168 :1/2:2005/12/06(火) 20:27:21 ID:7/BCQvpM
現行スレ>>328 ・タカシが幼児化、タカシだと気がつかないツンデレ

幼児化。それは一種のファンタジー。
それを身をもって体験するなんて、どれだけの人が考えたことがあるだろう?

「これは、やばいよなぁ…………」

自分の手を見ながら、そう呟く。
一瞬、「うはwwwwwこれなんてバーロー?wwwwwww」とテンションを上げかけた自分が恨めしい。

「どーしよ……とりあえず、何でこんな事に……」

必死になって思い出す。そう、俺は帰宅部の活動(← ?)をすべく、足早に下校をはじめて……
突然後頭部に激痛を感じて…… そうだよ、俺拉致とか誘拐とか、そんなんされると思って!
それで目が覚めたら…………こんな……姿に……

「――――あれ? じゃあ今俺が着てる服は……?」

辺りを見渡せば、どうやら着ていた制服が入っているらしい俺の愛用鞄がある。
俺をこんな事にした犯人は一体何を考えてるんだ? ご丁寧に幼児用の服まで着せて…………

「…………あっ、尊ー!」

助かった! ……って、もう生徒会の活動が終わるような時間なのか…………
どうでもいいけど、我ながら見事な少年ボイスだな。昔はこんな声で喋ってたのかと思うと、成長したと
感慨深くなる。

『…………?』

辺りを見回している尊。……そうか、俺がこんなんだから回りに別の人が居ないか確認してるんだな。

「尊、俺だよ!」
『…………は?』
「あー……っと、説明すれば長くなるけd」
『こらっ!』
「!?」
『何故私の名を知っているかは知らんが、いきなり呼び捨てにするのは駄目だろう?』
「え……いや、そうじゃなくて」
『こういう事に「そうじゃない」もない。いいか? 年上の人にはキチンと丁寧な言葉を使ってだな……』
「あ……はい」
『! ……そうしょげた顔をするな。分かればいいんだ』

ポンっ、と俺の頭に手を置いて、優しく撫でる尊。…………人に頭撫でられるのって何年ぶりだろう。
とりあえず俺はしょげたんじゃなくて、子供にちゃんと説教できる尊に少し諦めが入っただけなんだけど。

『それじゃあ、時間も時間だ。気をつけて帰るんだぞ?』
「あ、待って」

そう言って、思わずスカートの端を掴む。残念ながらパンツは拝めない……じゃなかった、
このままもう子供の振りをして一緒に帰ってしまえ。
……でもなぁ、仮にも家が近所の幼馴染なんだから、面影で気づいてくれてもいいじゃん……。

『どうした?』
「家、どっちか分かんない……」
『なっ…………そうだな、家の近くに何か目印になるような物は?』

流石尊、こういう時の順応性はピカ一……って、俺は何をこんな面倒なことを…………
一人で帰ればいいじゃん。まあいいか、面白いし色んな事を子供権限で聞いてやれ。

「VIP駅」
『VIP駅? …………ここから、4駅も離れてるぞ?』

169 :2/2:2005/12/06(火) 20:28:10 ID:7/BCQvpM
「うん、電車乗ってきた」
『やれやれ、とんだ冒険家だな。……私もVIP駅に行くんだ、一緒に行こうか』

笑顔で尊が手を伸ばしてくる。案外、子供好きの節があるのかもしれない。
この優しさを、もう少し普段の生活に盛り込んでくれれば俺も楽なんだけどな…………。
ところで、さっき思いついた子供権限。早速発動してみようか。

「ねぇ、お姉ちゃんは好きな人いるの?」
『なっ……そういうませた発言は、もう10年くらいしてから言うんだ(////』
「あ、顔赤いーw」

うんうん、これ結構楽しいぞ。

『まったく、最近の小さい子供は…………ああ、居るよ。これで満足か?(////』
「どんな人?」
『そのなりでそこまで訊いてくるか……恐ろしいな』
「どんな人~~?」
『ああもう、分かった分かった。話せばいいんだろう……?(///』
「やった」
『近所に住んでいる奴でな、とてつもなく鈍感で、馬鹿な奴だ』
「ふーん……馬鹿なのに好きなの?」
『それを言われると辛いな……。でも、たまに見せる真剣な顔や優しさがたまらなく良いんだ(/////』
「へぇ~……(誰だろ? 近所って事は、同じ中学……)」
『それにな、馬鹿だから私からそれらしい事を言っても、全く気づかないんだ』
「そうなんだ……(同じ中学……)」
『普通、お弁当を作って貰えば気がありそうだとは考えないか?』
「えっ……(弁当作ってもらったことある……)」
『そうは思わないか? 好きな子にお弁当を作ってもらったら、嬉しいだろう?』
「えっ……えっ……?」
『何だ、君は好きな子がいないのか?』
「いや、そういうのじゃ……」
『途端に歯切れが悪くなるな。ずるいぞ、もう……』
「…………」

どうしよう。聞いてはいけない事を聞いてしまった予感。
……気まずい。……超気まずい。……一方的に俺が滅茶苦茶気まずい。

―――と、考えていると気づけば駅についていた。これから電車に乗って、VIP駅まで行けばいい。
とりあえず定期を出して…………
『ん? お金、ちゃんと持ってるのか?』
「あ、うん、定期が―――」
『定期!? ちょっと貸して』
「あっ……」

なんだろう、定期を見て何が―――あ、そうか、名前!

『別府…………タカシ?』
「そうだよ、それ見せたら話は早かった!! 俺、気がついたらこんな――」
『…………タカシなのか?』
「そうなんだよ!! とりあえず事情を分かってくれそうな人を探してたら―――」
『さっきの話…………(//////』
「え……?」

あ、そういえばお弁当云々。ぶっちゃけ、尊が弁当を作ったのは後にも先にも俺にだけなんで。
いやだって彼女、普段は学食で食べてますから。

『馬鹿者がーっ!!!(////////』  げしっ!
「はぅ!?」

―――この日俺は、はじめて空を飛んだ。
最終更新:2011年10月25日 16:53