相談所プロット

【主な登場人物】
玖流凪・・・真面目で勤勉。魔女の恐ろしさを知っている。

緋奈瀬妹(以下妹)・・・黒髪の少女。相談所に姉探しを依頼する。元病弱

村田・・・隻腕の中年。腕は立つが昼行灯キャラ。魔女に関わって痛い目にあった過去を持つ

神楽・・・年端のいかない少女。相談所のマスコット兼お茶汲み係。

緋奈瀬・・・行方不明の姉。魔女に接触しある願いを叶えてもらう



町外れにある廃墟の教会
そこに気を失っている少女が倒れている。手にはペンダント
何かの拍子にはっと目を覚ます

妹「お・・・お姉ちゃん?」



町の中心部
玖流凪が数人の男達と瓦礫の山の周りで何か作業をしている。瓦礫は少し大きめのアパートが崩れたもの
男A「よし、今日はこれくらいでいいだろう・・・玖流凪。おつかれさん」
男B「いつも手伝ってくれて助かるぜ」
玖流凪「いえ、僕に出来ることはこれぐらいですので」

遠くから緋奈瀬妹が歩いてくる。何かを探している様子
玖流凪は相談所のバッジか何かをつけていて、それに気づいた緋奈瀬妹がこちらへ駆け寄ってくる
妹「お仕事中すみません!○○相談所の方でしょうか?」
玖流凪「何か御用でしょうか?」
彼女は何故か切羽詰っている様子で落ち着きが無い
妹「○○相談所が開いてないので、こちらにそこで働いてる方がいると聞いて来ました。お願いしたい依頼があるんです」
玖流凪「それは・・・失礼しました。相談所開けますね。ついてきて下さい(村田さん・・・また寝坊してるな)」

玖流凪と緋奈瀬妹 相談所へ行き相談所の戸を叩く。

中に居た少女(神楽)が玖流凪に気づき扉を開ける
神楽「玖流凪!私が起こしても全然駄目なのよ!」
玖流凪「村田さん!もう営業時間ですよ!」
村田「お・・・おう・・・?客か、珍しいな・・・」

相談所の休憩室で寝ている村田をたたき起こし緋奈瀬妹の話を聞く
村田「すまなかったねお嬢さん。この頃閑古鳥が鳴いてる状態なもんでつい油断しちまった」
玖流凪「まったく。油断するとすぐこうなんですから」
村田「で、依頼と言うのは?」

妹は人探しをして欲しいと村田に頼んだ。姉と教会にいた所、気を失い気づいたら姉が消えていたのだと言う
手には姉のペンダントを持っていた

妹が姉のものである首にかけたペンダントを見せる。村田それを見るなり苦い表情をして依頼を断る
村田「このペンダントを見るにお姉さんはやっかいな事に巻きこまれてる。手に負える話じゃなさそうだ」
玖流凪がそれを聞いて緊迫した顔つきになる
妹「どうしてですか?姉に何があったんです!?」
村田「お嬢さん。仕事中の玖流凪に話しかけて俺を訪ねたそうだが、その時に瓦礫の山を見なかったかい?」

村田が序盤で出てきた瓦礫の山の事を話す。あれは元々アパートで、ある学生が好奇心で起こした行動によって崩壊したものだという
学生達の間では魔女を呼ぶ儀式(こっくりさんのようなやつ)が密かに流行っていて、その儀式によって呼び出されたものがアパートを壊したらしい
呼んだのは魔女ではなく使い魔のなりそこないだったがその使い魔は人に害をなす霧を出すものだったらしく
今でもその霧が残っているので結界をはって周りに害が無いように防いでいるらしい。玖流凪はその手伝いをしていた

村田「君のお姉さんのペンダントにも似たような魔術の痕跡がある。しかも使い魔よりひどいものに関わったかもしれないな」
妹「そんな・・・姉を助けたいんです!」
村田「とにかくだ。俺にはどうしようもない。他をあたってくれ」
玖流凪に緋奈瀬妹を外へ出すように促す。玖流凪はそれをスルーし険しい表情で村田に尋ねる
玖流凪「魔女・・・ですか?」
村田「・・・お前にならわかるだろ?人が関わっちゃいけない相手だ。」
話しながら自分の無くなった腕の方の右肩をポンポンと叩く

村田「ヤツらに接触した後に消息が無いならもう・・・」
玖流凪「でも、まだ手遅れかわかりませんよ?やってみるだけ・・・」
妹「お願いします!」
村田「悪いが、俺も独り身じゃあないんでね」
そう言ってちょうどお茶を汲んできた神楽を見る
妹「・・・」


しばし沈黙が流れる

玖流凪「村田さんがやらないのなら、僕が彼女を助けます」

妹「玖流凪さん・・・」
村田「もし見つける事が出来てもお前じゃ何にも出来ないかもしれないぞ?」
玖流凪「やれるだけの事はやりたいんです。相談所の人間として」
村田「やれやれ、覚悟は出来てるんだろうな。お嬢さんだってただじゃ済まないかもしれないぞ?」
妹「私は姉を見つけられるなら、何にだって耐えられます!」

村田「若いねえ・・・じゃあやれるだけやって来い玖流凪。でも死ぬほどの無茶はするなよ?」
玖流凪「・・・はい!では、早速」
村田「おいおい待て待て!勢いがあるのはいいが備えがなくっちゃな」
村田は相談所の奥にある倉庫から錆びた振り子を持ってくる

村田「魔女に反応する特別製の探知機だ。寂れちゃいるがまだ使える」
玖流凪「ありがとうございます!」


玖流凪は自分の武器一式(剣や鞄)を持ち緋奈瀬妹と共に相談所を出る
それを見送る村田と神楽
神楽「玖流凪大丈夫なのかな?」
村田「・・・まあ、あいつならやってくれるかもな?」

神楽には軽くそう言ったが村田の心中は正直穏やかではなかった

玖流凪と緋奈瀬妹 姉探しを始める
玖流凪「緋奈瀬さんが行く場所に心当たりはありませんか?」
妹「一通り探してみたのですが・・・」
玖流凪「これ(探知機)もあることですし、もう一度行ってみましょう」

緋奈瀬が行きそうな場所を転々と探知機で調べていく
そうして最後に着いたのは妹が目を覚ました廃墟の教会だった

探知機で探し回る間に玖流凪と魔女について会話する
妹「玖流凪さん・・・魔女はそれ程にも恐ろしいものなんでしょうか?」
玖流凪「少なくとも、人の手には負えない存在。僕はそう思ってます」
妹「それほど危険な存在なのに何故私を助けてくれるのです?」

玖流凪「僕、魔女に会ったことあるんです」
妹「!? でも、魔女って今じゃ希少な存在なのでしょう?どうやって・・・」
玖流凪「魔女の事なら少なからず都市伝説として聞いたことがあるでしょう?」
妹「人の願いを叶えてくれる存在だと聞きました」

玖流凪「タダで人の願いを聞き入れるわけじゃないんだ。それ相応のものをその人から奪っていくんです」
玖流凪無意識に眼帯の方の目に触れる

妹「姉は何かを対価にして願いを・・・?」
玖流凪「取引が成功したのなら多分。何か困っているようなそぶりもなかったんですか?」
妹「・・・何も、わかりませんでした。困ったことがあっても顔には出さなかったのかもしれません。
姉は優しい人なんです。私は昔からひどく病弱だったのですが文句も言わずに私の面倒を見てくれました」
教会の真ん中にあるマリア像の前に妹が立つ

妹「私達姉妹は孤児院で育ちました。姉は孤児院に近いこの教会で毎日病弱な私の為に祈ってくれました。
  雨の日も嵐の日も毎日毎日・・・そのお陰かわかりませんが、今では嘘のように体が丈夫になりました。」

玖流凪の方を振り向いて優しく、だが少し悲しそうに微笑んだ


妹「奇跡ってあるんですね」


 その時、探知機がかすかに反応した
玖流凪「これは・・・!」
玖流凪がマリア像の周りを丹念に調べると死角になる場所に札のようなものが貼り付けてある
妹が触ろうとするが玖流凪が制する
玖流凪「触っちゃいけない!・・・これに反応してるのか。何だかでたらめな術式だな。妹さん、下がってて」

玖流凪が鞄から小さな袋を取り出し、中の粉を札に振りかける。微かに指紋が浮かび上がった
玖流凪「(素手で貼ったのか?なら害は無いだろうが・・・しかし)」
妹が不安そうな顔でこちらを見る
玖流凪「(緋奈瀬さんが生きているなら・・・気にしてる場合じゃない!)」

玖流凪が札に手をかける。とたんに酷い痛みが両手に走った。手が焼け落ちそうな程の熱さだ

妹「く、玖流凪さん!」
異常を察したのか緋奈瀬妹が近くに寄ってくる
札が火花のようなものを散らし激しく抵抗するが、力づくで剥がす。
まばゆい光が二人を包む



玖流凪が目を開けた瞬間目に飛び込んできたものはさっきとは明らかに違う教会の景色だった
(↑ここは不思議空間にするなり寂れさせるなりなんなりご自由に)



背後からしくしくと微かな泣き声が聞こえてくる
妹「ね、姉さん!」

緋奈瀬がうずくまって泣いていた

緋奈瀬「何で・・・どうして来てしまったの?こんな姿、見られたくないのに」
妹がかけよるがピタリと途中で立ち止まる
よく見ると緋奈瀬の体の一部が異形化し、変わり果てた姿になっていた
玖流凪「緋奈瀬さんあなた、魔女に・・・」
妹「姉さん!帰りましょう!」
緋奈瀬「魔女に体を売り渡したの。もう戻れないわ」

緋奈瀬妹、絶望の表情

妹「どうして!何があったの」
緋奈瀬「何も無いわ。何も・・・あなたは気にしなくていいの」
少し優しい声色で妹に言うと玖流凪を睨み付けた

緋奈瀬「あなたね?こんな余計な事をしでかしたのは」
玖流凪「妹さんに頼まれて来ました。あなたを救いたいんです」

緋奈瀬がそれを聞いて鬼のような形相を見せる
姿かたちがみるみる変わっていって鎌を持った魔女の姿へ変貌する

緋奈瀬「余計なことをしないで!」

 玖流凪は緋奈瀬を止めようとするが魔女の力に圧倒され何も出来ない
妹が駆け寄ろうとするが緋奈瀬がそれを阻み、魔女の力で作った檻に閉じ込める

玖流凪を始末しようと緋奈瀬が襲い掛かる。玖流凪避けきれずに怪我を負いボロボロになる。
眼帯が外れるが右目はつぶったまま

玖流凪、走馬灯のように村田の言葉を思い出す

【・・・「お前になら」わかるだろ?人が関わっちゃいけない相手だ。】

玖流凪「(でも、僕はもう・・・)」

緋奈瀬がとどめを刺そうと襲い掛かる
玖流凪は逃げようとしない

妹「お姉ちゃんもうやめて!!」
鎌が眼前にせまった次の瞬間。玖流凪が両目を開き緋奈瀬を見上げる


玖流凪「僕を・・・見ろ!」


目を合わせると緋奈瀬がピタリと固まった
途端に玖流凪の右目に魔女の姿が吸い込まれていく

魔女の力が弱まり緋奈瀬妹を捕らえていた檻が壊れる

魔女の姿が緋奈瀬から引き剥がされ、中から緋奈瀬の顔が見える。
緋奈瀬は玖流凪の異様な目に同じような力を感じていた

緋奈瀬「(この男の右目・・・まさか同じ『魔女』の力?)」

魔女は玖流凪の右目にぐんぐん吸い込まれていく
緋奈瀬「どういうことなの・・・!?これじゃ魔女との約束が守れない!駄目!駄目よ!!」

玖流凪「もう、魔女のせいで悲しむ人間は見たくないんだ!」
玖流凪は魔女の右目の力を使い、自分の身を対価にしてでも緋奈瀬の魔女化を止めようとする

妹「姉さん!」
緋奈瀬妹が魔女から引っ張り出そうと緋奈瀬の手に触れる
すると、緋奈瀬の記憶の断片が妹の脳裏に雪崩れ込んできた


姉妹で仲良く過ごしている日々や、緋奈瀬が妹を看病している記憶。
棺に納まった妹の前で泣いている緋奈瀬の姿

最後に魔女を呼び出している緋奈瀬が見えた


妹「そうか・・・そう、だったんだ」
緋奈瀬妹はその記憶で全てを悟った。緋奈瀬は死んだ妹の命と引き換えに魔女に体を渡したのだった
妹「姉さん・・・私を生き返らせてくれたんだね?」
緋奈瀬妹が玖流凪の方に向き直る。
玖流凪は手と足のつま先が透明に消えかかっていて、今にも消えてしまいそうだ

妹「玖流凪さん・・・だめ。これは私達の問題だわ」
玖流凪「妹・・・さん?」
妹「聞いて。このままじゃあなたが死んでしまうわ」
玖流凪「でも君のお姉さんが魔女に・・・!」
妹「私が、代わりに消えます」

緋奈瀬「駄目よ!お願い・・・やめて!」

妹「私を殺して、いえ・・・元の死人に戻して下さい」
玖流凪「妹さん・・・それは」


妹『お願い』


緋奈瀬妹の願いに、玖流凪の右目の魔女が反応する
玖流凪の右目と緋奈瀬から魔女の姿が剥がれて妹の体に吸い込まれる

緋奈瀬妹、幽霊のように霞がかった姿になってしまう

緋奈瀬「妹・・・!妹・・・!」
緋奈瀬が消えそうな妹を抱きかかえる。

緋奈瀬「嫌よ!私はあなたに何もしてあげられてないのに・・・!」
妹「ううん・・・何もしてあげられなかったのは私・・・お姉ちゃんにいっぱい迷惑かけて・・・」

緋奈瀬「違う・・・!違うよ!私はあなたといてとても幸せだったわ」
妹「私も・・・だよ」

妹は安らかな笑顔を見せた
妹「これからは・・・自分の、お姉ちゃんの為に生きて・・・」

妹の姿はきれいな泡の形にくずれて消えていった
ペンダントだけが残り地面に落ちる


どのくらい呆然としていたのかわからないが
二人はいつの間にか元の教会へ戻っていた


玖流凪と緋奈瀬は放心したまま座り込んでいた
その後ろ姿を見て声をかけようとする玖流凪

玖流凪「緋奈瀬さん・・・」
魔女の力を使って疲れたのか気を失ってしまう




玖流凪が次に目を覚ましたのは病院のベットの上だった
右の頬につつかれている感触がある
玖流凪「ん・・・」
そちら方を見ると、神楽が玖流凪の頬をつんつんとつついている。

神楽「玖流凪起きたー」
その声を聞いて村田が駆けつける

神楽「私が起こしたんだよ!玖流凪も寝ぼすけだなーもー」
村田「おお、マジか!すげーな神楽は」
玖流凪内心突っ込みを入れながらも村田に緋奈瀬の安否を聞く

玖流凪「緋奈瀬・・・さんは」
村田がシーっと人差し指を口に当てながら玖流凪の左脇を指差す
玖流凪がそのまま指差した方を見て、自分のすぐ左隣に突っ伏して寝ている緋奈瀬を視界に捕らえた
玖流凪のベットに突っ伏しているので緋奈瀬との距離は目と鼻の先だった

玖流凪「な、なっ!なっ!」
その距離に驚いてベットから飛び上がる。が、怪我に響いたようですぐうずくまる
緋奈瀬がその騒ぎに目を覚ました。

緋奈瀬「あ・・・気が付いたのね!よかった・・・!ほんとによかった」
村田「三日ぶりのお目覚めだ」
緋奈瀬「熱は・・・無いみたいね。脈も大丈夫!食欲ある?何か本見たい?」
そういいながら近くの棚の上にあるリンゴをとりに行く

玖流凪は相談所の仲間はまだしも、緋奈瀬が病室にいる理由を飲み込めないでいた

村田が玖流凪に耳打ちする
村田「緋奈瀬ちゃんあの後玖流凪に酷い怪我をさせたって言ってひどく落ち込んでてな。看病兼見舞い役を名乗り出てくれたんだ・・・」
玖流凪「そ・・・そうなんですか?」


村田「あ、言っとくけどこれから君達同僚だから!」
村田顔を上げさらっと話す。その一言にさらに混乱する玖流凪

緋奈瀬「私身寄りがないのよね。だから相談所で働かせてもらうことにしたの!生き残らせた責任はとってもらうから。ね?」
緋奈瀬が自慢げに胸の相談所バッジを光らす

玖流凪「へ・・・?村田さん・・・これは?あ、そういえば報告・・・」
村田「皆まで言うなって!もう緋奈瀬ちゃんに聞いたからな。おいおい、結構無茶したな?ん?」

そういって玖流凪の頬をつねる
玖流凪「いった・・・いたたた」

村田「若いやつ特有の悪い癖だ。『ジコギセイセイシン』もいいが、最低限の孝行はしろってんだ!」
玖流凪「す、すみません・・・でも僕!妹さんも緋奈瀬さんも救いたかったんです!」
村田「あれでよかったんだよ。お嬢ちゃんが喜ぶわきゃないだろ」
玖流凪「それは・・・」

村田「お前の願いより、あのお嬢ちゃんの願いの方が姉を思う気持ちが強かったんだ。
   魔女の目は当然そっちを選んだ。その時点でお前にはムリなの」
玖流凪「・・・」
村田「お前にゃ俺の右手の分まで、充分に働いてもらわなきゃなんないんだからな?さっさと退院してこいよー」

村田、神楽と一緒に病室から出て行く

村田「後は若い二人でお楽しみということで。んじゃあな」
神楽「んじゃあなー!」


玖流凪「ち、違いますよ!まったく村田さんはもう・・・」
緋奈瀬「孝行って・・・村田さんと親子だったの?」
玖流凪「あー、違います・・・話せば長くなるんですけどね。あの、僕のこっちの目見ましたよね?」

そう切り出して玖流凪が魔女の目を持った経緯について話す
小学生の時。玖流凪も緋奈瀬と同じく魔女を呼び出したこと
理由は同じクラスの女の子酷いいじめから救いたかったという願いだったこと

魔女の力でいじめっ子や魔女を止めようとした他人を傷つけ、危うくその対価で死にかけた所を
近くに相談所を構えていた村田に救ってもらったこと。

玖流凪「その時に村田さんは右手を・・・」
緋奈瀬「・・・そうだったの」
玖流凪「それでも魔女は止める事は出来なかった。だから、弱った魔女を僕の「ここ」に閉じ込めたんです」
緋奈瀬「あなたも必死だったんだわ。だから魔女を呼び出せた」

玖流凪「でも、虚しかったんです。僕が得られたものは・・・クラスメイトからの恐怖の眼差しだけでした
    僕の願いはちっぽけに見えるかもしれません。でも魔女の恐ろしさは充分に感じた。それを他の
    人に味わって欲しくなかったんです。緋奈瀬さんと妹さんのような人を・・・救いたくて」

緋奈瀬「何でバツの悪そうな顔するのよ。こっちなんか怪我までさせて・・・申し訳なかったわ。それにこれは私の問題だった。
    私、妹の最後の言葉を聞いて目を覚ましたの。お互い支えあって生きていたんだってあの時初めて気づいたのよ
    妹が死んだとき、酷い孤独感に苛まれたわ。その時魔女の噂を思い出したの。すぐに自分の命と引き換えに妹を蘇らせる事を考えたわ。
    でもそれが間違いだった・・・私は妹に同じ孤独感を味合わせる所だったのよ。」

緋奈瀬がペンダントを見つめる。妹が最後まで肌身離さず持っていた緋奈瀬のペンダントだ

緋奈瀬「でたらめな術式だったけど、魔女を呼び寄せる事に成功したの。あの時の私には禍々しい魔女も柔らかく微笑む女神様に見えた
    でも結局女神様なんていなかった。よく思い知ったわ」

玖流凪の方を振り向いて優しく、だが少し悲しそうに微笑んで言った

緋奈瀬「奇跡なんてないんだって」

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最終更新:2014年06月28日 07:01