― 小屋 ―
俺「全然、止む気配ないな…… 服、大丈夫だったか?」
俺は濡れた頭をわしゃわしゃしながら、エーリカに問いかけた
エーリカ「うん、大丈夫。 あまり濡れてないよ」
俺「それなら良かった」
俺は小屋の中を改めて、見渡した
見つけたものは、本棚らしい物ものが部屋の隅に置かれているだけだった
俺「……バルクホルン大尉に頼まれた物…濡れてないよな?」
エーリカ「うん、大丈夫だよ」
小屋には、雨が激しく叩きつけられている音が響いている
自然と会話が途絶えた
エーリカ「……暇だね…」
俺「そうだな…」
俺は、このまま雨が続くと夕飯前には帰れないだろうとぼんやりと考えていた
外を見た限り、雨は止みそうもなかった
俺はエーリカに雨が弱まったら、帰ろうと告げた
そして、会話が再び途絶えた
俺「………」
エーリカ「………」
俺「………」
エーリカ「……俺」
俺「ん?」
プニッ
エーリカの方を振り向こうとしたら、エーリカに頬をプニッとされた
エーリカ「や~い、ひっかかった!」
俺「…やられた…」
にしし、と笑うエーリカ
俺はお返しといわんばかりに、エーリカに軽くデコピンをした
エーリカ「あちゃちゃ……俺にデコピンされちゃった…」
俺は、おでこを抑えて、しょぼんとするエーリカに「もしかして、痛かったか?」と心配の声を掛けた
エーリカ「ううん、痛くないよ。大丈夫」
俺は安心のため息をついた
ここで、外の景色を見てみると、先ほどよりは雨が弱まっていた
だが、未だに雨の勢いは強い
エーリカ「……暇だね…」
俺「…そうだな…」
俺達はさっきから、暇などの事しか呟いていない
だって、本当に暇なんだもん
エーリカ「暇だからさ……キス…しない?」
俺「……ヤダって言ったら…?」
エーリカ「無理やり、やっちゃう」
俺「……はぁ……」
エーリカ「どうする? キスする? しない?」
俺「どうせ拒否できないんだろ?」
エーリカ「うん!」
俺「……し、仕方がねぇな… ほんのちょっとだけだぞ! いいか! ちょっとだけだぞ!?」
エーリカ「わかってるよ。 んん…」
俺とエーリカの唇は軽く触れ合った
エーリカ「…俺の唇…甘いね」
そう言うと、エーリカは舌をペロっとだした
その姿は、天使だった
いや、俺から言わせてみれば、小悪魔といったところか
俺「…さ、さて…そろそろ雨も弱まっただろうし…帰るか!!」
未だ外はザーザーと強く雨が降っているのに、この恥かしい状況を打開したいため、俺は嘘をついた
エーリカ「んー もうちょっとだけ甘いものが欲しいな~ 」
甘いもの?
甘いものなら、街でたくさん食べたじゃないか
俺「なぁ… それってどういう意味……んん!? んんんっ!」
俺は、エーリカからの奇襲攻撃を喰らった
今回の攻撃は、先ほどの軽いキスなどではなかった
深くて、濃厚なキスだった
エーリカ「んちゅっ……はぁ…んん……」
俺は、キスをしているエーリカに半ば無理やりに床に倒された
倒れた俺に覆いかぶさるようにして、エーリカはキスを続けた
エーリカ「……んはっ……んん…」
俺「…ん……んはっ! はぁはぁ……いったい……どういう……つもりだよ…?…」
息を荒々とさせて、エーリカに奇襲攻撃の理由を聞いた
エーリカ「俺が好きだからだよ」
俺「…それ…だけ…?」
明瞭かつ単純な理由に、呆気に取られた俺は、思わず肩をがくっと下ろした
エーリカ「うん」
俺「……はぁ…」
今回の俺のため息は呆れから来るため息ではなかった
嬉しさと恥ずかしさから来たものだった
天使のように微笑みながら、「好き」と言われた俺は、今どんな顔をしているのだろう?
きっとニヤけて気持ち悪い顔に違いない
エーリカ「俺、話は変わるけどさ、将来、男の子と女の子のどっちがいい?」
俺「そうだな…やっぱり生まれ変わったとしても、今と同じ男がいいな」
エーリカ「 ? 何言ってるの?」
俺「えっ?」
エーリカ「えっ?」
俺…変なことでも言った…?
うーむ… 将来、男の子と女の子のどっちがいいって質問は、生まれ変わるならどっちってことだよな…?
俺「あのさ……その質問…どういう意味…?」
エーリカ「わからないの? この事だよ」
そう言うとエーリカは、自分のお腹を軽く撫でた
エーリカは、「これで分かった?」という顔をしているが、当の本人である俺は、まったくわからない…
俺「…あのぉ…全然、わからないんですけど……」
エーリカ「もう! 鈍感だな~。 赤ちゃんのことですよ」
俺「赤…ちゃん…? それって……いわゆる子供の事……?」
エーリカ「そうだよ」
俺「…いったい誰の……」
エーリカ「当然、俺と私の子供の事だよ」
俺「ぶっ!?い、いくらなんでも、その話は早いだろっ!」
エーリカ「そうでもないと思うよ? 私も、あと4,5年で軍を退役するかもしれないし…」
エーリカは、「私が退役したら、子作りがんばらなくちゃね!」と、笑顔でさらっと言った
俺「……まさか…こんな話を振られるとは、夢にも思ってなかったよ…」
エーリカ「それでさ、俺は結局、男の子と女の子のどっちがいいの?」
実を言うと、俺は真剣に子作り運動などについては考えてなかった
ただ、エーリカと一緒に暮らしていければいい、という事さえ考え続けてきた
エーリカが楽しそうに質問してくるのに、答えないのも可哀想だと思い、少し考えた後、俺は答えを出した
俺「そうだな…男の子と女の子、一人ずつがいいな」
エーリカ「私も、俺と同じだね」
俺「……まぁ…子供が居れば…楽しい家庭になるのかもな…」
エーリカ「そうだね~ なんか、俺との家庭生活を想像してたら、楽しくなってきた!」
エーリカは言い終えた後に、ふっふー、と笑みを浮かべながら、「なんなら今、赤ちゃん作っちゃう?」と誘ってきた
俺は、「バカなこと言ってんじゃねぇよ…」とはき捨てて、軽くエーリカの頭を叩いた
俺「さぁ、雨も止んできたし、今度こそ帰るぞ」
エーリカ「んー 俺ともうちょっと一緒にいたいけど… 夕食前に帰らないと、みんな心配するもんね」
俺「そうだな、さぁ帰るぞ」
俺とエーリカは、小屋から雨の止みかけた外へと出た
そのまま俺たちは手を繋ぎ、キューベルワーゲンを駐車した所へと歩き始めた
最終更新:2011年07月14日 23:01