(左:荒月 右:???(リダン))
「はい?」
綺麗な黒髪は風に乗り、女の子はふわりとこちらを振り返る。
が、彼女の顔を見て俺の顔は凍りついた。彼女は、形容しがたい不気味な仮面を被っていた。
「何か?」
「あ、あ、いえー!その、ここの学園の方ですよね?」
笑顔を作り直し、びびって裏返っていないぎりぎりの声で質問を投げかける。
「はい、そうですが」
「今度この学園に転入することになったんですが、校門はどちらにあるんでしょうか?」
「この先をもう数分歩いたら着きますよ」
「どうもありがとうございます」
「いえ」
そう言うと彼女はすたすたと歩いていった。あんな奇抜なファッションが認められてるのか……。
そう思うと俺の入園したくない気持ちは加速するのであった。
────────。
(左:荒月 右:おっさん)
彼女の言う通り、あの後数分でついた。
やはり、個性的なファッションな人々が校門から中へと入っている。
「よく来た、よく来た」
ガタイのいいおっさんが校門前でガッツポーズをしながら、学校に入っていく生徒に話しかけている。
「ん……?」
目が合った。そしてにこやかに微笑まれた。
「君が転入生かい」
「そ、そうです」
おっさんは俺の肩を激しく叩く。
「では、ここにある武器の中から好きなものをひとつ選んでくれ」
「へ?」
いきなり何を言っているんだこのおっさんは、と内心俺は不安になった。
そして学園へ入っていく生徒をよく見てみると皆、腰や背中に武器を携えている。一体どういう学園なんだここは……。
「どうした、武器の説明が欲しいのか?」
「え、いや」
「そうだな、威力だけを求めるなら戦斧、双戟
機動力を活かしたいなら双剣、多節鞭、鉄鈎
必殺技を使いたければ偃月刀や直槍なんかどうだ」
おっさんは勝手に語り始めた。俺は近くにあった鉄製の剣を取り、これが切れるのかどうか不安になった。
だんだんと遠目で母さんが偲ばれてきた。小さなころは、幸せだったな。
──そして今、俺はとんでもないところに入学しようとしています。
「で、どれにするんだ」
現実逃避をしていた俺をおっさんは力ずくで引き戻した。
「え、あーっと……」
「早くしないと私の独断と偏見で決めちゃうぞ☆」
「こ、これ切れるんですかね?」
「当たったら痛い、くらいだな
それに気絶したらセーフティかかるから安心してくれ」
よかった、死にはしないみたいだ。生まれてこの方、暴力的な喧嘩はしたことがない俺にとって痛いことも十分に嫌だったが、これ以上贅沢は言えない。
「じゃ、じゃあ……」
何にしよう。とりあえずなんかやばそうな人に絡まれたら逃げればいい。ゲームなら……やはり勇者は剣だよな。
「これにします」
さっきから握り締めていたメタリックな剣をおっさんに差し出した。
「おお、鉄剣にするのかい。こいつはオールマイティに戦えるからな」
うむ、とりあえずこいつでいいだろ。剣の刃にキラッと太陽の光が反射した。
「それでは……こいつを……」
おっさんがごそごそとポケットからから何か取り出す。
「こいつを額、首、肘、腰、足、背中につけてくれ」
おっさんが取り出したのはとても小さな袋だった。中にはよく目を凝らさないとわからないくらいの小ささの粒が入っていた。
「これは……?」
「ダメージスカウターといって、ダメージが一定値に達すると強制的に気絶させる道具だ
これがないととことん殴られてほんとに死ぬからな」
「……(^^ω)」
おっと、顔文字になっている場合じゃない。さっさとつけないと死んでしまう。俺はおっさんから指定された位置にその小さな粒をそそくさと引っ付けた。
こんなところで死ぬわけにはいかない。17歳童貞、ここで死んだら俺はどうしようもないカスだ。
「それでは、転入生君を学園長室まで案内しよう」
おっさんはウキウキと俺の手を引く。
中に入ると、園舎は立派なものだった。ところどころに傷があるがごんぶとな柱はしっかり立っている。
手を引かれながら横目で見えた生徒は、装飾や大きさが俺のとはまるで違う武器を持っていた。
「ほら、着いたぞ」
あの武器かっこいいな、とか考えている俺をおっさんは呼び戻した。
学園長室 ノックしてね☆、とドアに板がかかっている。子どもの私室なのかここは。
(左:荒月 右:おっさん 学園長)
「学園長!転入生を連れてきました!」
「おお、ありがとう」
「こ、こんにちは」
中には威厳のある爺さんが立っていた。某魔法学校の青い服を着た校長のような、そんな感じ。
「わしが学園長の爺獲無 四郎(じいえむ しろう)じゃ。貴君の入学、心より歓迎するぞ」
にこやかに微笑みながら、学園長は拍手をした。
「では、君のクラスを・・・あれ、どこにやったかな」
「学園長、机の下に落ちてますよ」
「おお、ありがとう」
「えぇと、君のクラスは2-Dじゃな、頑張ってくれたまえ」
──俺の高校生活が幕を開けた……俺の右手に武器を添えて……。
最終更新:2009年12月18日 16:00