889 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2007/08/04(土) 21:54:33 ID:oCc9cRRc
「はっ、はっ、はっ…」
今日は晴天、心地好い風が汗ばんだ身体を撫でる。
部活の練習が無い日、俺はこうして土手で自主トレという事でランニングしている。
「…あのさ」
併走する自転車から涼しげな声が聞こえた。
「なん、だ、か、ぐらっ」
走っている途中なのでまともに話せない、目線だけ横へ流すと金色の片目が見えた。
「なに頑張ってるの? レギュラーなんて無理なのに」
「無理、か、どう、かは、俺が、決め、るんだよっ……」
「ふーん……アモン、ハンドルお願い」
そのまま神楽はハンドルから手を離してだるそうに身体を反らす。
(全く、悪魔使いの荒いお嬢様ですね)
頭に直接響く声がした後、神楽の金色の右目が輝き、不安定に揺れていたハンドルが固定される。
「おま、え、も、苦労、して、るなっ」
(出来れば早く貴方とお嬢様が恋に目覚めてくれればいいんですがね)
神楽は人間ではない『何か』らしい。
色々聞いてみたが本人は知らないしアモンは何も教えてくれない。
ただ分かっているのは金色の右目にソロモン七十二柱の悪魔アモンが宿っている事。
そんでもってアモンが開放されるには俺と神楽が愛し合う必要があるらしい。
「アモン、お仕置き」
(あ、ちょっとお嬢様、イタタッタタタタ……)
ハンドルがぐらぐら揺れる、で、そのまま
「あ」
自転車が土手を踏み外した。
土手を結構なスピードで下っていく自転車、追いかけるが少しずつ距離が離れていく。
(落ちちゃいますって! いい加減お仕置きやめて下さいってば!)
「……」
「だっしゃぁあああああああ!」
間一髪、神楽の服の先をつかんで引き寄せる。
勢い余って神楽を抱いたまま尻餅をつくのと、自転車が落ちるのはほぼ同時だった。
「あ、あぶねぇ…神楽、大丈夫か?」
「…大丈夫、離して」
「ん、ああ、悪い」
ぱっ、と手を離すと何事も無かったかのように立ち上がり、神楽はこっちを見た。
「……」
「…? どうした?」
「……が…ぅ……」
微かに開かれた唇からよく聞き取れない声が聞こえた。
「アモン、自転車出して、帰る」
(はいはい、と)
水に沈んだ自転車がビデオの巻き戻しのように土手に上ってくる。
「なんだ、もう帰るのか?」
「タカシが構ってくれないし……っ!」
金色の輝きが一瞬薄まり、自転車は再度水面を盛大に揺らして沈んでいく。
「…アモン」
(少し『鎖』が緩みました)
「いい、もう一回」
再度自転車が浮上してくる、沈んだり戻ったり大変だな。
「…じゃ、今度」
何事も無かったかのように神楽は自転車に跨りそんな事を言った。
「どうせなら今からでも遊ぶか?」
「いい、これ以上居ると…」
(私が…イタタタタタ)
「アモン、煩い」
神楽はそのまま自転車を漕いでいく。
「アモンは何言おうとしたんだ?」
その後姿を見つつ、俺はそう呟いた。

オナってたらツンデレか微妙だしいつも通りの構成にならなかったからこっちで垂れてみる
最終更新:2011年10月25日 18:06