タカシを求め、唇を吸う。呼吸が苦しくなった所で、一度力を緩めると、タカシが唇を
離して言った。
「これで、満足か?」
私は首を横に振って、タカシを見つめて答えた。目が潤んでいるのが分かる。
『……ううん。もっと。もっと、くっ付きたい……』
するとタカシが、私を掻き抱いて唇を、今度はいきなり強く押し付けてきた。半開きに
なった口から、舌が出て、私の唇をなぞる。私はそれを受け入れ、口の中に入ってきた舌
を舌で絡め取った。
『んっ……んん……ううんっ……』
クチュ……チュパ……チュル……と、湿った音が部屋に響く。タカシの舌が引っ込むと、
今度は私が、自分の舌をタカシの口の中に入れ、舌を絡ませる。興奮し、息が荒くなる。
体が熱くなってもうどうしようもなくって、何も考えられなくて、ただひたすらに私は、
タカシの唇を求めていた。
『ふぁ……フゥ……もっと……』
甘えた声を出し、キスをおねだりする。舌を差し出すと、タカシも舌を出して、絡ませ
てくる。タカシが上、私が下になって、しばらく唇を合わせずに舌だけでキスをする。そ
れからまた、激しく唇を重ね合わせた。
『フッ……ウン……ンンッ……んあっ……!!』
しばらくキスを続けているうちに、ようやく私の欲求も収まってきた。そろそろ終わり
にしようかなと思っていると、ふと、私は気付いた。私を抱き締めるタカシの手が、随分
と下に下がって来ている事に。
――もしかして……?
キスを続けながら、半分覚めた頭で様子を探る。うん。やっぱり、手が次第に腰から、
お尻の方に下がって来ていた。体を押し付けると、下半身が、熱く、固くなっているのが分かる。
――タカシってば……このまま……
収まりかけた心臓の動悸が、再び高まる。私の心が一瞬揺らいだ。このまま、タカシに
全部委ねてしまいたいと、体が語りかける。脳裏に、友子や英子達の言葉もフラッシュバッ
クして来る。誘惑が、私を押し流そうとしていた。
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――でも……やっぱり、ダメ……!!
最後の最後で、理性が蘇る。そして私は、タカシの手を拒絶するように身じろぎした。
タカシの手が、ピクッと動いて、離れる。そして、唇を離してタカシが私を見た。私もタ
カシを見る。そして、次の瞬間、私はパッとタカシから身を離した。
「ゴ、ゴメン…… 俺、抑え切れなくて……」
タカシが、小さな声で謝った。その顔には後悔と、そして悔しさが滲んでいた。私は慌
てて首を横に振る。
『あ、謝る必要はないわよ…… 別に、男だったらその……普通の反応だし……』
ここでタカシを傷付けたら、関係が終わっちゃうかもしれない。それは絶対イヤだった
から、私はタカシを非難する事はしなかった。しかし、今度はタカシが首を振って言った。
「いや、でも……かなみに嫌な思いさせたんだろ? だったら、やっぱり謝らないと……
俺ばっかり、先走って……」
『嫌じゃないわよ!!』
思わず、考えもせずに、私は口走ってしまった。タカシの驚いた顔を見て、たった今の
自分の発言を思い返した途端、恥ずかしさで顔がボンと爆発してしまう。タカシの顔が見
ていられなくて、顔を背けつつ、私は言葉を続けた。
『嫌じゃない……けど、ダメなの!! 今は!!』
激しく顔を横に振って、強く主張する。タカシはしばらく、呆然と私を見ていたが、私
が落ち着くのを待って、ためらいがちに聞いて来た。
「嫌じゃないなら……何でだよ? 今日は、その……準備してないから、とか……そういう事か?」
『違う!! それもあるけど……でも、違うの!! そういう事じゃないの!!』
否定する私に、タカシは戸惑った様子を見せた。ややあって、またタカシが聞いて来る。
「じゃあ、何でだよ? 俺と……いやその……男と、えっと……エッチな事はしたくない
んじゃないのか?」
それにも、私は首を横に振る。
『だから言ってるじゃない!! 嫌な訳じゃないって…… ただ、ダメなんだもん……』
まるで、子供のような態度を見せる私に、タカシはしばらくジッと見つめていたが、や
がて一つため息をついて言った。
「理由……よかったら、聞かせてくれよ。何でダメなのかさ」
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その質問に答えるのは、さすがに躊躇いがあった。しかし、ちゃんと答えないと、タカ
シに誤解されてしまうかもしれない。友達とかに相談して、余計な話が膨らんでしまうか
も知れない。だったら、ちゃんと答えた方がいい。私は覚悟を決めた。
『……だって……もしかしたら、出来ちゃうかもしれないじゃん。その……赤ちゃん……』
「は?」
小さく驚きの声を上げるタカシに、私は縋り付いて言った。
『エッチな事したら、出来ちゃうかも知れないでしょ? でも、そうなっても私達まだ高
校生だよ? 結婚だって出来ないのに……そんなの、出来る訳ないよ……』
タカシはジッと私は見つめていた。それから、真面目な顔で頷いて言った。
「俺だって、それくらいの知識はあるよ。だから、その……いざって時の為に、ちゃんと
その……コンドームだって買ってあるし。ちゃんとすれば、大丈夫じゃないか?」
『無理。ちゃんとなんて……信用出来ないもん』
タカシは不満気な顔で言い返そうとして、グッと口をつぐんだ。それから少しの間、私
と睨めっこして、やがて降参するように手を上げた。
「分かったよ。本番はダメだってんだろ? でも、さ。その……スキンシップ程度なら、
どうなんだよ……? た、例えばさ。手とか、その……口で、とか…… あと、俺もかな
みを愛撫する程度だったら……」
『それもダメ!!』
私は強く否定した。余りにも断固とした口調だったので、タカシが思わず引いてしまう
ほどだった。しかし、気圧されつつも、タカシが答える。
「いや、だってさ。それなら、子供は出来ないだろ? かなみが心配する事は何にもない
じゃん。別に、本番までしなくたって、かなみがしてくれるって言うなら、俺はそれだけ
で満足出来るから……」
『ダメなの!! 絶対!! だって、我慢出来ないもん。絶対、最後までってなっちゃうもん!!』
強硬に否定する私に、タカシは首を横に振って言った。
「我慢するって。いや。べつに我慢するって程でもないかな? とにかく、絶対かなみを
傷つけるような真似はしないから」
『だって……キスだけだって、我慢出来なかったから……もう少しで……』
121 :4/5:2011/09/25(日) 22:21:43.99 ID:vbuJ3V150
「あれは、かなみの気持ちを知らなかったから…… それに、無理強いするつもりなんて
全然なかった。ちょっとでも嫌がったら止めようって、そう思ってたし。だから、俺を信
用してくれよ」
タカシが真っ直ぐに私を見て言う。優しい目。信頼に値する目だ。もちろん、そんなの
知ってる。知ってるけど、恥ずかしいから言葉を濁してきた。言えない。だけど、言わな
くちゃ。涙目になって、私は首を横に振った。
『違うの。違うの。タカシじゃないの』
「え?」
私の言葉に、タカシが驚いた顔で私を見返す。恥ずかしさで全身が火傷しそうに火照っ
ている中、私はタカシを見つめ、涙をボロボロ零しながら頷いた。
『我慢出来ないの…… あたしだもん。タカシに触られたら……エッチな事されたら、絶
対、最後までしてってなっちゃうもん。我慢なんて出来ない。避妊なんて考えられない。
気持ちいいことだけしか考えられなくなっちゃうもん……』
言い終わると、恥ずかしさが更に増してきて、私はぐしぐしと泣いてしまった。ややあっ
て、タカシが言う。
「けど、俺がしっかり、コントロールすれば……」
それに、私は拳で涙を拭いつつ、腫らした目でタカシを見て言った。
『あたしがおねだりしても、出来るの? 欲しい欲しいって言っても……我慢出来る?』
「ううっ……」
これには、さすがのタカシも呻いて言葉も出なかった。もうここまで来たら毒を食らわ
ば皿までと、私は告白する。
『さっきだって……タカシが、お尻に手を伸ばそうとした時だって……もう少しで、流さ
れそうになっちゃったんだから…… このまま、最後までされたいって…… キスだけで、
そうなっちゃうのに……そっから先になんて進んだら……もう、抑えられなくなっちゃうもん……』
我ながら、何と恥ずかしい事を口走っているのだろう。もう、太陽の中にいるような熱
の中で溶けて消えてしまいたいくらいだ。
すると、タカシが一つため息をついた。そして、いきなり私の体を抱き寄せ、そのまま
ギュッと抱き締める。
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『キャッ!? ちょ、ちょっと……いきなり何すんの……よっ……』
こんな状態で抱き締められたら、私がどれだけ熱くなってるのかバレバレになってしま
う。いやもう、見ただけで分かるか。とにかく、言葉で抵抗するのが精一杯で、もはや拒
否する力なんて微塵も無かった。そうしたら、タカシが私の耳元に唇を寄せて、言った。
「……分かった」
『え?』
聞き返しつつ、タカシを見ると、タカシの優しげな顔が間近にあった。タカシはコクン
と一つ頷いて、言う。
「かなみの言う通り、我慢する。18歳……いや。大学生になって……ちゃんと就職が決ま
るまで、かなみには手を出さないよ」
『タカシ……?』
小さく、名前を呟くと、信頼してくれとばかりにもう一つ頷いて、それからもう一度タ
カシは、耳元に口を寄せて言った。
「その代わり、責任が取れるようになったら……それまで我慢してた分、たっぷりと返し
て貰うからな。毎晩、かなみの腰が抜けるまで責め立てるから、覚悟しろよ」
その言葉に、私の体にくすぐったいような感覚が走る。それに身じろぎしつつ、私はタ
カシを睨み付けて言った。
『無理よ。そんなの』
一呼吸おいて、言葉を続ける。
『だって……それより前に、タカシの方が果てるもん』
強気にそう言うと、タカシはクスリと笑って頷いた。
「かもな。どうやら、かなみの方が、俺より遥かにエッチらしいし」
『う……っ!! うるさいバカ死ねっ!!』
恥ずかしさの余り、罵りの言葉を吐きつつも、私はタカシの体にすっぽりと埋まって、
身を委ねるのだった。
終わり
ちなみに敢えて書かなかった題名は「二人とも責任が取れる年になるまで、絶対にエッチはNGと言い張るツンデレ」でした。
エロなんて期待しちゃダメですよ。
最終更新:2011年10月01日 17:00