194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/05/04(水) 02:19:42.27 ID:GFz3HW26O [10/37]
- ツンデレになりたい少女にツンデレの辛さを諭すツンデレ
214 名前:その1[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 05:48:51.32 ID:56R+wnNl0 [2/14]
おはよう。
194 幼女になっちゃったりいろいろ違うかもしれんが載せる。6くらい下さい。
- ツンデレになりたい少女にツンデレの辛さを諭すツンデレ
「メールか……えーっと……『夕飯の材料無いから適当に買っといて。(by母』」
「……おにーさん? どうかしたです?」
「タカシ?」
タカシは、二人の少女――正確には少女と幼女か――から声をかけられた。
というのも、三人で遊んでいたボードゲームが携帯を見ているタカシの番で止まってし
まったままだからである。
「あ、悪い。俺の番だったか」
「……ゆっくりでもいいです」
「いちいち携帯なんか開いてないで、さっさとしなさいよねっ」
無駄に落ち着いた幼女のフォローと、無駄にそそっかしい少女からのクレーム。
「精神年齢考えたら普通逆だよな――あだっ!?」
「思考が漏れてるわよ! 精神年齢低くて悪かったわねっ!」
「ほらみろすぐ叩きやがる……いいか? まなみはあんな暴力女になるんじゃないぞ?」
幼女の頭を撫でながら、タカシは言い聞かせる。……巷で見かけたら若干犯罪臭がする
が、親族ならセーフだろう。
「……よく分かりませんが……おにーさんが言うならそうするです」
たまたま遊びに来て預けられていた、まなみと呼ばれた幼女はタカシの従姉妹である。
全く血は繋がっていないのだが、ツインテールのせいか、見た目は小さいころのかなみ
に似ている。
そのためタカシは、冗談半分でこそあるものの、将来まなみも暴力的になるのではない
かと若干の恐怖を抱いていた。
「そうそう、そうしなさい。……となりのおねーさんみたいに『暴力はいいぞ!』とか言
い出さないようにな――あだぁっ!?」
「バキッ)――あら、コイツへの暴力はいいのよ? まなみちゃん、知らなかった?」
「……本当です? なら、えーっと……おねーさんが正しいです?」
「そうねぇ、どうなのかしら? タカシおにーさんの態度次第かもしれないわね――っ!」
215 名前:その2[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 05:50:14.84 ID:56R+wnNl0 [3/14]
「ぐふっ!?――やめろバカ! 少女の目の前で繰り広げられる日常的なバイオレンスの
光景は教育上よろしくないぞっ!」
「うるさい! 幼女ばっかり可愛がってる変態ロリコンが悪いのっ!!」
「お前何言ってん――「うるさいっ!!」――あだだだだだだもげるもげるっ!」
「……ちょっと、おもしろそうです……?」
タカシの家にしょっちゅう居座っている幼馴染。椎水かなみ。
遊びに来るたびにその影響を受け続け、まなみの性格は徐々に捻じ曲がりつつあるのか
もしれない。
それから一通りどつかれて落ち着いた後、メールの事情を説明したタカシ。
「というわけで……じゃ、かなみ。すまんけど、ちょっと買い物行ってくる。まなみの相
手は任せた!」
「家に親戚の子と他人ほったらかして買い物って……神経おかしいんじゃないの!?」
そこまで信用してもらえるという嬉しさと同時に、そこまで気兼ねなくされるとそれは
それで気に食わない。かなみの心境は複雑だった。
「いや、三人で行ってもいいけど……なんか親子連れみたいに見えそうだしなぁ……それ
でも行く?」
タカシは『へたに同級生に見つかってイジられたりしたくないから』、という理由で渋
っていたのだが、その言葉を聴いたかなみは、『タカシと子供を連れて買い物……家族?
ムリムリまだ早い恥ずかしすぎる』と、だいぶ一足飛びで解釈していた。
「い、行くわけないでしょ!? いいわよ、まなみちゃんといっしょに留守番しててあげ
るからさっさと行ってきなさいよ!!」
「お、おお……そんな怒らなくても……とりあえず、行ってくるわ」
照れ隠しなど露知らず、顔が真っ赤になったのはかなみが怒っているからだと思ったタ
カシは、いそいそと靴を履きかえ、扉を開けて出て行ってしまった。
216 名前:その3[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 05:52:14.26 ID:56R+wnNl0 [4/14]
一方、残されたかなみは、まなみのお守りに苦戦していた。
といっても、何か悪いことをしたわけでもなく、単純に何をしていいのか分からない
だけである。
「(そもそも、子守ってほど小さい子でもないでしょうに。頭もいいし、大人しいし……
素直な良い子だし……私と違って)」
「……おねーさん」
「な、なに?」
「……ちょっと聞きたいことがあるのです」
「いいわよ、何でも聞いて」
まさしく渡りに船。話題もなくて困っていたところに、丁度良いタイミングでの質問だ
った。
「……では、ちょっとこっちに来て下さいです」
そして、二人は先ほど遊んでいた居間からタカシの部屋の前へと移る。
「ちょ、ちょっと、さすがに勝手に入っちゃまずいんじゃないの?」
普段は暴力ばかり振っているくせに、さすがに入り浸っているに等しい家とはいえ、無
断で部屋に入り込むのは……と、逡巡するかなみ。
「……大丈夫です。……おにーさんが帰ってくる前に出るから平気です」
しかし、まなみのほうはお構いなしの様子で、平然とドアを開けて入っていく。
そして、ベッドの下から小さな箱を取り出すと、それをかなみに渡しながら質問した。
「……これが聞きたかったことなのですが、『ツンデレ』って、どうすればいいです?」
渡されたかなみが箱を見ると、その中には
――『ツンデレ彼女と○○ライフ!』――
――『ツンデレな彼女が実は○○だった件』――
――『ツンデレな(中略)物語』――
簡単に言ってしまえば、ソッチのゲームの数々だった。
「――――あのドバカ朴念仁……っ!!」
かなみは顔どころか全身まで真っ赤になっていた。素直になれない自分が、幼女に『How
to ツンデレ』を、ギャルゲー片手に教えるという状況。
シュールというべきか、末代までの端と言うべきか。
217 名前:その4[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 05:53:22.03 ID:56R+wnNl0 [5/14]
「……そのゲームはどうやるのか分かりません……が、他のゲームの箱にも『ツンデレ』
という単語を見かけるです。……この前も楽しそうにやってたです。……つまり、おにー
さんは『ツンデレ』が好きなようです。『つんでれ』ってどうすればなれるです?」
「それは……知らない。きっと、鈍感な幼馴染でも手に入れれば良いんじゃないかしら?」
「…………幼馴染ですか?」
「そ、バカで鈍感で使えない。……けど、ほっとけないような人間」
「……なるほど、ダメな幼馴染を手に入れれば『ツンデレ』になれるですね」
理解した! という表情のまなみ。
「……まあ、それでいいわ……」
呆れつつも、まあ間違ってないからいいか、と思ったかなみは、あえて訂正することは
なかった。
「……ツンデレのなりかたは分かったですが……『ツンデレ』って、何です?」
「意味知らなかったの?」
「……知らないです。おにーさんは『ツンデレ』が好きで、『ツンデレのなりかた』は分
かったですが……『ツンデレ』の意味は、分からないです」
「それを私に聞くのね……」
意味を知らないまなみは、「これなあに?」くらいの感覚で聞いているのだろう。
いわゆる『ツンデレ(しかもデレない)』を自覚しているかなみは、皮肉な質問に多少
動揺したものの、単純な興味で聞いているらしいことをまなみの表情から察し、しどろも
どろに答えた。
「あのね、ツンデレっていうのは……そうね……ちょっと、素直になれない子のこと」
「……よくわからないです」
「つまり、本音が言えないの」
「……?? ホンネ、ですか?」
「そ、……本当は好きでもね、ヒドいことしちゃうの」
最初こそ答えに詰まったかなみだが、いざ話し始めると、次々と言葉が出てきた。――
――自嘲気味な笑みを浮かべて『ツンデレ』の解説を始めたかなみは、おどけているよう
にすら見えた。
「本当は撫でてほしいのに、叩いちゃうの」
「……叩いちゃうですか?」
218 名前:その5[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 05:55:34.76 ID:56R+wnNl0 [6/14]
「そう。で、本当は手を繋ぎたいけど、振り払っちゃうの」
「……? 繋がないです?」
「そ。恥ずかしくなっちゃって繋げないの。それで……本当は楽しいのに、『つまんない
』って、言っちゃうの」
「……つまんないです?」
「違う、楽しいの。それで……本当は一緒居たいのに、『近づくな』って、言っちゃうの」
「……反対さんです?」
まなみは、ようやく合点がいったらしい。
「そう、反対さん」
「……嘘つきさんです?」
「そう、嘘つき」
「……最後は、オオカミ少年みたいになるです?」
「そうね、いつか……信じてもらえなくなるのかな」
自覚のない質問の連続は、かなみにとっては酷なものだった。
「……嫌われちゃうです?」
「そうね、もし、嫌われたら……そう、嫌われたら――――終わっちゃうの。ぜんぶ」
そう言ったあたりで、かなみは声を震わせていた。
「そうよ……いつか、ぜんぶ、終わるの……っ。嫌いだって言われたら、終わっちゃうの
よ……っ! 自分からは言えないから、臆病で……何もできないから……っ!!」
しまいには、堰を切ったように、かなみは泣き叫んでいた。
「……どうして、泣いてるですか?」
「泣いてなんか、ない……わよ……っ」
涙を浮かべながら気丈に答えていたかなみだったが、
「――あ、反対さんです。……おねーさんも嘘つきの、『ツンデレさん』です!」
その一言で、かなみは止めを刺された。
219 名前:その6(おわり[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 05:58:34.36 ID:56R+wnNl0 [7/14]
「っ……ぅ……!」
今まで直視するのを避けていた、漠然とした不安。
好きな相手を引っ叩き、
さらには繋ぐはずの手を振り払い、
そして最後に嫌われたら――――何もかもが終わる。
それまでかなみが自分で言った言葉が、全て経験によって具体化され、自身に返ってき
ていた。
「あ、でも……おねーさんはきっと幸せです」
「……わざとじゃなくても……いい皮肉よね……っ!」
ごく当たり前のことのように言うまなみに、かなみは凄みを効かせて言った。年の離れ
た子供にすら当り散らしかねないほど、今のかなみには余裕など無かった。
「お姉さんは『ツンデレさん』です。きっとたくさん叩いて、嘘ついて、いつか嫌われ
ちゃうです」
「…………っ!」
「でも、おにーさん、『ツンデレさん』が好きです。……だから、おねーさんは幸せです」
「え……あ――」
「おねーさん、『ツンデレさん』です。……だからきっと、おにーさんのお気に入りです」
「ただいま……ったく人使いの荒いババァですこと――――ん、メールか……『そんなに
早死にしたい?(by母)』――ヒィッ!?」
ほどよく平和に荒んだ携帯を見ながら、タカシが家に着くと……
「遅いわよっ!」
玄関には、家を出る前より少しだけ……表情が和らいだかなみさんが居た、かもしれない。
最終更新:2011年05月10日 00:41