634 名前:1/4[] 投稿日:2011/05/14(土) 11:44:20.64 ID:cQAi/iAe0 [3/6]
「よお。委員長」
『ひゃっ!? な……なんや。別府やねんか。おどかさんといてや』
「別に、普通に声掛けしただけのつもりだけどなぁ。委員長がボーッとしてて気付かな
かっただけじゃないのか?」
『やかましいわ。ウチかて、考え事に没頭して周りが見えへんくなることくらいあるわ』
「アハハ。ゴメンゴメン。そう怒らないでくれよ。可愛い顔が台無しになるぞ」
『な……? 何、下手なお世辞言うてんねん。ウチの機嫌取り持とう思って、そんな心
にも無い事言うたかて、騙されへんで』
「いや。機嫌良くして欲しいのは確かだけど、可愛いのもホントだよ」
『ウ……ウチが、そんな、その……別府なんかに可愛い言われて喜ぶ思うたら大間違い
やで。そんなん、い、言われたかてめーわくなだけやっ!!』
「口とは正反対に、顔が赤くなってますよ?」
『そんなん言われたらな。嫌いな男やっても赤くなるもんなんやっ!! 女心を弄ぶの
止めてや。もうっ!!』
「いや。委員長ってこんなに照れるんだな。もっと褒めよっかな」
『止めて言うとるやんかっ!! これ以上変な事言うんやったらな。もうウチ行くで?
もともと別府に用事なんてあらへんのやから』
「ああ、ゴメン。こんな所で会うなんて珍しいからさ。どこ行くのかなって思って声掛
けただけなんだけど。それに、委員長を見かけておいて無視するなんて出来ないし」
『ウチは出来れば無視して欲しかったんやけどなー』
「そんな冷たい事言うなって。で、どこ行くとこだったの? 少なくとも、委員長っちっ
て、そっちじゃないよな?」
『そやけど……なんでアンタがウチん家の方角知っとんねん。キモッ……』
「普通に、何度か朝会ったりしてんじゃん。何もキモイとか言わなくてもいいじゃん」
『何か、教えてもおらんのにアンタに自分ち知られてる思うたら、そんな気になってし
もただけや。まあ、そう気にせんとき?』
「気になるわっ!! 俺だって、クラスメイトの女子に気持ち悪い呼ばわりされたら傷
つく程度には、繊細な心の持ち主なんですよ?」
635 名前:2/4[] 投稿日:2011/05/14(土) 11:45:02.86 ID:cQAi/iAe0 [4/6]
『何が繊細やねん。そないなせせこましい事気にするんやったら、何も懲りんとおんな
じ事ばっか怒られとる、自分の日常を反省しい。普段の行いが悪いから、ウチにもそう
言われるんやで』
「はいはい、分かりましたよ。肝に銘じときます」
『そう思うんやったらな。休みの日もちっとは為になることせえよ。この紙袋ん中。ま
た、プラモとか漫画ばっかやん』
「だって小遣い貰ったばっかだし。やっぱ欲しいもの買いたいじゃん」
『ほんでもって、家でゴロゴロばかりやろ。ホンマ、救いのない生活してんねんな』
「そりゃ、自分でもあまり健康的とか思ってないよ。でも、それは委員長だって同じじゃない?」
『バカにしたらあかんで? ウチはな。日曜は毎週、図書館行って役に立つ本探して読
んどるんや。それも、今日みたいに天気のいい日は歩いてな。体動かすにもええし、気
分転換にもなるし、最高やで』
「ちょっと待てよ。こっから……いや。委員長の家から市立図書館って、かなり距離あ
るんじゃね?」
『んー? ウチの足で大体一時間かからん程度やな。歩くのにええ道選んどるし』
「うわ。それだと図書館着く頃にはヘロヘロになってんじゃないの?」
『そうでもあらへんよ。自分でコース決めとるし、日によって少しずつ歩く道変えとる
よって、知らへん道歩くのも楽しいしな』
「へえ。見かけによらず、委員長って結構行動的だったんだな。知らなかった」
『見かけによらずって何やねん。そりゃ、確かにウチはインドア派やし運動得意やない
し、見た目かて大人しそうやねん。けど、別府に言われると何か腹立つわ』
「一応、感心してるんだけどな。休みの日は図書館ってのはいかにも委員長らしいけど、
だけどさ。そこに意識して体を動かす日課を取り入れるって、なかなかめんどくさくっ
て出来ないじゃん。やっぱり、委員長って真面目なんだなって」
『フン。アンタなんかに褒められたかて、嬉しゅうないわ。それに、ウチの事ひ弱や思
うてバカにしとるから、そうやって感心するんやろ? これが友ちゃんみたいに活発な
子やったら、普通に思うくせに』
「……あれはまた、別種の活発さだからなあ。それに、別に、インドア派だってひ弱だ
なんて全然思ってないから。それだったら、俺だってゲームとか漫画ばっかりのインドア派だし」
636 名前:3/4[] 投稿日:2011/05/14(土) 11:45:44.37 ID:cQAi/iAe0 [5/6]
『まあ、せやな。少なくともウチは、アンタみたいにゴロゴロして過ごしとるばっかや
ないからな。結構、おかんの手伝いするのも体動かすし』
「ちぇっ。まるで俺の休み見て来たみたいな口振りだな」
『見て来たも何も、そこに証拠あるやん。ウチの事感心しとるばっかやのうて、アンタ
こそ、ちょっとは体動かしたらどうなん? 別に、ウチと違って運動苦手やあらへんやん』
「いや。学校で体動かすのは好きだけどさ。休みの日ってどうもゆっくりしたくって」
『ホンマ、無駄なところでだけ、体動かすの好きやもんなあ。掃除の時間に雑巾で野球
したり、廊下で追いかけっこしたり。何べん注意しても、全然聞かへんし。そのくせ、
体育とかはダラダラしとるし』
「授業でもサッカーとかは好きなんだけどさ。やらされ感があるとダメなんだよな。気
分が乗らないって言うか」
『そないなことばっかり言うてはるから、だらしない人間になってまうんやで。休みの
日こそな。しっかりした生活せんとあかんわ』
「むぅ…… 何か、せっかく休日に委員長と会ったってのに、お説教ばっかってのも、
つまんねーな。もうちょっと、こう……楽しい話題とかない?」
『ア……アホッ!! ある訳ないやろそんなんっ!! 何でウチが別府となんて、楽し
い会話せなあかんねん……』
「そっか。じゃあ、ま、俺そろそろ行くわ。委員長の足止めしとくのも悪いし、俺もこ
れ以上お説教だけじゃ、ちょっと勘弁だからな。じゃ、また明日」
『ちょ、ちょっと待ちいや!!』
「え? 何?」
『へ……? えーとな。その……ア、アンタも……図書館、付き合わんかと思てな……』
「へ? 俺が? 何で?」
『そんな意外な顔すんなっ!! 今言ったばっかやんか。休みの日かて、ちゃんとした
生活せなあかんて。図書館行けば、歩く事で運動にもなるし、本読めば少しは教養も身
に付くやろ? いい事づくめやんか』
「うーん。でも俺、荷物あるしなあ……」
『男が泣き言なんて言うたらあかん。ウチとの体力差を考えたら、それでちょうど釣り
合い取れるやんか』
637 名前:4/4[] 投稿日:2011/05/14(土) 11:46:46.87 ID:cQAi/iAe0 [6/6]
「そうだなぁ。委員長と、お説教以外の話も出来るって言うなら、まあそれもいいかな。
せっかく会った訳だし」
『何、変な事言うてんねん。そりゃあ、その……一緒に歩く訳やし、だんまりちゅう訳
にも行かへんやろ? 話くらいはするわ』
「オッケー。そういう事なら、お付き合い致しますかね」
『何や、それ。上から目線で言うなっちゅーの。アンタ自身のためやで? 分かっとるやろな?』
「分かってるからさ。それじゃ、行こうぜ、委員長」
『あ、ちょっと待ってえな。もうっ!!』
『(思わず、勢いで誘ってしもたけど……まさか、別府と一緒に散歩出来るなんてな……
ちゃんと、毎週来てくれはるとええけどな…… 後で、帰り際に釘刺しとかんとな)』
終わり
最終更新:2011年05月16日 02:46