362 :恋人ごっこ 三日目(1/5):2006/07/03(月) 17:54:50 ID:naIt/5nk
3日間の期限付きで始まった俺とちなみの”恋人ごっこ”は、いよいよ最終日…
デートの準備をしながら思いふける俺の心は、今日で終わるこの関係に影を落としていて。

「………」
 デレデレのちなみは悪くない。…ってか、もう何回逝きかけたかわからんくらいモエスなんだ。
 けど…けどな?昨日あいつが言ったように、これはあくまで”恋人ごっこ”なんだよ。
 本気にしちゃ、駄目なんだよ。…なのに、俺は…

土曜のナイトシアターで上映される”ひろゆき姫と7人の小ブーン”を観に行く為、
夜の8時に待ち合わせをしたからなのか、空いた時間は色んな事を考えてしまう。
窓の外を眺めながら黄昏ていると…、運命の日の太陽が沈んでいった…

――3日目、映画館
「――で、この映画ってどんなあらすじなんだっけ。」
『…え?……ダーリン、知らないの……?』
「あ、いや、観たい観たいって言ってた割にどうせ手に入んないだろうと思ってたから。」
『……えと、ね?……(ゴソゴソ)…はい、これ…』
「映画のパンフレット? どれどれ…」ピラッ
 (邪悪なスクリプトの嵐に襲われたひろゆき姫は、決して目覚める事がなかった。)
 (だが、強大なスクリプトに立ち向かう為にはどうしてもひろゆき姫の力が必要だった。)
 (偉大な予言に従い、勇者荒巻(スカル・チェノフ)は、呪いを解く7つの鍵を集める旅に。)
『……どう?…』
「あ、うん、もうちょっと待ってな…」
 (世界各地に散らばる7つの鍵を集め、ひろゆき姫を目覚めさせようとする勇者荒巻。)
 (立ち塞がるスクリプトとの死闘の結末は!?そして伝説の楽園”ツン・デ・レスレ”とは!?)
 (壮大なストーリーに加え、豪華出演陣が繰り成す愛と感動と笑いのコラボレーション!!)
 (※劇場公開記念先着70,000名様に小ブーン(全7種:いずれか1つ)プレゼント!!)
『……ダーリン?…始まっちゃうよ…?』
「ん、ごめん…もう大丈夫。 …行こっか。」
 …正直ちょっと、……いや、かなり楽しみだったのは秘密だw

363 :恋人ごっこ 三日目(2/5):2006/07/03(月) 17:55:53 ID:naIt/5nk
[――見つけたぜ!第1の鍵っ!!]
[こ…古文ブーンだおwwwwwいとおかし、いとおかしwwwwwwwwブー―ンwww]
[ちょwwwそれ古典的仮名使いだろwwww―――]

映画が始まると、隣同士座った俺達は黙りこけってしまって。
映画にも、ちなみにも集中出来ない情けない俺がそこにいましたとさ。

「………(チラッ」
『………//////』
「ぅぁ……/////」
 なんで…、こ っ ち 見 て ん だ ?映画は見ないのか?
 それに、ジュースを持ったり置いたり…なんでそんなに落ち着きがないんですか?
『………(ギュ、パッ…ギュ、パッ…』
「………(そ、それって…」
 もしかして、手を握ってほしいですよサインなのか?そんな甘ったるい事を俺にしろと?
 ばっ…バーロー、薄暗いったって目を凝らせば周りが見えるのに、んな恥ずかしいこと――
「……(にぎ…」
『…ダーリンの手……あったかいね…/////////』
 ――も、たまにはいいかも試練。……モエス////////
「お…おい、映画観なくていいのか?」
『…映画と…ダーリン……どっちが大事だと思う?…』
「い、いや…今日は映画を観に来たんだろ?」
『……ちなみは……ダーリンと一緒に……観たいの…/////////』
「・・・・・・・・・・・・ハッ!? ばっ…ばか!///////」
 …ごめ、俺もう無理。映画?何それ?ウマイの??…ってか、
 一人称変えてんじゃねーよ!一瞬ばーちゃんどころか母さんまで見えちまったじゃねーか!!
『つーん……バカじゃないもん……ダーリンの恋人だもん…/////』
「んなぁっ…!!」

――しばらくお待ち下さい。――

364 :恋人ごっこ 三日目(3/5):2006/07/03(月) 17:57:01 ID:naIt/5nk
[――はぁ、はぁ。だ、第6の鍵、げ、ゲットだぜ…]
[節分ブーンだおwwwwwwwwちまき、ちまきwwwwwwwwwwブーーーンwwwww]
[ちょwwおまwwww根本的に何かが違うwwwwしかもそこは股kアッーー!―――]

「――…ん…?」
 …俺、寝てた?知らん間に映画が随分進んでるようなんだが。
 …それになんだ?変なかっこで寝たから寝違えたのか?肩が痛い…
『……起きた…』
「……ちなみ。」
 …の、顔が、近い。近すぎる。耳のすぐ横で声が聞こえて、吐息が耳にかかってる。
『…ダーリン…急に寝ちゃうんだもん……ひどいよ…』
「あ…あぁ、ごめん…」
 状況を理解しよう。…つまり、あまりのモエスに向こうに逝っちまってたってことで、
 退屈になったちなみ嬢は俺の肩に頭乗っけながら映画観てた、でFA?
『…ん…じゃあ……ちゅーして…?///////////』
「え?うん、ちゅーな。 う…ん、ちゅー…、ちゅー!? なんあななんんあににいえって…」
『……今は……いいよ…/////////』
「………!!??」
 …あのさ。ほら、映画館のイスって、座ってスクリーンを見ると前の席の奴の頭とかが
 チラチラ見えたりすんじゃん?表情は見えないけど、何となく何してるかは分かるっていうか。
「う、うっ…後ろの席から怨念を感じるんだが…」
 はい、デムパ来てます。”おめぇら何してんだゴルァ!?”みたいなんがゆんゆん伝わってきてます。
『…う~~…/////……み…見せつけちゃえ…///////////』
「ちなっ…!!」

…目を閉じて、その小さな唇を”つん”と突き出すちなみ嬢。落ち着け、俺。 オレ 冷静 おk
ってか昨日は”恋人ごっこ”だから(ryとか逝って多のに一体なにくぁwせdrftgyふじこlp;@:

「み、ま…待て、待ってくれ! ここはマズイ、今は…無理だ!!」
『……もおっ……』

365 :恋人ごっこ 三日目(4/5):2006/07/03(月) 17:58:02 ID:naIt/5nk
[――や、やっとみつけたわよ、最後の鍵…!さあ、いまこそ願いを…]
[[[[[ブーーーンwwwwwwおっおっおっww・・・wwブーーーンブーーーンブブブーー(ry]]]]]
[ちょwwww収拾がつかねぇwwwwwwwwwwどーすんだよコレwwwwwwww―――]

映画が転機を迎える頃、スクリーンを見つめる俺にも転機が訪れたわけで。
デレっデレのちなみが俺を癒して、萌えさせてくれるたびに積もってきていた何かが弾けて。

『……ちゅーしてくれないダーリンなんて……嫌いだもん……』
「…ごめん、ダメなんだよ。」
 …ダメなんだよ。ちなみが可愛過ぎるから。こんなにも俺の心を掴んでしまったから。
 たった3日間の時間で、頭の中がちなみのことでいっぱいになっちまったから。
『……どうして?…』
「………」
 簡単さ。キス…しちまうと、俺の気持ちがもう止まれなくなっちまうからな。
 恋人ごっこはもうすぐ終わるんだよ。本気になったら…悲しいだけじゃねーか…。
「…は、恥ずかしいからだよ、ははは…」
 色んな方法を考えたんだけどな?結局はちなみの気持ち次第だったんだよ。
 お前が”恋人ごっこ”って言った以上、この夢は…どうあがいたって夢のままなんだよ。
『…じゃあ…恥ずかしくない場所に行ったら……してね?…ちゅー…////////』
「/////ぅ……ぉぅ…」
『……えへへ……約束、約束…//////』キュ
「………//////」キュ
 ごめんな、ちなみ。最後まで恋人ごっこに付き合ってやれなくて。俺…――

[――姫、ようやくお目覚めですね!さあ、早速スクリプトを倒すチカラを!!]
〔…残念ながらそんなもの無いです。。。〕
[オワタ\(^o^)/]
〔…でも一緒に戦ってあげることはできますです。。。―――〕

――…この指切りも守ってやれそうにないから…針、千本用意しとくよ…。

366 :恋人ごっこ 三日目(5/5):2006/07/03(月) 17:59:22 ID:naIt/5nk
〈――ぎゃああぎゃああぎゃああぎゃああぎゃああぎゃああぎゃああ……(ry〉
[くっ…最後まで同じ文字列を繰り返すなんて、敵ながら見事なスクリプトだった…!!]
〔なにか、出てきたようです。。。〕
[こ、これはっ!?伝説の楽園、ツン・デ・レスレへの道程を示した地図っ!!―――]

映画は、いよいよクライマックスを迎える。
夜の9時20分から上映されているこの映画が終わるのは、もうすぐのようで。
それはつまり、俺達の”恋人ごっこ”が終わるということを表わしていて…

『……ダーリン、…伝説の楽園なんて……本当にあるのかな?…』
「そだな…、無いと思えば無いし、あると思えば本当にあるんじゃないか?」
『…楽園…っていうくらいだから……きっと…願いがなんでも叶っちゃうんだろうね……』
「なんでも叶う、か。」
『…ダーリン?』
「いや、本当に…――」
 そんな場所が本当にあったら、この夢を現実に変えてくれたりするのかな?
 …ごっこじゃなくて、本当の恋人同士になれたりするのかな。

[――さぁ、この扉を開けばそこはツン・デ・レスレだ。一緒に行こう。俺と…]
[う…嬉しいおwwwwブ、ブーーーーーーーーンwwwwwwwwwwwww―――…―――fin.]

「――なんでもないよ…」
 俺も一緒に…その何でも叶うツン・デ・レスレってとこに連れてってくれよ………

映画じゃ予想外の展開なんて簡単に起こっちまうのに。現実じゃ…まぁありえない罠…
……なんだよ…、何見てんだよ。…おい、腕時計の針、お前だよお前。
お前さ。毎日毎日せわしそうに動きやがって、落ち着きっつーかゆとりが足んないんじゃね?
ずっと変わらないで走りっぱなしだったんだろ?文句も言わずに…お前は凄いよ。
だからよ。…たまには休んじまってもいーんじゃねーのか?
なぁ、頼むよ。もうちょびっとでいいからさ、俺に…夢、見させててくれないか…        続く。
最終更新:2011年10月25日 17:19