770 :1/3:2007/05/15(火) 13:42:14 ID:90x..TqI
―元旦
毎年のことだが1月1日は我が別府家には祖父母と住む親戚の碓氷家が訪れ、朝から宴会が繰り広げられる。
俺だってお年玉と呼ばれるお小遣いを貰える年齢までは楽しみにしていたイベントではある。
しかし大学進学と同時にアルバイトを始めた俺は「貰う側」から「あげる側」へ立場を移していた。
立場を移してもう2年にもなるのだが、そうなると楽しみだったイベントも余計な出費がかさむだけのイベントになってしまう。
山田達との年越し初詣を終えて帰宅した俺は新年の挨拶もそこそこに、適当に理由をつけて部屋に戻った。
1階では相変わらずどんちゃん騒ぎが聞こえてくる。

「さて・・・今年も来てなかったな」

碓氷家には一人の娘がいる。俺の従姉妹にあたるその子は小さい頃から面倒を見ては可愛がってきた。
一昨年は受験勉強の為、去年は風邪をこじらせて我が家にはやってこなかったが現在高校2年生になる。
可愛い娘を祖父母に預けてまで酒を飲みにくる碓氷夫婦もどうかと思うのだが…
ともあれ、3年振りの再会は実りそうもなかった。
なんだかんだ言って、俺は一度もお年玉をあげたことはないのだ。

「フフフ・・・一応お年玉としてとっておいたが、この金は今年も俺のものだー!」
「「・・・最低」」

後ろから二つの声がハモって聞こえてきた。
振り向くと碓氷家の娘「ちなみ」と妹の「かなみ」冷ややかな視線をこちらに向けて立っていた。

771 :2/3:2007/05/15(火) 13:42:52 ID:90x..TqI
「優柔不断で約束は破るし性格はへたれ・・・・・その上ケチなんて最悪だね」

罵詈雑言を並べるのは我が妹、かなみである。
今年俺と同じ大学に推薦合格無事決まり、現在は卒業を待つばかりの高校3年生。

「だいたい初詣は・・・・一緒に・・・ってくれるって約束した・・友達と行く・・最低・・・・」

ぶつぶつと聞き取れないような小声で悪態をつくかなみを無視し、ちなみに声をかける

「久しぶりじゃん!会いたかったよ。ちなみちゃん大きくなったねー」
「・・・・別にタカシさんに会いにきたわけじゃありませんから」

即答だった。

「だいたいお年玉あげるのが嫌なんだから会いたくなかったんでしょ・・・・」
「う・・・」

新年だというのに2人とも機嫌が悪いようだ。
ごまかそうとちなみを抱擁をしながら

「ちなみちゃん久しぶりの再会なんだし、とりあえず気分転換に初詣でも・・・・」

最後まで台詞を言う前に、

「この変態!嘘つき!」

かなみの前蹴りが背中に直撃した。

「痛っ!って、うわぁああ」「えっ」

そのままちなみを押し倒すようにベットに倒れこむ。
こうして俺は図らずも、従姉妹であるちなみの唇を奪うという偉業を達成してしまった。

「ご、ごめん!だいじょう・・・」

俺の下でガチガチに固まったちなみは

―茹蛸のように赤くなりフリーズしていた。

772 :3/3:2007/05/15(火) 13:46:38 ID:90x..TqI

「だからなんでかなみが泣くんだよ・・・」

俺に前蹴りをかまし、ちなみとキスをする原因を作ったかなみは号泣していた。

「タカシの馬鹿!痴漢!」

罵詈雑言は変わらず。
故意にではないにしろ責任を感じているのだろう。

「ちなみちゃんも何とか言ってくれよ」

ベットを振り向いてみたものの、ちなみは相変わらず惚けた顔でフリーズしていた。

「わたしだってした事なかったのに・・・」

鼻水を垂らしながら意味不明なことを言っている。
そもそもかなみの経験は関係ないと思うのだが…

「だいたい、いい歳してキスくらい気にし・・・・」

またも台詞は最後までは言うことができず、今度は後頭部にハードカバーの本が飛んできた。

「・・・最低」

いつの間にか再起動したちなみはそう呟くと号泣するかなみに目もくれず部屋を出て行った。
やばい…相当怒ってる…

「タカシ・・・」
「かなみ――いつも言ってるけど、兄を呼び捨てにするなと・・・」

そう言って振り向いた目と鼻の先にかなみの顔があった。
涙目で歯を食いしばっている…兄妹として過ごした18年間…今までになかった雰囲気。
互いの呼吸音や心音までもが聞こえてしまいそうな距離。

「――おにいちゃんはキスくらい気にしないの?」

唇と唇が2cmと離れていない距離で、涙目の女の子に―例え妹でも―こんな事を言われたら?
しかもこんな時に「おにいちゃん」なんて呼ぶな!
不覚にも妹にドキドキしてしまったのは言うまでも無い。
永遠とも思えるような一瞬の時間に変化が訪れる。

―ふと部屋の中に一陣の風が吹き抜け、パタンと部屋のドアがギーっという音を立てて閉まろうとしている

そちらへ視線を移そうとしたその刹那

僕は1月1日の元旦――妹に唇を奪われた。


省略されました。続きを見たければ(ry

775 :1/2:2007/05/15(火) 20:49:19 ID:PRkJDO8k
帰宅した770です。続き


身体を突き刺すような冷たい空気に包まれ微かな風が身体をひきしめるように容赦なく吹き続ける。
風呂上りに星空を見ながらタバコを口にして意味もないくだらない考え事に更けるのが真冬の日課。

―コンコン

背後から窓ガラスを叩く音がして振り向くと、寝巻きに半纏を羽織ったちなみが立っていた。
両手にマグカップを持っている為だろうか…「開けて」と唇が動いた気がした。
ゆっくりと手にしていたタバコを押し潰し窓を開ける。

「どうしたの?寒いよ?」
「・・・外の空気でも吸いながらコーヒーでも飲もうと思っただけです・・・タカシさんに用はありません」
「2杯も飲むの?コーヒー好きなんだね」
「・・・・」
「・・・・」

目を背けながらマグカップを差し出すちなみ。

「・・・・よくよく考えたら就寝前の過剰な水分摂取はよくないです」
「あはは。そういえば叔父さんが言ってたよ。ちなみちゃん小さい頃はよくおねしょを」

突如足の親指に刺すような痛みが走り、最後まで言葉を発することはできなかった。

「うがぁあ」
「・・・バカ・・知らない」

そう言って、ベランダの淵にマグカップを置いてそっぽを向いてしまった。
雪のように白い肌に肩下30cmほどまで伸ばされた長い黒髪がよく似合っている。
心なしか頬が赤く染まっている。
さっきの事ちゃんと謝っておかないとな。

「ありがとう」
「・・・・別にタカシさんの為に淹れたわけではありませんから・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「さっきはごめんね。俺も忘れるから・・・ね」
「気にしてません・・・・それに・・・忘れなくても・・・・いい」

沈黙が流れ、階下のどんちゃん騒ぎや大通りを流れる車の音が真冬の澄んだ冷たい空気を通せば心地よい音を奏でる。
気まずいわけでもなく、不思議と心が落ち着く沈黙だった。

「これ・・・着て・・・」

沈黙を破り、いつの間にか半纏を脱いだちなみが伏し目がちに差し出してきた。
さすがにまだ怒ってるのかな…目も合わせてくれないとはさすがにこの年頃の子は難しい。

「大丈夫だよ。ちなみちゃんこそ寒いでしょ?」
「目のやり場に・・・・困る・・・」

そう言われて思い出した。風呂上りにバスタオルを肩に掛け、ズボンだけというワイルドスタイルだったのだ。
女子高生を前にして、こんな姿をするのはどうみても変態です。

「あ、ごめ・・・」

慌てて半纏を羽織ろうと手を伸ばした瞬間――

背筋にゾクっとする何かを感じた。

ゆっくりと部屋の中を見た僕は悪魔という存在を生まれて初めて目視した。
満面の笑顔を浮かべ、真冬だというのに短パンにキャミソールといういでたちをした悪魔の姿を…


「父さん!強い妖気です!」



「ちっ」

ん?ちなみちゃんが舌打ちをしたように聞こえたが気のせいだろうか…

776 :2/2:2007/05/15(火) 20:50:55 ID:PRkJDO8k
背中に真っ赤なモミジ――改め、かなみの手形を付けた俺は今自室に隣接するベランダにいる。
この真冬の夜に…もちろん上半身裸という格好でだ。

「おーい!兄ちゃん風邪ひいちゃうYO」

部屋の中ではちなみとかなみがベットを占拠してマンガに熱中しているのだ。
俺の訴えは華麗にスルーされたようだ。ここはひとつ話題を変えて…

「だいたいなんで2人とも俺の部屋にいるんだ?」
「変態タカシの癖に文句つける気?」「・・・・何か問題ありますか?」

口を開かなければ二人の可愛い女の子が自分の部屋に居るという状況なのだが…
といっても、俺は未だにベランダに隔離されているけど。
しかしここで年長者としての威厳を見せ付けておかねばなるまい。ここは強気に…

――ドンドン

窓ガラスを叩くとゆっくりと2人の視線がこちらへ向けられる。

「バーカ」「・・・・五月蝿い・・・です」
「ゴ主人様・・・ドウカ部屋ノ中ニイレテクダサイ」

威厳?ナンダッケ

2人は黙って手元のマンガに目を戻す。
しかし再び訪れた沈黙はすぐに破られることになった。

――突如鳴り響くジョーズのテーマソング

部屋の机に置いてある俺の携帯電話がバイブレーションと共に着信を知らせていた。
かなみは面倒そうに立ち上がると携帯電話を取り上げてディスプレイを確認した。
横からちなみちゃんも覗いてるし!

「いやいやいやいや!ちょっと!」

窓ガラスを叩き、必死に自己アピールをする。

「おにいちゃんはここにいるよー!」

溜息をつくような仕草でかなみがドアに近寄ってくる。
そしてガラガラと音をたてて、ベランダという拘置所が開かれる。
どうやら不起訴処分で済みそうだ…仮釈放。
かなみから差し出された携帯を受け取りディスプレイに表示された名前を見る。

『神野りな』

ふと気配を感じ我に返ると両肩の横にちなみとかなみの顔があった。
2人して携帯のディスプレイを凝視している。

「神野」「・・・りな」


――ミシッ

突如鳴り響く家鳴りの音と共に部屋の空気が凍りつくように張り詰めた。

――「父さん、強い妖気が二つも!」「うむ。油断するでないぞ」

最近デレレの鬼太郎という昔のアニメがリメイクされて放映されているんだぜ?
電話にでる為場所を変えようとするが、両腕にちなみとかなみの腕がしっかり絡みついていた。

「・・・・お構いなく・・です」「早くでないと切れちゃうよ♪」
「いや・・・・個人情報保護法という法律が施行されてだな・・・プライバシーが」

2人は笑顔を浮かべているのだが、反比例するように両腕の圧力が増した。っていうか腕に柔らかい感触がっ!
下手に腕を動かそうものならセクハラなどと騒がれてしまう…
―胸元がはだけた寝巻きに身を包むちなみ
―短パンにキャミソール…しかもノーブラ!?
目のやり場に困ってしまうこの状況を捨ててしまうには惜しいぜ!

「――変態」「・・・不潔・・・です」

見透かされていた。
凍りつく俺を余所に携帯のディスプレイには不在着信履歴「神野りな」の名前が表示されていた。

778 :770:2007/05/15(火) 23:29:25 ID:PRkJDO8k
上半身裸の男が背中に3つのモミジを背負って正座しているところを想像してみて欲しい。
そいつはさらに土下座なんてしてるんだ。
いや、俺のことなんだけどさ…

再び罵詈雑言を浴びせかけられながら、謝り続けるという非常に情けない時間を過ごしている。
しかし転機は再び訪れることになる。

―再び鳴り響く携帯電話の着信音によりその場の雰囲気が一変した

恐らくは神野りなからの着信だろう。
部屋にいる3人の動きが止まる…
間もなく23時半を迎えようとしている時計の針がチクチクと音をたて、ベットの上では俺の携帯電話が着信メロディを奏でている。
まさに一触即発といった空気で部屋に居る3人は互いに目で牽制しあっている。

均衡を破ったのは俺だった。
正座の状態から一瞬で立ち上がった俺はビーチフラッグよろしくとベットに向けてダイブを試みたのだ。そのまま携帯電話をもって部屋の外へ退避するつもりでいた。
俺は体中の筋肉を総動員し、正座状態から一瞬でベットに向けて跳躍状態へ入った。
この間まさに0.5秒といったところだろうか。

しかし敵は俺の想像を遥かに越える強大な力をもっていたのだ…
ベットへとダイブする為、今まさに踏み切ろうとしていた俺の足にかなみが座りながら足払いをかけたのだ。
当然踏み切りに失敗した俺はベットまでのダイブなんてできるはずもない。
ベットの縁に頭をぶつけて悶絶するはめになった。
その間にちなみが俺の携帯電話へ…ではなく、扉の前に立ちはだかっていた。

床で悶絶する俺の目の前にかなみから携帯電話が差し出された。
ディスプレイには神野りなからの着信表示と、通話時間が刻一刻と時を刻んでいた。
こ、こいつ通話ボタン押しやがった!
こうして俺は晒し者として二人の少女の前で電話をすることになってしまった。

779 :770:2007/05/15(火) 23:30:00 ID:PRkJDO8k
モシモシ…タカシデス」
「おーそーいー!!今何時だと思ってるのよ!バカたかし!」

それは俺の台詞じゃねーのか…

「いや、これには海よりも深い理由が・・・」
「言い訳なんかいいわ。それより去年貸したCD今すぐ返しなさい」
「ちょっと待て!新年早々、しかもこんな時間から電車に乗ってお前の家に行けと言うのか!」
「煩いわね。とーにーかーくー!今日中に返してね!」
「センセー、後30分しかありませんが…電車だけでも30分はゆうにかかるだろ」
「車で来ればいいじゃないの!車で飛ばせば20分で着くわ」
「新学期始まってからじゃだめなのか?1週間だけ我慢してくれよ…」
「それは無理な相談ね。私は今年中にそのCDを聞かなければならないのよ!借りたものは返す。これ常識でしょ?そういうわけでよろしくね~…1秒でも遅れたら覚悟しときなさいよ!じゃっ」

お前が常識を語るなと小一時間…

「いやっ、ちょっと!」

りなにまで俺の言葉は最後まで届かなかった…
俺の耳には虚しく通話終了を告げる音がリフレインしていた。

「めんどくせぇえええええ」

頭を垂れていた俺は突如立ち上がりながら叫んだ。

「じゃぁ行かなければいいじゃん」「・・・・です」

すっかり忘れてたが会話の内容が筒抜けだった。

「そういう訳にもいかないんだよ…いいか?もしブッチとか遅れたりしたら俺の命が」

―バシッ、バシッ

二人に命の尊さを伝えようとする俺になぜか両頬にビンタという仕打ちが返ってきた。
こうして部屋には全身に計5箇所のモミジを残した上半身裸の男が残されたまま静寂が戻る。

780 :770:2007/05/15(火) 23:30:51 ID:PRkJDO8k
「考えてる暇は・・・ないな」

まずは車のエンジンを温めておく。
その間に部屋に戻りトレーナーとコートを羽織り、愛車に飛び乗った。

ところいで車っていいよな?ハンドルを持てばどこへだって行ける気がする。
俺が特に好きなのは真夜中のドライブだ。お気に入りのSum41のCDを聞きながら窓は全快。
さすがにこの時期はちょっと寒いけどお構いなし。
昼間よりちょっとアクセルをあける。とたんに身を切るように冷たい風が顔に吹きつける。
流れる街頭を眺めながら、大好きな曲をカラオケでもしてるように歌うんだ。
誰にも聞かれる心配はない。

「歌はいいねぇ♪」

そんな独り言を呟きながら、20M先の赤信号に向けてブレーキを踏みはじめる。

「歌はいいねぇじゃないよ、この音痴!」
「・・・・寒い・・です」

そんな声が後ろから聞こえてきた。慌てて急ブレーキを踏んで振り返る俺の視界に飛び込んできたのは…
いつの間にか外出用におめかしをして準備万端といった顔で後部座席に座っているかなみとちなみの姿だった。

「な、なんでお前らが乗ってるんだ!いつから!?」
「家からに決まってるでしょ。あんたバカ?」
「・・・・プリン・・・買いに行く」

あぁ…まさに穴があったら入りたいとはこのことだ。
一人だと思ったからこそ歌っていた歌も、独り言も全部聞かれていたorz

「・・・・こんな時間に・・・他所様の娘さんの前に野獣を放り出すわけにも・・・いきません」
「そーいうこと!我が家から性犯罪で逮捕される人間をだすわけにはいかないのよ。さぁれっつご~♪」

―いやぁぁあああああああああ

1月1日深夜未明、男の叫び声が聞こえたと付近の住人の間では噂になったのはまた別の話。

781 :770:2007/05/15(火) 23:31:34 ID:PRkJDO8k
コンビニの駐車場に車を停め、りなにメールを打つ。

「いいか!お前らコンビニで買い物して外で待ってろよ?」
「タカシの癖に命令しないでくれる?」
「・・・100年・・・早い」

本当はかなみとちなみが挨拶するとかしないとかひと悶着あったのだが、そんな面倒が増えるような真似はさせるわけにはいかなかった。
りなの家はこのコンビニから徒歩でも2分ほどだ。そろそろ着くだろうと通りを眺めていると

「おーい」

小走りに駆けてくるりなの姿が目に映った。
元旦らしく着物を着たりなはいつもとは違い、艶やかな雰囲気をかもしだしていた。
数秒見とれていた俺にりなが声をかける。

「なに?みとれちゃった?」
「いや・・・まさに馬子にも衣装ってやつだな・・・似合ってるよ」
「ば、バカじゃないの!あんたに褒めてもらっても嬉しくないわよ。」

そう言ってりなは俺に見せ付けるようにクルリと回転した。

「それにしても、本当に来るなんてタカシってバカだよね」

自分で呼び出しておいてこんな言葉を平然と吐く人間は俺の周りではりなだけだ…
さすがの俺もこれにはカチンとくる。

「はい、これCDね。じゃぁ俺帰るから」

そう言って、180度体を反転させた俺は車に戻ろうと足を踏み出した。
踏み出した…はずだったんだが、コートのフードを急にひっぱられる。

「ゲフッ」
「冗談よ♪ありがと・・・・それから」

「「明けましておめでとう」」

笑顔で新年の挨拶を交わす。
いつものやり取り。りなとは何故か馬が合うんだよな。

ふとコンビニへ目を向けると雑誌コーナーで立ち読みをしているかなみとちなみが目に入った。
よしよし、ちゃんと立ち読み…立ち読み?…してNEEEE!!
二人とも雑誌を手にしているため、一見立ち読みをしているかに見えたのだが実際には本を持ったままこちらを凝視していた。

「俺は保護観察処分だったのか・・・」
「え?何それ」
「いや、こっちの話・・・」

―キーッ

突如、さび付いたブレーキ音を鳴らしながら俺たちの間に突っ込んできた。

「危ないっ」「きゃっ」

咄嗟にりなを抱き寄せ自転車を回避した俺たちはまるで抱き合うような格好になっていた。
あまりに唐突に訪れたこの状況に二人は呆然と動かない。

―不自然な沈黙

まるで…これからキスをする恋人同士のように。
りなは顔を真っ赤に染めてこちらを見ている。視線を…逸らせなかった。

「あはは・・・これからキスでもしそうな雰囲気だな」

その場の雰囲気を和ませようとおどけてみせる。
りなは真っ赤な顔をこちらに向けたまま目を瞑った。
これって…えっと…やっぱそうだよな…

―ビーーーーーーーー

深夜の静寂に車のクラクションがこだまする。
突然のクラクションに二人とも我に返り、慌てて離れた。

「ご、ごめん」
「変態!痴漢!意気地なし!」

俺の頬にりなの右ストレートが綺麗にきまった…

「へへへ…いい右だ。俺と世界を狙ってみないか!」
「・・・・バカ・・・もう帰る」
「あぁ。気をつけて帰れよな」
「うん・・・また新学期にね」

「「おやすみ」」

こうして2007年始まりの1日は終わりを告げた。

784 :770:2007/05/17(木) 13:26:06 ID:PRkJDO8k
―ピピッピピッピピッ
惰眠を貪っていた俺の意識がかすかに目覚め始める…
朝か…俺目覚ましなんかかけたっけな…思い出せない…頭が…働かな…
今日は休みだし…もうちょっとだけ……正月なんだし…
ぬくぬくして布団が温かい…気持ちいいなぁ…

「シ・・・カシ・・・」

遠くで俺の名前が呼ばれている…誰だ…俺様の睡眠を邪魔…するな…

―バサッ

「タカシ!」

馬鹿でかい声と共に布団が剥ぎ取られ、急激に冷たい空気が俺を襲った。
冷気が全身を包み、強制的に俺の意識を叩き起こす…

「寒っ……おは…よう…」

目を擦りながら布団を剥ぎ取った人物の顔を見るとそこにはふとんを握り締めたかなみとちなみの姿があった。

―きゃぁあああああ

突如二人の悲鳴が響き渡った。

「どうした!ゴキブリか!二人とも落ち着…へぶしっ」

「変態!何考えてるのよ!信じらんない!?死ね!」

俺の鼻っ面にかなみの右ストレートが叩き込まれた。
いや、俺にはお前の起こし方が信じられないよ…
痛む鼻を抑えながら、二人を見る。ん?顔を真っ赤にして何か凝視してるようだけど…
視線の先には、俺の意識とは関係なく天を向いているモノがあった。

「いや、これは違うんだ!!俺の意識とは関係なくd…ひでぶ」

「一生寝てろ!最低っ」
「・・・不潔です」

再び俺の鼻っ面に右ストレートが叩き込まれ、薄れ行く意識の中俺の視界には部屋をでていく二人の姿がうつっていた。

785 :770:2007/05/17(木) 13:27:09 ID:PRkJDO8k
「温泉にいきます」
それは突然宣言された。昨日の宴会で盛り上がった別府夫妻と碓氷夫妻は急遽2泊3日の温泉旅行計画を発表したのだ。
あまりに唐突過ぎる計画ではあったが、久々の温泉ということで俺のテンションは一気にあがる。
親同士もこれから温泉にいけるとワイワイ盛り上がっていた。

「わたし・・・宿題あるから・・・行かない」

その場の空気をまったく読まずちなみちゃんがそう言ってのけた。
くっ…このままでは温泉旅行が中止に…空気嫁!

「ちなみちゃん、そんな事言わずに宿題持って」
「わたしも初詣の約束あるから行かないよ?」

説得しようとしている俺の言葉に上書きするかのようにかなみが言い放った。お前も空気嫁!!
盛り上がっている5人の大人の顔は呆然としており、原因を作った二人の子供は平然とした表情を浮かべていた。

「うーん・・・困ったわねぇ・・・旅行は中止かしら?」

沈黙を破るように叔母さんがそんなことを言った。
さっきまでの盛り上がりが嘘のように家はシーンと静まり返ってしまった。

「仕方ないわね・・・女の子2人家に残しておくわけにもいかないし・・・タカシは?」

「え?」

気づくと俺を除く6人の視線はすべて俺に集中していた…
何この空気!?まるで俺が辞退して留守番すれば万事解決みたいな!
ちょっと待て!その空気嫁みたいな視線は何!?

「いや、俺温泉・・」
「たまには夫婦水入らずで楽しんできたら?」

かなみぃいいいいい!俺の発言を上書きするなよぉおおお!

「あらそう?嬉しいわねぇ。じゃぁお言葉に甘えちゃおうかしら♪」

「ちょ、なんで俺がガキの子守・・・いてぇええええ」

俺の両脇に立っていたかなみとちなみが同時に俺の両足を勢いよく踏みつける。

「い、行ってらっしゃい・・・」

涙目の俺は肩を落としてそう呟いた。



誤字脱字は脳内補完していただけると幸いです

787 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/05/17(木) 20:15:07 ID:PRkJDO8k
両親や叔父夫婦が温泉に行き、この家には現在3人の人間が残されている。
しかも若い男と女が一つ屋根の下で…
なんて表現すると、男には何かとおいしい展開が待っていそうなのだが俺にとっては…

「腹減ったなー。朝飯は何~?ねぇ?おーい」

いや、これは独り言じゃないぞ?れっきとした会話なはずなんだ…
リビングでテレビを見ているかなみに俺は声をかけた。ちなみは部屋に戻って勉強をしているらしい。
うーん…無視されている。朝の事まだ怒ってるのかな?
仕方なく自分で冷蔵庫をあさり、おせち料理の残り準備する。
飲み物をコップにいれ、残り物のおかずを温めて机に並べているといつの間にかちなみとかなみが机について座っていた。

「あ、2人も食べる?じゃぁこれ机に並べてくれるかな」
「・・・・」「・・・・」

返事ガナイ。タダノ屍ノヨウダ…
結局自分で机に小皿に盛り付けられた料理を運ぶ。

「2人とも飲み物は自分で・・」
「「ウーロン茶」」
「はい・・・」

はぁ…俺は家政婦かっつーの。
俺は脳内で2人にデコピンとお説教をしている様を思い浮かべた。
ふふふ…脳内で2人はしおらしくお説教されているのだ。
積年の恨みを思い知れといわんばかりの脳内模様に顔が自然と緩んでいた。
ふと殺気を感じ、振り向くとちなみとかなみがこちらを睨んでいた…

―蛇に睨まれた蛙

「あんたの考えてることなんてお見通しよ。ニヤニヤしちゃってバカじゃないの?」

み、見抜かれた…これは死亡フラグがっ

「かなみさんの言う通り・・・失礼です」

脳内でお説教しただけじゃん!だいたい2人が素直ならどんなによかったことか…
続いて発せられた言葉は俺の想像を遥かに絶するものだった。

「ち、違うんだ!話せばわか・・」

「胸ばかりみて・・・いやらしい・・・変態です」
「私たちで何を想像してるんだか・・・気持ち悪いったらないわ」

―パリーン

持っていた皿を思わず手から落とし、俺はフリーズしていた。
俺が考えてた以上に2人は自意識過剰なようだ。
違うよ。全然違うよ!!
違うんだぁあああああああ!!

788 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/05/17(木) 20:15:44 ID:PRkJDO8k
新年を迎えて二日目。世間はまだまだめでたいと騒いでいるであろう頃…
俺は最悪に気まずい朝食を口にしていた。
俺の向かいにはちなみとかなみがむすっとした顔で黙々と食事にいそしんでいる。
想像を絶する誤解を発端に俺はどうやら2人の機嫌を損ねてしまったようだ。

「そ、そういえば今日は2人ともどうするの?」
「タカシには関係ないでしょ」
「・・・・」
「そ、そうだけど・・・かなみは友達と初詣いくんだろ?」
「は?」
「旅行キャンセルするくらいなんだからなぁ・・・彼氏と初詣か!」

―ガチャン

俺の左足…弁慶の泣き所と呼ばれる部分に痛みが走り、思わず箸を落とす。
どうやら地雷を踏んでしまったらしい…

「ちなみちゃんは宿題やるんだっけ?じゃぁ俺は山田かりなでも誘って初詣でも・・・ぐっ」

―ガチャン

両足の弁慶に二つの衝撃が走る。
な、何なんだ…この2人の地雷ポイントがわからない…

「じゃぁちなみちゃん、宿題一区切りついたら俺と初詣でも行こっか♪」

突如俺の左足に再び激痛が走る…くっ
俺はこぶしを握って痛みを耐え切ってみせた。漢ってやつだ。

「な、なんでわたしがタカシさんと・・・」
「そんなに嫌がらなくても…デートってわけじゃないんだから気楽にね」
「で、デートなんか絶対嫌・・・・だけどどうしてもって言うなら行ってあげます・・」
「ふーん?無理にとは言わないけどさ」
「ちょっと!誰が彼氏とデートなんて言ったのよ!勝手に決めないでくれる?だいたい初詣は・・・タカシが・・・」
「ん?じゃぁかなみ初詣行こっか~」

そう言った瞬間、俺の今度は右足に痛みが走る。

「ぐぅ・・・」
「彼女も居ない可哀想なタカシがどうしてもって言うなら・・・仕方なくだからね!調子乗らないでね!」

「よし、じゃぁ3人で行こう!」

―ドン

再び両足に衝撃が走り、俺はイスから転げ落ちあまりの痛みに悶え苦しむことになった。

789 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/05/18(金) 12:25:23 ID:90x..TqI
新年も2日目を迎え、世間はまだまだめでたい気分で浮ついている。
正月ってのは家でだらだらと寝て過ごすものだよな?
一体誰が初詣に行こうなんて言ったんだ…

初詣に向かった俺達3人は電車にのって4つほどいった駅にあるVIP神社にきている。
VIP神社までの道中ちなみとかなみが前を並んで歩き、俺がバッグを持って後ろから歩いていくという
従者のような情けない光景が続いていた。
しかし、初詣客のあまりの数の多さと人ごみを目の前にしたときそのフォーメーションに変化が生じた。

「よし・・・・初詣気分も満喫したしそろそろ帰ろうか」
「何バカなこと言ってるのよ。ここまできたら絶対、意地でも先頭まで行くわよ!」
「・・・ヘタレ・・ですね」

そう言って二人は俺の右手と左手にそれぞれの手を絡めてきた。

「はぐれるといけないように・・・」
「本当はタカシと手をつなぐなんて勘弁なんだからね!人ごみでタカシが迷子になったら可哀想だから・・・」

―両手に花

というより、警察に捕まって連行される容疑者の気分だ…
せめて手錠は布かなんかで隠して!
そんな事を考えた瞬間、手を繋いでいた手に爪が食い込んでいた。

「イデデデ・・な、何だよ一体!」

「失礼なこと考えてたでしょ!バカたかし!」
「・・・光栄に思いなさい・・」

もしや俺はいつの間にかサトラレになっていたのか!?

「イタイイタイ!無実ネ!ワタシ何モシテナイヨ!」

片言の日本語で無実を訴える俺を余所に2人は俺の手をひっぱってぐんぐん進んでいった。
爪は立てられたまま…である。


散々人ごみにもみくちゃにされた俺達3人は帰りの電車をおりて、駅から家へと歩く。
冬の空ってのは空気が澄んでいて夏とは違う一面を見せる。
2人は俺を挟むように手を繋いだまま星空を眺めて歩いている。
20分は経っただろうか。そろそろ家に着くという頃…ちなみが口を開いた。

「来年もまた・・・3人で星を見れたらいいですね・・・」
「あぁ・・そうだね」
「そうね。ちなみちゃん、来年もまた2人で星をみましょう」
「うんうん・・・っていや、俺は!?」
「・・・・」「・・・」

俺は除け者らしい…相変わらずの扱いに少し凹んでしまう。

「タカシさんも・・・・一緒に・・・」
「・・うん」
「え?」

ちなみもかなみも真っ赤な顔をして星空を眺めている。
俺は満点の星空よりも頬を赤らめている二つの綺麗な横顔に目を奪われ…

「タカシは私たちの胸の中・・・思い出の中で永遠に生き続けるのよ」

「2人とも・・・本当は素直なんだよな。兄ちゃん勘違いしてたよ・・・
 ってそれ俺死んでるじゃん!?来年でしょ?俺いないの!ねぇ!おーい!!!」

死兆星見えちゃったの!?どこよ!!!

790 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/05/18(金) 12:26:07 ID:90x..TqI
俺の腕には涙目に怯えた表情の美少女が絡みついている。
しかも両腕に一人づつ…

―2時間ほど前のことだ

初詣の帰り道にレンタルビデオショップにて映画を借りにきていた。
時間的に1本しか見れないだろうと考えた俺達は、3人で1本のDVDを選ぶことにした。
さしあたって3人がそれぞれ1本を選び、その中から1本を決めようという話になり…

かなみ:アクション映画
ちなみ:恋愛映画
俺:ホラー映画

見事に3人ともジャンルが違う。
普通に考えて俺が選んだホラー映画は選考対象外になること間違いなしだった。
そこで俺は一計を案じ、2人に言ったのだ

「やっぱ、ちなみもかなみも子供だからホラー映画は怖いよね?これは止めておこうか」

2人の表情がピクンと反応した…
よしよし…食いついてこい!

「はぁ?ホラー映画くらいにびびるわけないじゃん」

Fish on !
しかし、ここはまだ押すところではない…

「無理しないでいいよ。アクションか恋愛のにしようね」

「わたしは・・・ホラー映画でいい・・」
「見てやるわよ。わたしもそれにするわ」

フハハハ…完全に罠にはまった2人は自らの意思でホラー映画を選び、
俺は退屈なアクション映画や眠くなるだけの恋愛映画を回避したのだ。


そこまでは良かった。しかし映画を見てみると結構ハードな内容だった。
俺でもちょっと怖いし!ちなみとかなみの怖がる姿をちょっと見てやろうという企画だったのだが…
2人は俺の両腕を基点として俺にしっかりしがみついている。
両腕にマシュマロのような柔らかい感触があり、ビクッっと2人がする度に俺はその感触をさらに堪能しているのだ。
そこまではいいのだが…
2人がしがみついている為、俺は身動きが取れなくなっていた。
トイレはおろか、飲み物やポテトチップスを口にすることもできなかった…
あ、足がしびれてきた…
それでも俺はからだ中のあらゆる感覚・神経を腕に集中させるのをやめなかった
よって映画の内容はほ…とんど覚えてない。

791 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/05/18(金) 12:26:37 ID:90x..TqI
映画を見終え、トイレにいって部屋に戻った俺を出迎えたのは、ベットに正座するちなみとかなみだった。

「2人とも正座なんかしてどうしたの?」
「・・・・」「・・・・」
「そろそろ子供は寝る時間だよ~。俺も寝るから二人とも部屋に帰りなさい」

そう言って、正座する2人の間に俺は無理やり身体をいれて横になった。
2人とも表情が暗い。なんかあったのか?

「まさか2人とも映画みて怖くなっちゃった?」

冗談めかしてそんな軽口を叩いた。

「・・・・」

あれ?…いつもならここで蹴りやらパンチが飛んでくると身構えていたのだが…
2人の表情を覗くと涙目になっていた。

「ハハハ・・・ハ・ハ」

俺の空笑いが陰鬱な部屋を包み込む。
このまま正座させておくわけにもいかないよなぁ…

「今日は2人一緒に寝たら?それなら怖くないだろう?部屋まで送ってあげるからさ」

そう言って立ち上がろうとした俺のトレーナーがひっぱられた…
2人とも俺のトレーナーの端を握り締めている。
やべぇ…可愛いぞ…

「ほら~。行くよ」

肩を落とした2人の背中を押すように部屋からでる。
そんな寂しそうな2人の背中を見ていると、俺のS心に火がついてしまうわけで…

―わっ!!

脅かしてみた。

「ひっ」

一瞬叫び声をあげた2人はその場に座り込んでしまった。
っていうか泣いていた。
ホラー映画でびびっている2人の少女を泣かす男。最悪だ…
俺のことだけど。
ちなみはまるで俺に助けを求めるような目で涙を浮かべて俺を見ている。
かなみは目に涙を浮かべながらも、泣くまいと必死に耐えながら俺を睨みつけている。
OK。完敗。俺の負けだ…

「一緒に寝る?まくらとっておいで」

そう言うと二人はコクコクと頭を動かし、走って枕をとりにいった…
頑張れ俺の理性…

792 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/05/18(金) 15:57:54 ID:90x..TqI
ここに一つのベットがある。通常のシングルサイズ…一人用だ。
そこに1人の男とその男を挟むように2人の少女が寝ている。
3人ともスヤスヤと寝息をたてているようだ…
少女達は男の肩にそれぞれ頭をのせ、腕にしがみつくようにしている。
おや?…狸寝入りでもしているかのようにもぞもぞ動いている影が。
この羨まし…ゲフゲフ…非現実的な状況で平然と寝ている男の気が知れない。

先に動いたのは、男の左腕にしがみついていた少女
    ―聡明な印象を持たせる顔立ちに切れ長の瞳、真っ黒な長い髪に雪のように白い肌を持つ少女―ちなみだった。

(・・・・2人とも・・・寝てる・・よね?昨日タカシさんの唇と・・・・)

少女は愛おしそうに男の唇を指でなぞる。
やがて指先で男の唇を堪能した少女は身体を起こし、男の唇に自分の唇を重ねた。

(・・・・♪)
「おやすみ・・・たかしさん」

そう呟いて少女は頬を赤く染めて嬉しそうに身体を横にし、幸せそうな笑みを浮かべて眠りについた。
男は…相変わらず寝たままである。

次に動いたのは、男の右腕にしがみついていたもう一人の少女
    ―吸い込まれそうな大きな瞳に利発そうな顔立ち、短パンにキャミソールという真冬に似つかわしくない露出度の高い格好の少女―かなみ。

(うーん・・・なんでこんなバカにこの私が・・・)

少女はいたずらな笑みを浮かべ男の鼻をつまんだ。

「フガ・・フガっ」

男が苦しそうな寝息をたてる。少女はクスッと笑い手を離した。

(なんで兄妹なんかに生まれちゃったんだろ・・・昨日はちなみちゃんに負けたくなくて思わずあんな事を・・・)

少女は先ほどもう一人の少女が男の唇にしたように…唇を重ねた。

(これでちなみは1回。私は2回!!私の勝ちね♪)

少女はにやにやした表情のまま眠りについた。
うーん…これって間接キッス(ry


正月編終わり
最終更新:2011年10月25日 17:57