548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/05/05(木) 23:11:13.52 ID:jctG4Ohy0 [2/5]
514に影響されて、ボクっ娘@ハワイ帰り

「タカシー!! お土産だ、食らえぃ!」
 部屋でのんびりと『意味が解ったら怖いコピペ』スレを読んでたら、隣のボクっ娘がいつも
のハイテンションにブースターかけて部屋に飛び込んできた。挙句には手にした袋をぶん投げ
て俺の後頭部に直撃させる始末。あまりの屈辱に震えながらあらん限りの怨嗟を込めて告げる。
「……絶対犯す」
「はっは~! そんなに迫られたら、ボク照れちゃうよ!」
 まさかのスルー。こいつにそんな大人の対応ができたとは驚きだ。そういえば、昨日まで家
族でハワイ旅行に行ってたんだったか。お土産とはそのことだろう。それでテンションが高い
のだな、せっかくだから少し話くらい聞いてやろうか、などと考えていると。
「それより、ハワイだよ! ハワイ行ってきたんだよ! アロハ~! マハロ~! マヒマヒ
~! ねぇねぇ、うらやましい? うらやましい? 今、どんな気持ち? ねぇってば?」
「とぅ」
「痛い!」
 なんかイラッと着たのでとりあえずチョップ。よく見れば、アロハシャツなんか着てやがる。
イラッ度20%増し。
「梓さん。とにかく、お土産は投げ渡すものではありません。覚えたら10回ノートに書いて
覚えてください」
「う~、そんなの解ってるもん! タカシだから投げたに決まってるだろ! ボクから手渡し
してもらおうなんて、100年早いよ!」

549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/05/05(木) 23:13:32.22 ID:jctG4Ohy0 [3/5]
 涙目で頭を撫でてる梓を横目に、青く『ABC STORE』のロゴが書かれているビニール袋から中
身を取り出す。定番のマカデミアナッツ
チョコとアロハシャツが出現。まぁ、こいつのことだから、こんなもんだろう。
 しっかし、普通高校生にもなれば旅行から帰ってきて一晩も寝れば、いくらか落ち着くもの
ではなかろうか。ボクっ娘の留まることの
ない純朴さは、もはや心胆寒からしめるに十分といえるだろう。まっすぐすぎて逆に怖えぇ。
 そこから、チョコをつまみながら、怒涛の自慢話を聞いていく。自慢話といっても、こいつ
の話だから。
「すごいんだよ! アメリカ人が一杯いてね。街中の看板とか全部英語! それからね、どー
んっ!って感じのショッピングセンターがあって、こーきゅーブランドのお店が山ほどあって、
レストランのステーキがすっごい分厚くて――」
 ……こんなレベルである。こんな雑な話し方をしてたら、2泊4日分のエピソードなんかす
ぐになくなってしまうだろう。それではこいつを旅行に連れて行ったご両親が余りに不憫なの
で、仕方なくこちらから話を振ってやる。
「ところで、さっきのマヒマヒって何だ」
「魚だよ! 白身の魚! おいしかったな~! タカシは一生食べられないよ! きっと、ハ
ワイにしかない魚だもん!」
「そ、そうか」
 実際はマヒマヒはシイラのことである。当然日本でも食べられる。『知ってて聞いてボクっ
娘をからかう』といういつもの作戦だったのだが、こうも見事に有頂天だと水を差すのもなん
か気が引ける。まぁ、マヒマヒの件は置いておこう。

550 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/05/05(木) 23:15:03.24 ID:jctG4Ohy0 [4/5]
 俺はもらったアロハシャツを手にとってみた。海中を、マヒマヒが群れを成して泳いでいる
様子がプリントされている。画像検索でもしてもらえばわかると思うが、ちょっと独特でアレ
なデザインだ。もっともこのシャツを見たから、『マヒマヒ=シイラ』を思い出したのだが。
しかし、センスは置いといても何か違和感が……。
「あ、それ……」
 妙な声に視線を梓に転じると、さっきまでグイグイ自慢話をかましてたのにいきなり押し黙
って顔をそらしてやがる。よく見ると、ヤツのシャツにもマヒマヒがプリントしてあった。
「……ペアルック」
 ぼそっ、というと、びくっ!となった……やっぱこいつおもしれー。
 部屋着のTシャツ一枚だった俺は、迷わずアロハを着る。案の定、見る見るうちに顔が真っ赤
になった。
「あっ、こら! なに勝手に着てんだよ!」
「おいおい、俺がもらったもんをいつ着ても勝手だろ? HAHAHA!」
「そ、そーだけど! ボクの前じゃだめ! 絶対ダメ!!
 俺のシャツに手をかけてぐいぐい引っ張る梓に、とどめの一撃。
「これでペアルックだぞ、よかったな、梓! 新婚旅行のリハーサルはばっちりだ!」
 ただですら赤い顔がさらに50%増しになった。というか、そんなに恥ずかしいなら買って
くるなよ、とか、そもそもペアルックという発想がどうなのよ、ともか思うのだが、そこがボ
クっ娘の真髄でもあるので口には出さない。

551 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/05/05(木) 23:16:20.67 ID:jctG4Ohy0 [5/5]
「ふ、ふざけるなぁ! だ、誰がタカシなんかとし、し新婚旅行なんだよ! と、とにかく、
は、恥ずかしいから早く脱いでよ!」
「俺が脱いだ分だけ、梓も脱ぐならいいよ」
「え、ほんt……って、それ違うじゃん! 破廉恥じゃん! 絶対全部脱ぐじゃん! エロい
ことするんじゃん!」
「ちっ、惜しい」
「惜しくない! そういうのは、まだダメ!」
「まだ?」
「あ……うーーーーーーっ!」
 言葉を失った梓の頭を、ニヤニヤしながら撫でてやる。
「ご機嫌とってんのか、馬鹿にしてんのかわかんないよ……」
「そう怒んな。次は俺がマヒマヒ食わせてやるから」
「……新婚旅行?」
「不満か?」
「…………我慢してやんよ、どエロ」
 ペアルックと恥ずかしい台詞で俺の顔も朱に染まっているので、勘弁してもらえました。

おわり 
最終更新:2011年05月10日 01:01