292 :1/2:2010/07/31(土) 13:12:09 ID:???
すずめのなき声で目を覚ました。そして何かしらんが、こんなの沸いた。
ここは早朝のホテル街。あぁ、ホテルって言ってもビジネスホテルや観光ホテルとかじゃなく
立派なラブホ街だ。
西洋のお城をイメージする建物から今まさに出ようとしている俺と恋人のかなみ。
『だ、誰もいないでしょうね?本当にほんと~~~~に、誰もいないわよね?』
「だから・・・居ないって。昨日ヤッた奴等は疲れて寝てる時間だろ」
『や、ヤッたとか言うな!ばかぁ!!!』
顔を真っ赤にしながら、入り口の柱の影からこっちに激を飛ばすかなみ。
そもそも俺らだって、昨日は散々ヤッた・・・もとい、愛し合ったというのに。しかし一晩明かして
それがもの凄く恥ずかしくなったらしく、朝も早くから『起きろ』『この変態!レイプ魔!』からスタート
してあーでもない、こーでもないと良くもまぁ思いつくもんだと呆れるくらいに罵声を浴びせかけられた。
あげく、他の人に出て行くところを見られたくないからと、早々に立ち去る事になった。
『出口付近は、見張ってる人がいるかもしれないから。ちゃーんと見てよね!』
「芸能人じゃあるまいし、俺らが出ても気にも留められないって」
『うるさい!たまたま写されて、たまたま雑誌に載って、たまたま知り合いに見られたらどうするの!』
そこまで「たまたま」が続けば奇跡だと思うのだが。
「誰も居ない」『ちゃんと良く見なさい!』を何度も繰り返し、やっと納得してくれたのか柱の影から
ヒョコヒョコと出てきた。そして自身も周囲を見渡しようやく安心・・・と思いきや、だっと走り出した。
走り去る後ろ姿を見送りつつ、一呼吸後に我に帰り、慌てて後を追いかける。
追いかけて間もなく追いついてしまった。かなみはちょっと走りづらそうな感じ・・・そうか、昨日の影響
がまだ残ってるのか。そう思うとちょっと可笑しくなって、自然と顔が綻んでしまう。
「追いついたっと」
『この・・・つ、ついてくんな!』
「何でだよ!」
『二人一緒の所をみられたら、朝帰りだってバレるでしょ!』
「カラオケで夜を明かしたという見方もあるが?」
『そ、それも・・・そうだけど』
そう言うと走るのをやめ、ゆっくりと歩き出す。二人きりで出歩く時と同じように手を繋ごうとすると、パチン
と叩かれてしまった。
293 :2/2:2010/07/31(土) 13:14:26 ID:???
『だ、ダメ!言い訳できなくなるでしょ!』
「つか、俺らを知ってる奴は俺らが付き合ってるのわかってるだろ?何も不自然じゃないだろ」
『そ、それはそうだけど・・・と、とにかく、ダメなの!』
プイっとそっぽを向かれてしまった。
相変らずの恥ずかしがり屋だな・・・と思いつつ、昨日の最中に一番テンションが高かった時をふいに思い出す。
そのギャップにまた笑いがこみ上げる。そのタイミングでかなみがコッチをチラリと見て、不機嫌そうな顔で
ジロリと睨みつける。
『何が可笑しいのよ』
「いや、昨日とは正反対だなって」
『う・・・あ、あれは・・・その・・・』
「たまには家じゃなくて、そういうところでしてみたいって言われた時はビックリしたぞ?」
『うるさいわね!シーツとか洗うの面倒だし、お母さんに後から色々聞かれたくないだけよ!』
ふんっ、と鼻息を荒立て、またそっぽを向いてしまう。まぁ、昨日はかなみの誕生日をちょっと演出して
祝ってあげたからな。それでちょっと大胆になってしまったのかもしれない。何でも言う事聞いてあげるよ
って言ったら、まっさきにコレって言ってきたし。まぁ、俺へのお礼の気持ちもあったのかもしれないが。
「かなみ」
『何よ?』
「来年もさ・・・いっぱい誕生日祝ってやるからな」
『そ、そんなの当たり前だし・・・こ、こういうのは、ナシだからね?絶対だからね?』
「はいはい」
『本当に分かってる?ちょっと・・・に、ニヤニヤするな!ばかぁ!!!』
早朝のラブホ街のちょっと外れた場所に、顔を真っ赤にした女の子の叫びが響き渡るのであった。
最終更新:2011年10月25日 21:07