31 名前:1/4[sage] 投稿日:2011/10/06(木) 07:02:02.41 ID:JvYr5BqC0 [3/7]
「かなみ。おい、かなみ」
『ふぁ……? 何……よ、やかまひい……』
「やかまひい、じゃねーよ。降りる駅だっての。起きろよな」
『えー…… もう、何だ…… いいところ……じゃなかった。気持ち良かったのに……』
プシューッ……
【美府駅ー美府駅ー どなた様もお忘れ物、落し物がないよう――】
『ふぁーあ……』
「お前な。女の子なんだから、人前でアクビとかすんなよ」
『一応手で押さえてるからいいでしょ。タカシに注意されたくないわよ』
「それにしても、よく寝てたなお前。どんだけ熟睡してんだよ」
『昨日はちょっと、勉強はかどっちゃったからね。調子のいい時って、もったいないから
ついつい夜更かししちゃうのよね』
「ホントかよ。深夜テレビの見過ぎとかじゃねーの?」
『アンタと一緒にすんなっての。バーカ』
『(……ホントは……夏に撮ったキャンプでのタカシの写ってる写真見てたら、いつの間に
か3時になってたとか、言えないわよ)』
「ま、勉強もいいけど、ほどほどにな。電車の中で寝言言うくらい熟睡って、さすがに隣
に座ってる俺も恥ずかしかったぞ」
『ウ、ウソ!? あたし、寝言なんて言ってたの?』
「ウソじゃねーって。マジだって。まあ、ブツブツ言ってる程度だから、俺と反対側に座っ
てるおねーさんくらいじゃねーかな。聞こえたの」
『反対側って……完全に赤の他人じゃない!! ホントにホントよね? からかってたり
とかだったらぶっ飛ばすわよ?』
「女の子がそんな物騒なこと言うな。でも、マジだからな。何か、かなみの事微笑ましそ
うに見てたし」
『うっそおおおお…… あ、あたしなんて言ってたの? アンタは聞こえたんでしょ?
教えなさいよ』
32 名前:2/4[sage] 投稿日:2011/10/06(木) 07:02:24.54 ID:JvYr5BqC0 [4/7]
「教えるってもなあ……言った所で、かなみは信じてくれないだろうしなあ……」
『何よ、そのもったいぶった言い方は。すっごくムカつくんだけど。いいからさっさと教
えなさい。教えないと首絞めるからね』
「だから、そのすぐに暴力に訴えようとするの止めろって。乱暴な女は嫌われるぞ」
『いいわよ。どうせタカシにしか暴力振るわないもん。ほら。いい加減焦らすのよさないと……』
「わ、分かったよ。ただ、一つ言っとくけどな。聞いても後悔すんなよ。俺は一切責任取
らないからな」
『んなっ……!? ど、どういう事よ? あたしまさか……そんな恥ずかしい事言ってたっ
て言うの?』
「さあな。判断するのはかなみだよ。それでもいいっつーんなら、教えるけどさ」
『そのもったいぶった態度が一番嫌い。い……いいわよ。言いなさいよ。多少の事なら覚
悟するもん。大体、このままじゃ何言ったかずっと気になって、夜眠れなくなっちゃうも
ん。ほら、早く』
「よし。それじゃあ、耳貸せ」
『なっ……!? 何でそんな事しなくちゃならないのよ。普通に言えばいいじゃない』
「周りの人に聞かれたらイヤだろ? むしろ配慮してやってんだから、感謝しろよ」
『う~~~っ!! わ、分かったわよっ!! ほら……』
『(タカシの顔に顔を近付けるなんて……恥ずかしい…… おまけに受身だなんて……)』
「じゃあ、言うぞ」
『だ、だから焦らさないでってば!! 周りの人に見られるのヤなんだから』
「あのな。その……タカシィ…………好き……って」
『へっ……!?』
「……い、言ったからな。後は知らねーぞ」
『ウ……ウウウウウ、ウソよウソッ!! そ、そんなのウソだってば!! 有り得ない絶
対に有り得ないってば!!』
「うわっ!! 大きな声出すなってば。バカ!! それこそ周囲に目立つだろが」
『だ、だって!! タカシが、その……ウソつくのが悪いんでしょ? あたしを驚かせよ
うとして。信じらんない。最低』
33 名前:3/4[sage] 投稿日:2011/10/06(木) 07:02:48.01 ID:JvYr5BqC0 [5/7]
「何でお前の寝言伝えただけで、そこまで詰られなきゃならんのか。少なくとも、俺には
そう聞こえたんだって」
『間違いない? 絶対にホントだって、神に誓ってそう言える?』
「さあ」
『さあって何よ。人をバカにすんのも大概になさいよね』
「だって、俺がいくらホントだって主張しても、かなみが信じなきゃどうしようもないか
らな。俺と、お前だけの問題なんだから。これは」
『ちょっと待ってよ。その……さっき、隣に座ってるおねーさんにも聞こえたって……ホントに?』
「それも分かんねーよ。俺が聞こえたからそうかもって言っただけで、向こうがボーッと
して注意を払ってなければ、何言ってるのかまでは聞き取れないかも知れないし」
『あああああ…… ウソウソウソ。信じない。絶対に信じない』
「ホントにそう言い切れる? 絶対自分は、そんな事言わないって」
『うっ…… い、言い切れるわよ…… だってその……タカシの事なんて好きじゃないし……
だから、そんな事言う訳ないし……』
「例え、寝言でも? 夢の中なんだし、現実とは全然違うって事もあり得るじゃん」
『例え夢だろうが現実だろうが、あたしがタカシにそんな事言うなんてあり得ないっつー
の。アンタの方こそ、むしろ夢でも見てたんじゃないの?』
「俺はしっかり起きてたっつーの。二人とも寝てたら起きれなくなるだろ? でも、確か
にそう言ってたんだけどな。気のせいなんかじゃなくて」
『絶対にない!! アンタの聞き間違い。もしくは……その好きって言葉はアンタに対し
てじゃなくて、たまたま寝言で出た言葉がその二つだけだったとか、そんなんだったら、
あり得るかも知れないけど、とにかく言葉通りの意味でそんな事絶対に言わないから』
「分かった分かった。そこまで否定されると俺も辛くなるからさ。もういいよ」
『フン。自分からまいた種なんだから自業自得でしょ? あたしの方こそいい迷惑だわ』
「悪かったよ。不愉快にさせてさ。でも……残念だな……?」
『え?』
「いや、何でもない。さ、もう帰ろうぜ」
『ちょっと待ちなさいよ。今、何か言ったでしょ? 残念とか何とか。それ、どういう意味よ?』
34 名前:4/4[sage] 投稿日:2011/10/06(木) 07:04:42.30 ID:JvYr5BqC0 [6/7]
「さあな」
『さあな、じゃないわよ。ちゃんと答えなさいよね。逃げるなんてズルイ』
「ひとり言だもん。別にズルイも何もないだろ」
『あるわよ。人に聞かれるように口に出した以上、しっかり答えなさいよね。ほら、早く』
「特に意味なんてねーよ。ほら。さっさと来ないと置いてくぞ」
『そうやって、また逃げる。この卑怯者っ!!』
『(あああああ……あたし、ホントにそんな事言っちゃったのかなあ…… タカシの事好き
だなんて……寝てる時とはいえ、無防備すぎるにも程があるわよ……何とかごまかしたけ
ど…… でも、タカシの残念ってどういう意味なんだろ……? あたしが、タカシの事を
好きでいて欲しかった……とか? ま、まさかそんな……でもでもでも……あああああ……
やっぱり気になるううううう!!)』
「(……冗談でカマ掛けてみたけど……思った以上にいい反応だったな…… アイツ、嘘付
くのヘタクソだから…… 今度、勇気出してちゃんと言ってみるかな……)」
終わり
お題作成機から「電車内、アッパー、夢」でした
ツンデレと隣合わせで座るのは、都市部だと何となくロングシート的になりがちだけど、
ボックスシートでってのもいいよね
最終更新:2011年10月09日 12:15