67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/01(火) 00:18:15.19 ID:lXjHGGUP0 [2/5]
- 本を読んでるツンデレに「トリック・オア・トリート?」と言ったら
「トリック・オア・トリート?」
「……はあ」
彼女に、お題通りのことをやったら、無言でこちらを見やった後、本に目を戻されましたが、僕は元気です。
「あの、何か反応がないと寂しいんだけど、むみさん」
「ため息をついてあげたけど?」
「えーと、できればコミュニケーションを取りたいんですが……」
なんで、こんな説明をしてるんだろうね、僕は。
「悪いけど、お菓子なんて用意してないわよ」
「じゃ、じゃあ、悪戯するけど構いませんね!」
「……大きな声出すわよ」
いつも通りの無表情で、そんなことを言われる。
「……いや、そんな酷いことはしませんて」
「どうだか。隙あらば抱きついてくるような男だもの」
「恋人ということで、そこは許容してもらえると助かるなあ」
「恋人だと思っているのは、貴方だけでしょう」
「毎回、言ってるけど、告白してきたのはむみさ――」
「それで、悪戯って何をするつもりかしら」
顔を赤く染めながら、言葉を途中で遮られる。まったく、やっぱりむみさんは可愛いなあ。
「ハグとかはいつもしてるしなあ」
「な、何よ、まさかもっと酷いことをするつもり?」
「ハグって酷いことなの?」
「当たり前でしょう」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/01(火) 00:19:41.30 ID:lXjHGGUP0 [3/5]
どうやら知らぬ間に、僕は大悪人になっていたらしい。
「じゃあハグ+αで」
そう言って、むみさんの体を正面からゆっくり抱きしめる。
むみさんは、一瞬、びくりと震えたが、いつもみたいな抵抗はなかった。
「んー、むみさん良いにおい」
シャンプーの香りと女の子らしい甘い匂いが、混ざりあっていて、どこか陶酔してしまいそうな気さえする。
「私は、貴方の悪臭に侵されて、最低の気分だわ」
むみさんの毒舌に割と傷ついたが、耳まで真っ赤になっているのを見て、それが単なる照れ隠しだとわかる。
「そ、それで、+αって、これ以上何をするつもり?」
「あれ? もしかして期待してない、むみさん?」
「ち、違うわよ、馬鹿っ! た、ただ、心の準備をしておきたいだけよ、馬鹿」
相も変わらず素直ではない最愛の人に、思わず微笑みが漏れる。
「な、何よ、馬鹿っ」
「ああ、ごめんごめん……そうだね、じゃあ、頭を撫でさせて、むみさん」
言って、実際に彼女の頭に手を載せると、またもやビクッと震えて、強張ってしまう。
そして、むみさんの、艶のある、さらさらとした黒髪をとかすように、ゆっくりと頭を撫でていく。
「ふっ、はぁ……ふぅ、ん……」
「声が漏れてるけど、そんなに気持ち良いのかな?」
「ふ、不快な、だけ、だもん……」
「だもん、て……」
いつもは絶対にしないような子供みたいな言い方に、思いきりキスをしたくなるけれど、きっとそれだけでは済まないのでなんとか自制する。
代わりに、
「愛してるよ、むみさん」
と、耳元まで真っ赤になって、声を抑えるように震えているむみさんに、愛を囁く。
「ふぇっ!? う、うぅ、な、何言ってるのよ、馬鹿ぁ」
「むみさんからも、言ってもらえると嬉しいんだけど」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/01(火) 00:21:40.03 ID:lXjHGGUP0 [4/5]
「そ、そんなこと、言うわけ……ああもう、こ、こんなの反則よっ…………す、好きよ、だ、大好き、だから、もう撫でないで」
「へえ、何でさ?」
「う、だ、だって……き、気持ち、よくって……いろいろ、我慢できなくなりそう、なんだもん……」
「そんなむみさんも、見てみたいけど……なんだか、かわいそうだから、悪戯はこの辺にしようかな」
そう言うと、撫でていた手を止め、むみさんの背中へとまわす。
すると、全身の力が抜けたかのように、むみさんが僕の胸に寄りかかってきた。
「こ、この、変態、強姦魔、卑劣漢っ! 私に、あ、あんなこと言わせるなんて……!」
「いや、割と、むみさんが自分から言ってた気がしますよ?」
「う、うるさいっ! 黙りなさい、この馬鹿!」
潤んだ瞳で抗議するむみさんを眺めながら、来年も必ずやろうと心に誓う、ハロウィンの午後なのだった。
最終更新:2011年11月03日 02:37