5 :1/2:2010/04/22(木) 14:08:58 ID:0WozdWgU
「お茶、温かいのがいい」
人の部屋に置いてあるソファーに座って雑誌を読む幼なじみの女性。
最近そこそこ有名になってきた職業女優の幼なじみ。
世間一般のイメージでは大人しい、頭がいい、清楚など良いイメージが圧倒的に多く、それはバラエティー番組などで視聴者側に植え付けられた情報だ。僕の前では傍若無人、唯我独尊、本性丸出しという残念なことになっている。
「だからお茶。客にお茶一杯、茶菓子の一つも出さないつもり?」
「夜中に突然やって来た客を招くつもりはありませんし、お茶を出すつもりもありません」
僕の言葉を聞くと幼なじみのかなみは雑誌を置き、自由奔放、勝手気ままに台所を捜索し始めた。
幼なじみ、とは言っても数年来の顔見知りと言った方が正しく、台所への無許可侵入を許すほど親しくもない。
それでも、台所の捜索を咎めないのは言っても無駄だということを理解しているから。嫁姑関係のように口うるさくするつもりもない。
「マシな食べ物一つ置いてないじゃない。二次オタは食べなくても生きられるわけ?」
数少ないマシな食べ物であろう僕のプリンを食べながら話すかなみ。
二次オタ、一般人にそう言われても仕方ないようなレイアウトの部屋。テレビやパソコン、DVD再生機など生活に必要な物から数々のアニメ作品、ゲーム、女性向けCDといった二次元要素を含む物が多数置いてある。
ネット上ではプロのオタクと揶揄される僕でも食べないと生きていけないわけで、二次オタだから食べなくてもいい、というわけでもない。
独身一人暮らしをやっていると安価で味覚の当たり外れが少ないコンビニ弁当やファーストフードに依存してしまう。それゆえに、それだけの理由でマシな食べ物は少ない。
6 :2/2:2010/04/22(木) 14:09:26 ID:0WozdWgU
「あんた、どうせ毎日コンビニ弁当とかなんでしょ。誰か作ってくれる人とか、いるわけないか」
残念な物を見るような目で僕を見つつ、プリンを食べるかなみ。
二次元なら作ってくれる相手や結婚してくれる人がいるのだが、三次元では存在せず、フラグを折る以前に立ってすらいないのが現状。
「作ってあげようか?」
かなみが突然、そんなことを言ってきた。
「あんたのためじゃないわよ。ただ最近は昼前の情報番組で料理やってることが多いからその練習。そっちでも活躍したいし、料理の話題は好感度にも繋がるから。勘違いしたり、浮かれたりしたら殺すわよ」
「いや、遠慮しておきます」
「断っても殺すから」
断った後に言うのは卑怯です。
その後も申し出を断ろうとしたのだが、遠慮するな、黙って頷け、男性器握り潰すぞ、などといった言葉が出てきた時点で断ることを諦めた。
今回のオチ
かなみが食事を作りに来たのは翌日だった。
一応、職業声優の僕は早朝からネットラジオの収録とオーディションがあったので不在。
夕方頃に帰宅すると、かなみが僕の大嫌いな食事を作って出迎えてくれた。
「ラジオ聴いたわよ。夏に凛子って人とお泊まりするらしいわね」
公共の電波は恐い。
最終更新:2011年10月25日 20:57