不確定性原理の話
◯注意事項
- 今回のお話は、物理の話が多分に出てきます。なので、数式とか難しい話がいやだと言う方は "スルー推奨" です
- この番外編は内容ゆえに"実験的な側面が強い"です 反応を見てどういう感じになるのかを見ようと考えています
- 作者は素人です。自分なりの解釈が多かったり、個人の考えを入れてたりするので、かなりの所で間違えている可能性が大です。その時はご了承下さい。間違えてたらご指摘いただけると幸いです
(これを全て鵜呑みにしないでくださいってことです)
<修正>
一部修正しました。アインシュタイン云々の話がディラックの海云々の話に変わりました
ニパ「なあ、俺。聞きたいことがあるんだけど…聞いてもいい?」
俺「おう。 それで、質問というのは?」
ニパ「最近聞いたんだけどさ、不確定性原理が破られたっていう話は本当なのか?」
俺「不確定性原理の話ねえ…。そういえばニュースでやってたっけ。 というか急にどうしたんだ?熱でもあるのか?」
ニパ「んー、なんというかさ…周りの皆が凄い騒いでたからさ」
俺「なるほど。 それで、知ってるかもしれない俺に白羽の矢が立ったと?」
ニパ「うん、俺は技術士官だしさ、知ってるかと思って…」
俺「うーん、知ってるには知ってるけど、専門分野が違いすぎるしな。…でも素人レベルでもいいというなら答えるけど」
ニパ「その程度でもいいよ。 それでさ、破られたっていうのは本当なの?」
俺「破られたっていうのはちょっと語弊があるかな。 正確には、不確定性原理の式に項を2つ足してやって位置と運動量の誤差を
0にすることも可能だっていうのが正しい。要は、精度を高めることができますよっていうのを提唱したわけだ」
ニパ「なるほど、よくわからんな…。そもそも不確定性原理って何?」
俺「まずそこからか。 んーっと、簡単に言うと、"位置と速度(運動量)を同時に求めることができない"っていう話だな」
ニパ「まるでイメージが沸かないんだけど…どういう原理でそうなるんだ?」
俺「ひとつ例をあげよう。ある粒子…例えば電子の位置や運動量を同時に測定したい場合、光を当てて観測するわけだが、
その場合色々と面倒事が生じるんだ。
波長の短い光で測定したとすると、位置は正確に計れるが、光子のエネルギーが高いため粒子の速度が変わってしまう。
一方で、波長の長い光で測定すると、エネルギーが低いので正確な速度が求められるが、光の波が電子を通過しやすいため
位置を正確に測ることはできなくなる、ということだ」
ニパ「んー、よくわからないな。 ところで俺はさっき語弊を招きやすいって言ってたけど、どういう意味?」
俺「うーんと、それには数式を使って説明する必要があるかな」
ニパ「うへー、数式かあ…。それはちょっとなあ…」
俺「そこまで難しい計算とかはださないので、安心してくれ。中学か高校レベルの知識があれば大丈夫だ」
ニパ「ほんとかなー」
俺「どうしてもわからなくても、ニュアンスで伝わればいいかなって感じ。やはり不確定性原理の話はややこしいからね。
俺自身、本質的な部分はノータッチだし。
さて、改良前のハイゼンベルグの不確定性原理の式は以下のようになることが知られている」
Δx・Δp≧h/4π(定数) …(1)
ここで、
h:プランク定数
Δx:位置の誤差
Δp:運動量(速度)の誤差
ニパ「この式だけ見てもわからんぞ」
俺「当然これだけじゃ、わからないだろう。この式の意味はみたまんま、"位置と運動量の不確定さの積はある定数よりは
小さくならない"という式だ。つまり、"位置と運動量の誤差の積がその定数以下にならないので、これ以上の精度は望めない"
ということだ。
まずこの式の意味を知るには、厳密性にはかけるが式を以下のように書き換えるとわかりやすい」
Δx・Δp=定数 …(2)
俺「さて、ここでひとつ一例をあげよう。例えば、位置を測定によってある程度まで求めたとしよう。すると、位置の誤差Δxは
必然的に小さくなるだろう。しかし右辺は定数であるため、式が成り立つためには運動量の誤差Δpは大きくなる必要がある。
そしてもちろん、運動量をある程度まで求めたとするならば、運動量の誤差Δpは小さくなり、位置の誤差Δxは大きくなるとい
うことも成り立つ。故に、この式は不確定性をうまく説明しているといえよう」
Δx・Δp=定数
大 小 ←どちらも成り立つ!
小 大
ニパ「なるほどなー。それで、語弊云々の話とどう関係があるんだ?」
俺「うん、それでだね…もし"右辺の定数を小さくした"とすればどうなる?」
ニパ「右辺が小さくなるから左辺も小さくなるね…。そうなると、ΔxとΔpの積も小さくなって…あ、そうか。 ΔxもΔpの値も
小さくなるか。 …ということは、測定の精度をあげるにはその定数を小さくすればいいのか!」
俺「そのとおり。だから、精度をあげるには右辺の定数を小さくすればいいというわけだ。じゃあ、これを踏まえて
(1)の式をもう一度眺めてみよう」
Δx・Δp≧h/4π …(1) (再掲)
俺「"位置と運動量の誤差の積が、定数(h/4π)以下にならないので、これ以上の精度は望めない"と先に述べた。じゃあ、
この不等式において右辺を小さくしてしまえば…」
ニパ「確かに右辺の値を小さくすれば、同時に求めようとしている位置と運動量の測定値の精度は高められるな」
俺「そうそう。 これで不確定性原理と精度の関わりについてわかってきたかと思う。ここで、ようやく小澤さんの式が登場する
わけだ」
ニパ「お、やっとここで登場か」
俺「さて、彼がやったことというのはハイゼンベルグの式をいじったことによって、従来の測定限界を破ることに成功した、という
ことだ。彼は、元の式に2つの項を追加した。すなわち…」
Δx・Δp +σx・Δp + σp・Δx ≧h/4π …(3)
ここで、
σx: 測定前の位置の量子ゆらぎ
σp: 測定前の運動量の量子ゆらぎ
ニパ「な、なんじゃこりゃ…。 なにがどうなってるんだか…」
俺「んー、なんというかね。 これは俺も説明が難しいね。量子ゆらぎに関しては、もともと物体に備わっている性質という
イミフな話らしいので、これは俺自身も確かなことは言えない。だが、少なくともこの項を追加したことによって精度が
高まっているのは確かだ」
ニパ「これでどうやって精度が高まっているって言えるんだろう」
俺「従来の式(1)のままだと、位置と運動量が同時に定まったとき(Δx=0、Δp=0)、式が成り立たなくなってしまうんだ。
ΔxとΔpのどちらも0になると、おかしなことになる。つまり以下のような感じだ」
Δx・Δp≧h/4π …(1) (再掲)
もしここで、Δx、Δpを0にすると…
0≧h/4π ←式が成立しない!
∴位置と運動量を同時に求めることができない
俺「さて、これで位置と運動量が同時に求まらないことが数式から改めて分かったが、位置と運動量をなるべく正確に求めたい場合
どうするか。そこで(3)の追加項が鍵となるわけだ。
結論から言うと、(3)ではΔx、Δpを同時に0にすることを可能にしている。
なぜならば、
もし(3)の量子ゆらぎσxやσpが∞(無限大)であったとすれば、ΔpとΔxを同時に0にしても(3)式は成り立ってしまうからだ」
ニパ「あれ? 追加された項は∞・0だから左辺は全部0になるんじゃないの?」
俺「実を言うと、そうはならないんだよね。これは後で説明するけど、∞×0の値は無数にある。だから、∞・0が定数
になる場合ももちろんある。だから、(3)の左辺は0にならずに、式を成り立たせることができる」
ニパ「なるほどなー。 (3)式は項を追加することで位置と運動量の誤差を0にすることも可能にしたということか…」
俺「そのとおり。 そして、さらに(3)式の追加された二項を右辺に移動させて元の式と比較してみると…?」
Δx・Δp ≧h/4π - (σx・Δp + σp・Δx) …(4)
Δx・Δp≧h/4π (元の式)
ニパ「元の式から(σp・Δx + σx・Δp)が引かれてるから、更に右辺の定数が小さくなってる。ということは、
測定限界を超えることが可能となるわけか!」
俺「そう、だからハイゼンベルグの式と比べて、精度が高められるということになるわけだ」
ニパ「測定誤差が原理的に小さくすることができるというのは理解できたんだけど、もしこれが正しいとして…
不確定性原理は破られたということにはならないんだ?」
俺「小澤さんがやったのは、元の式を改良したということだけだから、根本的な部分ではかわらない。だから、不確定性原理
は破られたということにはならない。もし破ることが出来るのなら、それこそまさに世紀の大発見だろうね」
ニパ「そう簡単には破られないか。ところで、不確定原理はどこかで利用されてたりするのかな」
俺「実は意外なところで不確定性原理が使われてる。今までは位置と運動量の不確定性の話だったけど
エネルギーと時間の間でも不確定性が成り立っている」
ΔE・Δt≧h/4π …(5)
ここで、
h:プランク定数
ΔE:エネルギーの誤差
Δt:時間の誤差
ニパ「不確定性って他にもあるんだな。 知らなかったよ…」
俺「他にもスピンの成分の間でも不確定性がどうとかいろいろあるから、興味があれば調べてみるといい。
さて、ここからさきは豆知識程度で留めてもいいわけだが、(5)式は宇宙に関しても重大なことを示している。
宇宙は無のゆらぎから生まれたという話は聞いたことあるかな」
ニパ「あーあるね。でも全くどういう意味かさっぱりわからなかったけど」
俺「まー、そこらへんの話も色々と複雑なわけだけど、(5)式を次のような観点から考える。即ち、
もし時間がごくごく短時間であれば、Δtが非常に小さくなり、この式が成り立つにはΔEは非常に大きく
ならなければならない。
これは物理的にどういう意味をもたらすのかというと
"何もない無の世界でも極短時間であれば、大きくエネルギーがゆらぐ"ということになる」
ニパ「極短時間ではエネルギーが大きくゆらいでいるのはわかったんだけど、それがどう宇宙と関係してるのかな」
俺「そこで、ディラック方程式の登場となる。
この方程式によると、例えば電子は負のエネルギーを持つことを許すという解が得られた。
ディラックはこの解から真空が負のエネルギーを持つ電子で満たされていると考えた。
すなわち、負のエネルギーを持つ電子に大きな正のエネルギーを与えれば、それが正のエネルギーになったときに電子が
真空から現れ出ることが可能となったわけだ。
じゃあ、真空を満たしている負のエネルギーを持つ電子が、極微小な時間で電子の持つエネルギーが大きくゆらいで、
正のエネルギーになるのなら…」
ニパ「あ、なるほど。"極短時間の間に、電子のエネルギーが大きくゆらぐのなら、正のエネルギーになった瞬間に電子が真空中に
出現する"ということになるよね!」
ウルスラ「そういうことです。 極短時間の世界では無から有がうまれ、絶えず物質が生成されては消えているわけです」 ヌッ
俺・ニパ「……」
ウルスラ「…?どうかしましたか?」
俺「いきなり、無から現れでないでくれ。 …心臓が止まるかと思ったじゃないか」
ウルスラ「面白そうな話をしていたので、私も混ざってしまいました。それで、これが宇宙とどう関係するのか、でしたよね?
つまり、無の揺らぎから電子が生成されるなどして、真空であっても粒子が発生して、ビッグバンを起こすことが
可能となるのです」
ニパ「なるほど、ウルスラの説明はわかりやすいなー。しかし、ビッグバンにも関わっているなんて知らなかったよ…」
俺「不確定性原理はひょっとしたら、宇宙の起源を示しているのかもしれない。そう考えると、この世界の物理現象は非常に
奇妙であるということになるな」
ウルスラ「…ひょっとしたら突然出てくるネウロイもそういう類なのかも?」
俺「かもなー。とにかく世の中は不思議でいっぱいってことだな」
ニパ(あれ? ウルスラがここにいることにはあえてつっこまないのか…)
俺「ところで、ニパ。 ハンガーの掃除はどうしたんだ?」
ニパ「あー、すっかり忘れてた!! 俺、ウルスラ、今日はありがとね。んじゃ、私急いでいってくる!」
タッタッタ
俺「…曹長も現れたり消えたり、面白いよなあ。 なあ、ウルスラ……っていないし!」
この世界は不可解なことで満ちあふれている…、がしかし、ウルスラもまた不可解な謎に包まれている。
…俺は静かにそう思うのであった。
おわり
<補足説明>
俺「最後に∞×0は何故0にならないのか。これは後で説明するとしたので補足しよう。∞×0は一般に値が無数にあるので、不定形と
呼ばれる。これが数学上のややこしいところだが、∞はいわゆる数ではない。無限大に増加していくというよという
のを表現している。さて、∞×0は値が無数にあるので、どれをとるのかはわからないが、その値が定数になる例をあげよう。
例えば以下の式は定数となる」
xを無限大まで増加させた時、
(1/x)・x=1
0 ・∞ =定数 の形
俺「これで、∞×0は定数になることの例を示すことができた。これで納得行かないという方は、数学の極限で調べる
といいだろう。そういうわけで、この話はここまで。また次の機会にてお会いしましょう。
…話はここまで長くなったけど、ご清聴ありがとうございました」
最終更新:2012年02月09日 19:55