39 名前:1/3[] 投稿日:2011/10/25(火) 01:20:18.58 ID:RC+0/neu0 [2/4]
『ちょっと、別府君。ネクタイはちゃんと締めなさい。こんな緩んだ格好の人と同じクラ
スの人間だと思われたくないわ』
『別府君。今は自習中なのよ。騒いでないで静かにしなさい』
『別府君。貴方、授業中に居眠りするなんて何考えてるの? 学校は勉強をしに来る場所
なのに、その貴重な時間を寝て過ごしたら、来る意味ないじゃない』
『別府君。その髪型、何とかならないの? まるで不良みたいだわ』
【おいおい。またアイツに怒られたのか?】
「ああ。掃除は真面目にしなさいって。ちょっとモップがけレースしてただけでよ」
【氷室ってさ。どうしてこう、タカシには厳しく当たるのかね? 他の男子がちょっとく
らいふざけてても、冷たい視線を送るくらいで何も言わないのにさ】
「さあ。とりわけ鼻につくんじゃないのか? 俺に聞かれても分かんねーよ」
【そりゃ、まあそうだろうけどさ。何だったら、一度本人に聞いてみたら?】
「氷室にかぁ? 冗談言うなよ。言葉の刃で切り刻まれて殺されちまうぜ」
【けど、このままじゃずーっと、お前一人が攻撃の的だぜ。せめて理由くらい聞いてみた
らどうだ? それくらい教えてくれるだろ。お前が少しでも直す努力をする為とか何とか言えばさ】
「うーん…… 確かに俺も、聞いてみたくはあるけどさ…… あれだけの美人に日頃から
散々言われてへこんでるのに、止め刺されるような気がして……」
【いいじゃんか。毒を食らわば皿までって言うだろ? いっそ止め刺されてスッキリしてこい】
「ちぇっ…… 他人事だと思いやがって。まあ、放課後にでも聞いてみるさ」
40 名前:2/3[] 投稿日:2011/10/25(火) 01:20:40.13 ID:RC+0/neu0 [3/4]
「何か聞いた話だと、氷室って放課後は大抵、図書室に寄って帰るらしいな。まあ、あそ
こはほとんど人も来ないし、話しやすいっちゃ話しやすいが……」
ガラガラガラ……
「失礼しまーす…… えっと……氷室はっと……」
「ああ、いた。本でも読んでるのかと思ったけど、窓の外を眺めているだけか。何やって
るんだろうな。まあ、アイツの場合、それだけでも十分絵になるけどさ」
『(……今日は……まだ通らないわね……)』
「氷室」
『えっ!?』
ガタッ!!
「おわっ!? ゴ、ゴメン。普通に声掛けたつもりだったんだけど、驚かせちまったか?」
『それはそうよ。こんな所で……その……別府君に声を掛けられたら、驚くに決まってる
じゃない』
「そりゃ悪かった。素直に謝っておくよ」
『で、こんな所に何の用なの? まさか貴方が、図書室に読書や勉強しに来たとも思えないけど』
「いい読みだ。確かに俺は、図書室なんかに用は無い。その……氷室に用があって来ただけだから」
『わ、私に……? い、一体何の用があるって言うの?』
「大した用じゃないよ。一つ、聞きたい事があって来ただけだ」
『聞きたい事ね。そう。なら、手短にお願いするわ。私も、暇じゃないのだから』
「じゃあ、単刀直入に聞くけどさ。どうして、俺の事ばかり、目の敵にするんだ?」
『え? それ……どういう意味……かしら?』
「とぼけた答えを返すのは止めて欲しいんだけどな。確かに、氷室の言ってる事は正しい
し、俺がだらしないってのはその通りだけど…… 何で俺ばかりを標的にするんだ? 他
の奴等だって、だらしないカッコしてる奴もいるし、掃除の時間ふざけたり、授業中寝て
る奴だっているだろ? なのに、そいつ等はスルーで、俺だけ注意するのはどういう事何だよ?」
『貴方は、それが……不満だって言うの?』
「不満って程じゃないけどな。ただ、理由が知りたいだけだ。別に氷室の注意が間違って
る訳じゃないし、納得出来ようが出来まいが、とにかく何で氷室が俺ばかり注意するのか、
教えてくれよ」
『………………………』
41 名前:3/3[] 投稿日:2011/10/25(火) 01:21:35.39 ID:RC+0/neu0 [4/4]
「何だよ。黙り込むなんて、お前らしくないな。いいよ別に。気なんて遣わなくたって。
お前の言葉で切り裂かれるだけの覚悟はしてきたつもりだからさ」
『そう。なら……教えてあげるわ』
「いいよ。遠慮なく言え」
『……だって、他の男子なんてどうでもいいもの。気にも留めてないのに、注意なんです
るはずも無いでしょう?』
「じゃあ、何で俺だけは注意するんだよ。他の奴らはどうでもいいのに、何で俺だけが――」
『決まってるじゃない。貴方の事が……気になって気になって、仕方が無いからよ。このバカ』
「…………え?」
『これでいい? それじゃあ、私はもう失礼するわ』
「え、おい。ちょっと待てよ。今のってどういう――」
スタスタスタスタ――ピシャッ!!
「行っちまった…… まるで何かこう……告白みたいな言い方だったけど、まさかなあ……」
『(貴方にちゃんとして欲しいのはもちろんだけど……話したくても何話したらいいのか
分からないから……とりあえず悪いところを注意すれば、それだけでも会話は出来るから
って…… 私ってば、本当に不器用だ……)』
終わり
最終更新:2011年10月27日 02:58