637.52スレ
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/27(日) 20:27:48.88 ID:QiBQHowW0 [9/18]
11 名前:前スレ>>19から[] 投稿日:2011/11/27(日) 23:10:08.44 ID:ljLy7wr50 [2/5]
俺は、今日も今日とて女子中学生の部屋に上がり込んでいた。
と書くと、まるでロリコンの変態野郎みたいだが、単に家庭教師として教えに来ているだけである。
近所に住んでいる昔からの知り合いである女の子が、今年で中三なので受験勉強を見てやっていると言うわけだ。
「ほら、今日の分の問題終わったから、さっさと採点してよ、コウジ。どーせ、満点だろうけどね、にひひ」
そんな生意気な口調で俺に話しかけてきたのが、その教え子であるまりだ。黒蜜のように綺麗な髪を、左右でまとめて垂らしている。
まあ正直言ってかなり可愛いのだが、気が強くて気分屋なのがなあ……。
「ちょっと、なんか失礼なこと考えてない?」
「ハハハ、そんなまさか」
(テレパスかよこいつは!?)
俺は内心で戦々恐々としながら渡されたノートと解答を見比べる。
まあ、どうせまりの言う通り全問……
「――ん? ここ間違ってんぞ」
「えっ!? う、嘘」
「どうも途中式見る限りじゃあ、通分の段階で掛け算ミスってるな」
一見わかりにくいが、そのせいで答えは大分食い違っている。
「そんな……こ、こんな単純な所で間違うなんて」
「確かに、お前らしくないミスだなあ。大方簡単すぎてろくに検算しなかっただけだろうが……ま、そういうわけだから、いつものご褒美は無しだな」
ご褒美、と言ってもただまりの頭を撫でてあげるだけなんだが……こいつは満足するまで、かなり長い時間解放してくれないので、俺からするとちょっとした苦行なのだ。色んな意味で。
「べ、別に良いもん。あんなの、ちょっとした気晴らしみたいなものだし?」
「その割にはいつもすぐには離してくれないけどな」
「う、うっさいのよ、コウジのばーか!」
と、機嫌を損ねたのか、キャスター付きの椅子をくるりと回して、向こうを向いてしまうまり。
(ったく、仕方ないな……)
「ふゃ!? ちょ、ちょっと、今日はしないんじゃなかったの?」
「俺がしないと落ち着かないんだよ。……嫌なら、止めるけど」
「い、嫌とは言わないけどさ……そっか、コウジもしないと落ち着かないんだぁ……えへへ……」
本当は、ただのご機嫌取りだとは……こんな幸せそうな顔を見たら、とても言い出せない。
「……ん、もっと、丁寧に撫でなさいよぅ……んー、きもちー……」
しかし、すっかりこたつの上の猫のような有り様である。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/11/27(日) 23:11:08.16 ID:ljLy7wr50 [3/5]
「さっきは、ちょっとした気晴らしだとか言ってたくせに……」
「んー? なんか言ったー、コウジ?」
「いいや、なんでも。……ていうか、いつも思うんだが、一応年上なんだし、呼び捨てはやめんか」
言いつつ、凝らしめるように少し強めに撫でてやる。
「ふぁ!? ……な、なによう、コウジはコウジでしょうが。今更、先輩ぶらないでよ」
「はーあ、昔は可愛らしく、お兄ちゃんって呼んでたのに……どうしてこうなったんだか」
そうぼやくと、まりはさっきのように、椅子をくるりと回して、こっちに向き直った。
「ふーん……四つも年下の女の子から、そんな風に呼ばれたいんだー……お兄ちゃん?」
「なっ」
ちょっと、これは、やばい……。いつの間に、瞳を潤ませながら上目遣いなんて覚えやがった。
「くすくす、なにどぎまぎしてんのよ、ヘンタイ♪」
「ど、どぎまぎなんかしてねえ! つーか、別にそう呼ばれたいんじゃなくてだなあ、先生とまでは言わないから、せめてさん付けとかで呼べって言ってるんだ」
「はいはい、分かったわよ、馬鹿コウジさん」
「何か余計なのが付いてるんだけど!」
「まったく、うっさいわねー……わかったから、続きを早くしてよ、コウジさん」
「……それで良いんだって」
頷きながら、また彼女の頭を撫で始める。
正直、また『お兄ちゃん』と呼ばれたいのは内緒である。
14 名前:ごめんまだあるんだ[] 投稿日:2011/11/27(日) 23:14:36.40 ID:ljLy7wr50 [4/5]
「……ん? どうした、なんか顔赤いぞ、風邪か?」
「ち、違うわよ……あ、あのさ、コウジさんって、その……」
「何だよ、俺がどうかしたか?」
「ううん、そうじゃなくて……えと、コウジさんって呼び方がね……な、なんか、ふ、夫婦みたいだなーと思って……」
「は、はあ? ば、馬鹿かお前っ」
いきなり、そんな乙女チックなことを言うなっての。おかげでこっちまで恥ずかしいじゃないか。
「だ、だって、そう思っちゃったんだから、しょうがないじゃない!」
「あーあー、わかったから騒ぐな、撫でづらい」
「な、何よ、コウジ……さん、だって真っ赤じゃない……」
さっき自分で言ったことを意識してるからか、そんなことを言いながら、まりも耳から首まで真っ赤になっている。
「う、うっせ、も、もう、呼び捨てで良いって」
「ヤダ」
「やだってお前なあ……」
「い、いいじゃん、たまにはこーいうのも! だいたい、こ、コウジさんが言い出したんでしょ!」
「いや、そうだけど……」
あーもう、まりが変なこと言うから、俺も顔が熱いどころか、全身熱いじゃないか。
「こ、コウジ、さん……」
「……何だよ」
「よ、呼んでみただけよ、ばーか♪ ……にへへ……」
「……勘弁してくれ」
うわ、もう、誰かこの恥ずかしい空間から助け出してくれ。まりのやつ、超ニコニコしてるし。
「んもー、撫で撫でが止まってるよ? コウジさん」
「……あ、ああ、わかったよもうっ」
「……ねー、コウジさん……」
「……だから、何だよ」
「呼んでみただけ~……にひひひ……」
「…………勘弁してくれ」
そのネタさっきやったよ、まりさんよ。
そんなこんなで、お互い真っ赤になりながら、生き地獄を耐え抜いた俺なのだった。……家庭教師って何だっけ。
最終更新:2011年11月29日 01:07