838 :1/9:2011/03/29(火) 02:41:44 ID:???
(自炊)停電が怖いツンデレ
「よし。パソコンの電源は切ったし、携帯とゲーム機の充電も問題なしと。全く、夜の
停電ってうっとうしいなあ。まあ、電力足りないんだし、仕方ないけどよ」
コンコン。
「何だよ……母さんか? 大丈夫だって。全部準備済ませたからさ」
ガチャッ……
『こ……こんばんは……』
「へ……な、何だよ。かなみ……?」
『な、何よ。その変な顔。あたしが来ちゃいけないって言うの?』
「いや。いけないとは言わないけどさ。最近……その、珍しいじゃん。予告なしで来るなんてさ」
『うっさいわね。何よ。あたしが来ちゃいけないって言うの?』
「ま、待てよ。別にそうは言ってないだろ? 何カリカリしてんだよ」
『だって、アンタがまるで迷惑みたいな言い方するからじゃない。人の気も知らないでさ』
「だから、そんなん思い過ごしだっつーの。で、何だよ? 何の用だ?」
『……な、何よ。その……用がなくちゃ来ちゃいけないって言うの?』
「そんな意味で言ってねーよ。別に、用が無くたって、いたけりゃいればいいし。けど、
もうすぐ停電だぞ」
『分かってるわよそんなの。アンタ、あたしがバカだと思ってるわけ?』
「そんな、いちいち突っ掛かってくんなって。いや、分かってるならいいけどさ。ただ、
電気使えなきゃ何にもする事がないぞ。第一真っ暗になっちまうし」
『別にアンタの部屋でしたい事なんてないわよ。停電にでもならなきゃ、誰がこんなと
こ来るかっての』
「停電にでもって……ハァーン。なるほどな。そういう事か」
『え……? な、何よ。何一人で納得した顔してんのよ』
「いや。もしかしてさ、かなみ。一人で真っ暗闇の中にいるのが怖いんだろ」
『んなっ!? な……なにバカな事言ってんのよ…… だだだ……誰が怖いなんて……
そんなわけ無いでしょ? たかが停電くらいで……』
「じゃあ帰んなよ。別にここにいたって何にもする事ないぜ? むしろ、暗闇の中で男
女二人っきりなんて、下手したらムラムラして襲っちまうかもしれないし」
839 :2/9:2011/03/29(火) 02:42:09 ID:???
『ちょ……バカな事言わないでよ。変な事したらぶっ飛ばすからねっ!!』
「いや。勇ましいのはいいけどさ。暗闇でいきなり押し倒されて抵抗出来る? 俺だっ
て一応は人並みの男なんだぜ」
『じゃ……じゃあ、大声出すわよ。下におばさんだっているでしょ? そうしたら……』
「いきなり口塞いじゃうかもよ。そんな危険な奴と一緒にいるよりは家にいる方が安全
だろ。まあ、真っ暗闇が怖くて誰かと一緒にいないと耐えられないって言うんだったら、
話は別だけどさ」
『うっ…… な、何よアンタ。そんな脅すような事言って。あたしを追い返したいわけ?』
「追い返したいって訳じゃないけど…… まあ、俺だって後悔するような事したくない
けど、でもわざわざ真っ暗になるのに俺のトコ来るなんて、勘違いしたっておかしくないじゃん」
『勘違いって何よ? あたしが、その……タカシと……って? な……何言ってんのよ
アンタ。バカじゃないの? そ……そんな訳ないでしょっ!!』
「まあそう言うとは思ったけどさ。でも、何でわざわざする事もないのに俺んトコ来る
のか、理由が分からないとな。ここに来た理由が分からないと、俺だって男だから変な
期待するかも知れないし」
『アンタが期待するようなことなんてあたしがする訳ないでしょっ!! このドスケベ!!』
「じゃあさ。何で来たのか、理由くらい聞かせてくれたっていいだろ? こっちだって、
どう対応していいのか分かんないしさ」
『ううううう…… アンタってば卑怯すぎ。そうやって脅してさ。そこまでして、あた
しに理由を言わせたいわけ?』
「ああ。だって、これくらい言わなきゃ絶対言わないだろ? お前って頑固だからさ」
『ふ……ふんっ!! むしろ、アンタみたいな卑怯者には絶対教えてあげないわよ。そ
れに、どうせ襲う襲うなんて口だけでしょ? アンタってカッコばっかつけたヘタレだ
からさ。本当にそんな事出来る訳無いもんね』
「……お前さ。そういう挑発してると、本当に襲われるぞ」
『うっ…… バ、バカ言うんじゃないわよ。もし、ホントに襲ってきたら、舌噛み切っ
て死んでやるんだから』
「ちぇっ……全く、どこまで意固地なんだか。で、どうなんだよ? 別に停電が怖くて
俺んとこ来たでも、全然笑わねーからさ。正直に言ってみろって」
『だから停電なんて怖いわけないって言ってるでしょ? いい加減しつこいわよアンタもっ!!』
840 :3/9:2011/03/29(火) 02:42:35 ID:???
「じゃあ何でわざわざ、真っ暗闇になるこの時間に、二人っきりになりに来たんだよ。
俺とただいたいから?」
『へっ……!? べっ……別に、アンタなんかと一緒にいたい訳じゃないわよ……』
「ふーん。なら、いたくなければ帰ればいいじゃん。嫌な奴と真っ暗な中で二人きりで
過ごすっておかしくね?」
『べ……別に嫌って程じゃ…… 大体、幼馴染でずっと高校まで一緒なのに、今更嫌も
何もないわよ』
「でも、一緒にいたい訳じゃないのにいるのって、何か矛盾してないか?」
『いちいちうるさいわね。アンタは!! 男のクセにグチグチ言うなんてみっともないわよ』
「いや。お前だって気付いてんだろ? 自分がどんだけ理不尽な事言ってんのかってさ。
せめて理由くらい言って貰えないと、納得出来ないんだよ」
『ええいっ!! もう、細かい奴。停電でする事なくて暇だから、せめて話し相手くら
いになってあげようかと思ってやって来たのにさ』
「フーン。話、したいだけ?」
『あたしがしたいんじゃないのっ!! アンタが暇だろうから付き合ってあげるだけ!!』
「……いや。俺、停電終わるまで寝ようと思ってたからさ。話し相手とか必要ないんだけど」
『どーしてアンタは、人の親切を無にするようなこと言うのよっ!! せっかく話し相
手になってあげるって言ってんのよ? まあ、その……可愛いとまでは言わないけどさ。
でも、年頃の女の子がよ? 非モテ男のアンタなんだから、素直に喜びなさいよね』
「別に、押し付けの親切ならいらないんだけどな。かなみが俺と話したいって言うなら、
俺だって付き合うけど」
『だから何でアンタの方が付き合うことになるのよっ!! あたしが付き合ったげるっ
て言ってんのに!!』
「いや。だから、わざわざ付き合ってもらう必要なら無いって。仕方なくとか嫌々とか
だったら、全然気にしないで帰ってくれていいからさ」
『あああああ……もうっ!! アンタってどうしてこう、素直に人の親切を喜べないの
よっ!! ホントは嬉しいんでしょ? あたしが来てさ。だったら、大人しく認めなさいよね』
「……かなみがさ。停電中暇だから俺と一緒にいたいって言ってくれるなら、俺も素直
に喜ぶけどさ。何か親切の押し売りみたいじゃ喜べねーよ。コマーシャルでも言ってん
だろ? バカって言ったら、バカって言うってさ」
841 :4/9:2011/03/29(火) 02:43:00 ID:???
『むう…… フ、フンだ。時事ネタだからって偉そうに使っちゃってさ。もういいわよ。
別に、アンタなんかに喜んで貰わなくたっていいもん』
「そう言いながら、座るんだな」
『何よ。立ってるの疲れたから座っただけでしょ。悪いの?』
「いや、別に。それより、そろそろだな……」
『そろそろって……な、何がよ?』
「いや。だから、停電」
プツッ……
『きゃあっ!!』
「ありゃ? 言ったそばから来たか。ところで、かなみさん」
『……な、何よ?』
「今さ。電気消えた瞬間、悲鳴上げなかった?」
『そ……そんな事ないわよ。気のせいでしょ?』
「じゃあさ。何で俺の手に縋り付いてるわけ?」
『……だって、暗いんだもん。こうやって触ってないと、アンタがどこにいるかよく分
かんないし……』
「別に、真っ暗っつったって、完全な闇ってわけじゃないじゃん。まあ、外からの光も
いつもに比べると異様に暗いけどさ」
『でも、暗いじゃない。べ……別に、怖いって訳じゃないけど……でも……』
「でも……何?」
『うっ……や、やっぱり何でもないっ!!』
「何だよ。変な奴」
『う……うるさいわねっ!! バカ……』
『(言える訳ないじゃない…… こうやってると、タカシの存在を感じられて、安心出来
るなんて……恥ずかしくって……)』
「ところで、かなみさ。寒いのか?」
『へ……? な、何でよ……?』
「いや。何か震えてるからさ。それとも、真っ暗で怖いから?」
『違うわよっ!! 全く、アンタもしつこいんだから。そうね。ちょっと……寒いかな』
「じゃあさ。悪いけど、ちょっと手、離してくれる?」
842 :5/9:2011/03/29(火) 02:43:22 ID:???
『ダッ……ダメよっ!! どっか行っちゃ……』
「違う違う。ベッドから毛布取るだけだって。ちょっと立つだけだからさ」
『何だ…… は、早くしてよ? 女の子凍えさすなんて、男としては最低だからね……』
「はいはい。それよりかなみ」
『こ……今度は何よ?』
「いや。さっき、ダメって言ったのさ。めちゃくちゃ必死だったよね?」
『あぅ……うるさいっ!! 寒いんだから、余計な事口走ってないで、早く何とかしな
さいっての!!』
「はいはい。よっ……と。ほらよ」
バサッ……
『きゃっ!? い、いきなり渡さないでよ。暗くて見えないんだから、危ないじゃない』
「悪い悪い。俺も暗いから、あんまり動けなくてさ」
『全くもう。ホント、アンタって優しさがないわよね……』
「そうか? 俺は俺なりに気は遣ってるつもりなんだけどな」
『アンタの気の遣い方なんて、世間で優しいって言われてる男の十分の一にも満たない
のよ。ちょっとは反省しろ』
「はいはい。で、どうだ? 毛布かぶって少しは暖まったか?」
『うーん……少しは』
「少しは、か……どれどれ?」
『ちょっ……? な……何でアンタが入ってくんのよ?』
「何だよ。スペースあるんだし、別にいいだろ? それに、隣に座ってた方が、どこに
いるか分かるからいいんじゃないの?」
『そ……それはそうだけど……』
ギュッ……
「ほら。また、こうやって縋り付いて来るし」
『うるさいわねっ!! そういうからかうような言い方、超ムカつくんだけど。嫌なのアンタは?』
「いや。全然嫌じゃないけど」
『だ……だったら、変な事言わないで大人しくしがみ付かれてなさいよね』
「はいはい。でもさ。何か毛布掛けても、震えおさまってなくないか?」
843 :6/9:2011/03/29(火) 02:43:45 ID:???
『え……? う、うん。まだちょっと……』
「しょうがないな。まあ、もう少し暖かくする方法はあるんだけど……」
『あるの……? だったら、その……早くしてよね』
「ああ。だけどさ。また手を離してもらわないと、出来ないんだけど」
『だ、ダメよ。どっかいっちゃ…… それに、その……暗闇の中で動き回ると危ないじゃない』
「いや。別に何か取りに行ったりする訳じゃないから。ちょっと体勢変えるだけで」
『体勢って…… 何する気なのよ』
「えっと…… こう」
グイッ!!
『きゃっ!? なっ……ななななな……何すんのよいきなりっ!!』
「その……こうやってくっ付けば、体温でより暖かくなるんじゃないかって思ったけど、ダメかな?」
『あぅ…… 言ってる事は分かるけど、いきなり肩を抱かないでよねっ!! 心臓に悪
いじゃないのっ!!』
「……悪い。予告したら、断られそうな気がして……」
『そ……そりゃまあ…… でも、だからって断りもなしにやるなんて、しっ……失礼過ぎない?』
「それは、その……そうかも知れないけどよ。でも、まあその……無理矢理にでもやっ
て、暖かさが実感できれば、かなみも拒否しないかなって…… で、どう?」
『ど……どうって、その……何がよ……』
「いや、だから……寒さの方。マシにはなったかなって……」
『え、えーと、その……うん。まぁ……』
「そっか。良かった。確かに、震えの方もおさまったようだしな」
『(て言うか、もうそんなどころじゃないわよ。もう心臓バクバクでヤバ過ぎて……怖い
とか寒いとかなんて、全部どっか行っちゃって…… 体めちゃくちゃ熱いし……)』
『ううううう…… もうっ!! こんな事……普段だったら、ぶっ飛ばしてやるんだから……』
「いや。まあ、こんな時でもないと出来ないし。でも、何気にかなみも、気持ち良さそ
うじゃないか?」
『だ……誰がよ? バカ言ってんじゃないわ。アンタに肩抱かれるなんて、気持ち悪く
てしょうがないんだから。今は、それ以上に暖かいから、許してあげてるけど』
「でも、頭もたれかけて来てるし」
『う…… だ、だって、それはその……楽だから……だもん……』
844 :7/9:2011/03/29(火) 02:44:08 ID:???
「それに、最初肩を抱いた時より、くっ付いて来てないか?」
『それはだって……どうせ暖まるんだったら…… ていうか、その……いっそ、こうし
た方が、もっと暖かいかなって……』
スッ……
「へえ。かなみから、腰に手を回してくるなんて意外と大胆だな」
『うるさいっ!!(////////////////) 暖まる為だって言ってるでしょっ!! こんな事……
寒くもなきゃ、したくないんだから……』
「分かった分かった。ま、俺は嬉しいからいいけどさ」
『え……?』
「いや。かなみの方から積極的になってくれるなんてな。例え仕方なくでもさ。それで
も俺は別に構わないし」
『なっ……何変な事言ってんのよ。こんな時に……バカじゃないの……?』
「ハハ…… ゴメンな。でも、ホントの事だから……」
『……ズルイ……』
「え? 何か言ったか?」
『へっ……? な……何でもない!! 気にしないで』
「でも、俺の言った事に何か言ったんじゃないのか? 気にするなって言われても気に
なるんだけど」
『気になっても気にするな!! あああああ……もうっ……いいから黙っててよ、もうっ!!』
「ちぇっ。相変わらず、お前ってワガママだな。まあ、お前らしさが戻って来て良かったけど」
『何よそれ? あたしの事バカにしてる訳? ワガママなのがあたしらしいって……』
「いやいやいや。そういう訳じゃないけどさ。何つーか、さっきまでは無理に強がって
た感じがあったけど、やっと元気が出たみたいでさ」
『やっぱバカにしてるじゃない。ワガママなのが元気の証拠だなんて。フンだ。もうい
いわよ。バーカッ!!』
『(もう……せっかくドキドキする展開だったのに台無しじゃない。まあ、あたしのせい
なんだけど…… でも、タカシはズルイな。サラッと嬉しいとか言っちゃって……あた
しなんて、せっかくタカシがチャンスをくれたのに……話題に乗っかる事すら出来なく
て…… でも、まあいいかな。こうして、タカシの温もりに包まれているだけで……)』
845 :8/9:2011/03/29(火) 02:44:37 ID:???
パパッ……パッ!!
「お、電気点いたか。おい、かなみ。起きてるか?」
『何よ。ちゃんと起きてるわよ』
「じゃあ、分かってるだろうけど、停電終わったぞ。暖房入れるからさ。もう離れてもいいぞ」
『……いい』
「は? いいって、何が?」
『……このままでいい。せっかくヌクヌクしてるのに……離れたら、温もりが逃げちゃ
うじゃない』
「いや。でも、ずっとこのままって訳にも行かないだろ? 俺も風呂入らないといけないしさ」
『……じゃあ、もうちょっとだけ。せめて、部屋が暖まるまで』
「しょうがねーな。何か、今日はずいぶんと甘えっ子じゃん」
『う……うるさいっ!! 別にアンタに甘えたい訳じゃないわよ。せっかく暖かくて気
持ちいいのに、体冷やしたらもったいないなって……それだけなんだから』
「はいはい。じゃあ、もう少しこうしているか」
ギュッ……
『だからって調子に乗って抱き寄せないでよ。バカ』
「だって、暖かくて気持ちいいんだろ? だったら、よりくっ付いた方がいいじゃん」
『ううううう…… しょうがないわね。まあ、あたしからこのままでいたいって言った
から、少しだけ我慢してあげるわよ』
『(我慢なんて嘘だけどね。もっともっと、くっ付きたいくらいだし……)』
コンコン。
「『へ?』」
[ちょっと。かなみ。アンタ、家の鍵持ったままで――]
『おかっ……!?』
[あらあらまあまあ。お邪魔しちゃったみたいね]
『ちっ……ちがっ……お母さんっ!! これはその……』
[照れなくてもいいわよ。でも、二人ともまだ高校生だからね。避妊だけはしっかりす
るのよ。それじゃ、お母さん下でタカシ君のお母さんと話ししてるからね]
バタン。
「……………………」
846 :9/9:2011/03/29(火) 02:45:37 ID:???
『いっ……』
「え?」
『いつまで抱きついてんのよっ!! 離れろこのバカッ!!』
ドンッ!!
「あイテッ!! いくらなんでも突き飛ばす事ないだろが」
『うるさいっ!! アンタのせいで、お母さんに見られちゃったじゃないのよ。あれ、
絶対誤解してるもん。どうしてくれんのよっ!!』
「どうしてって言ったって……元々くっ付いたままでいたいって言ったのお前だし……」
『ゴチャゴチャ言わないのっ!! 男だったら、ちゃんと責任取りなさいよっ!!』
「責任って言われても……なあ……どうすりゃいいんだよ」
『自分で考えなさいよねそんなのっ!! あああああ……もう、恥ずかしいよぉ……死にたい……』
おしまい
せっかくの告白チャンスを不意にしてしまうのも、ツンデレのまたいいところ
最終更新:2011年10月25日 21:31