168 :1/5:2008/12/07(日) 12:52:18 ID:???
山×友
『やまだー、のど渇いたー。』
「うん?じゃあ何か買って来ようか。」
『もちろん奢りよね?』
「えー…。」
『ったく普段役立たずなんだからこういう時くらい役に立ちなさいよね。』
「わかったよ。じゃあ行ってくるね。」
山田はにこりと笑って部室を出て行った。
『…はぁ…どうしていっつもこうなんだろ…』
『こんなんじゃいつか嫌われちゃ…う…すぅ…すぅ…』
「友ちゃーん、ジュース買ってきた…」
『すぅ…すぅ…』
「ありゃ、寝ちゃってるよ。ここんとこ眠そうだったから仕方ないか…後のことはボクがやっとっか。」
山田は友子に自分の上着をかけてやり、また部室を出て行った。
…一時間後
『ん…あ、いけない、私寝ちゃってた…』
友子は目を覚ました。それと同時に、肩にかかっている上着に気づく。
『これ…山田がいつも着てるやつ…私が寝てたからかけてくれたのか…。』
『もう、上着が無いと寒いはずなのに…ほんとにお人よしなんだから…。』
上着を手に取りまじまじと見つめる。
山田は決して大柄な方では無いが、それでも彼の上着は友子の身体をすっぽりと包めるくらい大きかった。
169 :2/5:2008/12/07(日) 12:52:55 ID:???
『やまだ…。』
友子は上着をぎゅっと抱きしめる。顔を近づけると、山田の匂いがするような気がした。
それと同時に浮かぶのは、彼の優しい笑顔。
友子が山田を好きになるきっかけを作ったその笑顔。
『ん…ふぁ…やまだぁ…』
友子は自分の気持ちを山田に打ち明けていなかった。
山田が自分みたいなガサツで盗撮が趣味の根暗な女なんて好きになるはずが無いと思っていたから。
彼はそんな私でも分け隔てなく接してくれた。だけど彼の優しさは皆に対して平等で、自分に対してだけのものではないのだ。
それに、その彼の優しさを自分は踏みにじるかのように彼に冷たく接してきた。
だから、ただこの叶わぬ想いを自分で慰めるしかないと思っていた。
『すきぃ…すきだよぉ…やまだぁ…』
友子は知らず知らずのうちにその手をスカートの下へと伸ばそうとしていた。
その時だった。
「はー、終わった終わった。」
『うはぁ!?や、山田!?』
山田が突然部室へ入ってきた。友子はとっさに手に掴んでいた上着を目の前の机に放り投げる。
「あ、友ちゃん、起きた?もう今日の仕事はやっといたから、帰ろっか?」
『あ…ごめん…。』
「良いの良いの。友ちゃんはいっつも頑張りすぎだよ。少しはボクを当てにしてくれても良いんだよ?」
『ふん…アンタなんて頼りなくて仕事なんて任せられないもん…。』
「酷いなぁ…これでも頑張ってるつもりなんだけどね。ま、帰ろ?」
そう言って山田は友子に微笑みかける。
『ぁ…ぅ…。』
友子の気持ちは抑えられないものとなっていた。
170 :3/5:2008/12/07(日) 12:53:27 ID:???
山田が好きでたまらない。なのにそれを打ち明けても、結果がだめなのはわかっている。
その葛藤は、涙になって流れ出していた。
『あ…。』
「え、友ちゃん…?」
それを見た山田が友子を心配そうに見つめる。
「ど、どうしたの…?」
『な、なんでもな…』
「なんでもないわけないよ…何か悩み事でもあるの?」
『なんでもないって言ってるでしょ!!ほっといてよ!!』
友子は部室を出ようとしたが、山田がそれを制止する。
「友ちゃん、落ち着いて!!」
『どいてよ!!私のことなんかほっといてって言ってるでしょ!!』
「ほっとけるわけないだろ!!…ボクの好きな人が泣いてるのに!!」
『…ふぇ…?』
気がつくと、友子は山田に抱きしめられていた。
…今山田はなんて言った…?
好きな人が泣いてる…?
好きな人が泣いてるなら…その子のとこに行ってあげないと…。
「違うっ!!ボクが好きなのは、君だ!君なんだよ友ちゃん!!」
友子は信じられずに首を横に振る。
『う、うそ…うそよ…うそようそよ…』
「嘘なもんか…ずっと…ずっと好きだったんだ!!」
『うそ…よ…やまだがわたしを好きになるはず…うっ…ふ、ふええぇぇーん!!』
「わ、と、友ちゃん…!?」
山田は友子が落ち着くまで、ずっと彼女の背中をぽんぽんと叩いていた。
171 :4/5:2008/12/07(日) 12:56:29 ID:???
「…そっか…ボクがしっかりしてないせいで友ちゃんを苦しませてたんだね…。」
友子は山田に全てを打ち明けた。ずっと好きだったということ。そしてそんな自分の気持ちが叶うはずないと思っていたことも。
「実はボクも…同じ気持ちだったんだ。ボクみたいな優男は友ちゃんの眼中にも無いと思ってた。」
『それは…私がいつも冷たくしてたから…』
「ううん。今考えたらさ、それもわかる気がするよ。好きな子に意地悪しちゃうみたいなさw」
『うっうるさいばか…。』
「まぁどっちにしろ、ボクらは両想いだったんだ。するべきことは一つだよね?」
『するべき…こと?』
「友ちゃん、ボクと付き合って欲しい。」
『つ、付き合…はぅぅ…。』
友子は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「ふふっ今日の友ちゃん、いつもと違って大人しいから、すごくかわいいよ。いつもこんなだったら良いのに…。」
『なっ…!!からかうな・・・!?』
友子が見上げた先には、山田のいつもの笑顔が有った。
「やっと戻った。やっぱり友ちゃんは元気が良いのが一番だよ。」
『ば、ばか…。』
172 :5/5:2008/12/07(日) 12:56:49 ID:???
「で、答えは…?」
『むー…ひ、一つだけ約束して…。』
「なーに?」
『そ、その…あんまり私にはその笑顔…見せないで…。』
「え?どうして?ボク笑ったらブサイクかな?」
『そ、そうじゃなくて…山田の笑顔見たら…その…好きって気持ち抑えられなくなっちゃうから…。』
「へ…?」
山田も思わず赤面する。
『私が好きになったの…山田がいっつも私にその笑顔を見せてたせいなんだからね…。』
「そ、そう…なんか恥ずかしいな…。」
『でも、あんまり他の子にも見せたらダメだからね?』
「他の子がボクのことを好きになったら困るから?」
『う、自惚れるなっ…んむ!?』
山田が突然友子の唇を奪った。友子の目がとろんと蕩ける。
『ふぁ…。』
「…約束は守るよ。それじゃあ、晴れてボクらはカップル、かな?」
『う、うん…。』
「じゃあ改めてよろしくね!友ちゃん。」
『うー…また笑った…。』
「あ…でも笑うななんて難しいよ…。」
おしまい
最終更新:2011年10月25日 18:49