695 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:51:34 ID:cTPqACE2

レスを少々拝借します。



バレンタインの休日、皆様如何お過ごしだろうか。
折角のイベントデー、でも休日。まぁ、別にチョコが貰える訳では無いけど。
だから俺はチョコを貰いに行こうと思う。
と、言うわけで、俺は人気アイドル、椎水かなみのバレンタインイベントに来ていた。
「……寒っ」
場所が野外のライブなので少々寒い。
あの野郎、あんなメール寄越しやがって……。
実を言うと、俺とかなみは幼馴染、このイベントも、かなみからのメールで来させられたようなものだった。
しかも自腹。
……まぁ、チョコ貰えるから良いけど。
「大体アイツは急すぎんだよな……」
などとぼやいていると、
『みんなーー!!!元気ーー!!!?』
会場のボルテージが一気にMAXに。
所々で返事が聞こえる。
『今日は屋外で御免ね!!寒いけど、頑張るぞー』
かなみが左腕を勢い良く天に掲げる。
オォーー!!!
ファンの声だ。右手を突き出し、叫ぶ。
『よっしゃーーっ!!それじゃいってみよー!!一曲目は――』
「……ってか、アイツも半袖で、良くやるよなぁ……」
しかし、その疑問は直ぐに吹き飛んだ。
「……あっつ。ダウン脱ご……」

696 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/14(日) 22:55:38 ID:cTPqACE2
ライブが終わり、次。
《かなみちゃんのチョコ渡しイベント》だ。
とりあえず既に出来てる行列に並ぶ。
「すみません、最後尾ってここですよね?」
【はい。そうですよ~?】
並んでいたのは女の子。俺より年下のようだ。
「君も、かなみのファン?」
【そんな~。ファンじゃなかったらここに来ませんよ】
確かに。失念していた。
「どんな所が好き?」
折角知り合ったかなみのファン。アイドルとしてのアイツはどんなんか聞いておこう。
【やっぱり、力強いとこですね。ほら、わたし、弱そうに見えません?】
「……まぁ、うん」
失礼だな、と思いつつ答えると、少女はクスリと笑った。
【女性として憧れるんですよ~。あの芯の強さ!!ホント、年下とは思えな】
「えぇっ!?と、年下?」
【……失礼です。これでも21です】
「あ、ああ……すみません。でも……」
【でも?】
「列……進んでます」
【ひゃあ!?は、早く言って下さいぃっ!!】
慌てて前に詰める女の人。
……やっぱ、年上に見えん。

697 :そのさん(忘れてた。すみません):2010/02/14(日) 22:58:21 ID:cTPqACE2
女の人と話している内に、列が近づいてきた。
「おっ、そろそろか……」
【かなみちゃんが見えてきました!!か、かわいいです……】
ファンの人にチョコを渡すかなみが見える。
ただ、かなみとは幼馴染。見慣れた容貌なので、この人の反応が少し面白い。
……いや、可愛いですよ?
列はドンドン進み、俺の番。
『……タカシ』
おいおい、名前で呼ぶな。危ないだろ。
「……チョコ」
『……あ、貴方が最後?いつもありがとう!!』
かなみの営業スマイル。
『えっと……』
と、かなみは自分のポッケをごそごそ。
チョコを取り出し、俺に渡す。
『チョコはすぐ食べてね!!』
「は、はぁ……」
列を退き、チョコを一口。
「ん……?何だこりゃ」
柔らかなチョコの中に、歯に当たる何かがある。
取り出して見ると、それはピンクのカプセル。
『あたーーりぃーー!!!!』
何処から出したのか、ハンドベルを思いっきり鳴らし、叫ぶかなみ。
『おめでとう!!ピンクカプセルは一等賞!!私とデートが出来ちゃいます!!』
……は!?
『ささ、早く!!』
かなみに手を引かれ、車に乗せられた。

698 :そのよん:2010/02/14(日) 22:59:46 ID:cTPqACE2
車の中。
「なぁ、かなみ」
『……なによ』
不機嫌そうな声。これがさっきまでのアイドルか。
『どうだった?まぁ、アンタは今日、暇で暇で仕様が無いだろうから、誘って見たけど……正解ね?』
「一人で話を進めるな。大体、誘ったってか、命令だろ?」
『五月蝿いなぁ、タカシは……』
…………。
この娘はホントに……。
「にしても、だ。何であんなマネした?」
そう。先程のチョコイベントの事だ。
「大体、当たりつきとか無いだろ」
『あ、マネージャー。そこ停めて』
コイツ、人の話を……。
『ハイ、降りる降りる』
かなみに押され、車を降りる。
「――って俺ん家じゃねえか!!」
『仕方ないでしょ?アイドルのアタシと類人猿のアンタ。一緒に居るとこ見られたらアウトよ。さ、中入りましょう?』
「……お前は」
ドアを開け、家に入る。と言うか、帰宅。
『汚いわね。流石タカシの部屋……』
「なぁ」
『大体、こんな奴が独り暮らし出来る訳無いのよ。誰か居ればいいのにね。まぁ居ないけど』
「おい」
『……ま、まぁ、どうしてもなら、私が――』
「おいっ!!」

699 :そのご:2010/02/14(日) 23:02:36 ID:cTPqACE2
思わず、叫ぶ。
「一体何なんださっきから。悪口言いに来たんなら帰れ」
まだだ。まだ収まらない。
「類人猿?悪かったな。アイドルだもんなそりゃそうか。聞いとこう。お前は類人猿の住処に何しに来た?」
『……いや、あの……』
かなみの目にうっすら涙が浮かぶ。
「言えねえか。まぁ、悪口だろう。スッキリしたか?ライブじゃあスゲエと思ったけど――」
『ホントっ!!?』
かなみが俺の胸ぐらを掴む。
「ああ、思ったよ。でもやっぱりお前は――」
と、
『ありがとう……』
かなみに抱きつかれた。
離そうと思ったが、離れない。
と、同時に、腹の中のドス黒い感覚が無くなる。
「お、おい、かなみ……」
酷い事を言ってしまった。
「御免」
いつものパターン。口喧嘩して、結局俺が謝るのだ。
『ううん……いいの……アタシも、御免ね……』
洟をすすりながら、かなみは続ける。
『アタシ、いっつもタカシに酷い事言って……でも、今日はアタシの凄い所見せてやろっ……て、で、でもぉ……』
「すまん。今日は虫の居所が悪かったんだ……」
『でも……タカシ、スゴイって……嬉しい……嬉しいよぉ』
抱きしめる腕の力は更に強く。
俺も、かなみの腰に手を回す。
「あぁ……かなみ。お前は凄い」
頭を撫でる。これもいつもの事。
『はぅぅ……タカシ……』
「……何だ?」
『……好き。付き合って……』
「……いや、流石にそれは」
『……嫌?』
再びかなみの目に涙が溜まる。
「い、いや、な?アイドルとしてのお前の将来を潰したく無いって言うか」
『……大体、アイドル目指したのも、タカシにもっとアタシを見て欲しくて……』
「え、そうなん?」
『……むぅ』
頬をつねられる。
『……いつも素直になれないのは、ホントに御免。でも、だから……だから、今日こんな事したんだよ?』
「……まぁ、アレだな。俺って、一人じゃ何もできないし……頼める相手探してるんだけど……どうよ?」
『……素直じゃないなぁ』
「……撫でてやる!!」
『やっ!!止めて髪が乱れ……にゃう……ふにゅう……』
「……お前、いっつもソレだな……」

ぼやきつつ、アイドルの頭を撫でる。そんなバレンタイン
最終更新:2011年10月25日 19:50