486 :ツンデレ観察記 1/3:2006/07/18(火) 17:54:26 ID:AK5KHd7U
あらすじ
主人公:長田優希
素直クールな宇宙人。日本の「ツンデレ」を観察するために地球に来た。
パターン3:お嬢様なツンデレの場合
彼女はある日、金持ちの象徴とも言うべき黒塗りのハイヤーでやってきた。あまりに大きい排気音に驚き目をやると、
開いたドアからこれまた金持ちの象徴と言うべき金髪の縦ロールをなびかせた女性が出てきた。
まさしく「お嬢様を見たこと無い人に描かせたお嬢様の絵」がそこにいた。
私が転校した初日から気になっていた。
彼女は間違いなく「ツンデレ」であろう。
彼女には友人と呼ぶべき人がいない。
話し掛けてくる人(特に男子)にはかなり冷たい態度を取る為だ。
その上、授業が終わるとさっさと黒塗りのハイヤーで帰ってしまう。
そのため、情報を得るのは相当困難だった。
だが、チャンスは訪れた。
教室を出て行く神野リナの姿を確認する。
一緒に帰ろうとする椎水かなみの誘いを必死で振り切って(そのため今度の休日、かなみに何か奢らなくてはいけなくなってしまった)
昇降口まで駆け下りる。
間に合った。彼女──神野リナは、まだ帰ってはいなかった。
今日はまだハイヤーが来ていない。彼女についての情報を得るには今しかないだろう。
「お前が神野リナか?」
「……どちら様ですの?」
「教室でお前の隣の席に座っている者だ。名前は長田優希」
「…失礼ですが、あなたのような一般の方とお話する時間はありませんの」
「それは困るな。私はお前と話す事があるんだ」
「…何ですの?」
「そうだな…なんと言うか…」
少し迷った。ストレートに言うか、誤魔化して言うか。
だが、誤魔化しては私の目的が伝わらない可能性がある。ここはストレートに言っておこう。
487 :ツンデレ観察記 2/3:2006/07/18(火) 17:55:13 ID:AK5KHd7U
「私はお前に興味を抱いている。もしよければ少し話でもして、お前について知りたいのだが…」
「……え?」
「もう一回言わなければいけないのか?」
「え、あ、いや、結構ですわ…つまり…あなたは私との交流を求めている…と」
「そういうことだ。なかなか物分りが良いな」
「ってあなた!私が誰だか分かっているんですの!?」
「神野リナという名前以外で知っている事は余り無いが…予想でいいのなら絵に描いたような金持ちというぐらいかな?」
「十分ですっ!この私が神野グループの令嬢だと知ってて言っているのですか!」
「金持ちだと言うのは本当だったのか。だが、たいした問題ではあるまい?」
「…え?」
「お前が神野グループの令嬢だろうとドラ息子だろうと関係ないと言ったんだ。私はお前と少し話してみたい。それだけで十分だろう?」
「え、あの、えっと…」
神野が答えを模索している中、例のハイヤーがやってきた。
「お待たせいたしました、お嬢様」
「…もう時間か、仕方ない。話が出来ただけでいいとしよう…神野!」
「なっ、何ですの?」
「また明日、ここで会えるか?」
「えっ…えっと…」
ハイヤーのドアが閉まる。答えは聞けなかったが、明日になればわかるだろう。
488 :ツンデレ観察記 3/3:2006/07/18(火) 17:56:13 ID:AK5KHd7U
そして翌日(かなみにはブラックコーヒーを奢っておいた。)
再び昇降口まで駆け下りる。
神野リナはハイヤーの前にいた。
彼女は私の姿を見て、ハイヤーに乗ろうとしている足を止めた。
「神野!」
「あなたは…」
「昨日の答えを聞きたい。少し時間いいか?」
「ええ。……私なりに一晩考えましたの」
「…ほう」
「私はあなたのような一般の方々とお付き合いするつもりは一切ありませんわ」
「…そうか、残念だ」
私は神野リナとの接触を諦め、その場を立ち去ろうとした。
「ちょっとお待ちなさい。話はまだ終わってませんわ」
「…?」
「ですから、「友人」になることは出来ませんが、「従者」になるというなら…口をきいてあげてもよろしくてよ?」
「…「従者」?」
「嫌なら「下僕」でもよろしくてよ」
「いや、「従者」で良い。それでお前と話せるのだったら」
「交渉成立…ですわね(////)」
「しかし…「従者」と言っても何をすれば良いのだ?」
「そうですわね…とりあえず今週の週末、買い物の荷物持ちをしてもらいますわ」
「了解した。「御主人(マスター)」。」
「ふふ…悪い気分ではありませんわね」
形はどうあれ、こうして私は神野リナへの交流に成功した。
今でも時々週末に、買い物の荷物持ちをさせてもらっている。
しかし「荷物持ち」と言う表現よりも「一緒に買い物」といったほうが正しいのではないだろうか。
そのことを指摘すると彼女はいつも怒るが。
そして、彼女もまた私に対して冷たいのである。
今回の観察結果
・ツンデレは買い物に誘う際、「荷物持ち」という名目をつける
・お嬢様ツンデレは周囲の人々を下に見る傾向がある
最終更新:2011年10月25日 17:30