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幽霊ウィッチ

367 :スタート[sage]:2010/10/10(日) 23:56:21.85 ID:q96xpdwC0

――――5年前

白く無機質な光を放つ電灯と、無感情なリノリウムの床。
構造こそ一般の病院と近いものがあるが、ここには患者を気遣う様な
装飾の類はない。それどころか、窓すらも無い。
人間の感情が入り込む余地など一切無い施設。

それが、連合軍第086研究施設だった。

連合軍の有力者の一人が強く推して設立されたこの施設では、
主にネウロイの構成物質に関しての研究を行っていた。
敵の構成を理解できれば、戦闘の際に有利になるかもしれないという
思想の元に作られたこの施設には、優先的にネウロイの残骸などが送られてくるが、
しかしながらそれ以外にはこれといって目立った特徴も無く、
軍の上層部にも、少し変わったよくある研究所の一つと認識されていた。


そう、表向きはそう装っていた


???「いやぁ、何時見ても美しいね。彼女達は……実は私は、彼女達のファンなんだよ」

086研究施設の中央にある、手術室。
その奥に設置されたモニターには今、ネウロイと戦うウィッチ達の姿が映されていた。
強大な敵に対し果敢に戦う美しい魔女達。その戦闘のベストショットを集めた映像。
その映像を眺めるのは、一人の男。
皺一つ無い白衣を纏い、人好きのする笑みを浮かべたその男は、
コーヒーを片手に、慈しむ目でその戦闘の映像を見ている。そして


368 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/10(日) 23:58:11.32 ID:q96xpdwC0
?「げ、うぎい、あ、あああ嗚呼ああああああああああっっ!!!!!」

その男の後ろ、彼の後ろにある手術台の上では、同じ映像を一人の少年が見ていた。
……否、見ているかどうかは分からない。
何故なら、手術台に拘束されたその少年は襲い掛かる苦痛に絶叫を上げているから。
その右目は、空洞になっており、そこから夥しい程の血をながしているから。
白衣の男は、そんな少年を一瞥すると、優し気な声で少年の頭を撫でる

白衣の男「おいおい、もっとしっかり見てくれたまえよ。彼女達は、君が守るべき対象なんだよ?」

白衣の男は、少年の頭をそのまま掴むと、無理矢理モニターに頭を向けさせた。
その首を動かす行為にすら激痛を感じ、少年は絶叫する。

白衣の男「ふふ……私は常日ごろから思っているんだ。あんなに美しい彼女達がどうして戦闘なんていう
   辛く愚かな行為をしなくてはならないのかとね。私達に力があれば、彼女達をネウロイなんていう
   化物から守って、幸せに暮らさせてあげられるのではないかと。
   だから、君達に頑張って貰う事にしたんだ。君みたいな薄汚い、価値の無いゴミに、
   あの女神達の代わりに傷つく権利をあげてあげているんだから、精一杯がんばらないと。
   ほら、綺麗だろう彼女達は。彼女達の為に死ぬ君は幸せ者だよ」


371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/10(日) 23:59:29.69 ID:q96xpdwC0
白衣の男の優しげな声を聞きながら、ストライクウィッチーズの綺麗な姿を見ながら、
少年はやがて激痛によって意識を失った。
それを見て、白衣の男は少し困った様な声で肩を竦める。

白衣の男「おやおや。これからがウィッチ達の魅力的な映像の本番だというのに。
     ……まあいいか。この素体は今までで一番長生きしているしね。
     ふふ……右目と右手、両足がネウロイ化して、おまけにコアを埋め込まれても
     まだ生きてるなんて、これも一つの才能かな?全く、化物の相手に相応しいね。
     まあ、せいぜいがんばってくれたまえよ?私の愛する女神達の為に」

そうして、掴んだ少年の頭を離し手術台に一度叩きつけた後、白衣の男は
助手らしき別の白衣の男に少年の搬送を命ずると、カツカツと足音を響かせて去っていった。



373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/11(月) 00:00:41.81 ID:HhQ9pbNd0
――――1年前

086研究所が燃えていた。赤々と輝く炎の中からは、断末魔の声が絶え間なく響いている。
そんな研究所の中央には、二つの人影があった。

白衣の男「お、お前!こんな事をしてどうなるか分かってるんだろうな!
    お前のせいで大事な研究員達が死んだじゃないか!お前如き化物のせいで!」

一つは、白衣の男。普段人好きのする笑みを湛えていたその表情に
恐怖の色を張り付かせ歪めている。そうしてもう一人――――

俺「……」

白衣の男の襟首を掴み、片手で持ち上げている色素の抜け落ちた白い髪を持つ華奢な骨格の青年。
その青年は明らかに普通の人間ではなかった。白衣を持ち上げるその右腕の色は、漆黒。
そして、右目も、手術着の下に見える両足も、漆黒。

まるでネウロイの様な漆黒。

その青年は、喚き続ける白衣の男の首を絞め、無理矢理言葉を止めると、
初めて口を開いた。

俺「……ああ。ずっと待ってたんだ、この時を。お前達に拉致されて、身体を弄り回されて
 人間じゃなくなって――――それから5年の間、ずっと。こうしてお前達に復讐する時を」

青年の人間の方の瞳は今、喜びの炎を燃やしていた。
深く暗い黒い炎を。ぎこちない笑みを浮かべたその視線に捉えられた白衣の男は、
引きつった様な声を出す。
そんな男に気遣う様子も無く、青年は呟く様に語り続ける


375 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/11(月) 00:02:02.75 ID:HhQ9pbNd0
俺「ところで、ずっと考えていたんだ。どうしたら俺がお前達に復讐が出来るのかを
  ……普通に殺したんじゃあ納得できない。苦しめて殺しても、俺が味わった苦しみ
  以上の物を与えるのは難しい……だったら」

そこで、パン、と乾いた音が響いた。音は白衣の男の右腕から。
そこには黒光りする小さな鉄の塊――――銃。小型の拳銃が、硝煙を上げていた。
その筒が向いている先は、青年の腹部。
青年の手に込められた力が、弱まった。

白衣の男「……く、ははははは!!!ばーかめ!!油断しやがって!!
     君のようなゴミ屑が私を殺せる筈が無いだろうが!?
     私は正義の為――――ウィッチの為に生きてきた善良な人間なんだからな!!
     ははははは…………は?」

白衣の男の目が、再度恐怖に染まる。
何故なら、青年がその瞳で白衣の男を見つめたままだったから。
再び掴んでいた腕に力が込められていたから

銃弾によって出来た傷が、瞬時に再生したから。

俺「……おいおい、お前達が俺に何を埋め込んだか忘れた訳じゃないだろう?
  ネウロイはただの実弾兵器じゃ倒せないに決まってるじゃないか。
  まあいいや……これで決まったよ。俺は、お前達の希望を奪ってやる。
  憎くて憎くて憎くて堪らないこの世界の人間を、滅ぼしてやる

  お前の大好きな、ウィッチを全滅させてやる」

青年の台詞に白衣の男が何か言おうとしたが、それは叶わなかった。
何故なら、次の瞬間には彼の頭部は青年の右腕に握りつぶされていたから。


376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/11(月) 00:02:47.90 ID:HhQ9pbNd0


炎は燃え続ける。全てを焼き尽くすまで。
燃やすものが消え去るまで、暗く燃え続ける

そうして白髪の青年は夜空へと飛び立っていった。
ストライカーユニットも無く、ただ異形と化したその足で。


.
378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/11(月) 00:05:18.86 ID:HhQ9pbNd0
――――現在

芳佳「幽霊ウィッチ、ですか?」

第501統合戦闘航空団、食堂。自身の作った料理を配り終えて席に着いた
芳佳は、聞こえてきたその単語に首をかしげる

ルッキーニ「うん!なんか、最近夜になると謎のウィッチが現れて
      哨戒中のウィッチとネウロイに襲い掛かってくるんだって!
      何でも、廃棄されたストライカーユニットに宿った想いが
      空を守ろうとして飛んでる物に攻撃してるって噂だよ!」

バルクホルン「ふん、馬鹿馬鹿しい。ただの噂だろう」

エイラ「もしくは、前に遭った人型のネウロイだったりしてナ」

ルッキーニ「あーっ!バルクホルンもエイラも信じてないなー!
      その幽霊ウィッチの姿だって噂で伝わって来てるんだからね!
      髪は真っ白で、幽霊だから右手と右目と足が黒くってー」

芳佳「……な、なんか幽霊っていうよりは妖怪みたいだね」

ペリーヌ「く、くだらない噂ですわね」

ルッキーニ「むーっ! とにかく、幽霊ウィッチは実在するのっ!!」
381 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2010/10/11(月) 00:06:31.80 ID:HhQ9pbNd0
坂本「もぐもぐ……おいお前達、話すのはいいが、そろそろ訓練が始まるぞ?」

芳佳「あ、はい!」

ルッキーニ「うわっ!急いで食べないとー!!」

エーリカ「……ZZZ」

バルクホルン「食事中に寝るなぁハルトマン!!」




芳佳(……幽霊ウィッチかぁ)



坂本「……」

ミーナ「……」


811 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:39:46.68 ID:HhQ9pbNd0
――――――

時刻は深夜一時。月の無い黒い空には嘘の様に沢山の星が輝き、
冷たい空気が満ち満ちている。
生命が全て眠ったかのようなそんな空を、一つの人影が横切っていた。

サーニャ「……涼しい」

サーニャ・V・リトヴャク。
第501統合戦闘航空団に所属するナイトウィッチである彼女は、
現在夜間の哨戒任務に着いていた。
哨戒……といっても、別段警戒している様子は無い。
ここ最近はネウロイの出現頻度が減っており、出現しても小型で弱いモノが精々
といった状況だからだ。

サーニャ「……♪」

ラジオ電波から聞こえるピアノの音を受信しつつ、夜空を進むサーニャ。
この日も、特に何事も無く哨戒は終わり、戻ってから睡眠を取る。
そんな変わらない一日。

そんな変わらない一日に、なる筈だった。


813 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:40:39.76 ID:HhQ9pbNd0

サーニャ「……?」

――――ふと、彼女の魔導針が何かの存在を捉えた。
高高度。鳥や風船の類が舞える位置ではない。
その高度に存在出来るのは、航空機かウィッチ……或いはネウロイだけだ。
しかしながら、彼女の感知能力が捉えたその存在は、航空機にしては小さく、
ネウロイにしても小さい……つまり、人間サイズのものだった。
一瞬ネウロイかと思い警戒を強めたサーニャだったが、その物体が、
恐らくはウィッチであると目星を着け、ほっと息を吐く。

サーニャ「……交信、してみようかな」

ナイトウィッチ同士ならば、こんな場所でも意思の疎通が可能である。
501統合戦闘航空団に所属してから前よりも人付き合いが増えたサーニャは、
何となく、その人影に向けて接近しつつ信号を送ってみる事にした。

サーニャ「……?」

しかし、その交信への返事が返ってくる事はなかった。
夜間訓練中のウィッチか、或いは探査能力が弱いナイトウィッチなのか。
何にせよ、その正体は見極めなけらばいけない。それが彼女の任務だから。
サーニャはその人影に向けて飛行を始めた。


814 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:41:36.88 ID:HhQ9pbNd0
……程なくして、サーニャの肉眼が空に浮かぶ人影を捉えた。
人影の姿は、2人。どうやら密着していた為に遠距離からでは一人に感じたらしい。
一人は、ショートボブの赤髪のウィッチ。どうやら、別の部隊の少女らしい。
彼女は、サーニャの方に向けて手を振っている様だ。そしてもう一人は――――

「……えっ?」

サーニャが声を上げる。それは、何が起きているのか理解が出来なかったから。
目の前の光景が、不可思議過ぎたから。

――――もう一人。赤髪のウィッチに密着していたのは、長い白髪の青年だった。
白髪の青年は、赤髪のウィッチに折り重なるようにして


そのウィッチの首を、漆黒の腕で締め上げていた


「――――!?」


816 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:43:52.91 ID:HhQ9pbNd0
驚愕するサーニャの脳裏に今朝のルッキーニ達の会話が浮かぶ。

『幽霊ウィッチ』

黒い瞳に、黒い右腕、黒い両脚。
ゆっくりと、ゆっくりとサーニャの方へと振り返る青年の姿は、正に噂そのものだった。
そして気付く。赤髪のウィッチは、手を振っているのではなく、助けを求めて
サーニャに手を伸ばしていたのだと。

それに気付いたサーニャは、青年へ向けて急いで銃を構えようとするが、
その直前に青年が取った行動が、その行為を中断した。

青年は、力いっぱい、気を失った赤髪の少女を、投げつけたのだ。
眼下――――海面へ向けて。超高高度から。

目を見開き、全速力で下へ向けて飛翔するサーニャ。
もしもサーニャが落下する少女に追いつけなかったら、海面にた叩き付けられて
少女は死んでしまっていただろう。

サーニャは、少女を全速力で追いかけつつ、一瞬だけ背後を振り返り――――ゾッとした。

幽霊ウィッチ――――青年が、笑っていから。
歪んだぎこちない不気味な笑みを浮かべていたから。人を殺そうとしたというのに。

サーニャはそんな青年の表情を振り切る様に前を向くと、落下していく少女に
手を伸ばし――――その指先は間一髪、少女の服に触れた。


817 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:45:49.73 ID:HhQ9pbNd0
  • ――――翌朝

エイラ「さ、サーニャは大丈夫ナノカ!?」

サーニャが何者かに墜とされた。朝になって急に舞い降りたそのニュースで、
現在501統合戦闘航空団は浮き足立っていた。
偵察に優れたナイトウィッチが撃墜される……それは、部隊の緊張を高める事となる。
なぜならば、感知能力に優れた彼女らがいなければ、ウィッチ達のネウロイへの対応は
後手後手になってしまうからだ。
それでなくとも、この501統合戦闘航空団はウィッチ同士の仲がいい部隊である。
同僚が墜ちたという事実は、彼女らの心を揺さぶるのに十分だった。

ミーナ「落ち着いてエイラさん。サーニャさんは女の子を受け止めた
    衝撃で気絶しただけよ、怪我は無いわ。女の子の方も宮藤さんが
    治癒魔法をかけた事で大分回復してるわ。安心して」

サーニャと仲がいいエイラに対し、安心させる様な声色でそう言うのは、
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ。だが、そんな彼女の言葉もウィッチ達を
落ち着かせるには少し弱かったようだ。


818 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:46:35.22 ID:HhQ9pbNd0
ルッキーニ「幽霊ウィッチだ! きっと幽霊ウィッチの仕業だよ!」

エーリカ「んー……幽霊に墜落されるのは流石に無いかなー」

バルクホルン「……しかし、サーニャの探査能力を以ってもネウロイの類だと
       判断できなかったとなると、何者が犯人なのか分からないな」

ペリーヌ「幽霊だろうと何だろうと、私達を舐めたようなこんな行為、許せませんわっ!!」

リネット「……怖いよ」

騒ぐウィッチ達。噂と憶測と事実が入り混じり、収集がつかなくなっていたその状況を



坂本「――――――静まれっ!!!!!!」


一喝。

坂本美緒のその一言で、ざわめいていたウィッチ達が静まり返った。
819 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:47:26.62 ID:HhQ9pbNd0
坂本「……ゴホン。お前達、不安なのは分かるが、それで妙な噂を撒き散らすな。
   噂というものは伝染する。他の部隊にまで広がって、ネウロイとの戦線に影響がでたらどうする。
   そもそも、サーニャが起きればはっきりする事だろう?
   だったら、それまで待て。それともお前達はサーニャが目覚めないと思ってるのか?」

坂本の言葉に、ウィッチ達は一斉に頭を振る。
それを見た坂本は満足そうに頷く。

坂本「サーニャが起きるまで、この件に関してはわたしとミーナで調査を行う
   お前達は、通常通り訓練をする様に!以上、解散だ!」

全員「「了解!」」

820 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/11(月) 21:48:22.68 ID:HhQ9pbNd0






ミーナ「……美緒、今回の事件、それに最近噂になってる幽霊ウィッチの特徴。
    あの事件の“彼”そっくりね」

坂本「……ああ、そうだな。もしそうだとすれば、これはわたしの弱さが招いた事態だ」

ミーナ「違うわ! あの事件は……彼は……」

坂本「……いいんだミーナ。私が一番わかっている。
   あいつを救えなかったのは、結局はわたしなんだからな
   だから、今度こそは――――わたしは、責任を果たす」

そう言った坂本の瞳には、後悔、諦観、怒り、悲しみ。
様々な感情が入り混じった色が、浮かんでいた。


490 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/14(木) 00:25:34.63 ID:rHwLfP390
―――――――――――――
俺「落ちろ落ちろ落ちろ……はは、はははははは!!!!!」

異形(ネウロイ)と化した漆黒の右眼は、ウィッチが展開する魔力によって
構成された障壁の脆弱な部分を見つけ出し、漆黒の右腕が力ずくで、
その部分をねじ開く。

俺に障壁を突破された時のウィッチ達の表情ときたら、見物だった。
驚き、次いで必死になって撃鉄に指を掛け、俺というネウロイの迎撃にかかる。

引き金を引くのだ。
最初に俺の姿を見た時は、話し合いだの何だの言っていた癖に、
俺が彼女達の命に届く所まで近づくと、必ず引き金を引く。
ネウロイなのだと、化物なのだと、敵なのだと、綺麗な理屈を並べて。

だから俺はウィッチ達を片っ端から落とした。
殴り、ユニットを破壊し、殺すのではなく落とした。

仮にも人間だった俺を殺す気で攻撃するウィッチを見て、
綺麗な彼女達を汚せた気がして、貶められた気がして、俺は喜んだ。
それで俺の胸の奥で燃える復讐という名前の黒い炎が慰められる気がしたから。


493 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/14(木) 00:26:30.68 ID:rHwLfP390
―――――そうして連日連夜、魔女達を貶め続けた結果、
今、俺は黄昏の空の中で、十数人のウィッチに包囲されていた。

ウィッチA「追い詰めたわよ、ネウロイβ」
ウィッチB「怪我をしたあの子の仇、そして私の故郷の仇、取らせて貰うわ!」

俺「くく……はははは。もう少しいけると思ったんだけどな。流石に相性が悪いか」

ネウロイβ……つまりネウロイの亜種という俺に与えられた呼称に
憎悪をぶつけるそのウィッチ達……交戦開始から半分以下に数を減らした彼女達を見て
俺はそう呟いた。
既に俺の左足は銃撃によって吹き飛び、右脇腹には大きな風穴が開いている。
普通の傷ならば、ネウロイと化した俺の身体は即座に回復を始めるのだが、
現在その速度は遅々たるものだった。魔力を帯びた攻撃に、ネウロイは弱いのだ。
それでも痛みがほとんど無いのは、俺が人間でなくなってしまった証拠か。

俺は最後に周囲を包囲するウィッチ達を見渡す。

「……はは。どいつもこいつもいい目だ。自分を正当化する欺瞞に溢れた目だ。
 いいぞ、そのまま俺を殺せ――――そして呪われろ。二度と解けない呪いにかかれ!!」

狂ったようなぎこちない笑みを浮かべる俺に対して、ウィッチ達は一瞬
たじろいだ様な目をしたが……


494 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/14(木) 00:27:20.66 ID:rHwLfP390
ウィッチC「躊躇う事はありません!あれはネウロイです! 総員、攻撃!!」

その言葉と共に、全員が撃鉄を引いた。
向かってくる銃弾――――それに貫かれて、無価値で呪われた俺の人生は、
新たな呪いを残して終わる筈だった。

だが、

「――――破っ!!!!」

キィン、と無数の金属がぶつかりあう様な音がし、彼女が現れた。
黄昏の闇の向こうにほんの僅かに残った青空を背にして、その「サムライ」は現れた。

パラパラと落ちていく切断された銃弾が夕日を反射する空の中。

それが復讐に染まった俺と、彼女の初めての出会いだった。


――――――――――


496 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/14(木) 00:28:07.06 ID:rHwLfP390
  • ――――現在

ミーナ「ウィッチの被害、重症9人、軽症36人、ストライカー破損43人
    ……とんでもない数字ね。死亡者がいない事だけが救いだわ」

サーニャが落されたその日から、『幽霊ウィッチ』はその猛威を振るい始めた。
一晩につき数人のウィッチが襲われ、連合軍はかなりの被害を蒙っている。

宮藤「……こんな事をするなんて許せません!!」

バルクホルン「新型のネウロイの襲撃といった話だが、明らかに計画性を感じる行為だな。
       まさか、ネウロイが人と同じ様な知識を身につけたというのか?」

エーリカ「サーニャも、人間の姿をしてたって言ってたからね」

501部隊の中でも、『幽霊ウィッチ』に対する感情が恐怖から怒りへと変化していた。
当初はウィッチが犯人なのではないかとの噂も立ったが、現在は連合軍本部から
『幽霊ウィッチ』の正体が新型のネウロイ――――通称『ゲシュペスト』と名付けられた事もあり
その感情を否定する要素は何もなくなっている。

そんな中、坂本だけは普段の豪快な態度がなりを潜め、
何かを考える様な様子で目を瞑って椅子に座っていた。


499 :幽霊ウィッチ[sage]:2010/10/14(木) 00:29:36.88 ID:rHwLfP390


「……よし」

そうして暫くして、何かを決意したかの様に一言呟くと、坂本は目を開き立ち上がり

「――――先程連合軍本部から通達された指令を通達する。
 連合軍第501統合戦闘航空団は、
 幽霊ウィッチ、通称『ゲシュペスト』の破壊を行う!!」

そう宣言した。


――――――


投下はここで終わっている……?

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最終更新:2012年11月25日 18:03
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