982 :1/3:2008/01/10(木) 22:26:45 ID:.LfIVFDY
【「ヘブンズドアー! 『ツンできない』ッ!」】
矢に貫かれ、スタンド能力を身につけた。よし、好都合なことに遊びに来たボクっ娘で試してみよう。
「ヘブンズドアー! 『ツンできない』ッ!」
ボクっ娘の顔がまるで本のようにめくれる。そこに『ツンできない』と書き込み、スタンド解除。さてどうなる?
「う、ううん……タカシ、ボクに何かした?」
梓は頭を振って俺に尋ねた。自分に何が起こったか理解していないようだ。
「何もしてないよ?」
「……そう? それならいいんだけど」
さて、見た目上は何ら変わっていないようだが、はたして俺のスタンドは機能しているのだろうか。実践だ。
「ところで。梓、ちゅきちゅきー」
我ながらとても気持ち悪いが、これくらいやった方が分かりやすいだろう。いつもの梓なら「タカシが狂った! ……いや、いつも通りカナ?」とか言うに違いないが、さて。
「な、なんだよ、いきなり。恥ずかしい奴だなあ」
む、ちょっと反応が違うが概ねいつも通りか。失敗か。
「……まあ、ボクもちゅきちゅきだけどね」
梓はぼそっと付け足した。成功だ。さて、こうなったらエロいことしたいよね。例えば、ふ、ふ、風呂に一緒に入るとか! で、洗いっことか! 手が滑らせもにゅもにゅやーんえっちとか! とか!
ほとばしる妄想に鼻息を荒くしてると、梓が俺をくいくい引っ張った。
「ね、ねぇ……本当にボクに何もしてない?」
「してないっての」
「うー……でも、でもね、なんか知んないけどね、タカシがすっごい好きなんだよ。好きすぎて、むきゅーって感じなんだよ。なんかしたでしょ?」
なんだ、むきゅーって。つーかなんでそんな恥ずかしい事を真顔で言いますか。こっちが恥ずかしいジャマイカ。
「し、してない」
「ホントにぃ……? うー、なんだろ、うー……やっ!」
気合を込めて梓が俺の背中に抱きついてきた。
「なんですか」
「なんか知んないけど、すっごくタカシに抱きつきたいんだよ! したでしょ、なんか!」
「だから、してないっての」
『ツンできぬ』とは書いたが、『抱きつけ』とは書いてない。
983 :2/3:2008/01/10(木) 22:27:25 ID:.LfIVFDY
「くんくんくん」
「匂うな。犬か」
「ぬー……落ち着くよっ!」
「なんで怒ってんだよ」
「タカシなんかに抱きついて落ち着く自分が不甲斐ないよっ! もっと気骨あったよ、ボク!」
「不甲斐ないって……俺が好きなのか嫌いなのか、どっちやねん」
「ちょー好きだよっ! それはそれとして、ボクってこんなふにゃふにゃじゃなかったような気がすんだよ!」
「じゃあ離れれ」
「超お断りだよっ! なんだか一時でも離れたくない気分だよ! むぎゅーだよ!」
むぎゅーと言いながら梓がむぎゅーと抱きしめてくるのでむぎゅー(困惑)。
「あぎあぎあぎ」
「いていて、頭かじるねい」
「うー……幸せだよっ!」
「だから、なんで怒ってんだよ」
「怒ってないよ! 感情を持て余してんだよ!」
「性欲を持て余す?」
「惜しい! ちょっと違う! それMGS!」
なぜか詳しかった。
「性欲はともかく、ちゅーはしたいよ! いい?」
「あははははは。梓は冗談が上手だなあ」
こんな状態の梓とそれは、流石にダメだ。どうにか背中から引き剥がし、『ツンできない』を訂正せねば……!
「ね、何にもしないからさ、ちょっとこっち向いて」
「任せろ」(反対方向を向きながら)
「…………」(無言で反対方向に顔を移動)
「…………」(その反対に)
「こっち向け! ちゅーできないだろっ!」
「あっ! 梓、見ろ! 空から金星人が!」
「嘘が下手すぎだよ! 小学生でも騙されないよ!」
984 :3/3:2008/01/10(木) 22:28:04 ID:.LfIVFDY
「いやいや、空は空でも蒼井そらのことだから」
「……怖いよ!」
蒼井そらが開いて中から金星人が出てくる様でも想像したのか、梓は一瞬固まった。その一瞬を逃さず、梓から離れる。
「あっ! ず、ずるい!」
「ヘブンズドアー! 『ツンできない』を解除ッ!」
再び梓の顔が本のようになり、そこに書かれた『ツンできない』を消す。
「…………」
どうだ? 戻ったか?
「……あ、あううううーっ!」
梓は真っ赤になって俺を叩いた。
「やあ、戻ったようですね」
「な、な、なんてことさせるんだよっ、ばかっ!」
「しかも、全部覚えているようで何よりです」
「ちっとも何よりじゃないっ! アレだろ、ボクに惚れ薬的な何かを盛ったろっ! じゃなきゃ説明できないよっ!」
どうしよう。「スタンドでツンを取り除いただけです。いやはや、ものすっごいことになりましたね」とか言ったら怒るよな。よし、ここは大人な対応で。
「えっと、そうです。こう、ごばーっと盛りました。ごめりんこ」
「嘘っぽい! ホントのこと言えよっ!」
「いや、本当に。こう、惚れ薬をぐわーって。決してスタンドとか使ってない」
「スタンド……?」
いかん。
まあ結果から言うと、全部ばれた。
「ボクは! 別にタカシのことなんて! 好きじゃないもん! 惚れ薬盛られたんだもん! スタンドでツンを取ったとか意味分かんないし!」
そんなわけで、超真っ赤な顔でがなる梓が超うるせえ。
「あーはいはいそうな、惚れ薬盛られたんだよなー。別に俺のことなんて好きじゃないもんなー」
「そうだよ! そうに決まってるよ! それはそれとして、もースタンドとかいうの使うの禁止だかんねっ! 理由は不明であり以後ずっと不明!」
「はいはいはい」
ご立腹なボクっ娘の頭をなでて必死にご機嫌を繕う俺だった。
最終更新:2011年10月25日 18:17