140 :1/5:2010/05/16(日) 11:54:22 ID:4En9FoTM
【ラーメンの味で喧嘩するツンデレ】
とある休日。お腹が空いたので何か食おうと冷蔵庫を漁ったが、何もない。ははぁこれは神がもういい死ねと言っていると悟ったので、無神論者として断固抵抗すべく、外食することにした。
今日はよい天気だなあと思いながらぷらぷら歩いてると、能天気を具現化したような存在を発見したのでチョップしてみた。
「痛いっ!? 誰ですか、先生の頭にチョップするのは!」
具現化した存在、即ち担任の大谷先生がわきゃわきゃわめいた。この生物は大人らしいのだが、身長やら精神年齢やら乳やら色々幼く、ロリコンである俺の心をぐらぐらさせる存在なので油断ならない。
「少なくとも俺でないことは確かだ」
「別府くんです! これはもう別府くんがしたに違いないです! ていうか、別府くんがしたという確かな証拠を見つけました!」
「ほう、俺に冤罪を被せるか。面白い、やってみせろ! 異議ありとか言ってやる!」
「今まさに先生の頭に別府くんの手が載ってます! チョップの形のままです!」
「ああ、しまった。今のナシね」
そそくさと先生の頭から手をどけ、こほんと咳払い。
「い、一体誰が俺の先生の頭にチョップなんてしたんだ! 許さねえぞ!」
「無理がありすぎですっ! 嘘ぱわーが満載です! ……あ、あと、“俺の”ではないです! 先生は先生のものです!」
「後半の台詞に照れが入っているのは何故ですか」
「う、うるさいですっ! 大人には色々あるのですっ!」
「はいはい」(なでなで)
「頭なでないでくだたいっ!」
「くだたい?」
「うがー!」
先生が怒って威嚇した。
「まあなんでもいいや。こんな昼間っからどしたんだ、先生?」(なでなで)
「ちっとも堪えてないです。依然なでられるがままです。……えっとですね、お昼ご飯をどこかで食べようと思ったんです」
「奇遇だな、俺もなんだ。ここで会ったのも何かの縁だ、奢らせてやってもいいぞ」
「別府くんが信じられないくらい偉そうです! 世が世なら斬り捨て御免ってされても文句言えないです!」
「文明開化が起きててよかったよ。それで、どこで食うんだ?」
「え、あれ、先生が奢るってなってる……?」
「あ、そこのラーメン屋行こう。前食って、うまかったんだ」
「ま、待ってくださいっ! 手握らないでくださいっ! 腕組むのもダメですっ! だからってお姫様抱っこはありえないですよ!?」
141 :2/5:2010/05/16(日) 11:55:04 ID:4En9FoTM
色々文句を言われたので、先生を小脇に抱えて店に入る。
「いらっしゃいま……」
「ほらほら店員さん驚いてますっ! ていうか何より先生が一番驚いてますっ! 先生は鞄じゃないので小脇に抱えないでくださいっ!」
「ジャンバラヤひとつ」
「そんなのありませんっ! いーから下ろしてくださいっ!」
ぎゃーぎゃーうるさかったので、先生を下ろし、適当なテーブル席に座る。
「ふうっ。全く、別府くんは問題児の中の問題児です。信じられないです」
「unbelievable」
「無駄に発音がいいですよぉ……」
メニューを見る。この店の売りはこってりとしたスープだ。よし、こってりラーメン、君に決めた!
「先生、決まった?」
「んとですね……はい、いいですよ。じゃ、店員さん呼びますね」
テーブルに据え付けられているスイッチを先生が押すと、すぐに店員さんがやってきた。
「えっと、チャーハンと、ラーメンのあっさりでお願いします」
「ラーメンのこってり、それとギョーザ」
注文を聞き、店員さんが厨房に戻っていった。さて、話すべき議題ができた。
「先生、なんでまたあっさりなんて」
「別府くんこそ、なんでこってりなんですか? しつこすぎて死んじゃっても、先生埋めることしかできないですよ?」
「あ、ちょっと待ってくれ。ICレコーダーで録音して教育委員会に送るから、さっきの台詞もっかい言ってくれ」
「絶対に言いません!!! ……別府くんは鬼です。先生のこと、嫌いですか?」
「思いのほか好きだよ」
「普通に好きって言ったほうがいいです! なんですか、思いのほかって!」
「じゃあ、改めて。……先生、大好きだ」
「そ、それはそれで色々問題ありです! て、ていうかですね、先生の手を握ってじーっとこっちを見てはダメです! は、はやややや!?」
先生を見つめる時間と比例して、先生の顔がどんどん赤くなっていって愉快痛快。
「も、もーいいです! ……ま、まったく、別府くんは先生をからかってばかりで困ります。先生、ぷんぷんです」
先生は俺の手を振り払い、ぷらぷらと振った。
「臭いのか? 女の子なんだから、風呂には毎日入れよな」
「ハエがたかってるわけではないです! ぷーんぷーんではないです! ぷんぷんと言いました! 怒ってることを可愛らしく表現したのですっ!」
142 :3/5:2010/05/16(日) 11:55:31 ID:4En9FoTM
「自分で可愛らしくとか言うなよ……」
「う、うるさいです! 別府くんのばか!」
「で、話は戻るが、なんだってあっさりなんて頼んだんだ? この店の売りはこってりスープだぞ?」
「……前に注文したんですが、しつこくってしつこくって、全部食べられなかったんです」
「三回食えばやみつきだぞ? 現に俺なんて、週に一度は食いたくなる。そして食べなかったら手が震え、幻聴まで聞こえ出すんだ」
「本当に病みつきです! 何が入ってるんですか!?」
「鳥のダシか何かじゃないか?」
「意外と普通の答えでした!」
などと侃々諤々先生と言い合ってると、店員さんがやってきて注文した品々をテーブルに並べた。
「わー……久々ですが、やっぱりおいしそーです。いただきまーす♪」
「くるしゅうない」
「……ずるずる」
偉そうに言ったら、先生が嫌そうな顔をしてラーメンをすすりだした。
「んー♪ おいしいです♪ ほらほら、別府くんも一度食べたらこのあっさりスープのよさが分かりますよ?」
「まあ待て、俺の分を食ってからだ。ずるずるずる……」
まずスープを少し飲んでから、麺をすする。うむ、想像通りうまい。
「まったりとしていて、それでいてしつこくなく」
「ものすごく嘘っぽい表現です……」
「超うめえ」
「シンプルですが、とってもよく伝わります。いりませんが!」
手をNOという感じにして出されたので、レンゲでスープをすくい先生に向ける。
「いらないって言ってるのに……」
「まあまあ、騙されたと思って一口飲んで見てくれよ。もし飲んで騙されたと感じたのであれば、先生は騙されやすいので後で詐欺して大金うはうは」
「絶対に飲みません!!!」
俺の説得はよく失敗します。
「それより、先生のラーメンを食べてみるべきです。あっさりしていて、とてもおいしいんですよ?」
「猿の脳みそより?」
「ありえないチョイスですっ! もーちょっとマシなものを出すべきですっ!」
「寡聞にして猿以外の脳の味を知らないんだ」
143 :4/5:2010/05/16(日) 11:55:53 ID:4En9FoTM
「猿は知ってるんですかっ!? 別府くんが恐ろしい生物に見えてきました……」
「男ってのは怖いものさ」
「怖いの種類が違いますっ!」
「まあ、本当は猿の味も知らないんだけどな。それはともかく、そのスープ味見していいか?」
「普通に、最初っから、わーいって言って食べればいいのに……」
「わーい」
「なんか馬鹿にされてる気がします……」
どうしろと言うのだ。とまれ、先生が差し出したレンゲを口に含む。
「ふむ……。まあ、普通だな」
「ええっ!? そんなことないですよ、とってもおいしいですよ!? 別府くんは普段ろくなもの食べてないからそう感じるだけです!」
「俺だけでなく、別府家全体を敵に回す台詞だな」
「こんなおいしーのに……このおいしさが分からないなんて、別府くんは可哀想です。……あっ! え、えっと、お子様にはこのおいしさが分からないんですよ。……ふふん?」
「まあ、お子様は舌が発達してないので、しつこいものよりあっさりしたものの方が好きだよな」
「折角の大人アピールのチャンスを冷静に潰さないでくださいっ!」
「そこまで大人と言い張るのであれば、やはり俺様のスープを飲んで証明するしかあるまい」
再度レンゲでラーメンのスープをすくい、先生に向ける。
「う……こ、これを飲んだら大人ですか? 先生を尊敬しますか? もういじめませんか?」
「いいえいいえいいえ」
「いっぱいいいえって言われました! 飲む理由が一切なくなりましたっ!」
「しまった。よし、嘘をつくぞ。うーんうーんうーん。これを飲んだら大人で尊敬していじめない」
「騙す気が全く見えませんっ! もうちょっと頑張って欲しいものですっ!」
「ええと……よし。俺がおいしいと感じるものを、先生に味わって欲しいんだ」
「あ、あぅ……そ、それはよい騙し文句です。先生、ちょこっとぐらぐら来ました。もうちょっと頑張ったら、先生、くらーっていっちゃうかもですよ?」
先生は両手を合わせ、軽く首を傾げて何かを期待する目でこちらを見た。
「よし。……先生、俺が卒業したら、小さなアパートでも借りて、一緒に」
「すとーーーーーーっぷ! それはなんか違う意味でくらくらーってしちゃう大変危険な呪文なので、片手間に言うのは禁止です! 禁止禁止禁止!」
先生は顔を真っ赤にしながら俺の頭に連続でチョップした。
「先生、痛い」
144 :5/5:2010/05/16(日) 11:56:16 ID:4En9FoTM
「うるさいですっ! 別府くんのばかっ! 本当に別府くんは嘘ばっかりつくダメな生徒ですっ!」
「嘘をつくかもしれないが、少なくとも年齢は詐称してはいないぞ。……あ」
「あーっ! それは先生に実は幼女だろばーかばーかって暗に言ってますね! 先生は子供ではなく、大人ですっ! ほらほら、めんきょしょー!」
気づいた時には既に遅く、先生は手馴れた様子で懐から免許証を取り出すと、俺の頬にめり込ませだした。
「先生、痛い。あと、俺の頬に目はないので、そこに押し込まれても見えない」
「もー何十回と見せたので、知ってるでしょ!」
「なら何十回と見せなくてもいいのでは」
「毎回毎回別府くんが先生の年齢を疑うからですっ!」
「うるさい合法ロリだなあ」
「あんまりな台詞が飛び出しましたよ!?」
「黙らないと先生の口を塞いで家に持ち帰り、一緒にゲームとかするぞ」
「途中まですっごく怖かったのに、最終的には友達感覚です!」
「先生と仲良くなりたいんだ」
「一緒にラーメン食べておいて、何を言ってるですか……」
「いやはや。先生と一緒だと、何やっても楽しいよね」
「なっ、なに、何を、何を言ってるですか!? そ、そゆこと言っても先生は篭絡されませんよ!? う? う!?」
「篭絡って何の話でしょうか」
「うっ、うるさいですっ! 別府くんのばかっ!」
先生は俺を怒りながらずるずるずるーっと一気にラーメンをすすった。
「げへんげへんげへんっ!」
そしてむせた。
「ああほら、一気に食ったりするから。はい」
水を渡すと、先生は一気にあおった。
「……っん、っん、っん、……ぷはぁ。ふぅ、死ぬかと思いました」
「あ、それ俺の水だった。まあいいか」
「わざとですねっ!? わざと別府くんの水を飲まして先生を混乱させる策ですねっ!?」
「この疑心暗鬼ロリはめんどくさいなあ」
「いちいちロリってつけないでくだたいっ!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ大谷先生を、迷惑そうな微笑ましそうな目で見る従業員と客たちだった。
最終更新:2011年10月25日 21:01