156 名前:1/4[] 投稿日:2011/11/23(水) 23:45:21.55 ID:C/0tJFUQ0 [39/42]
- 男がエッチな事に興味があるのかどうか知りたくなったツンデレ その4
『ねえ、まだやる気なの? もういい加減諦めたらどうなのよ』
あれから五日が経った。ボク達は毎日、場所を変え品を変えして別府君が落ちている
エロ本にどういう反応を示すか探った。が、結果はほとんど初日と変わらず。別府君が
興味を示した兆候は無かった。
『うーん……そうねえ。昨日、ようやくハッキリと顔を動かして見たけど、あからさま
に怪訝そうな顔つきだったわね』
友香が腕組みをして、首を傾げる。
『こんな事で別府君がエッチかどうかなんて分かる訳ないじゃない。人通りが少ないと
はいえ、路上でエロ本になんて興味示さないよ』
もういい加減、こんなバカげた調査はさっさと終了した方がいいと、そう思ってるボ
クはここぞとばかりに反論した。すると友香は人差し指を立てて不満気に言い返す。
『でも、他にも通りがかった人がいるけど、若い男の人とかで、思わず視線をそっちに
向けちゃった人はいるじゃない。効果がない事ないわよ』
『じゃあ、少なくとも別府君は道端に落ちてるエロ本に興味を示すほどエッチな男子じゃ
ないって事で、もういいじゃない。十分でしょ?』
五日間に及ぶバカげた調査が裏付けた事実に基づいているので、ボクにしては珍しく、
強気に主張を繰り返した。すると友香も、それには反論出来ずに小さくため息をつく。
『確かに、この調査方法はもう限界よねえ。葉山さん。作戦その2を発動しようか?』
『待ってよ。作戦その2って、まだ――』
『ちょっと待って』
ボクの質問を葉山さんが遮る。キッと口を真一文字に結び、端整なその顔に厳しい決
意をみなぎらせて、友香を見つめた。
『あと一冊。今日だけ……今日だけ、やらせて欲しいの。お願い』
ズズイッと友香に詰め寄り、必死で懇願する彼女に、さすがの友香もたじろいで二、
三歩後じさりながら頷く。
『そ、そりゃまあ……どのみち今日は他に何も出来るわけじゃないからいいけど……で
も、ほとんどのジャンルは試したんじゃない?』
そういう友香に、葉山さんは紙袋から一冊のエロ本を取り出して示した。
157 名前:2/4[] 投稿日:2011/11/23(水) 23:45:49.76 ID:C/0tJFUQ0 [40/42]
『これよ、これ。私の努力と汗と涙の結晶を試さずに終われる訳無いじゃない』
それは、可愛らしい男の子とガチムチな男性の濃厚な絡みが詰まったゲイ本だった。
『……また、一番可能性無さそうな……っていうか、それに興味示されたら悠が泣くわ』
しかし葉山さんは首を思いっきり横に振って言った。
『だからこそよ。万が一という事もあるじゃない。もし、別府君にその気があるのなら、
委員長がしっかり女の子の魅力をアピールして更生してあげないといけないわ』
『何でボクなのよっ!! 別府君が……その……どんな趣味があろうが、知った事じゃ
ないし……変態ホモと付き合う気なんて無いってば』
不満気に言い返しつつ、内心ちょっぴり不安も芽生えていた。もし、別府君がホモだ
ったとしたら、ボクは一体どうすればいいんだろうか? 今後どうやって彼と付き合っ
ていけばいいんだろうか?
『じゃあ、ちょっと準備してくるわ』
今日ばかりは葉山さんが、やる気十分に本を道端に開いて置いておく。そして駆け足
で隠れ場所に戻って来た。
『準備完了よ。カメラもバッチリ。もうすぐ彼も来るわ』
正直なところ、やる気の失せた感のある友香と期待に満ち溢れた葉山さん。そしてそ
んな事は無いと思いつつも一抹の不安を抱えるボクの三人が見つめる中、別府君がいつ
もと同じように歩いて来た。
――まあ、どうせいつもと同じでスルーだよね。
自分に言い聞かせるように、心の中で繰り返す。別府君が本に近づく。と意外な事が
起こった。いままで、女子高生にも年上のお姉さんにも、コスプレにも熟女にも、SM
にも一切足を止めなかった別府君が、ピタリと足を止めたのだ。
『う……嘘? ホントに……?』
思わず、想いが声に出てしまった。その横で葉山さんが興奮気味に囁く。
『き、来たわよ。あの、どのエロ本にも動じなかった彼が、ついに……』
『落ち着いて、葉山さん。ほら、カメラ』
『えっ? そ、そうね。写真、撮らないと』
意外な展開に動揺するボクと葉山さん。一方で、友香はまだ冷静にジッと道路の先を
見つめている。
――ウソ? ウソ……まさか別府君が、男の子に興味があるなんてそんなの……イヤ……
158 名前:3/4[] 投稿日:2011/11/23(水) 23:46:14.14 ID:C/0tJFUQ0 [41/42]
祈るように見つめていた視線の先。別府君は、足を止めて立ったまま本を少しの間見
つめていたが、やがておもむろに足を振り上げると、ベシッと本を蹴っ飛ばした。
『あっ…………!?』
横で小さく葉山さんが叫ぶ。ボクは思わず、呆然としたまま道路を見つめていた。す
ると、グイッと強く服を引っ張られる。
『ほら、いつまでも見てないの。隠れるよ。葉山さんも』
どうやら葉山さんもボクと同じく放心状態だったらしい。
『私の……努力の結晶が……ベシッって……』
先に立ち直ったボクは、葉山さんの様子を見た。何だか、抜け殻のように生気のない
顔つきで、力なく体を塀に預けている。
『何か……すごいショック受けてるみたいだけど……』
友香に言うと、彼女は一つため息をつき、葉山さんの前に立つと、いささか呆れ気味に言った。
『何でそんなショック受けてんだか。あの本、そんな大事だったの? 葉山さんっても
しかして、ああいうのが好きだったとか?』
『本の中身が問題じゃないのよっ!!』
『おわっ!?』
急に息を吹き返し、葉山さんが勢いよく立ち上がると、そのまま友香に詰め寄った。
思わずのけぞる友香に、立て続けに言葉を浴びせかける。
『あの本を手に入れるために、私がどんなに苦労したと思ってるの? 変装して、一見
して私と分からないような格好して、それでも周囲の目が酷く気になって、あの子若い
のにエッチな本買ってるわよ、しかもホモの本だなんてとか、周囲の蔑視の視線に晒さ
れながらレジまで持っていって、店員さんの冷静な対応に、この人も内心では私を軽蔑
しているんだわって思いつつ、やっとの思いで手に入れてからも、もし今お巡りさんに
職質されたらどうしようとかドキドキしながら持って帰って…… その努力の結晶が、
足蹴にされたのよ? 分からないの、この気持ちが!!』
涙目で訴えかける葉山さんを、友香が必死で宥めた。
『ま、ま、ま。落ち着いてってば。大丈夫。葉山さんの努力は私と悠がしっかり汲んで
るからさ。別府君にしてみれば、不快な本が落ちていたから我慢出来ずに蹴っ飛ばしちゃっ
たんでしょ? まさか葉山さんが死ぬほど恥ずかしい思いをして買った本だなんて、
思いも寄らないんだし。ね?』
159 名前:4/4[] 投稿日:2011/11/23(水) 23:47:13.32 ID:C/0tJFUQ0 [42/42]
『でもでも…… 私の、汗と涙と努力の成果が……』
駄々をこねるように言うと、葉山さんは隠れ場所から飛び出し、本の置いた場所へと駆け出す。
『全く……しょうがないなぁ……』
後に続く友香を追って、ボクも葉山さんの傍に行く。葉山さんは呆然と、道端の側溝
を見つめていた。そこには葉山さんの努力の結晶が、無残に背表紙を向けて、落ちてい
た。葉山さんはしゃがみ込んでそれを拾う。
『あああ……こんな惨めな姿に……』
正直、美少女が汚れたホモのエロ本を見つめて落ち込んでいるというあり得ないシチュ
に、ボクは何だか眩暈がする想いがした。
『その本は立派に役目を果たしたのよ。今まで、どの本もなし得なかった別府君の足止
めに成功するという大役をね』
ポン、と葉山さんの肩を叩いて友香が言う。涙を浮かべていた葉山さんが、クルリと
振り向き、やがて小さく微笑んで言った。
『そう……ね。きっとそう。私の努力は報われたんだわ。でないと、この子も浮かばれないもの』
ホモ本がこの子ですか。どうやら、葉山さんにとっては、とてつもなく価値あるもの
に変貌したらしい。
内心呆れるボクを前に、友香はコクリと頷いて言った。
『そうよ。だからさ。持ち帰って、大切に供養してあげようよ。ね?』
『分かりました…… この子は、資源ごみに出さず、私が手ずから、燃やす事にします』
決意の表情で、葉山さんがコクリと頷いて見せた。ボクはただ、理解不能な思いを抱
えて、それを見つめている事しか出来なかった。
637.65スレ
156 名前:1/3[] 投稿日:2011/11/28(月) 22:15:45.79 ID:QCTPK+ZI0 [3/9]
- 男がエッチな事に興味があるのかどうか知りたくなったツンデレ その5
『でさ、場所はどこがいい?』
『それは……そうね。図書室なんてどうかしら。別府君って、放課後大抵パソコンルー
ムか図書室寄ってから帰るから……それに、シチュエーションも組みやすいし』
『あれか。高いところの本を取りたいから、ちょっと台を支えていてくれない?って奴か』
『ええ、そうよ。普通に物を取るだけだと、彼が自分で取るって言い出しかねないけど、
本だったら、私が自分で選びたいのって言えば、黙って押さえる側に回ってくれるわ』
『オッケーオッケー。それが自然よね。でも、いつ図書室寄るか分かんないってのがじ
れったいけどね』
『でも、週に一回は必ず寄ってるわ。今週はまだだから、今日明日中にはチャンスがあ
ると思うの』
昼休み。お弁当を持ってボク達の教室にやって来た友香は、ボクを無視してまっしぐ
らに葉山さんの席に向かう。そのまま二人で、お弁当を食べながら何やら熱心に打合せ
をしていた。まだ、例の作戦を続けるつもりなのかと、ちょっとうんざり気味のボクは、
最初関わらないようにして、一人で別にお弁当を食べていたが、どうしても聞こえてく
る話の内容が気になってしまう。何やら不穏な話に胸がザワザワして落ち着かなくなっ
たボクは、ついに根負けして二人の席に近寄ってしまった。
『何をまた、変な打合せをしてるの? 一体』
『お? やっぱり来たわね。全く、気になって仕方が無いくせに、ボクは知りませんな
んて顔してるなんて、ホント素直じゃないんだから』
友香の言葉に、ボクはまんまと釣り針を飲み込んだ事を知り、思わず悔しそうな顔を
してしまう。それでも、態度だけは強気に出て何とか誤魔化そうとした。
『べ、別に興味なんか…… ただ、二人してまたロクでもない事を仕出かそうとしてる
みたいだから、委員長としては放置して置けないかなって』
苦しい言い訳にニヤニヤする友香の横で、天真爛漫な笑顔を浮かべて、葉山さんが言った。
『ロクでもないなんてとんでもないわ。男の子の趣味嗜好を調べるのは、女の子にとっ
て大切な事よ。特にそれが、大切なお友達の想い人であれば尚更の事よ』
『その言葉、こないだも聞いた』
うんざりしたように言うと、葉山さんはあごに手を当て、首を傾げて考えてみせる。
157 名前:2/3[] 投稿日:2011/11/28(月) 22:16:22.76 ID:QCTPK+ZI0 [4/9]
『そうだったかしら? でも、大事な事だもの。何度言っても無駄ではないわ』
それは、葉山さんにとってはだろう。そりゃボクだって、興味がないわけではないけ
れど、でも同時に好きな人の事を知り過ぎるのも問題だと思う。プライバシー権にだっ
て関わるわけだし。
『で、ここに来たって事は、無論悠も参加するのよね? 第二次作戦に』
『一体、今度は何を企んでるわけ?』
ジロリ、と友香を睨み付けると、友香は不敵な笑みを浮かべて答えた。
『ずばり、今度は生身でお色気作戦、よ』
『生身で……? って、それってどういう事?』
何か悪い胸騒ぎを覚えつつ、ボクは聞き返す。すると横から葉山さんが答えてくれた。
『ええと、ね。この間のエロ本に果たして別府君は興味があるか、作戦は不完全燃焼に
終わっちゃって、イマイチ効果が分からなかったから、じゃあ今度は生身の女の子のエッ
チな姿には、どう反応するんだろうか確かめてみようって』
『ただ、さすがに露骨な誘惑はマズイからね。こう、ちょっとした微エロチックな状況
に、どう別府君は反応するのかなって』
『……で、一体二人は何をするつもりだったの?』
この先に踏み込んじゃいけない気がする。聞いてはいけない質問だったような気がす
る。だけど、気になって気になって、ボクは先を聞かずにはいられなかった。その先に
地雷原が待ち構えている事が、何となく分かっていても。
『図書室でね。あそこの本棚って、上の方は脚立がないと取れないじゃない。だけど、
動くと危ないからって、葉山さんが別府君に支えて貰うよう頼むっていう、そういうシ
チュを作ろうと思って』
友香の答えに、ボクは首を捻って聞き返す。
『それと、エロと何の関係があるの? 別に普通の事だと思うけど』
すると友香は、露骨に大げさなため息をついて言った。
『分からないの? あの本棚のてっぺんの方だと、ちょうど別府君の顔のやや上に葉山
さんのお尻が来る事になるのよ? 目の前に白く眩しい女子高生の太ももを見せ付けら
れて、正常な男子なら間違いなく興奮するわ』
158 名前:3/3[] 投稿日:2011/11/28(月) 22:17:29.91 ID:QCTPK+ZI0 [5/9]
バカバカしい、と一蹴しようとしたボクの脳裏に、パッとその情景が浮かぶ。別府君
は頼まれごとを断るよりもさっさとやってしまうことで面倒を避ける性質なので、葉山
さんが頼めば間違いなくやるだろう。その時、目の前に葉山さんのスラリとした、それ
でいて肉付きもある二本の太ももを目の当たりにしたら、さすがの別府君だって、動揺
してしまうかも知れない。
そんな不安を煽るように、葉山さんが余計な提案をしてくる。
『うーん…… ねえ、友香さん。スカート丈なんだけど、あと2cmは短くした方がいいかしら?』
『そうねぇ。やっぱり中が見えるか見えないかのギリギリのラインは重要よね。まして
や敵はあの別府君なんだし、その方がハッキリと分かりやすいかも』
友香があっさりとそれに同意する。このままだと、葉山さんの色気に別府君が陥落し
てしまうかもという不安が、考え無しにボクを駆り立てた。
『ダ……ダダダダダ、ダメだって。そんなのダメだってば!!』
最終更新:2011年11月29日 00:50