(左:荒月)
何の因果かはわからないが、自分としても理解のし難い事で今ここを歩いている。
――VIP無双学園。
パンフレットに筆で書かれた、このごんぶとな文字を探して。
……。
………。
おかしい。
さっきから俺は10分以上、この学園の校門を探して歩いている。通りに植えられた桜が吹雪が舞い散らす中、俺の足取りは重かった。
「ああ、これがエロゲーだったらなぁ……」
きっと可愛い幼馴染が俺の肩を叩いて
「おはよう、荒月君!」
って言ってくれるんだけどな。
はぁ、と溜息をこぼした。
「VIP無双学園、ねぇ」
学園の名前からしてカオスな空気を醸し出している。『来たれ!挑戦者!』と銘打たれたパンフレットを昨日渡された。その中身をちらりと見たのだが、太い筆で『心・技・体』と書かれているだけだった。
どんな学校か見当もつかないまま、俺はこうして校門を探している。
――――――――。
ふと、桜を見上げるために俺は足を止めた。
あれはそう。一ヶ月かそこら前の事だった。
(左:荒月 右:父親)
「貴様は鈍り過ぎている」
突然親父が鬼の形相で俺の部屋の扉を蹴破った。
「貴様、それでも我が遺伝子を継ぐ者であるか」
「え?いや、俺は母さん似だけど……」
「少しなりとも我が血を引くのであれば、我はそれを良しとせぬ」
俺の精一杯のジョークはじろりと睨まれ、一蹴された。
「転校せよ」
「は?」
「我は貴様が益荒男となるまで、一切の援助を認めぬ」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
「学校へ行き、部活もせず帰り、帰ってくるなり深夜までネットゲェムとやらに現を抜かす
貴様はもう引き返せぬところまで堕ちているのだよ」
「いや、そうじゃなくて!今の学校とかは!」
「安心せい、退学手続きはとうに1ヶ月前から済ませてある」
「え?」
どうりで、最近俺の名前が呼ばれなかったわけだ。あれ、俺この1ヶ月学校に、あれ?
「3日後にここを発つ、片付けておけ」
そういうと親父は俺の部屋から出て行った。
「ああ、なんて悪い夢だ」
そうつぶやいて俺はもう寝ることにした。
(左:荒月 右:母親)
「新規ー、起きなさーい?」
1階から母さんが俺を呼んでいる。
「新規ー?」
どたどたと階段を駆け上がる音が俺の耳に聞こえた。
「ほーら、今日から引越しの準備なんだから起きてよー」
ひっこし……?
「な、何の話?」
「あら、お父さんから聞かなかったの?」
あれは夢ではなかったのか。
「ほら、さっさと起きて用意してね
朝ご飯はできてるから」
──────────。
(左:荒月)
あの理不尽な親父の言葉に自給できる能力のない俺はただ従うほかなかった。
何事も無かったかのように日にちが経ち、そして俺は今道に迷っている。
「くそ、母さんは家にいるって言い張るし……」
その時、この学園の制服を着た女の子が前を歩いていることに気づいた。
あまり女の子に話しかけるのは得意じゃないが、四の五の言っていられない。
「あの、すみません……」
チキンな俺は精一杯の声を振り絞ってその女の子に話しかけた。
最終更新:2009年12月18日 15:58