599 :1/7:2011/01/08(土) 03:04:39 ID:???
ピンポーン
[あら? タカシ君。明けましておめでとう。今年も宜しくね]
「おめでとうございます。こちらこそ、宜しくお願いします。えーと……勝美さん、いま
すか? 美府神社に初詣に行くんで、もし良かったら一緒にと思って」
[いるわよ。ちょっと待っててね。勝美―っ。タカシ君が初詣に行きましょうだってー]
『でけぇ声出すんじゃねーよ!! お袋のバカ野郎が!!』
[親に向かってバカ野郎はないでしょ。コラ]
ペシッ!!
『あいてっ!! お袋が近所に聞こえるような声で呼ぶからじゃねーかよ』
「よお。勝美。明けましておめでとう」
『正月からタカシの顔とか、全く持っておめでたくねーな』
[コラ。失礼な事言わないの]
「ああ。いいんですよ。もう恒例みたいなもんですから」
[でも、いい加減もう年頃の女の子なのに…… 言葉遣いは相変わらず荒いし、困っちゃうわ]
『うっせーよ。親とはいえ、大きなお世話だっつーに。全く、二言目には女の子女の子っ
て、こういう言葉遣いの女がいたっていいじゃねーか』
「ま、ま。それより勝美。初詣行かないか? 神社でおみくじ引いてさ。甘酒も貰いに行こうぜ」
『アホか。何であたしがお前なんかと初詣行かなきゃなんねーんだよ。さみーしめんどく
せーし、ゴメンだ。ゴメン』
ペシッ!!
[コラ、勝美。せっかくタカシ君が誘ってくれてるのにその断り方はないでしょ。どうせ
グータラしてるだけなんだから行って来なさい]
『イテッ!! そんなもんあたしの自由だろうが。つか、ポンポン叩くんじゃねーよ』
「いや。俺は嫌ならいいけどさ。去年の初詣の時に来年も誘えって言ったのは勝美の方じゃん」
[あら? 意外と勝美も積極的じゃない。じゃあ今のは照れ隠しなのね]
『違うっ!! つか、あたしそんな事言ったか? 覚えねーぞ?』
600 :2/7:2011/01/08(土) 03:05:09 ID:???
「いやいやいや。中学に入ってから二年間、俺と別々に初詣行ってたら、前の年までずっ
と良かったおみくじが連続で凶引いたじゃん。それで、去年は俺と一緒に言ったら大吉で
さ。俺と一緒だとおみくじ運がいいらしいから、来年も一緒に来いって。まさか忘れてた?」
『あー。そういやそうだった。忘れてたぜチクショウ……』
「ま、勝美がめんどくさいっつーんなら、山田でも誘うけど」
『ちょ、ちょっと待て。おみくじで大吉引く為だ。仕方ねーし、行ってやるよ。ちっと待っ
てろ。コートと財布取って来るから』
[待ちなさい。勝美]
ガシッ!!
『なっ……何だよ、お袋?』
[あなた、お正月にまさかその格好で行く訳じゃないでしょうね?]
『は? 別にこれでもいいだろ。別に部屋着でもないんだし』
[何言ってるの。ちゃんと晴れ着があるでしょう。あれ、着て行きなさい。おばあちゃん
が送ってくれたのが]
『冗談じゃねーよ。あんなめんどくさいもん着れるか』
「何? 勝美、晴れ着持ってるのか?」
[そうなのよ。それなのに、この子ったらどうしても着るの嫌だって]
「そうなんですか。それは是非、僕も見たかったですね。きっと似合うと思うんですけど」
『バカな事言ってんじゃねーよ!! あたしが晴れ着着たって似合うわけねーだろ。そん
なん、なんつーんだ? えーっと……そう、馬の耳にも念仏っつーんだよ』
「それ言うなら、馬子にも衣装じゃね? でも勝美なら絶対そうはならないと思うけどな」
『いーや。なるね。絶対なるから』
〔ちょっと。何玄関先で騒いでんの? あ、タカシさんだ。明けましておめでとうございます〕
『テメ……舞衣!! このヤロ。都合よく出てくんな!!』
「明けましておめでとうございます。舞衣ちゃん。舞衣ちゃんは晴れ着なんだね」
〔はい。せっかくおばあちゃんが送ってくれたし、写真撮って見せてあげようって思って。
どうですか?〕
「いや。良く似合ってるよ。可愛いよね」
〔ありがとうございます!! タカシさんに褒めて貰って嬉しいです〕
『フン。中坊相手にデレデレしてんじゃねーよ。みっともねーなお前は』
601 :3/7:2011/01/08(土) 03:05:37 ID:???
「いや。だって可愛いものは可愛いし」
〔お姉ちゃん、妬いてるんでしょ? あたしがタカシさんに褒めて貰ったからって〕
『やっ……!?(//////////////) 誰が妬くかこのバカ!! ひっぱたくぞ!!』
〔ヤダ。お姉ちゃん怖ーい。タカシさん。何とかしてよ〕
「え? そこで俺に振られるの超困るんだけど」
[いい加減になさい勝美。ほら、あなたも着替えて]
『だからいいって言ってるだろあたしは!!』
〔そんな事言わないの。お姉ちゃんもタカシさんに褒めて貰いたいでしょ? ほらほら〕
『誰がそんな……褒めて貰いたくねーし。てか、離せコラバカ!!』
[タカシ君。そういうわけだから、勝美の着付けが終わるまで、ちょっと上がって待って
てくれる? 舞衣は、勝美を連れて行ったら、コーヒーでも出してあげて]
〔はーい。ごめんなさいね。こうでもしないとお姉ちゃん。絶対に言う事聞かないんで〕
「いや。僕も勝美さんの晴れ着姿が見れるなら、一時間や二時間くらい待つ事は全然平気ですから」
〔だって。お姉ちゃんの幸せ者〕
『ふざけんなこのバカーッ!!』
[タカシ君、ごめんね。お待たせしちゃって。勝美の準備、出来たわよ]
「あ。本当ですか?」
〔ほらほら。お姉ちゃん。早く〕
『だーっ!! ウゼェよお前は。いちいち引っ張んなくても自分で出るって』
〔じゃじゃーん。お姉ちゃんの登場でーす〕
『変な前置き付けんじゃねーっ!! 全く……』
「……勝美」
『……よぉ。御覧の通りだよ。言ったろ、似合わねーって。だから止めとけって言ったの
によ。ご期待に添えなくて悪かったな』
「……いや」
『え?』
「いや。勝美さ。自分の事分かってねーよ。すごく似合ってるから。ああ。何かこう、純
粋に綺麗だなーって、惚れ惚れと見ちまった」
602 :4/7:2011/01/08(土) 03:06:02 ID:???
『なっ……ななななな……おまっ、その……何言ってんだよ。お世辞も大概にしろよな。
お前に褒められると背中痒くなって気持ち悪いし』
「いや。褒めてるんじゃなくて、純粋な感想で」
[ほら。良かったじゃない勝美。タカシ君に褒めて貰って]
〔だから言ったのに。お姉ちゃんも似合ってるよって。でも何か、タカシさん。あたしよ
りか褒め方が真剣なんだもん。いいなー〕
『な……アホかお前は!! こんな奴に褒められたって嬉しくも何ともねーだろ。歯の浮
いたような事ばっかでよ。どこが真剣なんだよ』
「いや。一応真面目なつもりなんだけど」
〔むしろお姉ちゃんがおかしいよ。ま、照れてるだけなんだろうけど〕
『誰が照れてるってんだコラ!!』
〔ヤダもう。そんな怒り方しないでよ。せっかくの和風美人が台無しじゃん〕
[ほらほら、勝美。写真撮るからこっち向きなさい]
『何で写真なんか撮らなきゃなんないんだよ。ウザってーな』
[何言ってんのよ。贈ってくれたおばあちゃんに見せてあげなきゃ。ほら、笑って]
『こんな状況で笑える訳ねーだろ!!』
[しょうがないわねー、この子ったら。じゃあ、せめて澄ましてなさい。はい、チーズ]
〔どれどれ? お母さん。見せて〕
[はい。結構綺麗に撮れたわよ]
〔わー、ホントだ。タカシさんもほらほら〕
「へー。こうして見ても、やっぱり綺麗だなー」
『アホかっつーの。目の前に本物がいるんだから、どっち見たって変わりねーのによ』
〔あ、お姉ちゃん。デジカメ画像の自分に嫉妬してる。ほら、タカシさん。もっとお姉ちゃ
んを見てあげて〕
『なっ……!? バカ!! 違うっつーの!! いい加減にしやがれ!!』
〔うわ。お姉ちゃんこわっ!! タカシさん助けてーっ!!〕
[二人ともいい加減にしなさいっ!! タカシ君を困らせるんじゃありませんっ!!]
「ああ、いえ。僕は別に大丈夫ですから」
『ちぇっ。親の前だからって猫被りやがって』
[それじゃ、もう一枚。今度はタカシ君と一緒に撮りましょうね]
603 :5/7:2011/01/08(土) 03:06:28 ID:???
『いーよ、もう。大体こんな奴と一緒になんて写りたくねーし』
[こんな奴なんて、失礼な事言わないのっ!! ほら。並んで並んで]
「勝美。とりあえず今はおばさんの言うとおりにしようぜ。どのみち話がこじれるだけだし」
『くっ…… し、仕方ねーな。お前とツーショットなんて、これっきりだからな』
「分かってるよ。勝美がそうしたいならな」
『また卑怯な言い草しやがって』
[二人ともこっち向いて。ほら、笑顔見せて。はい、チーズ]
『全く…… くだらねー写真撮りやがって。もう着替えていいか?』
[何言ってるのよ。初詣行くんでしょ? 何のためにタカシ君が待ってたと思ってるのよ]
『やっぱこんな格好で出掛けるとかマジウゼェから。もう脱ぎたいんだけど』
[バカ言ってんじゃないの。ほら、行った行った]
『ウソだろ? マジかよ? 冗談じゃねーぞ』
「大丈夫だって。すっげー似合ってるから。近所の人が見ても、絶対見紛う事間違いなしだからさ」
『そういう問題じゃねーよっ!! ホントにこの格好じゃなきゃダメか?』
[当然でしょ。いい加減観念しなさい]
「だな。ほら、行こうぜ勝美」
『ちょおっ!? 手!! 手ぇ引っ張んなってば!!』
〔いーなぁ。お姉ちゃんてば…… あたしもタカシさんみたいな男の子にエスコートされ
て初詣行きたいなぁ〕
[舞衣も頑張って素敵な彼氏を見つけなさいな。あなたもすぐに見つかるわよ]
〔ぶーっ……〕
『待てよ。待て待て。いい加減待てってば!!』
「ん? ああ、悪い。ちょっとペース速かったな。いつもの勝美のペースで歩いてた。ゴメン」
『そういう意味じゃなくってさ。その……』
「何だよ?」
『いや。やっぱその……おかしーだろ? あたしみたいのがこんなおめかししてさ。知り
合いとか見られたら……』
604 :6/7:2011/01/08(土) 03:06:51 ID:???
「気にする事ないって。確かにそりゃ、驚くと思うよ。いつもはラフな格好の勝美が、こ
んな綺麗になってたらさ」
『うっせーな。あれはあれでちゃんとオシャレしてんだよっ!! でも、絶対笑われるっ
て。こんなカッコ』
「笑われないし。万が一そんな奴がいたら、俺が怒ってやるから」
『何カッコ付けてんだよ。超似合わねーぞ、そんなの』
「ハハハ。まあな。でも、勝美は堂々としてりゃいいんだよ」
『無理!! そんなの絶対無理だってば!!』
「何で?」
『何でって、その……えっとだな…… あー、もうっ!! 言やあいいんだろ? ぶっちゃ
け恥ずかしいんだよ!! 分かったかちくしょうっ!!』
「別にそんな恥ずかしがる事ないと思うんだけどなあ」
『うっせーな。あたしが恥ずかしいんだから仕方ねーだろ!! だからさ、その……えっ
と……何とかしてくれよ!!』
「いや。でも何とかしてくれって言われてもなあ……」
『分かったよ。いーよ。確かにその通りだよ。だったら、その……せめて、背中……かっ、
借りてもいいか?』
「背中? いいけど、どうすんだ?」
『せっ……せめて、顔を隠す。こうすれば、せめて知り合いにはバレねーだろ』
ピトッ……
「そんなんでいいのか? 背中におでこくっ付けたくらいじゃ、横から見たら勝美だって、
知ってる奴ならすぐ分かっちまうぞ」
『今はいいんだよっ!! あとは、バレそうになったら袖で顔を隠すからよ。袂が長いか
ら、十分だろ』
「まあな。しっかし勝美も変な所で恥ずかしがりやなんだな。ま、そういうとこ可愛いけどさ」
『かっ……可愛いとかゆーな!!(///////////) てか、バカにしてんだろそれ?』
「してないしてない。それにしても俺らって……」
『な、何だよ? あたしらがどうしたんだよ? 変な所で切るなよな』
「いや。これ言ったら、絶対勝美怒りそうだなって」
605 :7/7:2011/01/08(土) 03:08:18 ID:???
『は? よく分かんねーよ。いいから言え。言い掛けておいて途中で止められるのって気
持ち悪いんだよ』
「んじゃ、まあ…… いや。この体勢ってさ。多分、外から見たら、俺らって仲の良い恋
人同士に見えるんじゃないかなー、なんてさ」
『んなっ!? こここっ……こいっ……びととかっ……訳の分かんねー事言ってんじゃねー
ぞっ!! このクソ馬鹿野郎っ!!』
「あいてててててっ!! 勝美、痛い痛い。痛いから脇の肉掴むなって」
『うっせーっ!! おおお、お前が悪いんだからなっ!! このバカバカバカ!! バカ
野郎がっ!!(////////////////)』
しかし、罵りながらもそのまま初詣から帰るまで、タカシの背中にくっ付いて離れない
勝美さんがいたとか。
終わり
書いてて思ったが、恥ずかしがりやで乙女な勝気さんマジかわいいwwwww
あと、お題出しはここでやるの?
最終更新:2011年10月25日 21:19