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第2話 気づけばそこは知らない天井 

1942年 北アフリカのトブルクは一面砂漠の不毛の地であった。
昼には気温50℃を超え日差しが容赦なく照りつけ、夜になれば昼間とは対照的に氷点下まで冷え込む。
人類が住むにはとても厳しい環境のここは人類連合軍アフリカ軍団の拠点であった。
人類の希望、アフリカの星ことハンナ・ユスティーナ・マルセイユ中尉をはじめとするウィッチたちもこの場所に部隊を編成している。

加東「朝から暑いわね……。というか昨日もマルセイユに付き合わされたから少し頭が痛い……」

大き目の天幕から姿を現した女性は加東圭子。扶桑皇国陸軍の大尉である。ついこの間まで元ウィッチで扶桑皇国の従軍記者として活動していた彼女だが、再びウィッチとして任官された。
マルセイユに面倒事を押し付けられた形であるが、統合戦闘団「アフリカ」の司令官である。

加東「ん、あれは何かしら……?」

彼女の視線の先には紺色の固まりのようなものがあった。しかし数十メートル離れた先にあるのでそれが何なのかは見当がつかなかった。

加東「とりあえず行ってみましょう」トテトテ

俺「………………」

加東「な、なにこれ……!?」

加東は絶句せざるを得なかった。目の前で黒い肩掛けのバッグを持った15,6程に見える少年が“頭や胸から血を流して”横たわっていたのだから。

加東「呼吸をしてない……。でも脈はあるし。衛生兵!」

衛生兵を呼んだ後、加東は倒れていた少年に衛生兵が来るまで人工呼吸を施すことにした。……所謂マウストゥーマウスだがそれを気にしてられない、一刻を争う状況であった。
気道を確保してしばらくの間人工呼吸と胸骨圧迫を繰り返す。

俺「……げふっ! ごほ!……う、うぅん……」

加東の人工呼吸が功を奏したか、俺は呼吸をし始めた。しかしまだぐったりとしていて油断ならない状況でもあった。

加東「……良かった! 呼吸は戻ったみたい。……あとは専門家に任せないと」

衛生兵1「加東大尉! お呼びですか!?」

慌てた様子で加東の元に衛生兵たち数人が担架を持って駆け寄ってくる。砂の上でぐったりと横たわる俺を見て状況を察したのか、担架に俺を乗せた。

衛生兵2「とりあえずこの少年のことは我々にお任せください!」

加東「ええ、お願いするわね。彼の鞄は私が持っておくわ」

加東がそう言うと衛生兵たちは医療用の天幕まで一目散に駆けて行った。
彼女は衛生兵たちの姿が見えなくなるまで見送ってから司令官の山積した仕事をするべく自分の天幕に戻る。


加東「……って! よく考えてみればあれ、ファーストキスじゃない! でも。人工呼吸ならきっとノーカウント! きっとそう!」

そう自分に言い聞かせたものの、加東はしばらく俺の顔と唇の感触が頭から離れず仕事が手に着かなかった。


医療用の天幕

俺「すぅ……すぅ……」

俺は4時間も経てば俺は衛生兵たちの尽力もあってか、安らかな表情で規則正しく寝息を立てていた。
これがさっきまで命の危うい状況だったというのだから驚きだ。しかし頭に巻かれた包帯などは確かに彼の重症さを物語っている。

と、天幕に誰かが入って来た。

加東「彼の容態はどう?」

稲垣「し、失礼します」

やはりというか、俺を真っ先に見つけて救助した加東であった。その後ろには12歳の扶桑陸軍ウィッチ、稲垣真美軍曹がちょこちょことついている。
140cmにも満たない小柄な体だからか、彼女より20cm以上身長が高い加東の後ろに完全に隠れてしまっていた。

衛生兵1「あ、加東大尉、お疲れ様です。少年は大分良くなりましたよ。元々かなり頑丈にできているのかもしれませんね。こんなに回復の早い患者は初めてですよ」

加東「そう……怪我はどんな感じだったの?」

衛生兵1「肋骨や腕の骨が骨折、頭部からも出血していましたし、他にも結構きつい打撲をしていましたね。正直こんな安らかに眠れるはずない怪我ばかりでした」

加東「正直固有魔法でもあるのかと思うくらい早い回復ね……」

しかし加東はその仮説をすぐに否定した。男のウィッチというのは世界で数少ない上に自身もあまり聞いたことが無いからだ。


俺「う、うぅん……」

稲垣「ケイさん、患者さんが目を覚ましますよ」

先程から興味津々に俺を見ていた稲垣の言葉で加東と衛生兵が会話を止めて彼の方を注視する。

俺「……知らない天井だ……」

加東「目が覚めた?」

俺は反射的にはいと返事するものの、声の主の方を見て絶句した。
白い着物に緋色の袴、まるで巫女さんのような扶桑陸軍の正装を着こなした猫っ毛の女性。

俺「(なんでヒガシさんが居るんだ? コスプレにしたってあまりにもそっくり……夢でも見てるのかな)」

加東「良かった。本当に吃驚したわよ。砂漠の上に血を流して横たわっているんだから」

衛生兵1「君は肋骨や腕を骨折して打撲気味のようだね」

加東に言われ自分の格好を見た。元々着ていた制服から着替えさせられていたのであろう。
また、衛生兵に言われて体を見ると骨折していると教えられた部分からは多少の痛みのようなものを感じるが、事故の直後に感じた激痛とは比べ物にならないほど軽い。
打撲していると言われたものの体の節々から少しだるさを感じる程度だ。

俺「……? 特に骨折や打撲をしたような痛みは感じませんよ……?」

加東、稲垣、衛生兵1「え」


あの後、衛生兵が俺の怪我をしていた幾つかの部分に確かめるように触れたものの、

俺「特別痛みの酷い部分はないです」

俺はこの一点張りだった。

加東「と、とりあえず、大丈夫に越したことはないわね。色々と聞きたいことがあるから、ちょっと私の天幕まで来てくれる? ええと……」

俺「わかりました。あ、俺は俺です。お好きに呼んでください(つか一体どうなってるんだろう……?)」


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3月25日投下

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最終更新:2012年03月26日 21:14
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