263 :1/4:2010/07/11(日) 16:47:06 ID:???
今更七夕ネタ

『にぃに・・・あいすたべたい・・・かってこい』
と言われました。もちろん年上としての威厳とか色々に関わるので断固断りましたよ?
だが数分の口論の末、俺はジメジメする外をトボトボと歩いてる訳で。
「目に涙溜めながら、やだやだ食べたい食べたいって言うのはズルイと思うの」
今はあんなチビッコで泣き虫でも、時間が経てば女性になってしまうのだろう。そうすれば
俺の事を少しは労わってくれる優しい娘に成長してくれるはず。もうしばらくの辛抱だ。
とはいえそれだけでは心もとない、そんな事を考えつつふと顔を上げると竹林が目に入る。
      • そうだ、困った時の神頼み。さっそく中で作業しているオッサンにアイスと小さ目の竹を
交換してもらった。

「ほら、ちなみ。七夕の飾りつけしよう」
『・・・』
「綺麗に飾りつけしてさ、短冊にお願い事書こうな」
『・・・あいすは?』
「アイス?あぁ、オッサンにあげた」
『こいつ・・・まじでつかえねーやつ・・・・です』
「む、昔話にわらしべ長者ってあるだろ?」
『さっさと・・・かいにいけ』
「俺達はこの竹を使って、七夕のお願い事をだな」
『なんどもいわせるな・・・はやく・・・いけ』

何であんなに高圧的な態度なんだろう?てかさ・・・何で毎日、あたりまえのようにウチに来て
俺を小間使いのように扱うの?もう少し小さかった頃は、恥ずかしがり屋さんで俺の顔をみるだけで
柱の影に隠れてチラチラ様子をみてたのに。そう、借りてきた猫?ってやつだ。
くそっ、俺が優しくしてるから付け上がってるに違いない。ここはガツンと言ってやらねば。
アイスを片手に早足(溶けてたらやり直しさせられるから)で家に帰り、勢い良くドアを開けた。
「おい、ちなみ!言いたいことがある」
『・・・ん』
「そこ座れ・・・って、もうすわってるか」
「・・・・・・・ん」

264 :2/4:2010/07/11(日) 16:47:37 ID:???
「な、何だよその手は?」
『・・・あいす』
「あ、そうか。はい、アイス」
『・・・はぐっ』
「・・・じゃなくて!話を聞け」
『かざりつけ・・・しといた・・・ほめろ』
ちなみの指差す先を見ると、さきほどまで単なる竹だったものが色紙で出来た飾りで彩られ、まさに
七夕の笹という感じになっていた。
「おぉ、凄い」
『ほめろ』
「すごいぞ、ちなみ。なでなでしてやる」
『・・・ん』
頭を撫でてやると、アイスを咥えたまま上目遣いでこっちをじっと見てくる。ほんのりと紅く染まった
頬っぺたと相まってとっても可愛い。
「後は短冊だな」
『よ、よういしてある・・・ちな・・・にぃにみたいな・・・おばかじゃない』
テーブルの下から青い色画用紙の短冊を取り出し俺に差し出した。それを受け取ろうとすると、ちょっと
嫌そうな顔。
「あ・・・もっとなでなでして欲しい?」
『ぅ・・・ぁ・・・い、いやきまってる・・・さっさと・・・てをどけるっ』
弱々しい手つきで俺の手を払いのけた。そんなに嫌なら最初から嫌がればいいのにな・・・と思いつつ
短冊に書くべき願い事を考える。そういえば、何か忘れてる気がしないでもないが・・・ま、大した事じゃ
ないか。
この手のモノは小さい頃からやってるが、ただ1度たりともかなった事がない。いや、これから叶うの
かもしれないが、世界征服だとかお金持ちになりたいとかスケールのでかいのは彦星&織姫では手に余る
に違いない。ならば・・・とりあえず、夏休みに向けてゲームが1本欲しい。これならヒコアンドオリ
でも叶えられるに違いない。青い短冊に1万円が欲しいと書き綴り、出来栄えに頷く。
と、テーブルを挟んで向こう側のちなみと目が合う。なにやら恥ずかしげな表情でジロッとこっちを睨み
つけてきた。

265 :3/4:2010/07/11(日) 16:48:10 ID:???
「書けたか?」
『・・・ん』
「見せっこしようぜ」
『・・・・・・・ん』
おずおずと差し出されたピンク色の短冊を受け取り、願い事を読み上げる。
「えっと・・・たにぃにたのおたよためさたんたになたれまたすよたうにた・・・???」
『にぃには・・・いち・・・えん・・が・・・しい??』
ぽかーんという表情でお互い顔を合わせる。そして、二人して短冊とお互いの顔をと交互に見る。
俺のは漢字が読めないのだとして・・・ちなみのはなんだ??暗号か?
「な、なぁ・・・これって何?」
『ひ、ひみつ・・・にぃにのこそ・・・これ・・・よめない』
「あぁ、それは一万円が欲しいって書いてるんだ」
『ちなも・・・ほしい・・・にまんえんにするべき』
「それならちなみも欲しいって書けよ」
『ちなは・・・べつのおねがいごと・・・だから・・・にぃにが・・・ちなのぶんかけばいい』
なんと言う超絶理論だろう。何か良く分からないうちに、一万円の文字の上に棒を一本追加して
二万円になった。このスケールアップに、ひー&おーは叶える事ができるのだろうか?
それにしても、ちなみのお願い事は一体なんだろう?
「なぁ、それさ・・・折角書いても読めないんじゃ叶えようがないんじゃない?」
『む・・・そ、それは・・・』
「ちゃんと読めるように書こうぜ」
そう言うと珍しく俺の意見を聞き入れ、何か横の方に書き始めた。書き終わり、それをぱっと伏せてしまう。
「えー・・・読めるか見てやるよ」
『めー!にぃには・・・ぜったい・・・みちゃ・・・めー』
「そうか?まぁ、いいけど」
そう・・・この笹は俺の家に置く。ちなみが帰れば見放題になるという訳だ。ふふ、まさに時間の問題って
やつだ。短冊の飾りつけ最中も俺から隠すように取り付け、笹から俺を遠ざけた。
が、時間が経てばちなみは帰る時間。再三俺に短冊を見るなと言って嫌々という体で帰った。

266 :4/4:2010/07/11(日) 16:48:57 ID:???
「さて、お楽しみの時間がやってきましたよ」
聞いてる人がいる訳ではないが、思わず口に出てしまうほど心待ちにしていた時間。裏向きになっている
ちなみの短冊を表にして、いざ・・・いざ・・・いざ?
「何だこれは・・・」
先ほどの暗号の脇に、猫だか熊だが分からない生き物の顔が書いてあるだけ。ヒントか?コレがヒントなのか?
茶色の色鉛筆で書かれているところを見るとパンダではなさそうだが。最近ちなみが書き残した絵の中に
似たような生き物を探してみた。猫ではない、イヌも違う。何となくタヌキっぽく見える。
だがタヌキだとして、それとこの暗号と何か関係があるのか?タヌキ・・・緑のタヌキ・・・天ぷらそば?
結局何も分からぬまま七夕が過ぎ、共同の広場で催された笹を燃やすその時も秘密のまま。
ひ&おに通じたのか・・・まさに神のみぞ知る、という所だろう。

そうそう、この後親戚の叔父さんが遊びに来た。久しぶりに会ったからとティッシュに包まれたお小遣いを
貰った。中身は2万円・・・すぐに叶うなら10万円くらいにすれば良かったと後悔した。
という事は、ちなみの願いも叶うのだろうか?相変らず傍若無人な様子、特に変化はない。
スケールの大きい願い事だったから聞き入れてもらえなかったのか。それとも・・・まだその時ではない
という事なのか。どっちにしても、俺には判断が付かないことだが。


『たぬきことば・・・ひこぼしさま・・・おりひめさま・・・しってる・・・よね?』
最終更新:2011年10月25日 21:05