☆その日の夜☆
ネウロイの機銃掃射で穴ぼこだらけになってしまったカウハバ基地だが、爆撃を食らわなかったため基地機能に大きな支障は無かった。
一層隙間風の酷くなった食堂兼談話室に集っている義勇独立中隊の面々…だが、肝心のメッサー(と、付添のエルマ隊長)がいない。
戦闘機を駆って白昼堂々ネウロイを10機も撃墜した彼は、新聞の取材を受けたりスラッセン市長から感状を受け取ったりと色々忙しかった。
その結果ハッキネン大尉への着任報告と打合せが夜までずれ込んでしまい、智子以外の面々はまだ彼の顔を見ていなかったのである。
キャサリン「すごかったねー。瞬く間に中型を4機も落としたねー。」
ハルカ「いいなあ、見たかったなあ。
今度私も飲みに行こうかな?」
智子「柳の下のどじょうに期待してどうするのよ。」
ハルカ「そうですよね、えへへへへ。」
智子「全くもう…。」
ハルカ(///)
智子「ところであんたたち、地上で見てて恥ずかしいとか、加勢したいとか思わなかったの?」
パブで飲んでたらネウロイが来襲、地上から奇妙な空中戦を見物する羽目になった三人 ―ビューリング、ウルスラ、キャサリンに冷たい視線を向ける智子。
キャサリン「そんなこと言われても地上からじゃ手助けできないねー。」
ウルスラ「なかった。」
智子の予想通りの返答をした二人。だが、もう一人は事情が違った。
ビューリング「あいつのことだからな、安心していたよ。」
智子「『あいつ』ってまさかあなた、あの人を知ってるの!?」
ビューリング「知ってるも何もオストマルク戦線での仲間だ。まあ向こうは記憶喪失で覚えてないだろうけどな。」
智子「ち、ちょっと何で早く言わなかったのよ!!」
ビューリング「色々あってな」
智子「色々って何よ!変な事だったら承知しないわよ!!」
無意識のうちに白熱する智子。その様子を見たハルカが心底悔しそうな顔で呟いた。
ハルカ「嫉妬ですか…」
キャサリン「トモコ、妬いてるねー!」
ビューリング「安心しろ、好かれるような事は何もしていない。むしろ逆だ。」
的確な指摘を受けて真っ赤になる智子。
智子「べ、別にアイツのことなんか全然気にしてないし!」
ビューリング「ならいいんだが。」
この一瞬、彼女が浮かべた暗い表情に気付く者はいなかった。
数分後、エルマ隊長に案内されてメッサーが入ってきた。
エルマ「え、ええとまず、自己紹介をおおお願いしますっ」
声が震えている。無意識とはいえ彼が殺気を放っていたためである。
俺「分かりました。
…カールスラント空軍所属の俺です。階級は少尉、年齢は21。
シールドは張れますが飛べないので、戦闘時はBf109型戦闘機に搭乗します。」
キャサリン(怖い人ねー。)
ウルスラ(怖い。)
ハルカ(智子少尉はこんな人が好みだったんだわ…)
智子(かっこいい//)
ビューリング(昔は……こんな奴では………。)
俺「二ヶ月前の負傷でそれ以前の記憶がありませんが、戦闘や日常生活には支障ありません。
以上です。どなたか質問はありますか?」
静かに手を上げるビューリング。
俺「どうぞ。」
ビューリング「記憶喪失ということだが、"あの"事件の事は知っているのか?」
俺「1939年○月×日のことですか?」
ビューリング「そうだ。」
俺「直接の記憶はありませんが、当時の日記並びに各種記録で概ね確認済みです。」
ビューリング「わかった。
……今、お前はその事件についてどう思っている?」
狐のような冷たい目になったビューリングと、オーラを一層濃くしたメッサー。
重苦しい雰囲気の中で、彼はこう宣告した。
俺「あれは、"不運な事故"だと考えています。それ以外の何物でもありません。
当時の日記を見る限り、以前の私も同意見です。」
ビューリング「そうか…それならいいんだ。質問してすまなかった。」
俺「いえいえ。ひとまずこの件はこれで終わりにしましょう。」
ビューリング「了解した。」
最終更新:2011年06月27日 00:38