978 :1/2:2008/01/09(水) 18:27:48 ID:.LfIVFDY
【ツンデレのおなかがぐぅと鳴ったようです】
三時間目の半分が過ぎた頃だろうか、突然教室に「ぐぅ~」という腹の音が響いた。あまりの大きさに先生の手も止まり、教室がざわつく。
「た、タカシじゃ! タカシの奴が腹を鳴らし、授業を妨害したに違いないわい!」
やおら立ち上がり、まつりは俺を指差した。教室中の視線が俺に集中する。
「いやいやいや、してないよ? 音がしたの俺の近くじゃないし」
否定したのに、誰にも信用されず、授業を妨害したとの罪で廊下に立たされた。あんまりだ。仮に鳴らしたとしても、廊下に立たすのはないと思う。
あまりの扱いに涙でネズミを描いたりしてたら授業が終わった。もう鳴らすなよと言いつつ去って行く先生の後姿に呪詛を唱えてから、教室に戻る。
「さて、どういうことか説明をしてもらおうか、まつりたん?」
「な、なんのことかのう? わらわにはちっとも分からんのじゃ」
あらぬ方向を向いてしらを切るまつりの肩をがっしと掴み、にっこり微笑む。
「今なら許す。ちなみに、今を逃すと性欲処理用肉奴隷が一匹俺の部屋に据えられることになります」
「わらわじゃ、わらわの腹が鳴ったのじゃ! すまぬのじゃ!」
軽く脅すと簡単に口を割った。
「ったく……なんで俺のせいにするかね」
「し、仕方ないのじゃ。わらわがやったとなると、今まで築き上げてきたわらわのいめぇじが崩れ去ってしまうのじゃ。それだけは姫として避けねばならんのじゃ!」
どこの国かは知らないが、こいつは亡国の姫らしい。姫は姫なりの苦労があるということか。だがしかし。
「だからって俺のせいにしていいわけがあるかああっ!!」
「にょわあああああっ!」
まつりのおでこをぐりぐりぐりーっとする。
「うぐぐぐ……よくもわらわの可憐なおでこを! 万死に値するぞよ!」
ぷすぷすと煙をあげるおでこを押さえつつ、まつりは涙目で俺を睨んだ。
「そもそもお前が悪いの。俺だからこの程度の罰で許すけど、他の奴なら今頃お前は肉便器だぞ?」
「そっ、そうなのかえ? ぬう……なんと恐ろしい国じゃ」
こうしてまつりは間違った知識を植えつけられているのです。
「分かったら今日俺の家に来い。肉便器のなんたるかを実践して教えてやるから」
「貴様が率先してどうするのじゃ!」
しまった、つい。まったく、つるぺたを見るといつもこうだ。
「ところで、腹が鳴るってことは、腹減ってんのか?」
「ぬ……き、今日はちと朝が遅うてな。朝食を食う暇がなかったのじゃ」
979 :2/2:2008/01/09(水) 18:28:10 ID:.LfIVFDY
まつりは頬を染めながら照れ臭そうに言った。
「ふむ……ちょっと待ってろ」
鞄からパンを取り出し、まつりに渡す。
「これは……?」
「変なのは入ってないよ。本当だよ。本当に本当だよ」
「そこまで念を押されると逆に気になるわい!」
「冗談です。多めに持ってきたからさ、ひとつやるよ」
「ふ、ふん。庶民の飯などまずくて食えたもんじゃないわい。いらぬわ」
遠慮しているのか、まつりは受け取ろうとはしなかった。
「食べないと肉便器」
「わらわ、あんぱんだーい好き! はぐはぐはぐ!」
軽く脅すと簡単に食べた。
「分かりゃいいんだよ、分かりゃ」
はぐはぐ食べてるまつりの頭をくしゃくしゃになでる。
「くっ、よくもわらわを脅しおって……国が復興した暁には、ぎゃふんと言わせてやるぞよ」
まつりは悔しそうに俺を睨んだ。しかし、そうしている最中もあんぱんを食う手は止まってなかった。
「おいしい?」
まつりはコクコクうなずいた。
「……ち、違う! おいしくなんかないぞ、ないぞよ!? さっきのはちょっとした間違いじゃ! こんなのまずくて食えたもんじゃないのじゃ! ぶべーなのじゃ! ほ、本当じゃぞ!?」
「わはははは。かーわいー」
まつりの頭をくしゃくしゃになるまでなでる。
「うぐぐぐぐ……わらわを馬鹿にしおって! 絶対に許さんのじゃ!」
「メロンパンもあるけど、食うか?」
「……ど、どうしてもと言うのなら我慢して食ってやるのじゃ」
「あーはいはい。どうしてもどうしても。ほれ食え」
メロンパンを渡すと、まつりは嬉しそうにかぶりつくのだった。
「……ハラペコキャラだ」
「聞こえたぞよ!? ハラペコじゃないわい!」
ハラペコが怒った。
最終更新:2011年10月25日 18:16