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第1話 新年度早々やって来た不幸

2012年4月の初旬 近畿地方某所のアパートにて。

俺「今日から3年かー。独り暮らしも慣れたもんだなぁ」

今年度から高校3年生となる俺青年は春休み気分もとっくに抜けてしまっていたので6時半には起床し、朝食を摂り、洗濯も済まし、制服にも着替え終えていた。
現在はというと愛用のノートパソコンに向かってなにやらしている。

俺「ああ、ストパンは面白いなあ……。EMT。映画も公開したし、3期来て欲しいね」

どうやらアニメ、ストライクウィッチーズのDVDを鑑賞しているらしい。
3月17日に公開された映画を見てから興奮が冷めやらぬと言った様子で、その日からおさらいをしているのだ。
元々はと言うとこの俺青年、第二次世界大戦のことを調べることが好きなだけの少年であったが、中学生の頃に偶然目にしたアニメ、このストライクウィッチーズにハマってしまったのである。

俺「501の話も良いんだけどなあ。俺的には扶桑陸軍の第一飛行戦隊の面々が良いなあ。特にヒガシさんが」

アニメを見終わった俺は次に本棚に取り揃えたストパンのライトノベル、マンガの中から好みのものを読み漁り始めた。
昔はここも小説などを並べていたのだが、今ではストパン関係の本やらゲームソフトやらCDやらをメインに並べている。
某密林通販サイトやオークションにお世話になるうちにこうなったのだ。

俺「んー。やっぱりヒガシさんくぁいいなあ。…………ってもう8時じゃないの。そろそろ出ないといかんね」

彼が時計に目を向けると時刻は既に8時になろうとしていた。自転車通学で通う学校までは15分程度掛かる。
25分以内に着けば良いのでもう少しゆっくりしていても良いのだが、新年度早々遅刻するというのもなんだか気が引けた。

俺「うぃー。じゃ、いってきまーすっと!」

新学期でテンションが少し高揚しているのか、俺は自分以外誰も居ないワンルームの自室にそう言った後飛び出した。


アパートの前にある駐輪場

俺「今日もクロスバイクにお世話になるわけで」

スポーツブランドのロゴが入った黒いエナメルバッグを高校入学時から使っているクロスバイクの前かごに投入すれば彼は意気揚々と漕ぎ出した。

俺「おはようございまっす!」

近所のおじさん「おぉ、俺君おはよう。今日も元気だねえ。今年から3年生かい?」

俺「はい、そうですよ!」

近所のおじさん「そうかそうか。若いって良いねえ。青春を有意義に過ごすんだよ?」

俺「ははは、そっすね! じゃ、行ってきます、おじさん!」

俺はホッホッホと笑うおじさんに対し爽やかな笑顔を見せた。

お婆ちゃん「おや俺君今から学校かい? こないだは春休みなのにどうもありがとうねえ。おかげで助かったよ」

少し進むと今度は家の前を掃除しているお婆ちゃんと遭遇する。俺はたまにこのお婆ちゃんの手伝いをしている。
祖母が早くから他界した俺にとってはこのお婆ちゃんこそが祖母なのかもしれない。

俺「おはようお婆ちゃん! 春休みのことは俺が勝手に手伝ったんだから気にしないで!」

こんな風に近所の人と挨拶を交わしたりしながら通学路を走る。
ところどころ話込んだりしていて数分時間を喰っているが、まだ大丈夫だろうと俺は考えていた。

俺「(春風が心地良いなあ……。お、桜並木だ)」

俺は思わずクロスバイクを止めてしまった。目の前には街路樹に植えられた桜が開花して、見事に色づいている。
今年の3月は寒く、桜の開花が例年より遅れたらしいが始業式、また入学式のこの日にはキチンとその花の姿を見せた。

俺「こういうのは写真に撮りたくなっちゃうよね」

時間にまだ余裕があると踏んでいる俺はエナメルバッグから愛用のデジタル一眼レフを取り出した。
俺は高校からは帰宅部だったが、その代わりに毎日こうして自分の心奪われた風景を写真に残している。
言ってしまえば一種の趣味のようなものだ。ちなみにカメラは自分のバイト代を貯めて購入したものである。

彼は構図を確認した後、青空を背景に1本の道が真っ直ぐと伸びその両端を桜が彩る写真を撮影した。
その他にも角度を変えて桜だけが写った写真や、ビル群が桜に囲まれた写真を撮影する。


しばらく何枚かの写真を撮った俺は再びクロスバイクに跨って桜並木の下を通り、突き当りで交差点へと差し掛かった。

俺「(この交差点まで来れば後5分足らずで学校だな)」

学校はこの交差点を曲がって数分のところにある。
今は歩行者信号が赤なので止まっているが、現在8時12分。いくら掛かったとしても8時20分までには到着できる算段だ。

ファンッ! 

俺「な、何だ?」

俺は目線の先のものを見てキョトンとした。2トントラックが独特のクラクションを鳴らしながら猛スピードでこの交差点へやって来る、否突っ込んで来るではないか。
軌道は明らかに不安定で、いつ対抗車やガードレールに当たっても不思議では無かった。それもそのはず……。

トラック運転手「Zzz……Zzz…………」

トラックの運転手――筋骨隆々の中年男性がハンドルに突っ伏していた。……居眠り運転である。
トラックは何が起こったか、交差点で止まっていた俺を目掛けて突き進んでいる。俺の生存本能がけたたましく警告音を脳内に鳴らした。

俺「春眠暁を覚えずとか言うけどさぁ。なんで運転中に寝てんのぉぉぉぉぉぉ!? ってやべっ!」

ガッシャアアアアアアアン!!!!

俺「ぎゃあああああああああ!!!!」

俺は撥ねられた直後、激痛を感じた。クロスバイクの下敷きになってトラックに踏みつぶされかけたらしい。
最悪即死の所だったがまだ意識はある。だが俺にとってはこんな激痛を味わうくらいならいっそ死んで楽になってしまったほうがまだマシだった。

俺「(マジかよ……。新年度早々ついてねえ……。俺、死んじまうのかな)」

言葉も激痛で口に出すことが出来ない。途切れ途切れだった意識はついに限界を迎え、俺はそのまま意識を手放した。
しかしそれから間もなく、歩道の上に横たわった俺とエナメルバッグは白い光に包まれていつの間にか町から消えた。


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2012年3月24日投下。

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最終更新:2012年03月26日 21:15
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