606 :自炊:ツンデレに看病を頼まれたようです そのいち:2010/01/25(月) 01:08:12 ID:cTPqACE2
少し借ります


~早朝 タカシの部屋~

目覚まし時計が鳴る。
「ん……ふぁあ……」
時計の針は、7時を示していた。
せっかくの休日なのに目覚まし時計をセットしてしまっていたらしい。くそ、昨日の俺め。
「一回起きると寝れないんだよなぁ……」
ぼやきつつ、携帯電話を開く。
と、画面には《メール受信 1件》の表示があった。
「かなみ……?」
どうやら送り主は向かいの家の幼馴染、かなみのようだ。
とりあえず確認。

1/24 6:47
差出人:かなみ
件名:命令よ!!
本文:風邪引いた。今すぐ来なさい。
来なかったら殺すから。

「…………」
休日の朝からなんとまぁ。
てか俺殺されるね?
「まぁ……暇だし、行くか……」
とりあえず、支度にかかることにした。


~椎水かなみ宅前~
「とりあえず着いたな」
向かいだけど。
それにしても、このメール、かなみは一体何のようがあって俺にメールを……?
「まあ、かなみに聞けば解るな」
インターホンを押す。
ややあって、スピーカーから返事。
『……開いてるわよ……』
「じゃあ入るぞ」
ドアを開けると、パジャマ姿のかなみが玄関に立っていた。
『……遅い。死刑よ……』
おかしい。いつもなら――
『遅い!!極刑よ!!死刑!死刑!死刑なんだからぁーー!!』
「ちょ、かなみ!!流石にドリルはまず……ぎゃあーー!!!」
――なはずなのに。
『……アンタ、今物凄く失礼な想像しなかった?』
「ハハ、まさか」
誤魔化すため、笑みは忘れずに。
「で、どうしたんだ?あんな朝から。風邪ごときで」
『……熱出たのよ』
言うかなみの顔は赤い。よく見ると汗もかいてるようだ。
『だから……看病しなさい』
「おばさんは?」
『……お母さん、買い物。お父さん、仕事……。私、一人』
「解ったお前すぐベッド行け」
熱に浮かされ片言になってやがる。
『……』
フラフラと自室に戻るかなみ。
さて、どうしたものか。
「とりあえず、お粥でもつくるか……」

607 :自炊:ツンデレに看病を頼まれたようです そのに:2010/01/25(月) 01:11:09 ID:cTPqACE2
「他にすることあるか?」
『……着替え』
「ゴメン無理」
『……何よ?私みたいな可愛い娘のハダカ見れるのよ?』
「見ないから」
『……良いから取ってきなさい。と言うかその箪笥の中』
かなみに促され、箪笥の中から新しいパジャマを出す。
「はい、じゃあ着替えの間は俺は外に」
『着替えさせて』
「……は?」
『……早く。汗かいて辛いんだからね。あ、汗拭いてくれる?』
「……背中だけなら」
かなみは無言でバンザイをする。脱がせ、とでも言うのだろうか。
「……やるしかないのか」
『……何よ。私だってさせたくてさせてるんじゃないんだからね?手を動かすのも辛いのよ?』
「解った解った」
かなみのパジャマはワンピースなので、下を脱がすという変態的な事はせずに済む。
俺はかなみの服を脱がした。
『……エッチ。胸、触った』
「ほれ、早く着ろ。悪化するぞ」
素早く服を着せる俺。
今年始まって以来の良い仕事だったかもしれない。
「薬はいいのか?」
『……流石に座薬は無理よ』
座薬とな。最近の医者は容赦ないな。
「まぁ、ぐっすり寝ることだな。じゃ、もういいよな?帰るぞ」

608 :自炊:ツンデレに看病を頼まれたようです そのさん:2010/01/25(月) 01:13:51 ID:cTPqACE2
『……待って』
帰ろうと踵を返した俺の服の裾を掴むかなみ。
『あの……ね。一つ、気になること、無い……?』
気になること。確かに一つ、重要な事を聞き忘れていた。
「……なんで俺なんだ?」
メールをもらった時から疑問だった。
かなみは女の子だ。女の子の看病を何故男の俺に頼んだのか?女の子なら、着替えも体を拭くことも、なんら恥は無いはずなのに。
『……タカシにして欲しかったから』
「答えになってないぞ」
『……好きな人に看病して欲しかったのよ。悪い?』
「いや、悪くは無いんだけど……」
いきなり告白された、のか?
『……ゴメン。我が儘よね。こんな嫌な女……彼女になんて』
「おいおい、俺が何年幼馴染やってると思ってるんだ?お前の我が儘で俺が怒ったことあるか?」
『……無い、です』
「じゃあ、良いじゃねえか。俺も、お前の事好きだし」
かなみは、少しきょとんとし、少し顔をしかめた。
『ズルい。私がどれだけ勇気出したと思ってんのよ』
「ハハ、すまん」
『でも、嬉しい……です』
そう言って微笑むかなみ。
「ドラマとかだとここで抱き締めたりキスしたりするんだが――」
『……風邪よ。伝染るからやめて』
「そうだな。じゃあ、医療的な意味をこめて、ヴィップス 〇ポラップを塗ってやろう」
何か地味に段階跳ばしてる気がするが、まぁいいだろう。
『…ぅ……ふぁぁ……』
よし、ぬりぬり終了。
『……タカシのエッチ』
「風邪薬だって。医療行為だよー」
『……』
あ、かなみさんご立腹か。
「なでなでー」
頭を撫でてやる。
『……ぅにゅう♪』
「……簡単な奴だな」
『……うるさい、ばか……ぅにゃ♪』

615 :自炊:ツンデレに看病を頼まれたようです~おまけ~:2010/01/26(火) 00:00:06 ID:cTPqACE2
調子に乗って、後日談とか。


翌日。俺、別府タカシにメールが届いた。差出人はかなみで、どうやら風邪が治ったらしい。だから部屋に来い、と。
何故?と思いつつかなみの部屋へ行くと、
『正座よ!!!』
黙って正座をする俺を、かなみは仁王立ちで見下す。
どうやら、これから説教をされるらしい。
「いきなり呼び出されたと思ったら……」
『うるさいっ!!』
捲し立てるかなみの顔は真っ赤だ。
「あ、もしかして昨日の」
『にゃあああああ』
あ、かなみが壊れた。
『きっ、昨日のアレは、そのっ……熱で頭がおかしくなってたのよ!!』
「ほう」
『だいたい、着替えとか……胸とか……もー!!』
一人で悶えるかなみ。ウム。眼福眼福。
『アンタ!!責任取りなさい!!』
「いや……指差されてもだな……でも、確かに昨日付き合うみたいな雰囲気になったけど、お前が嫌なら……」
『え……?』
「かなみは凄い高熱出してたからな。俺も正常な状態でかなみの気持ちが聴きたい」
一息。俺の目が真剣なものに変わる。
「かなみ、好きだ。もし俺なんかで良ければ……付き合って、くれないか?」
顔が熱い。昨日はかなみから言ってきたので楽に言えたが、流石に自分が言うときは緊張する。
『……バカ』
かなみは膝をつき、俺と同じ目線になる。
『タカシじゃなきゃ……ダメだもん……』
かなみの顔が更に紅くなり、目には涙が溜まっている。
「かなみ……」
『ずっと……ひくっ……待ってたんだよ……?』
かなみの頬を水が伝う。
「泣くなー、かなみー」
わざとおどけた調子で。
勿論頭を撫でるのも忘れない。
『ぇうっ……ひぐっ…ぅ……にゅぁ……はゆぅ……♪』
……本当に単純な奴だ。
『……タカシ?』
「……何だ?」
『ドラマだったら、こう言うとき、どうするんだっけ……?』
「……よし」
かなみを抱き寄せ、唇を重ねる。
しかし、ホントにドラマみたいだな……。
『……撫でなさい』
唇を放し、命令。そしてまたキスをしてくる。
……かなみ、好きだぞ。
頭を撫でながら、キス。
『ん……ちゅ…ぅ…ふぁ……ぅにゃ…ちゅっ……♪』


以上。
後日談って蛇足だよね。
最終更新:2011年10月25日 19:43