69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 22:25:40.92 ID:lE+uNN9j0 [9/15]
ちょっとエロい。
二週間前に引っ越してきた、マンションのお風呂場。
どうにか引越しのダンボールもなくなって、新しい生活に慣れてきた。
新しい生活ってのは、えぇっと……世間一般で言うところの、新婚……ってヤツで。
そんで、ボクの背中を現在進行形で流してるのが、ボクのいわゆる、旦那様ってヤツで。
いや、ほら、ねぇ? 新婚さんだから、やっぱり、することはそれなりにしてるんだけどね?
でも一緒にお風呂って言うのは、まだなんとなくハードル高かったりして。ちょっと恥ずかしいのと、優しい手つきににやけ
そうなので、ほわほわしてるボクなのです。
「よし、こんなもんか」
と、突然、ざばー、とお湯をかけられて、体の泡が落ちる。
「ちゃんと洗ったのー?」
もうちょっとほわほわしてたかったボクは、思わずそんなことを言ってしまう。
「大丈夫だよ。それより、ほら。俺も洗ってくれ」
そう言うと、旦那様はボクに背中を向ける。
「もー、しょうがないなぁ。無駄に体大きいから、洗うの大変なんだよねー」
半ば本気で不満を言いつつ、タオルにボディーソープを垂らして、泡立てる。
「無駄ってこたないだろ?」
「無駄だよ。お湯も一杯使うし。地球に優しくないね。世間の流行はやっぱりダウンサイジングなんだよ!」
「なるほど、だからお前の胸もダウンサイジンいだだだ、痛い痛い」
すぐ余計なこというから、背中を皮を引っぺがす勢いでこすってやる。
もういい加減、胸のネタはやめてくんないかなぁ。全部見ちゃってるんだから、今さらだよね。
「あいたた……冗談なのに」
「冗談でも言っていいことと悪いことがあるの! 大体、そのちっちゃいおっぱいを散々アレコレしたのは誰なのさ!」
「別に小さいってことは悪いことじゃないだろ。少なくとも、俺にとっては最高に魅力的だけどな」
「うぐっ……そ、そういうの、さらっと言うの、禁止! 乙女心が解ってないんだから!」
「だが、却下」
「ぐっ……うぅっ……」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 22:26:29.23 ID:lE+uNN9j0 [10/15]
それっきり、ボクは何にも言えなくなっちゃった。
だって、言われること自体は、その……悪くはない、っていうか、まるっきり禁止にしちゃうと、円満な家庭の運営上、問題
があったりなかったり、ボクが寂しいとかそういうんじゃないんだけどという意見も巷では見られる傾向にあるかも……
「まぁ、ほら、な」
ボクが複雑な感情に悩んでいると、旦那様は不意にこっちを振り向いて言う。
「俺個人のはなしだけどな? 好きな子ができると、なんつーか、こう……その子がリアル女神みたいな感じに思えるわけだよ」
「は、はぁ? な、何の話してんのさ?」
「お前がよく乙女心について講義してくれるから、たまには男心について教えてやろうと思ってさ」
にやにやといやらしい笑いを浮かべて、タカシは言った。その笑いがなんかカチンときて、つい言い返してしまう。
「い、意味わかんないよ。大体、タカシの考えてることなんて、食う、寝る、ヤるだけでしょ?」
「ひでぇな、おい。まぁ、とにかくだ。そのリアル女神様と、お近づきになってだよ? 映画行ったり、一緒に飯食ったりしつ
つ、お付き合いして、初めてのチューして、アレコレして……」
「話が長いよ」
「まぁ、聞けって。それで……最終的にプロポーズして、結婚してくれて、一緒に風呂まで入ってくれるわけだ。解る? リア
ル女神様が朝起きたら朝飯作ってるわけですよ。最高じゃん」
「それは……そうだろうけどさ。ボクと結婚したんだからさ」
じゃばー、とお湯をかけて泡を流しながら、ボクは答えた。タカシは軽く頷く。
「あぁ、そうだよ。俺は正直言って、何の取り得もない男だからな。世の中、もっとイケメンもいるし、金持ちもいるし」
そう言うと、ちょっと寂しそうに笑って前を向いた。
「ま、それでもリアル女神様は俺のことを選んだわけだ。だから、俺はお前に愛してるって言う。お前自身もだし、お前と過ごす
日常も愛しいからな」
前を向いたのは、これが恥ずかしかったからか。
本当、すごく恥ずかしいヤツ。リアル女神様? バカみたい。ボクはボクで、ちゃんとここにいるのに。
背がちっちゃくて、おっぱいもちっちゃくて、あんまし素直になれなくて、おしとやかとか絶対無理で……こんなのを女神様な
んて言っちゃうんだから、本当恥ずかしいよね?
ボクはそっと、タカシの背中にもたれかかって、腕をまわしてみる。
「あ、梓さん?」
「うっさい。もうなんか、本当……恥ずかしいヤツ。変態。ロリコン」
「なんだよそれ。恥ずかしいのは認めるけど、あとは関係ないだろ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/10/24(月) 22:27:31.36 ID:lE+uNN9j0 [11/15]
あーもう、本当恥ずかしいヤツ。長話するから、のぼせて顔真っ赤になっちゃったよ、どうしてくれんのさ。
ボクは考える。あと何回、こうして一緒にお風呂に入るのかなって。
――タカシがボクに欲情して、襲いかかったりして。
――その内、ボクとタカシにも子供ができて、3人とか4人で入ったりとかして。
――いいおばちゃんになっても、たまーに、子供に内緒で一緒に入ったりとかして。
――でも、実はバレてて子供に『ゆうべはおたのしみでしたね』とかマセたこと言われたりして。
そんな日常が、来ても来なくても。
「ボクは……幸せ、だよ?」
仕方ないから、ちょっとだけ、言ってあげた。
あ、でも一つ目はすぐ実現しそう。おっぱい押し付けすぎちゃった。
タカシの息が荒くなってるし、なんかボクの手つかんで離さないし、いつの間にかすっぽんぽんでお姫様抱っこされちゃってるし。
「お前が悪いんだからな?」
血走った目でそんなこと言うから、僕は笑って言った。
「悪いことはしてないつもりだけど? むしろイイことだったでしょ?」
「イイコトはこれからだ! 寝かしてやんねーからな!」
体も拭かずに、タカシは脱衣所を飛び出す。
「ひゃっほー♪ 行け行けーー!!」
ベッドに向かって、廊下を全力疾走する旦那様の腕の中で、ボクはやっぱり、幸せでした。まる。
終り
最終更新:2011年10月27日 02:55