103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/21(月) 21:31:54 ID:???
初の規制。そんなときに限って・・・投下したくなった。
本スレ420の>>188から沸いた。

夏休みに入り、存分に怠惰で遊びに溢れた生活を満喫。けれど、何か満たされない。
うぅん、本当は解ってるのに考えないようにしてただけ。そう・・・大好きなアイツに逢えない事が
こんなにも苦痛だったなんて。
友達がこっそり撮って無理やり渡してきた写真を眺めてため息を一つ。
『はぁ・・・顔見たいなぁ・・・声聞きたいなぁ・・・』
ぼやいた所で叶うはずもない願い。いっそ、当てもなく外をウロウロすれば、万が一にも出会えるかも
知れないとも考えた。でも、そんな宝くじにでも当たるような確立に賭けて、外をうろつくのもバカらしい。
それに・・・出くわしたところで、いつものように憎まれ口を叩いて終わってしまいそう。
もっと計画的に・・・そう、アイツも私も嫌でも一緒に居ないといけないような状況を作らないと。
ふと机の上を見ると、先延ばしにしたままの宿題が目に入る。
『そうだ・・・これよ!これこれ』
アイツの事だ、どうせ宿題は忘れて遊び呆けてるに違いない。・・・まぁ、私もだけど。
だから、宿題を口実に会いに行って・・・あわよくばで、デートの約束なんか・・・い、いいかも。
前に読んだ本でも、夏休みの宿題をきっかけに恋人になるってのがあったし、今の私にピッタリじゃない。
ベットから跳ね起きて、電話を手に取る。電話帳からアイツの電話番号を探して、コールボタンに
指が触れたとき、ふと考えた。
電話かけてらて・・・アイツはどう思うのかな?出かける約束とかは、大抵は夏休みの前に取り付けておく
もの。夏休みも始まって1週間、こんな時期に電話をかけてきたら・・・やっぱり変に思うかな?
私から電話するなんて滅多にしないし、いっそアイツから「宿題教えてくれ~」とか来てくれれば
どんなに楽だろう。そして、嬉しい気持ちとは裏腹に渋々という感じで承諾する私。
それからのめくるめく宿題生活に想いを馳せて、気がつけば電話を手に取ってから2時間も経っていた。
『うぅ・・・えぇい!どうにでもなっちゃえ!』
妄想を現実にするため、私は勢いに任せ、震える指でコールボタンを押す。
呼び出し音が1回・・・2回・・・3回・・・胸のドキドキがその音ごとに高鳴っていく。
宿題教えてあげるって・・・だから、一緒にやろうって・・・ちゃんと言えるかな?
4回・・・5回・・・6回・・・高鳴る鼓動が小さくなっていく。その代り、せっかく私が電話かけて
あげたんだから早くでなさいよ!という気持ちがふつふつと沸いてきた。

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/07/21(月) 21:32:38 ID:???
けれど、出てくれなかった事に何故か安堵感も感じた。
7回・・・8回・・・9回・・・やっぱり出ない。きっとお風呂に入ってるとか、トイレに行ってるの
かもしれない。ここは一度電話を切って、気持ちを落ち着けてからかけなおそう。
そう思った瞬間、電話が繋がる音がした。
『はい、どなた?』
予想外の事態。出たのは女の人の声・・・しかも、若い感じ。慌てて電話を切ってしまった。
間違いなくアイツの携帯にかけたはず・・・よね?なのに、なんで女性が・・・?
もしかして、実は私の知らない間に彼女ができて・・・それでそれ・・・!?
嫌な考えが瞬時に頭の中を支配していく。嘘・・・そんなの嫌・・・。
『誰?誰!!?誰!!!!?』
ベットに倒れこむように寝転がり、嫌な考えを吹き飛ばすためにジタバタしてみても消えそうに無い。

しばらくして、電話が掛かってきた。この着信音は・・・アイツだ。
電話を手にとって、ため息をつく。電話に出て、アイツに何て言えばいいんだろう?
さっきの女性の事が気になって、もう予定通り宿題やろうなんて言う気持ちになんてなれない。
でも今の私とアイツは単なる幼馴染。アイツが誰と付き合おうとアイツの勝手。
そんな事をイチイチ私に言う必要もない。でも・・・でも・・・そんなの酷いよ。
『も、もしもし・・・』
電話に向かう私の声は、自分でもわかる涙声。
「あ、俺だけど・・・どうした?」
『うるさい・・・うるさい・・・ばかぁ!』
「お前、泣いてるのか?」
『ぐすっ・・・だ、誰なのよ・・・さっきの・・・電話・・・ぐすっ・・・出たの』
もう気持ちが抑えきれず、恥も外聞もなく問いただす。ダメならダメで・・・せめてアイツの口から
言って欲しかった。そうすれば、スッパリと諦められるかもしれない。
しばらくの沈黙。そして、小さなため息が聞こえた。
「誰って・・・姉ちゃんだけど?お前だって合った事何度もあるだろ?」

105 :3/3:2008/07/21(月) 21:33:03 ID:???
姉ちゃん?って・・・貴子さん?小さい頃、アイツと貴子さんと何度も遊んだっけ?
確か、今は大学に通うため、家を出てたはず・・・だったはず。
『た、貴子さんは今居ないはずじゃ・・・』
「夏休みでこっちに帰ってきたんだよ。電話がうるさいから勝手に出ちゃったみたいなんだけど」
ほっと一安心。そっか・・・彼女じゃなかったのか。
そう思った瞬間、体の奥が恥ずかしさでじわっと熱くなってくる。勝手に勘違いして泣いてバカみたい。
「それで・・・何かあったのか?珍しく電話してきてさ、泣いたりして・・・」
『え?な、泣いてなんかいないわよ!』
「そうか?何か涙声だった気がしたけど」
『き、気のせいよ!』
さとられないように、声を荒げてしまった。これじゃ、肯定してるようなものよね。
でも、今はどうだって良い。アイツに恋人がいないってわかったんだもの。
『そ、それよりアンタさ。宿題やってるの?』
「え?いや、終わり方にまとめてやろうと思ってるんだけど」
『そんな事言って、どうせ私に泣きついてくるんでしょ?見せてくれって』
「いや・・・あはは、まぁ、そう・・・かな?」
アイツの笑い声でようやくいつもの私に戻れた気がした。やっぱり・・・私はアイツが大好きなんだなって
改めて思う。
『しょうがないわね。特別に私が教えに行ってあげるわよ』
「え?いや・・・」
『何よ、文句あるの?断るって言うなら、学校始まっても何も教えてあげないわよ?』
「ま、待った!分かったよ・・・その・・・お、お願いします。これでいいか?」
『ふふん、まぁいいわ。それじゃ、明日から終わるまで続けるから覚悟しなさい?』
「はーい、分かりました。かなみ先生」
電話を切り、思わずガッツポーズ。夏休みの宿題はたっぷりある。終わるまでって言ったから・・・
1週間以上は続けられる・・・ずっとずっと会いにいける。
もう妄想だけじゃ我慢できないもん。絶対に絶対に・・・恋人になってやるんだから!
明日どの服を着ようかと開けたクローゼットについている鏡には、緩みきった私の顔が映っていた。
最終更新:2011年10月25日 18:44