30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/13(日) 19:54:44.63 ID:TpU6jpnM0
  • いつも怒られてるのでツンデレに一切ボディタッチしなかったら

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/13(日) 23:44:01.08 ID:v3mS3CI40
30のお題で二レスもらいます


94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/13(日) 23:45:13.87 ID:v3mS3CI40 [2/3]
  • いつも怒られてるのでツンデレに一切ボディタッチしなかったら

 昨日、いつものように、むみさんにハグしたり頭を撫でたりしていたら、調子に乗りすぎたのか、酷く怒られてしまい、今日は放課後までずっと口をきいてくれなかった。
 だから、今日は反省してボディタッチを自粛しようと思う。
(僕も、むみさんから体目当てみたいに思われるのは、嫌だしなあ)
 そういうわけで、静謐な空気を纏って、ただ黙々と本を読み続けるむみさんをじっと眺めていることにする。
 真剣そうに、表情を一切動かさず(といってもそれは、いつものことだが)、確実に一定のスピードでページを捲っていくむみさんは、まるで精巧に作られた西洋の人形のように、気品と美しさを兼ね備えている。
(こうしてると、むみさんと初めて出会った時を思い出すなあ……)
 放課後に、補習に呼び出された友人を待っている間、本でも読もうと図書室へ立ち寄った。そこで、今みたいに静かに本を読んでいたむみさんと出会ったのだ。
 正確には、出会ったというより、僕が一目見て魂まで持っていかれたのだが。
「ちょっと、何を考え込んでいるの? しつこく話しかけられるのも鬱陶しいけれど、そうやって人の顔を見つめながら黙り込んでいるのも、気味が悪いわ」
 回想に耽っていると、当のむみさんから話しかけられた。
「ああいや、こうしてると、むみさんと初めて会った時のことを思い出すなあって……」
「初めて……? ああ、見ず知らずの貴方が、いきなり話しかけてきたときは、驚いたわ。……そう言えば、貴方って最初から馴れ馴れしかったわよね」
「あはは、そうだっけ? 僕自身は、一目惚れのショックで細かいことは覚えてないんだよね」
「な、う、ひ、一目惚れって……ば、馬鹿じゃないの、嘘くさい」
 途端に顔を赤くして、恥ずかしがるむみさん。
 思わず抱き締めたくなるが、なんとかこらえる。
「嘘じゃないさ……あの時、僕はこの世にこんなに綺麗な娘がいたんだって、初めて思ったんだから。それで、自分でも気づかないうちに、むみさんに話しかけてたんだ」
「……う、うぅ、も、もうわかったから、黙りなさい……!」
 むみさんは、これで話は打ちきりだとばかりに、本に顔を戻してしまう。といっても、チラチラとこっちを窺っているのが丸分かりだが。
(ああもう、可愛いなあ……!)
 思わず、伸ばしかけた手を、しかし、最初の誓いを思い出して寸土めする。
(そ、そうだ、むみさんに嫌われたくはないもんな……)
 それを見たむみさんは、気のせいか、ほんの一瞬悲しそうに眉をひそめたかのように見えたが、次の瞬間にはいつもの無表情に戻って、
「それで良いのよ、馬鹿……」
 とだけ、呟きを漏らした。
 少し寂しくなったけれど、僕はむみさんの近くにいるだけで幸せなのだと考え直す。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/13(日) 23:46:24.98 ID:v3mS3CI40 [3/3]

 しかし、しばらくしてから、
「えっと、その、さ、寒いわね、今日は」
 と、どこかわざとらしくむみさんが言った。
「そう? むしろいつもより暖かくて、過ごしやすいと思うけど」
 実際、天気予報でも珍しい小春日和だとか言ってたし。
「わ、私は寒いのよっ」
 何故だか、あまり寒そうではないのに、必死さを滲ませてそんなことを言うむみさんを見て、ようやく合点がいく。
 どうやら、触れあえなくて寂しかったのは僕だけの話ではなかったらしい。
「まったく、むみさんは可愛すぎるんだってば!」
 そう言って、いつものように、むみさんを正面から抱き締める。
「ふぁっ!? ちょ、ちょっと、い、いきなり……こ、この馬鹿っ」
「ふふ、だって、むみさんもこうされたかったんでしょ?」
「は、な、何言って……調子に乗らないでよ、あ、貴方なんか、た、単なる暖房器具の代わりでしかないんだから!」
「うん、わかってるよ。だから、むみさんが暖かくなるまで、こうしてても良いでしょ?」
 なんて、笑いかけると、
「し、仕方ないわね。た、ただし、寒いから我慢してあげてるだけなんだから、そ、それを忘れないように……!」
 耳元まで真っ赤にしながら、そんな心にもないことを言うむみさんなのだった。
最終更新:2011年11月19日 02:06