21 名前:1/6[] 投稿日:2011/10/02(日) 13:24:13.39 ID:Fud0Fx980 [10/15]
『ハァ……もう八時半かあ…… さすがに疲れたなあ…… もう営業の人もほとんど帰っ
ちゃったのに……』
『(別府さんでも、陣中見舞いに来てくれればいいのになぁ…… 差し入れでも持って。そ
うすればちょっとは元気が出るのに…… でも、もう帰っちゃったかなあ? 週末だし……)』
「よぉ。お疲れ」
『ひゃあっ!? べっ……べべべべべ、別府さん!?』
「どうよ? 仕事はかどってる?」
『おっ……驚かさないで下さいっ!! 心臓が止まるかと思ったじゃないですか!!』
「いや、ゴメン。そんな驚かせるつもりじゃなかったんだけど。俺が来たのに気付かない
くらい、仕事に集中してたんだ。頑張ってたんだな」
『そうですよっ!! 別府さんのせいで、集中が途切れちゃいましたけど』
『(ううううう~~~~っ!! ホントは別府さんが来る妄想してただけなんだけど……
でも、まさか本当に来てくれるなんて……ど、どうしよう……)』
「そりゃ悪かった。けど、あんまり根を詰めすぎると体に良くないし、差し入れも持って
来たからさ。一服しない?」
『この時間にお菓子は太るから遠慮します。あ、でも缶コーヒーは頂きます。喉は渇いてたんで』
「ほれ。微糖だけどいいか?」
『平気です。ブラックじゃなきゃ飲めますから』
「良かった。休憩室の自販機でコーヒー買ってるのは見たことあったから、飲めるとは思っ
てたけど、そこまで味の好みは知らなかったからさ。もし甘い奴じゃないとダメだったら、
買い直しに行かなきゃならんかった」
『人の好みも知らないで飲み物差し入れるとか、ホント別府さんって適当ですよね。この
事に限った事じゃないですけど』
「ある程度はちゃんと考えてるさ。残りの二割くらいは直感だけど」
22 名前:2/6[] 投稿日:2011/10/02(日) 13:24:32.72 ID:Fud0Fx980 [11/15]
『それを適当って言うんです。或いはツメが甘いとか。だから、仕事もいつも要領が悪い
んですよ。どれだけ周りがフォローしてると思ってるんですか。私含めて』
「いやその、分かった。悪かったよ。反省するから怒るなって」
『全くもう。その適当さでこっちは迷惑してるってのに、自慢げに話すなんて有り得ませ
ん』
「だから、済まなかったって。ところで、コーヒー飲んでる間くらいは一服しないの? さっ
きから全然休む気配がないけど」
『だって、休んでたらその分だけ帰るの遅くなるじゃないですか。私は別府さんと違って、
適当にダラダラ仕事したりしませんから』
『(ホントは、別府さんの顔が何だかまともに見れないから……仕事してるフリしてるだけ
なんだけど……だってだってだって、夜中にオフィスで二人きりなんて、こんな夢みたい
なシチュ有り得ないし……)』
「分かってるよ。かなみちゃんはいつも真面目に頑張ってるからね。でも、今日はやけに
遅くないか?」
『決算と締めと三連休が重なれば、嫌でもこうなります。おまけに8月に一人辞めたのに
代わりの人取らないから、業務増えちゃって……半年前はもうちょっとマシだったのに……』
「事務方も最近は大変だなあ。で、仕事終わりそうなの?」
『わっかんないです。とりあえず、やれるところまではやって、出来なかった分は週明け
に回しますけど……』
「いっそ明日出てきてやっちゃえば? 休日出勤もたまにはいいもんだぜ? 電話も掛かっ
て来ないし、余計な事言いつける上司も営業もいないしさ」
『冗談じゃありません!! せっかくの三連休なのに……なんで会社出て来なくちゃいけ
ないんですか。バカげてますよそんなの……』
「そしたら、その分どっかの金曜か月曜に振り替えて休み取ればいいじゃん。平日の方が
どこに行くにも空いてていいかもしれないぜ」
『気軽にそう言いますけど、平日にそう簡単に休みなんて取れないですよ。その分平日は
業務溜まっちゃうんですから』
23 名前:3/6[] 投稿日:2011/10/02(日) 13:24:51.83 ID:Fud0Fx980 [12/15]
「でも、代わり出来る子くらいいるでしょ? 何とかなるもんだって。それとも、三連休
だから、もう用事入ってるとか」
『い、いえ……それは、その……ないですけど……』
「ないって、明日? それとも、休み中ずっとの話?」
『わ……悪かったですねっ!! どうせ三日間とも誰とも約束なんてないですよっ!!
誘ってくれる彼氏だっていないし、友達も今回は海外行ったり、彼氏と過ごしたりだった
り……だから、お部屋の掃除して、一人で買い物とかそれくらいで……』
「エステとかは? 早坂に聞いたら、そういう時こそ女子力アップだとか言ってたけど」
『そんなほいほい行けるほどお金持ちじゃないですもん。おまけに、お金掛けた割に、効
果出てないみたいですし……』
「そうかな? かなみちゃんも磨けばもっと光ると思うんだけど……って、何で俺を恨み
がましい目で見てんの?」
『知りません!! そんな下手くそなお世辞はいりませんから、ほっといて下さいってば』
『(だって、エステどころか、美容室行った次の日だって、全然気付いてくれないじゃない
ですか…… そんな人に言われたって……説得力ないですよ……)』
『それより、ご自分はどうなんですか? 別府さんは、何か予定あるんですか?』
「俺? いや、何にもないから、だから明日は会社来て仕事しようかなって。だから今日
は、もう片付けして帰ろうかと思って」
『(え? 別府さん明日来るんだ…… しまったぁ……だったら明日来るって言っとけば、
二人だけで会社で……そしたら、お昼とか夜とか一緒にご飯食べに行ったり、プチデート
みたいな展開になったかも知れなかったのにぃ…… 何でそれを先に言ってくれないんで
すかあっ!!)』
「え? 何? どうかした?」
『へ? いや、別にその……何でもないって言うか、また総務の子が別府さんが休出溜まっ
てるって文句言うかなって、そう思っただけで。分かりますか? そういう無計画な出勤
状況が、他の人に迷惑掛けてるって』
「い、いやその……別に無計画って訳じゃ……確かに迷惑は掛けてるけど、俺個人として
はその方が楽なんだけどな」
24 名前:4/6[] 投稿日:2011/10/02(日) 13:25:09.85 ID:Fud0Fx980 [13/15]
『それにしたって、休みの予定が仕事だけって、何か物凄く空しくなりませんか? 私は
そんなの、絶対嫌ですけど』
「うーん…… それを言われると辛い所だけどなぁ…… まあ、こればっかりは、その……
しょうがないしな」
『(それを言えば、私だって大差ないんだけどな…… はぁーあ…… 目の前に一人、スケ
ジュールの空いてる女の子がいるのに気付いてくれないかなぁ……)』
「そうだ、かなみちゃん」
『へっ!? あ、はい。何ですか』
「ど、どうしたんだよ。そんな挑みかかる様な目で睨んだりして」
『い、いえその……何でもないです。話、続けて下さい』
「あ、ああ。その……さ。お互い、暇なら……その、一日くらい、どっか行かないか? 日
曜とかちょうど中日だし」
『どっかって……え? もしかして、それ……わ、私とですか?』
「いや、今二人しかいないし……まあ、そうなるけど……イヤかな?」
『へ……っ!? い、いやその、あの……きゅ、急になんで、その……』
『(ううう、嘘っ!? ほ、ホントに別府さんが誘ってくれるなんて……あああああ、どう
しよどうしよ。何て答えればいいんだろ? そりゃ、そうなってくれたらとか思ってたけ
ど、でもでもでも、まさかホントにこんな展開になるなんて思ってもなかったから、こ、
心の準備が……)』
「ゴメン。確かに、急に誘われたりしても困るよね。まあその、イヤだったら別にそう言っ
てくれても、全然オッケーだから」
『(ど、どうしよう……行きたいのに行きたいのに…… で、でも何か、はいって答えるの
恥ずかしいし……何て答えれば……あああああ)』
『あ、あのっ!!』
「はい?」
『(もうこうなったら、無心でしゃべるしかないっ!! 後は出たトコ勝負だ!!)』
『えっと、その…… い、行き先次第でっ!!』
「へ? 行き先って……」
25 名前:5/6[] 投稿日:2011/10/02(日) 13:25:38.42 ID:Fud0Fx980 [14/15]
『だ、だってその……私は別に、別府さんと出掛けたい訳じゃないですけど、でもその……
どうせ暇だし……だったらその、退屈しないトコ連れてってくれるんでしたら、だからそ
の、あの……つ、付き合ってもいいかなって……』
「そっか。良かった。なら、どこ行きたい? 退屈しないトコって言っても、かなみちゃ
んが楽しめるトコとかいまいちよく分からないからさ。リクエストあれば、それで予定立てるよ」
『そんなの、急に言われても分かんないです。そういうのって、男の人がキチンとエスコー
トしてくれるものじゃないんですか?』
『(だってホントは……別府さんが一緒ならどこだっていいから…… ヤバイヤバイ。嬉し
過ぎて何にも考えられない……)』
「そっか。ならさ。横浜行こうか?」
『え?』
「横浜だったら、中華街とかみなとみらいとかあるし、何だったら映画見に行ったり、足
伸ばして水族館も行けるし、ショッピングも出来るし、とりあえずツブシは効くからね。
どお?」
『要は、出たトコ勝負ってことですね? そのいい加減さ、いかにも別府さんらしいです』
「確かにそうかも。ご不満?」
『……いや、いいです。その時の気分で、行きたいトコ変わるかもしれませんし。どっこ
も行きたくなかったら、マリンタワーからボーッと景色眺めてればいいですもんね』
「それもいいなあ。じゃあ、横浜は決定でいいかな?」
『まあ……いいです。それで。でも、冴えない会社の先輩とお出掛けって、あんまり友達
には自慢出来ないなぁ……』
「暇つぶしと思ってくれればいいよ。じゃあ、連絡用に携帯のメアド、交換しとこうぜ」
『あ、はい』
『(な、何だろう…… もう何だか、恋人同士みたいな展開に……ゆ、夢じゃないよね……?
ちょっと、太もも抓ってみよ)』
ギュッ!!
26 名前:6/6[] 投稿日:2011/10/02(日) 13:26:13.80 ID:Fud0Fx980 [15/15]
『あいたっ!!』
「え? 何? どうかした?」
『い、いえ。何でもないです。気にしないで下さい』
「あ、ああ。よし。これでオッケーだな」
『はい。それじゃ、待ち合わせ場所とか時間とかは?』
「後で決めて連絡するよ。それじゃあ、俺も仕事しないとな」
『あれ? 明日出てきて仕事するから帰るって言ってませんでしたっけ』
「ああ。一日予定埋まったからさ。家でやる事前倒ししないといけないから、出来る限り
片付けて休もうかなって」
『そうですか。だからって詰め込みすぎてミスしないでくださいね。別府さんってそうい
う粗忽な所がありますから』
「気を付けるよ。それじゃあ、後で連絡するから」
『忘れないで下さいね。その……待って、ますから……』
「ああ。それじゃ」
『やっっっ……たああああ!! 別府さんとデート出来るなんて信じられない!! 残業
してて良かったあああ!! あああ、もうこうしちゃいられない。明日は服買いに行かな
いと。あと、それと……下着も…… な、何があるか分かんないもんね。あああ、もう、
絶対気合、入れるんだから!!』
終わり
後輩ちゃん超可愛い
最終更新:2011年10月09日 11:55