410 :1/2:2009/05/28(木) 23:54:58 ID:???
幼馴染という友達以上恋人未満な関係をだらだらと何年続けてきただろう。
いい加減前に進みたいというのがぶっちゃけた本音なのだが、そうできるのならとっくにしている。

アイツが鈍感であるとか私が臆病だとか色々な要因が絡まって、結局ちっとも進まないのである。

自室のベットに寝っ転がっている私である。手元の雑誌に目を落とし、デートスポット特集の記事をぺらりとめくる。
写真を見て景色を楽しみ、特に行く相手もいないという我が身の男っ気の無さに溜め息をつく。今のところは、そんな事の繰り返し。

親しい男子の顔を数人思い浮かべるが、誰も彼もはっきりイメージできない。
唯一想像にかたくないのがアイツだが、それは想像するだけ無駄。
大体アイツは私から頼まない限りこんな所へは連れて行かないだろうし、そもそもこんな雑誌読まない。故にこういう場所にも疎い。

「……でも…」

また一つ、溜め息。

「行けたら…楽しいだろうなあ……」

意識は想像の世界へ飛ぶ。

雑誌に躍るいくつかの場所──海の見えるレストランだとか、夜景のきれいな公園だとか、なんかでかい観覧車だとか。
そんな、いわゆるロマンチックというかいい雰囲気というかムード満点というか、そういう所へアイツと二人……だけ、で。

411 :2/2:2009/05/28(木) 23:58:51 ID:???

「……まあ、あいつじゃこんな所連れてってくれないだろうけど……」

アイツの顔が浮かぶ。想像の中のアイツは、屈託の無い笑顔で私に笑いかけていた。
悪い男じゃないんだけど……変なところで鋭いクセに、肝心な所で鈍感な男。

この手の雑誌を読むときは大体こうなる。アイツと行けたらなあと考えて、どうせムリだけどと落胆する。
なんか悔しいけど、そういうふうになっている。

「…って、何で私がアイツに振り回されなくちゃいけないのよ」

考えたらなんだか腹が立ってきて、肘置きにしてたパンダのぬいぐるみを指でぐりぐりといじる。
けどそれで気持ちが晴れたりするわけでもない。胸の中にはいまだになんかもやもやした感情がが居座っている。


まあ、その、こういうのは、結局、突き詰めていえば……。

恋する気持ちは抑えが効かない、ということなのだろう。


「こ」で始まって「い」で終わる二文字の単語を思ったことが非常に気恥ずかしくなり、私はぬいぐるみに一発パンチを見舞わせたのだった。
最終更新:2011年10月25日 19:21