
でも芳佳とリーネの顔色が晴れることはなかった。
~501戦隊基地 廊下~
作戦説明が終わり、各自最終調整を行うということで解散となった。
結局最後まで沈んでいた。芳佳とリーネに俺は声をかける。
「そんな顔をしないでくれ。死ぬと決まったわけじゃないんだし。」
「でも……危険です。ほんとにわたし達も一緒に行っちゃダメですか?」
泣きそうな声で芳佳に言われた俺は答える。
「ああ、ダメだ。」
「どうしてですか!わたしたちが一緒に行けば成功する確率だって!」
リーネは涙を堪えきれずに泣き出してしまった。
「……ふたりには、俺が帰ってくる場所を守ってほしい。
せっかく任務に成功しても、帰る場所がないんじゃ仕方ないだろう?
だから一緒にはいけない。
なぁに大丈夫。必ず帰ってくる。この戦いが終わったらふたりに言いたいこともあるしな。」
だから泣かないでくれと俺はふたりを抱きしめてそういった。
「絶対ですよ。」
「帰ってこなかったら承知しませんから」
「ああ、必ず。」
~ヴェネチア近海~
各国から派遣された戦艦隊が、ヴェネチアを目指し進軍する。
「ヴェネチア上空の巣まで残り20km、巣より迎撃部隊の発進を確認!」
「各航空隊、および戦艦隊は迎撃を開始せよ!」
戦闘機と魔女がネウロイと交戦を開始し、戦艦の主砲が火を吹いた。
「とうとうこの日がやってきたな。艦長、『コア機関』を始動させろ!」
艦隊司令の山本が杉田艦長に指示を出す。
「諒解しました。全艦に通達、『コア機関』始動!」
命令を受けコア機関に専属のウィッチたちが魔力を注ぎ始める。
その魔力を受けて巨大な人造コアは稼動を開始し、艦全体に魔力を送り始めた。
~艦隊上空~
<<ちっ、数が多い!>>
<<ぜんぜん減らないよー!>>
<<うろたえるな!勲章が向こうから飛んでくると思えばいい!>>
人類側の迎撃をものともせずに襲い掛かるネウロイたち、
それらのかなりの数を撃破したが、こちらの被害も軽くはない。
戦艦・ビスマルクが艦橋を大破、沈黙し、多数の駆逐艦が沈んでいる。
<<魔法力が尽きたものは、各機空母天城に撤退して!>>
<<そんな暇はないぞミーナ!……烈 風 斬 !!>>
501の面々もまた、必死に戦っていた。
「俺さん……」
「芳佳ちゃん、きっと大丈夫だよ。だからがんばろ!」
「そうだよね。俺さんの帰る場所を守るんだ!」
~ネウロイの巣 内部~
ズバァアア!!
俺の士翼号の剣が目の前の敵を一閃し、撃破する。
<<雷電!ちゃんとついてきてるか!>>
ここまで来る間に100を越える中型ネウロイを撃破している。
子型は途中から数えるのをやめたほどだ。
<<ええ、全機、生きとります少尉!ですがコアはまだですか?>>
ところどころ装甲が剥げているものの、雷電も全機無事だった。
<<反応を見る限りではすぐそこだ、急ぐぞ!>>
エーテルジェットを噴かし、立ちふさがる敵を斃して俺たちは先を急ぐ、
しばらく行くといままでとは違う広大な空間に出た。
<<見つけた!ネウロイのコアだ。それにしてもなんて大きさだ……>>
そこには士翼号が豆粒に思えるほど大きなコアが禍々しく輝いていた。
<<私が装置を取り付ける。雷電は周辺を警戒しろ!>>
<<『了解!』>>
~ヴェネチア近海 決戦艦隊~
「誘導電波を探知!ネウロイのコアを特定できた模様!」
大和の艦橋士官がそう叫ぶ。
「でかした!ようし、作戦を最終段階に移行、大和、浮上せよ!」
山本の命令と共にコア機関が全開にされ、大和の巨体が空へと持ち上がる。
「了解。『コア機関』出力最大、大和、飛行状態へ!」
「大和、浮上!現在高度100、200、……」
ぐんぐんと空へと登って行く大和。
大和を撃墜せんとネウロイが集中的にビームを叩き込む。
「シールド展開!」
「シールド展開、ようそろ!」
各所に展開されたシールドがビームを弾き、魔法力が通った主砲が敵を吹き飛ばす。
「突入部隊の脱出はどうなっている?」
「まだ、確認できていません!」
報告に唸る山本。
「なにをやっている。早くせんと間に合わなくなるぞ……」
~ネウロイの巣 ビックコア付近~
<<少尉!まだですか!>>
迫りくるネウロイを足止めしつつ、加藤曹長が叫ぶ。
<<あと、少しだ!……よし、これで!>>
装置の設置が完了し、誘導電波が発信される。
<<雷電!任務完了だ、脱出するぞ!>>
<<『了解!』>>
急いで脱出しようとする俺たち、
だが俺の機体をネウロイのコアから伸びた触手が捕らえた。
<<少尉!>>
雷電たちが助けに戻ってこようとする。
<<来るな!私にかまわずさっさと離脱しろ!>>
<<そんな、少尉を置いてなど!>>
<<馬鹿者!
私たちの脱出が確認できなければ、大和が『波動砲』を撃てんだろうが!
彼らの犠牲を無駄にするつもりか!?わかったらさっさと行け!!>>
<<……っ!了解しました、ご武運を!>>
雷電たちが離脱していく。
<<祈られてもな、くそ、こいつ私をどうするつもりだ?>>
俺が毒づくと同時にネウロイの触手が蠢き、士翼号ごと俺をコアへ取り込んだ。
~ヴェネチア近海上空~
<<っ!突入部隊の離脱を確認、『雷電』です!>>
その報告に全員が安堵する。
しかし、聞こえてくるはずの名前が聞こえてこない。
「俺さんは!?俺さんはどうなったんですか!」
芳佳が叫んだ。同時に雷電から通信が入る。
<<突入作戦に成功、しかし俺少尉が敵に捕らわれました。
脱出を不可能と判断された少尉の命令により、我々だけが離脱しました。
俺少尉から大和に伝達。自分にかまわず『波動砲』を発射するようにとのこと!>>
『そんな!』
雷電の報告に芳佳とリーネが愕然とする
<<やむをえんな……大和、『波動砲』発射態勢!>>
山本が決断する。大和の艦首付近に魔法による砲門が形成されはじめる。
「まって、撃たないで!」
「俺さんがまだなかにいるんです!」
発射を止めようとするふたりを美緒が押しとどめる。
「やめろふたりとも!危険だ、巻き込まれるぞ!」
「かまいません!」
「このままじゃ俺さんが死んじゃいます!少佐、離してください!」
「ダメだ!俺の覚悟を無駄にする気か!?」
美緒は半狂乱になるふたりを叱り付ける。
「だって、『絶対帰ってくる』っていったんです!それなのに……」
「宮藤、リーネ……」
とうとうふたりは泣き出してしまった。
美緒が途方に暮れるも、その間着々と大和は発射行程を進めていた。
「砲身形成完了、
魔法力充填率100、110、120パーセント!
総員、対ショック、対閃光防御!……『波動砲』発射!」
圧倒的な破壊力を込められた蒼い光線がネウロイのコア目掛けて突き進む。
光線は外殻を容易く打ち抜くとネウロイのコア呑み込んだ。
巣を取り巻いていた瘴気の雲が晴れ、青空が戻ってくる。
<<命中!ネウロイの反応、消えました!>>
わっと勝利の歓声が沸きあがる。だが、芳佳とリーネはそうではなかった。
「帰ってくるって言ったのに……」
「俺さん……言いたいことがあるって……」
「ふたりとも……」
<<着弾地点に反応!これは士翼号だ、俺少尉の士翼号です!>>
『!?』
生きてた?その報告に顔をあげるふたり。
着弾の際に巻き起こった煙が晴れてくる。
<<!?士翼号の後方に巨大なネウロイの反応!>>
そこには大きなコアを背にし、コア守るように巨大なシールドを展開した俺がいた。
~大和 艦橋~
「なにが起こっている?」
山本は現状を把握しようと部下に怒鳴りつける。
「ネウロイのコア前方に俺少尉の士翼号を確認。コアを守る形でシールドを展開中!」
「どういうことだ?俺少尉と通信は?」
「だめです。繋がりません!あ、攻撃来ます!」
見ると先ほどまでシールドを展開していた士翼号は左手を突き出し、魔法の砲身を展開している。
「まずい!シールド展開、最大出力!!」
大和の前方に幾重にも重なったシールドが展開される。
そこに士翼号から発射された『精霊手』が着弾した。
轟音とともに艦体が振動する。
「くそ、反撃しろ!」
大和の主砲が火を吹くが、士翼号のシールドがそれを弾いた。
再び『精霊手』が発射される。
「くっ、俺少尉を何とかしなければ攻撃が通らん。・・・・・・もはやこれまでか。」
山本があきらめ、撤退を命令しようとしたその時だった。
<<いいえ、まだです!>>
~ヴェネチア近辺 上空~
「まだ、あきらめちゃダメです!」
「そうです!俺さんが操られてるのなら、私たちが助けます!」
そういって芳佳とリーネは魔法力が限界に近いのにも関わらず飛び出す。
「待て!お前達、危険だ!」
「いいえ、いかせてあげましょう。」
美緒が止めようとするがミーナがそれをさえぎる。
「ミーナ!?」
「あのふたりならもしかしたら、やれるかもしれないわ。
なら、あのふたりに賭けてみましょう?」
「それに、宮藤たちだけじゃないかもよ~?」
ふたりが振り向くと501のみんながそこにいた。
~ビックコア~
俺のもとまで飛んでいこうとする芳佳たち、
その行く手にネウロイに複製された赤い士翼号が立ちふさがる。
『邪魔、しないで!』
それらを叩き落すがそれより早く複製が行われる。
そのうち一体の複製が彼女達を撃墜しようとした。
だがその瞬間、複製は爆炎に包まれて墜ちていった。
驚いてふたりが振り向くと、
「行け、ふたりとも!行って、俺を連れ戻して来い!」
「俺少尉に、無茶をした罰をしないとね。」
美緒とミーナが
「そこまでの道は、私たちが作る!」
「お土産よろしくね~」
ゲルトとエーリカが
「今日のオマエたちはツイてるゾ!」
「芳佳ちゃんたちなら、きっとできるよ!」
エイラとサーニャが
「お前達を泣かせたんだからな、俺を一発ひっぱたく!」
「そのためにもあのお馬鹿さんをつれもどしていらっしゃい!」
「うじゅ~がんばれ芳佳、リーネ♪」
シャーリー、ペリーヌ、ルッキーニが、501のみんなが芳佳たちを援護する。
「みんな……よし、いこうリーネちゃん!」
「うん、芳佳ちゃん!」
みんなの援護をうけて、ふたりがようやく俺のもとへとたどりついた。
俺はなにも言わずに士翼号でふたりを殴りつけようとする。
ふたりはシールドでそれを受け止めると、俺に向かって叫んだ。
「おねがい!俺さん、目を覚まして!」
「いっしょに基地に帰りましょう?」
俺は何も言わない。
「俺さんがいってたように、私たちもあなたにいいたいことがあるの!」
「だから、帰ってきて!俺さん!」
そのときふっとシールドにかかる圧力が減る。士翼号が拳を納めたのだ。
士翼号がコアに向き直る、そして、
<<おい貴様、随分と愉快なことさせてくれるじゃないか!>>
俺の声がそう怒鳴りつけた。士翼号の拳が振り上げられる。
<<あまり私を、人類(ニンゲン)をナメるなぁああああああああああ!!!!!>>
圧縮されたバリアが展開され、拳が振り下ろされた。
打ち付けられたコアにヒビが入り、耳障りな悲鳴が響く。
それが限界だったのか士翼号は糸が切れた操り人形のように墜ちていく。
急いで芳佳たちが支えようとするも、重すぎて落下スピードが落ちない。
「っ駄目、ふたりだけじゃ持ち上がらない!」
<<なら、11人でやればどうかしら?>>
その声と共に501のみんなが集まって士翼号を支えた。落下がとまる。
<<大和、いまだ!>>
十分な距離が取れていると見た美緒が叫ぶ。
<<『波動砲』、発射!>>
再充填された魔砲が発射される。
ふたたび空に蒼の閃光が走り、今度こそビックコアを完全に消滅させた。
~501戦隊基地 医務室~
「(ここは……?)」
目をさますと見慣れない天井がそこにあった。
「(ネウロイのコアに拳を叩き付けたきがしたんだが?)」
頭がボーっとしているため、前後のことがあまり思い出せない。
医務室に誰かが入ってきた。
「あ、俺さん!」
「気がついたんですね!」
「芳佳……リーネ……?俺はいったい?」
「あのあと三日も寝てたんですよ?もう目を覚まさないのかと心配しましたよ。」
「取り込まれたときに精神を操られたのが原因だろう、って軍医さんがいってました。」
そこでようやく記憶が戻った。俺はベッドから出ようとする。
「そうだ操られたんだ!……すまない、みんなに迷惑をかけた……」
大丈夫です。誰も気にしてません。といってふたりは俺をベッドに座らせた。
「すまなかった。ふたりに助けてもらったんだよな。」
「いいんですよ。俺さんが帰ってきてくれたんですから、わたしたちはそれで満足です。」
俺はその言葉を聞いて安心した。
「そうか……そうだ、帰ってきたら言うことがあったんだ。」
そういって俺は咳払いをする。
「えっと、その……私は君達よりずっと年上だし、
こんな体だし、今回みたいなことになるかもしれない。
だけど……だけど、君達のことを、ふたりとも愛しているんだ。
だから、その……」
そうやってどもってしまった俺にふたりは笑いかける。
そして、ふたり同時に俺の胸に飛び込んだ。
俺はふたりを抱きしめて言う。
「どちらかに決められない、優柔不断でみっともない男だけど……そんな私でもいいのかい?」
俺の問いに彼女たちは、
「はい、だって……」
「私たちはあなたのことが……」
『大好きなんですから♪』
と、いって俺の頬にキスをした。
ストライクウィッチーズ2~魔女と鋼鉄の巨人~
~これにて完結~
最終更新:2010年10月24日 01:10