663 :1/8:2011/03/05(土) 20:08:58 ID:???
  • ツンデレに一体どんな夢見てたのって聞いたら

『…………やっ……です……そんなの…………』
『ん……グスッ…………』
『ダメ……です…………返し……てっ……んん…………』
「敬子。おい、敬子」
『やあっ…………行かな……っ……』
「敬子。起きろよ、敬子。起きろってば」
『ふぇっ……!? きゃあああああっ!!』
 ドサッ!!
「お、おい。大丈夫か敬子」
『いっ……たあ……あいたたた……』
「しっかりしろよ。平気か? 怪我はないか?」
『にい……さん……?』
「そうだよ。俺の事、分かるよな?」
『いっ……やあああああっ!!』
 バフッ!!
「もがっ……もがもがもが……!!」
『何なんですか兄さんっ!! 何で兄さんがいるんですかっ!! もう訳が分かりません!!』
「プハッ!! アホか、敬子。まだ寝惚けてんのか。ここは家のリビングだろ? 俺がい
ても当然だろが。それともまさか、落っこちた時に頭打ったんじゃないだろな?」
『リビング……家の……』
「そうだよ。分かるよな? 自分が今、ドコにいるか」
『……分かります。そっか……家……か……』
「そうだよ。一体、どこにいると思ってたんだ?」
『い、いえ。何でもありません。夢……だったんだ…… そうよね……そんなはずないも
の……良かった……』
「俺はちっとも良くないけどな。せっかく心配して起こしてやったのに、起きた瞬間いき
なり叫び声を上げられてクッション押し付けられて、思わず窒息する所だったじゃねーか」

664 :2/8:2011/03/05(土) 20:09:21 ID:???
『何言ってるんですか。目が覚めた瞬間、目の前に兄さんがいたら、びっくりして避けよ
うとするに決まってます。むしろ命があっただけでも良かったと思ってください』
「冗談言うなよ。せっかく親切に起こしてやったのに、敬子にしては珍しくリビングでう
たた寝なんてしてるからさ。風邪引くといけないと思って」
『それこそ大きなお世話です。そりゃ、私だって人間ですからうたた寝くらいはしますけ
ど、でも兄さんに起こして貰わなくたって、適当な時間に目を覚ましてちゃんとベッドで
寝ますから。兄さんみたいにここで朝まで過ごしたりとかしませんから』
「ああ。まあ敬子がしっかりしてるのは分かるけどさ。ただ、酷くうなされてたから」
『うなされてた? 私がですか』
「ああ。ずっと小声で寝言で唸っててさ。ダメ、とか返して、とかそんな事言ってて。一
体どんな夢見てたんだよ」
『夢……えっと…………』
「どうだ? 思い出せることだけでもいいんだけどさ」
『……断片的には覚えていますけど、何でそれをいちいち兄さんに話す必要があるんですか?』
「いや。敬子があれだけうなされるって、どんな悪夢なんだろうって。ちょっと興味があっ
ただけでさ」
『いちいち人の夢に興味を持たないで下さい。何だか私の精神世界を覗き込みたがってい
るようで気持ち悪いです』
「いや。そんな大げさな話じゃないんだけどな…… まあ、話したくないってのに無理に
聞くほど興味がある訳でもないし」
『だったらもういいでしょう。私ももう寝ますから、兄さんももう寝てください。明日も
仕事でしょう。また夜更かししてボーッとして上司の人に怒られるんじゃないですか?』
「いや。あれは平日なのに深夜三時過ぎまで飲んでたから…… まあ、でも確かにそろそ
ろ寝るかな。お休み、敬子」
『…………あっ…………』
「ん? どうした、敬子」
『い……いえ、その……何でも……』
『(何だろう…… 兄さんがリビングから出て行こうとするのを見ていたら、急に胸が締め
付けられるような気分になって……)』
「変な奴だな。何でもないなら、俺はもう寝るぞ」

665 :3/8:2011/03/05(土) 20:09:42 ID:???
『あっ……あの……』
「ん? それとも、やっぱり何かあるのか?」
『(ダメ…… さっきの夢のせいで……兄さんがいなくなるのが……耐えられない……)』
『兄さん。その……実は……』
「どうしたんだよ。言いたいことあるなら、はっきり言っていいんだぞ。普段遠慮のない、
お前らしくも無いな」
『遠慮がないってのはどういう意味ですかっ!! 兄さんにこんな事言うのは……屈辱で
すから、言いづらいだけです』
「悪い悪い。単なる言葉のアヤだって。それにしても、言うだけで屈辱って、一体何なんだよ」
『えーっと、それは、その……立ち上がろうとしたら、ちょっとクラッと来てしまって……』
「おいおい。大丈夫かよ。無理せず休んでからの方がいいんじゃないか?」
『いえ。それでもし、うっかりここで朝まで過ごしてしまったら、却って体に悪いですから』
「まあ、それはそうだけどさ……」
『それで、その……こんな事、出来る事なら兄さんには頼みたくないのですが…… わ、
私を、その……部屋まで、連れて行って……くっ……くださいっ……(////////////)』
『(うわっ…… 言っちゃった…… は、恥ずかしいっ……けど、兄さんと離れたくないから……)』
「へえ。敬子が俺に甘えて来るなんて珍しいな。一体どういう風の吹き回しなんだ」
『しっ……仕方ないじゃないですかっ!! 苦汁の選択なんですから……こういう時に茶
化すような事言わないで下さいっ!!』
「分かった分かった。で、どうやって部屋まで連れてく? 肩を貸せばいいのか? それ
とも、お姫様抱っことかする?」
『そっ……そこまではしなくていいですっ!! 肩さえ貸して貰えれば……』
『(あう……して貰いたいけど……して欲しいなんて……絶対言えない……)』
「よし。それじゃ、ほら。肩に手を回して」
『あ……は、はい……』
「立ち上がるぞ。よっ……と」
『きゃっ……!!』
「大丈夫か? 何とか立てるよな?」
『は……はい。支えがあれば……』

666 :4/8:2011/03/05(土) 20:10:05 ID:???
「よし、いいぞ。じゃあ、歩くからな」
『は……はい……』
 ギュッ……
「お、おいおい。そんなに体をくっ付けるなって。歩きにくいだろ」
『何だか、足元がまだちょっとフラつくんです。仕方ないじゃないですか』
『(だって……兄さんの温もりを感じたら……もっともっと、体をくっ付けたくなっちゃっ
たんですから……)』
「やれやれ、全く…… ほら、階段、上るぞ。気をつけろよ」
『いちいち言わなくたって分かってます!! 兄さんは黙って、私の支え役をやってれば
いいんですっ!!』
「気を遣ってやってんのに…… 何で怒られなきゃなんないんだか」
『それは、兄さんが空気を読めないからです……』(ボソッ)
「え? 何だって? 俺が何だよ?」
『もういいですから、黙っててください』
『(今は……何もしゃべりたくない…… 私を支えてくれる兄さんの……温もりだけを感
じていたいから……)』


「ふう…… やっと着いたか。ほら、後は自分でベッドに入れるよな?」
『い……いえ、その……』
「何だよ。それも介助が必要なのか?」
『……こ、ここまでやったのなら、最後までしてくれたっていいじゃないですか……』
「分かったよ。じゃあ、ほら。よっ……と」
『あ……』
「これでいいだろ? 後は、もう大丈夫だよな」
『……………………は、はい』
「じゃあ、俺も部屋に戻るよ。お休み」
『ま、待って下さい!! 兄さん……』
「ん?」
『あの……その……何だか、このままだと……その……眠れそうもなくて……』

667 :5/8:2011/03/05(土) 20:10:25 ID:???
「あれ? もしかして、敬子……」
『な、何なんですかっ!! 変なところで切らないで、はっきり言ってください』
「いや、もしかしたらさ。さっきの夢のせいで、寝付くのが不安でしょうがなくなっちゃったとか?」
『――――っ!! ばっ……バカな事言わないで下さいっ!! 子供じゃあるまいし、そ
んな事……』
「じゃあ、俺は寝るよ。お休み」
『兄さん!! 待ってくださいってば!!』
「敬子が正直に言えば、傍にいてやるよ。だけど、強情張ってるなら、部屋に戻るけど。
どうする?」
『ううううう~っ…… 分かりましたっ!! み……認めればいいんでしょう。兄さんの、
その……言う通りだって……』
「よし。素直で宜しい。で、どうすればいいんだ? 寝付くまで、傍にいてやればいいのか?」
『えっと、その……それだけじゃ……』
「他に、どうすればいい?」
『む、昔みたいに、その……手を……ギュッて、握っていて……そうすれば、安心出来るから……』
「こうか?」
 ギュッ……
『は……はい……』
「電気はどうする? 消す?」
『……真っ暗は嫌です。豆電球にしておいて下さい……』
「よし、それじゃあ消すぞ」
『は、はい……』
 カチカチ……
「全く、ホント、今の敬子は子供の頃みたいだな。悪夢に戻るんじゃないかと怖くて眠れ
ないなんてさ」
『う…… バ、バカにしたような言い方しないでください。たまには……こういう時だっ
てあっていいでしょう?』
「別にバカになんてしてないさ。むしろ、嬉しいくらいだし」
『えっ……? 嬉しい……?』

668 :6/8:2011/03/05(土) 20:10:48 ID:???
「ああ。なんせ、もうすっかり敬子は俺に甘えてくれなくなったからな。小学校の時まで
は、いろいろと頼って来てくれてたのに」
『大きくなれば、人なんて変わるものです。特に女の子は。大体、バカじゃないですか?
妹にちょっと頼られたくらいで喜んじゃうなんて』
「ああ。だけど、その妹はさ。俺がこれまで出会ったどんな子よりも可愛くて、とりわけ
気難しいからな。そりゃ、嬉しくもなるさ」
『気難しいとか言わないでくださいっ!! それは兄さんに原因があるからで、私のせい
じゃありませんっ!!』
『(それに、どんな子よりも可愛いとかもっ!! 薄暗くて顔色までは見えないからいいよ
うなものの、ものっすごく顔が熱くなっちゃうんですから……)』
「そうかなあ。敬子くらいだぞ。ちょっとした事ですぐに怒ったり拗ねたり。喜ばせよう
としても、怒るからな」
『そ、それは……兄さんのやり方が下手くそだからです。あと、兄さんの狭い交友関係の
中だけで判断しないでください』
「ちぇっ。そういう人の言う事を認めようとせずに自分ばっかり正当化するのも、気難し
さの一つなんだけどな」
『……だって、兄さんが間違った事ばかり言ってるんです。私は……そんな、気難しい子
じゃありませんっ……』
「ハハハ。そうかそうか。分かったよ。ただ、それじゃあもう少し俺の前でも素直になっ
てくれよな。今夜みたいに」
『……無理ですそんなの…… 兄さんに、なんて……』
「無理でもないだろ。敬子は聡いから、俺が敬子を喜ばせようとしてる時くらい分かるだ
ろ? 例え間違ったやり方だとしてもさ」
『う……それは、まあ……分かりますけど……』
「そういう時は、怒るばっかりじゃなくて、一言でもお礼も言ってくれると、俺はとても
嬉しいんだけどな。それだけでも、十分素直だなって思えるんだけど」
『だって、私は嬉しくないんですよ? それなのにお礼を要求するなんて……バカじゃな
いですか?』
「ちぇっ。じゃあ、今も嬉しくないのか」
『えっ……? ど、どういう意味ですかそれは』

669 :7/8:2011/03/05(土) 20:11:11 ID:???
「今も俺はさ。敬子の為に、こうして付き添ってやってるのに、それも嬉しくないのかなっ
て。別に敬子から言われた頼みを素直にやってるだけなんだけど」
『そ……それは、別に嬉しくは…… 確かに、私からお願いしてる事ですけど……』
「うん。だから、こういう時だよ。ありがとうって、一言言って貰えれば、それだけで俺
はいいんだ」
『そ、そんな…… 一応、感謝はしますけど、面と向かって兄さんにありがとうだなんて……』
「そういう所が、気難しいって言うんだけど。どう思う? それすらも、認める気がないとか?」
『う…… わ、分かりました。お礼を言えばいいんでしょう。お礼を言えばっ!!』
「そんな、自棄になって言われても困るけどな。出来れば、感情を込めて言ってくれると
ありがたいけど、でも言ってくれれば棒読みでも別に構わないな」
『……………………』
『(兄さんに……あらたまってお礼を言おうとすると……いつも心臓がキュウッて締め付
けられるような感覚になって……体が熱くなって、つい逃げちゃって……)』
『に、兄さんっ!!』
「うん?」
『(い……言わなきゃ……ちゃんと…… 兄さんに、気難しいだけの子じゃないって、認め
てもらう為にも……)』
『あの……きょ、今日は、その……つっ……付き合ってもらってっ!! あっ……ありが
とうございます……』
「うん。どう致しまして」
『これでいいんですよねっ!! 満足しましたか? そうでないと許しませんよっ!!』
「いやいや。十分だよ。ちゃんと、心も篭ってたし」
『心も……そっ、そんなわけありませんっ!! あんなの……棒読みです……』
『(良かった…… 兄さんに、ちゃんと伝わったんだ…… 恥ずかしいけど……でも、嬉しい……)』
「それじゃさ。素直になってるついでに、もう一つお願いしてもいいかな?」
『まだ何かやるんですかっ!? じょ……冗談じゃありません。兄さんにお礼を言うだけ
でも、苦行なのに……』
「いや、これは答えてくれなくてもいいよ。ただ、聞くなら今かなと思って」
『……答えなくてもいいのでしたら、聞くだけは聞いときますけど…… 何なんですか?』

670 :8/8:2011/03/05(土) 20:12:42 ID:???
「うん。俺に付き添って貰わないと寝れないくらい嫌な夢ってのは、どんな夢だったのか
なって。ちょっとでも教えてくれるとありがたいんだけど」
『絶対無理です!! 兄さんには、一言たりとも、言いたくありませんっ!!』
「そんな力強く言うほど嫌なのか。そうなるとますます興味が湧いてくるけどなあ……」
『わ……忘れてくださいっ!! お願いですから!!』
「分かったよ。答えなくてもいいって言ったからな。これ以上は我慢しておく」
『フゥ…… それじゃあ、もう寝てもいいですか? 兄さんと話していたら、疲れて眠く
なってしまいましたから』
「うん。いいよ。お休み」
『それじゃあ……お休みなさい……』
『(言える訳が無い……私が見た夢が……兄さんが結婚する事になってて……家を出て行
く夢だなんて…… それも、当然のように決まってて、私が慌てて追いかけたら、何故か
小学校にいて…… ダメだ。思い出すだけでも、胸が苦しくなっちゃう……)』
 ギュッ……
『(でも、今は大丈夫。兄さんの手の温もりが、伝わってくるから…… 兄さんは、私の傍
に、ちゃんといてくれてるから……)』


終わり
スレ落ちたし規制中でスレ立ても出来ないし……
まあ、こういう時の為の避難所だけど。
最終更新:2011年10月25日 21:21