22 :名無しさん:2005/09/18(日) 16:59:08 ID:lo33z49.
筋少の「機械」を聞きながらホワワンSSを書くとどうなるか的実験SS
毎年夏休みになると、おばさん(カーチャンの妹にあたる人)が姪っ子を連れ
我が家に遊びに来る。十数日の都会見物の宿代わり、というわけだ。まあ俺も
毎年きっちり夏休みをもらえている訳なので、もっぱらガイド役として親子に
観光地や遊び場なんかを案内している。そして今年も、二人はやってきた。
母「まあ、久しぶりやねぇ!めいちゃん、いくつなったね?」
余談だが、カーチャンは普段は標準語で話す。だが、この二人がやってくると
『地元モード』に突入して、地元の言葉で会話をするようになる。
叔母「やもう、今年中学入ったばっかりなんよ~」
母「あらや~!大きなったね~。ちょっと前で、おねしょしとったゆに!」
そう言うと、何がおかしいのか二人で大爆笑。
俺はこのモードに突入したカーチャンと叔母さんは、あまり得意じゃない。
それは姪っ子も同じらしく、俺が部屋に戻ると、後からついてきた。
俺「よお、元気だったか?」
姪「うん」
久しぶりに見る姪っ子は、一人前におしゃれなんかをしていて、なんだかもう
すっかり大人びている。それでも、よく見るとやっぱりまだまだ子供だな、と
そう思うと、なんだか意味もなくニヤついて姪っ子を見てしまう。
姪「なに?」
俺「え?」
姪「なんかヘンな顔して、見てた」
俺「あ、いや参ったな…。別に何でもないよ」
姪っ子は、こういう事には鋭い。どう言い訳すればいいのか悩んでいる俺に
不貞腐れた様に頬っぺたを膨らませて、姪っ子は口を開いた。
姪「……さっきの、おばさんの話?」
俺「え?カーチャンの?ああ、おねしょだとか?」
姪「…」
必要以上のモーションで大きく頷く姪っ子。
俺「なんだ、そんなこと気にしなくても。おねしょなんてしないだろ?」
姪「…」
俺の思っていた反応とは違い、姪っ子は俯いて黙ってしまう。
俺「う~ん。でもまあ、いつかは直るよ」
姪「違うの」
俺「え?なんだい、それじゃ大丈夫じゃないか」
姪「……う~…」
どうも何だかしっくりしない姪っ子の様子に、なんだかピンと閃くものがあり
姪っ子にキチンと聞いてみることにする。
俺「えっと、それって……ちょっと耳貸して」
(ゴニョゴニョ)
姪「!…えっと、うん!そう」
俺「やっぱり」
おばさんは姪っ子は今度中学だと言っていた。子供だと思ってたけど、もう
この子もそんな年なんだな、と俺は思った。
姪「これって、ビョーキなの?」
俺「ははは、違うよ。それはめいちゃんがオトナになったって証拠」
姪「大人?」
俺「そうそう。ほら、保健の授業でやっただろ?」
姪「これが、そうなの?」
俺「そういうわけ」
姪「ふ~ん」
俺「あの、でもさ。そういうのは叔母さんに相談した方がいいよ」
姪「や。はずかしい」
俺「俺に相談するのは、恥ずかしくないの?」
姪「はずかしいよ。でも、お兄ちゃん好きだもん」
俺「はは…なんだいそりゃ」
何故か変な気分になりそうな自分を、冷たい麦茶で覚まそうとする。
姪「ね、ね」
俺「何だい?」
姪「じゃあ、わたし赤ちゃんつくれるの?」
あやうく部屋を麦茶まみれにするところを、必死で堪え、できるかぎり冷静に
俺は対応する。
俺「ちょ、ちょっとそれどういう意味なのかな」
姪「意味ないよ」
俺「あ、う~ん。そりゃそうだよね、はは」
姪「?」
どうも、なんだか調子が狂う。こんなに姪っ子のことを意識するなんて、今年
の夏は、異常気象だからかな?妙に変な汗を流す俺と、不思議そうにそれを
見つめる姪っ子。しばらく妙な沈黙に包まれていた部屋は、カーチャンの声で
一気に緊張が解かれる。
母「スイカ切ったさい、食べ~」
姪「は~い」
呑気そうに返事をすると、よいしょと立ち上がり、とてとてと部屋から出てく
姪っ子を見送り、俺は大きくため息をつく。
母「ほら、あんたもスイカ食べ」
部屋を覗き込むように、カーチャンが廊下から顔を出す。
俺「ああ、今行くよ」
母「そうや、随分静かやったねえ」
俺「そうだね、まあ色々あったから」
母「んん?めいちゃんに手出しよんね?……あ、あれ!どーしたん?!」
遠のく意識の中、セミたちの合唱が、やけに五月蝿かった。
やっぱり今年の夏は、どうもヘンだ。
最終更新:2011年10月25日 16:15